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狂気醜行
007
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数ヵ月後。
杜和泉には、もう『S教』についての騒ぎは収まり、誰も事件について話さなかった。
文弘は変わらず、犯罪学者として大学で講義をしたり、事件の捜査に関わったりしている。
一は文弘の助手として、メモを取ったり、一緒に推理をしていた。
ある日、文弘はいつものように仕事を終え、優のいる牢屋に向かった。
優は重罪のため、他の牢屋とは別のところにいた。
文弘が訪れると、優は笑って文弘を見る。
「やあ、川中さん」
「どうも、佐々塚さん。元気?」
「まあまあかな。川中さんは?」
「仕事がたくさんあって元気だよ」
「君は仕事が好きだね」
「この仕事は俺を知るために必要だから」
「君のことなら僕が知ってる。早く僕のところに来てよ」
「断るよ。それはね」
文弘が笑うと、優は少しドキッとして言う。
「こんなにも魅力的だから、僕は君を独占したくなる」
「そんなこと言うのはあんただけだよ」
「そうかな」
「そうだよ」
さて、と文弘は優に一枚の紙を渡す。
「取引のようなものの話だ」
「何?」
「近頃、杜和泉の教会で連続殺人事件が起きている」
「やっぱり起きたか」
「そう。数ヵ月前、あんたが話した通りになった。他に知ってる情報があるなら教えてほしい。その代わり、協力してくれた、ということで刑を少し軽くできる。悪くないだろ?」
「うん。良いけど、話すなら川中さんだけに話す。そして、川中さんだけが知ってる情報ということね。他には言わないでほしい」
「…………」
「それが嫌ならこの件はパス。僕はもう語らないよ」
どうする? と、優は文弘に問いかけた。
文弘は少し考える。
情報があれば被害は少なく済む。
しかし、それは自分だけ。
どんなに近しくても他人に話せない。
――今更秘密が増えたとて。
文弘はそう思い、優に「わかったよ」と言う。
「約束は守れよ?」
「守るよ。僕は文弘とのはね」
「…………じゃあ、今日はこれだけ。また用があったら来る」
「うん。待ってる」
「あのさ、佐々塚さん」
文弘は優に訊く。
「どこから情報を仕入れているんだ?」
「それは秘密。文弘が僕のところに来てくれたら話すよ」
「じゃあいい」
「頑なだなあ」
「うるさい」
文弘はイラッとし、優に背を向けて帰ろうとする。
それを優が少し止める。
「なあ、一つ聞いて良いかい?」
「何」
「たった一人を思い、その一人のために全てを捧げるって素晴らしいことだと思わないか?」
「はあ?」
文弘はくるりと振り向き、優に言う。
「そんなもん、俺からすりゃあたった二文字だよ」
「二文字?」
「醜い行いと書いて醜行」
じゃ、と文弘は帰っていった。
杜和泉には、もう『S教』についての騒ぎは収まり、誰も事件について話さなかった。
文弘は変わらず、犯罪学者として大学で講義をしたり、事件の捜査に関わったりしている。
一は文弘の助手として、メモを取ったり、一緒に推理をしていた。
ある日、文弘はいつものように仕事を終え、優のいる牢屋に向かった。
優は重罪のため、他の牢屋とは別のところにいた。
文弘が訪れると、優は笑って文弘を見る。
「やあ、川中さん」
「どうも、佐々塚さん。元気?」
「まあまあかな。川中さんは?」
「仕事がたくさんあって元気だよ」
「君は仕事が好きだね」
「この仕事は俺を知るために必要だから」
「君のことなら僕が知ってる。早く僕のところに来てよ」
「断るよ。それはね」
文弘が笑うと、優は少しドキッとして言う。
「こんなにも魅力的だから、僕は君を独占したくなる」
「そんなこと言うのはあんただけだよ」
「そうかな」
「そうだよ」
さて、と文弘は優に一枚の紙を渡す。
「取引のようなものの話だ」
「何?」
「近頃、杜和泉の教会で連続殺人事件が起きている」
「やっぱり起きたか」
「そう。数ヵ月前、あんたが話した通りになった。他に知ってる情報があるなら教えてほしい。その代わり、協力してくれた、ということで刑を少し軽くできる。悪くないだろ?」
「うん。良いけど、話すなら川中さんだけに話す。そして、川中さんだけが知ってる情報ということね。他には言わないでほしい」
「…………」
「それが嫌ならこの件はパス。僕はもう語らないよ」
どうする? と、優は文弘に問いかけた。
文弘は少し考える。
情報があれば被害は少なく済む。
しかし、それは自分だけ。
どんなに近しくても他人に話せない。
――今更秘密が増えたとて。
文弘はそう思い、優に「わかったよ」と言う。
「約束は守れよ?」
「守るよ。僕は文弘とのはね」
「…………じゃあ、今日はこれだけ。また用があったら来る」
「うん。待ってる」
「あのさ、佐々塚さん」
文弘は優に訊く。
「どこから情報を仕入れているんだ?」
「それは秘密。文弘が僕のところに来てくれたら話すよ」
「じゃあいい」
「頑なだなあ」
「うるさい」
文弘はイラッとし、優に背を向けて帰ろうとする。
それを優が少し止める。
「なあ、一つ聞いて良いかい?」
「何」
「たった一人を思い、その一人のために全てを捧げるって素晴らしいことだと思わないか?」
「はあ?」
文弘はくるりと振り向き、優に言う。
「そんなもん、俺からすりゃあたった二文字だよ」
「二文字?」
「醜い行いと書いて醜行」
じゃ、と文弘は帰っていった。
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