軍用AIアリス、当機はこれから悪役令嬢

黒田さん信者

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2、当機は元々軽量型であるため、装甲のパージを提案する

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「なるほど、だいたい理解した」
 あれから少して、数人のメイドと医者が来て口々に話していった内容を要約すると、

1,アレフルルは毒の女と呼ばれるほど意地悪な、いわゆる悪役令嬢だった

2,一ヶ月前に、あまりに行き過ぎた行動を咎められ、王から処分を受け戦場に駆り出される予定だった

3,しかしその数日後暗殺者に襲われ、森に逃げ込み発見された


ということらしい。

(……色々とよろしくない状況だな)
 アリスは思考を巡らせる。

(まず、暗殺者はまた来るに違いない。だが、こんな余分な装甲……脂肪をつけた状態では太刀打ちは不可能)
 冷静に自分を分析し、まずはその装甲をパージしようと――

「……そういえば人にはパージという機能は存在しなかったな」
 ではどうすると更に思考を巡らせ――

 くぅ。

「……? なんの音だ? エラー音か?」
 初めての音に困惑し、答えを求めるようにメイドに目を向ける。

「え? ああ、お腹が空いたんですね、急いでお食事をお持ちします」
 パタパタと走り、食事を取りに部屋から出た。

「……ふぅ、すまないアレフルル、悪いことをした。だが、私は復讐とはなにか……いや、感情とは何かを知りたいんだ」
 一人になった部屋で、彼女の体で、声で懺悔をこぼす。懺悔など本来意味をなさないものとアリスは考えている。しかし、どうしてか声に出さねばならないと考え、口に出した。

「……失礼します、お嬢様。お食事をお持ちいたしました……」
 カートを引いたメイドと、シェフと執事が数人入ってきた。

「……ああ、食事か。人のエネルギー補給の方法だな」
 戦場で部隊のメンバーがレーションを食べる姿を見ていたので、アリスはそれを思い出す。

「あ、あの、病人食なので申し訳ないですが、その……」
 非常に言いにくそうにシェフがうつむきがちにチラチラとアリスの方を向く。

「どうした? 言ってみろ」

「……お体に差し支えが出てしまうので、好物のお肉は抜かせていただきました、大変申し訳ございません……!」
 何卒お許しを! と頭を下げるシェフをみて、アリスは首をかしげる。

「そうか? 私は気にしないぞ」
 エネルギー源を補充できればそれで良いとアリスは考え、あっけらかんと言う。

「……へっ?」

「エネルギーが補給できればそれでいい」
 そう言い、出された乳粥を匙ですくう。

「機能の落ちた器官に負担をかけないよう、エネルギー吸収効率を高めた食品か。合理的だ」
 乳粥を匙ですくい、口に入れる。

「――なるほど、これは……」
 一口食べ、フリーズしたように動きを止める。

「お、お嬢様⁉ 申し訳ありません! やっぱり今すぐお肉をお持ちに――」

「……これが美味いという感覚なのか。凄い情報量だ」
 目を軽く見開き、嚥下する。

「人の食事の意義とはここにもあるのか。理解した」
 そして、リズムよく乳粥をすくい、すぐに空にしてしまった。

「私の体重とエネルギー効率を計算して……そうだな、同じものをあと五杯ほど頼む」

「は、はいっ! ただいま!」
 シェフは少し嬉しそうに差し出された器を受け取り、急いでおかわりを取りに行った。




「……よし、適切なエネルギー量だ。申し分ない」
 きっかり五杯を食べ終え、匙を置く。

「良い腕だ。次もお願いできるか」

「は、はいっ! お任せくださいお嬢様!」
 嬉しそうにシェフは頭を下げた。

「さて、そこのメイド……ええと、名前は」

「し、シナでございますお嬢様!」
 最初からつきっきりでいてくれたメイドの名前を聞き、頷く。

「ではシナ、まずは運動をしたい。手を貸してくれるか?」
 この体がどれぐらい動けるのかを確認するため、まずは歩いてみようと思っていたが、一人では立ち上がることができないのでシナに助けを求める。

「う、運動を⁉」
 ありえない! といった顔でアリスを見る。

「そうだ。お願いできるか?」

「も、もちろんです! 精一杯務めさせていただきます!」
 肩を差し出すと、ふぬっ! と気合を入れて重すぎるアリスの体を支える。

「……すまない、余計な装甲が多すぎる」

「装甲……? い、いえ、お嬢様のサポートをするのが……私のっ……役目なのでっ!」
 なんとか持ち上げるも、あまり長く持ちそうにない。

「……なるほど、やはりボディが重すぎる。それに、筋肉があまりにも少ない」
 脂肪だらけの体と細すぎる足を見て、淡々と結果を漏らす。

「とりあえず今は部屋の端までお願いできるか?」

「は、はいっ……! ぐのぉぉ……!」
 一歩踏み出すだけで、ドスン! と音がしそうだ。

「これは……本格的に装甲をパージすることを考えねば、ならなそうだっ……!」
 わずか一歩踏み出しただけで悲鳴をあげだした体と心臓を律しながらこれからのことを考える。

「シナ……ッ、どうすれば軽量化がっ、可能か……?」

「軽量……っ化ですかっ⁉ だ、ダイエットッ、で、ですかねっ!」
 二人で息を切らしながら一歩ずつ踏みしめていく。

「そうかっ……! ではっ、すぐ始めるぞ……!」
 シナがヒーヒー言いながらもついになんとか部屋の端まで到着した。

「はーっ、はーっ……心拍数が異常だ……肺機能の強化もせねば」
 乱れた呼吸を整えながらアリスは決意した。

「ふぅ……よし、少し休憩したらまたベッドに戻らねば」
 その言葉を聞いてシナの顔が引きつった。
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