4 / 96
愛縁奇祈
4
しおりを挟む
優馬は、物識りだ。
たくさんのことを教えてくれる。
そして、ますます私は人を好きになった。
「優馬、君は本当に物識りだね」
「そんなことないよ。愁ちゃんが知らなさすぎるの」
「まあ、たしかに。私はまだまだ生まれたばかりのようなものだからね」
「そうなの?」
「うむ。桜の季節は、これで何十回目かな」
「待って、それは生まれたばかりじゃない」
「はっはっはっ。そうかそうか、これは人にとっては、長生きなのかな」
「うーん。数によるけど、少なくとも生まれたばかりではない」
優馬は苦笑する。
「ったく、もう。愁ちゃんって、バカだよね。ひぃちゃんもさ、こんな兄は嫌でしょ」
「うん。正直ついていけない」
「待て、英忠。お前は、私についてこいよ」
「いや、兄ちゃんさ。正直、意味わからないからね」
「何が?」
「なんで、右と左を間違えるの? この前、優馬姉ちゃんから教わったじゃん」
「ん? そうか?」
「そうだよ。なんで、忘れちゃうの」
「あはは、悪い悪い」
私は忘れやすいのだ。
これは、本当。
どうも、記憶力がな……。
「ん、それより。優馬、最近、この町に旅人は来たかな?」
「え?」
「いや、最近、町の雰囲気がおかしいんだよ。誰も私を信仰しない。あんなに、信仰していたのに。信仰しなくても、平気になったのなら良いが。そうではないだろ?」
「んー」
優馬は腕を組み、考える。
「そうね。そういえば、祢宜と名乗る男が、この前来て、近くに住んでいるよ」
「祢宜?」
「うん。たしか、名前が『刀祢』て言うのよ。刀に祢宜で」
「本当に、祢宜と言ったのかい?」
「うん。どうして、そんなに気になるの?」
「いや、祢宜とは神職の一つ。神に仕える者なんだよ。そういう人間は、大体他の人間とは違う雰囲気がする」
そういうのは、たとえ神でなくても怪異であれば感じるのだ。
怪異にとって、神職は敵だからね。
住職も同様。
だけど。
「別に、感じない。逆に、怪異の雰囲気がするんだ」
「え? でも、そんな感じしないよ?」
「うん。まあ、人間でも、怪異の雰囲気を出すことができたりするんだよ。たとえば、罪人とかね。そういう感じ」
「じゃあ、あの人は……罪人なの?」
「そうだね。まあ、まだわからないから。調べてみるよ。優馬は、何もしないで。英忠、優馬のそばにいて」
「……愁ちゃん、調べるってどうするの?」
「実際に会うんだよ。神聖な祢宜を名乗るなんて、私は許せないな」
私はニコッと笑い、優馬と英忠を撫でる。
「大丈夫、すぐに戻るから」
たくさんのことを教えてくれる。
そして、ますます私は人を好きになった。
「優馬、君は本当に物識りだね」
「そんなことないよ。愁ちゃんが知らなさすぎるの」
「まあ、たしかに。私はまだまだ生まれたばかりのようなものだからね」
「そうなの?」
「うむ。桜の季節は、これで何十回目かな」
「待って、それは生まれたばかりじゃない」
「はっはっはっ。そうかそうか、これは人にとっては、長生きなのかな」
「うーん。数によるけど、少なくとも生まれたばかりではない」
優馬は苦笑する。
「ったく、もう。愁ちゃんって、バカだよね。ひぃちゃんもさ、こんな兄は嫌でしょ」
「うん。正直ついていけない」
「待て、英忠。お前は、私についてこいよ」
「いや、兄ちゃんさ。正直、意味わからないからね」
「何が?」
「なんで、右と左を間違えるの? この前、優馬姉ちゃんから教わったじゃん」
「ん? そうか?」
「そうだよ。なんで、忘れちゃうの」
「あはは、悪い悪い」
私は忘れやすいのだ。
これは、本当。
どうも、記憶力がな……。
「ん、それより。優馬、最近、この町に旅人は来たかな?」
「え?」
「いや、最近、町の雰囲気がおかしいんだよ。誰も私を信仰しない。あんなに、信仰していたのに。信仰しなくても、平気になったのなら良いが。そうではないだろ?」
「んー」
優馬は腕を組み、考える。
「そうね。そういえば、祢宜と名乗る男が、この前来て、近くに住んでいるよ」
「祢宜?」
「うん。たしか、名前が『刀祢』て言うのよ。刀に祢宜で」
「本当に、祢宜と言ったのかい?」
「うん。どうして、そんなに気になるの?」
「いや、祢宜とは神職の一つ。神に仕える者なんだよ。そういう人間は、大体他の人間とは違う雰囲気がする」
そういうのは、たとえ神でなくても怪異であれば感じるのだ。
怪異にとって、神職は敵だからね。
住職も同様。
だけど。
「別に、感じない。逆に、怪異の雰囲気がするんだ」
「え? でも、そんな感じしないよ?」
「うん。まあ、人間でも、怪異の雰囲気を出すことができたりするんだよ。たとえば、罪人とかね。そういう感じ」
「じゃあ、あの人は……罪人なの?」
「そうだね。まあ、まだわからないから。調べてみるよ。優馬は、何もしないで。英忠、優馬のそばにいて」
「……愁ちゃん、調べるってどうするの?」
「実際に会うんだよ。神聖な祢宜を名乗るなんて、私は許せないな」
私はニコッと笑い、優馬と英忠を撫でる。
「大丈夫、すぐに戻るから」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる