狂気醜行

春血暫

文字の大きさ
上 下
36 / 114
図書室の霊

003

しおりを挟む
 奈穂は、何とか美鶴を幼稚園に送り。
 学校には遅刻せずにすんだ。
――先生と話すの、楽しくて時間忘れてた……。
 はあ、と小さくため息を吐いて、教室の扉を開こうとしたとき。
 隣の教室の扉から、千歳が出るのが見えた。
「千歳……!?」
 奈穂は驚いて、千歳に声をかける。
「千歳! おはよ!」
「奈穂? おはよう」
 千歳は、ふわりと優しく笑って奈穂を見る。
「学校で会うのは、久しぶりだね」
「うん。久しぶり」
「……佐々塚先生が、昨日ね、来てくれたんだ」
「そうなんだ」
「先生の顔を見たら、とっても安心しちゃった」
「うん。わかる」
「うん。あ、あのさ、奈穂」
「何?」
「今日さ、学校終わったら、少し付き合ってくれる?」
「ん? うん、良いよ」
「へへ、ありがと」
 千歳が嬉しそうに笑って奈穂に礼を言うと。
 奈穂は少し顔を赤らめて「またね」と言って教室に入った。
しおりを挟む

処理中です...