廃愛の塔

春血暫

文字の大きさ
上 下
33 / 58
鳥のうた

【 】

しおりを挟む
 それにしても、やられたな。
 してやられた、ていう気持ちが大きい。

「ったく、愁哉は」

「ん? 悠生、どうした?」

「あ、佑司ゆうじ。いやあ、愁哉にね、やられたよ」

「何? うちの社長、何かやらかしたの?」

「そう。井村夫婦に、子どもの縁を結んだんだよ。んで、見事に双子ちゃんがいるわけ」

「それはおめでたいな」

「おめでたいけど、大変なんだよ。お母さんの方はね、元々体力がないみたいだから、出産を無事終わらせるか」

「そこは、平気でしょ」

「そうかね。俺は不安だよ」

 もしものことがあったら、どうするんだよ。

 全く、神様というのは、いつまでも。

「いつまでたっても、気まぐれで色々するから」

「まあまあ、それを楽しもうじゃないか」

「佑司、お前はどうしてそこまで楽観的なんだよ」

 俺も、まあまあそうだけどさ。
 お前の方が、すごい。

 と、伝えると。
 佑司は笑いながら「当たり前じゃん」と言う。

「俺も、なんだかんだでさ、うまくいっているからね」

「まあ、そうだね」

「うん。とりあえず、俺らは見守ろうぜ」

「そうだね」

 俺らは見守るか。

――なんか、嫌な予感はするけど。

 あまり気にしていたら、仕方がないし。

 佑司にならって、楽観的にいこう。
しおりを挟む

処理中です...