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第五十話 葛の葉からの手紙

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宗桂のおっさんは王子稲荷神社の宮司を訪ねた。
「はじめまして、私は宗桂という者です。先代の宮司の吉川様にお世話になった者です。
また、こちらは先代から預かった早月です」
「これは宗桂殿、先代から草月の経緯は聞いております。
私は先代の吉川の後を継いで、ここの宮司をしている土御門です。
吉川とは遠縁にあたるものです。以前占いをしておりましたが、縁があり吉川の後、ここの宮司をしております」
土御門は、令和では吉川という苗字の早月を見た。
「確か先代から聞いているのは今なら早月様は一六歳くらいと聞いていましたが、立派になられましたな。
もう少し若いと思っておりましたが今の早月様は二十歳を過ぎていると見えてしまいますな。
宗桂殿、立派に育てていただき、先代にかわりお礼申し上げます」

老け顔に見えるということか、俺は。女装するしかないか。
「いや、私は何もしていませんよ。妻が立派に育ててくれたのです。
そう言えば、葛の葉、私の妻になった女ですが、何か先代から聞いておられますか」
「はい。私の親戚の恥をさらすようですが、私の母の従妹ですが、その女は家族の反対を押し切って、遠江の金谷地区で百姓の男と結婚しておりました。
宗桂殿には申し訳ないのですが、その女は娘を二人生んだそうです。その内の一人が雷に打たれてから天啓を得たと称して妄言を話すようになり、金谷では居られないようになったということで、私の母に従妹が悩みを持ち掛けたのです。
そこで別の遠縁で、江戸で吉川という名前で宮司をしている者がいるということで、その吉川に妄言を話す娘を託すことになったのです。
それが葛の葉です。
ちなみにもう一人の娘はとある凄い大名の妻になったと聞いております。
私も母と一緒に吉川のもとで暮らす葛の葉を何回か見たことがあります。
葛の葉は普通に黙っていると瞳が大きな聡明そうに見える美人です。
そこのお子さんに雰囲気はよく似ていますよ。男性ですが」
宮司の土御門は、宗古を指さした。

「そう言えば、葛の葉は今から十六年前と昨年にここに来て何やら祈願しておりました。私と世間話をしました。葛の葉が言ったのは
十六年前も昨年も同じようなことを言っていたのを思い出しました。
『宗桂さんは優しくて情熱的で本当に夫婦になって幸せだ。
何よりも私の言うことをすべて信じてくれる。
私には使命がある。夫は何も言わず無条件で理解をしてくれる。
愛する夫のために私はその使命を必ず達成しなければいけない。
遠い所に行ったり来たりしないといけないし、
夫と子供を一時的に辛い気持ちにさせるかもしれない。
しかしそれも使命の一つ。
私は使命を達成して必ず家族を幸せにする』
という感じの言葉を二回聞きました」

珍しく宗桂のおっさんが泣いている。
宗古も目を潤ませて吉川に抱きついてきた。
「今年になってからは来ていませんか」
「昨年会ったきりです。
それから宗桂殿、二回目に葛の葉に会ったときに、
もし娘が来たらこの手紙を渡してほしいと言われました。
どうやら息子さんしかいないようですが」

宗古は男装を続けていたがさらしを取り顔も男装化粧を洗い流した。瞳が大きな聡明そうに見える美少女が登場した。
胸元もふくよかで弾力のある膨らみだ。

「まさか、あなたは葛の葉の娘ですか」
宮司が仰天した。

宮司から渡された手紙にはこう書かれていた。
『江戸城大火で失われた月の能面は神の使いが導く。伏見と王子を結ぶ真ん中に月が現れる。
伏見と王子の真ん中は遠江。
月を持つ伏見の女と王子の男が合わさるとき、大晦日の夜に伏見から王子への扉が開かれる。
そして新たな王が誕生する』

もう一枚にはこう書かれていた。
『愛する娘へ
私は雷に打たれたときに、天からこの謎のような文面の啓示を受けました。
あなたなら必ずこの謎が解けるはず。
なお、スマホの雪月花アプリは私が作ったものです。
これも啓示を受け令和の時にタイピングしたらこのアプリが出来ました。
私の母は二人の娘を生みました。一人は今では茶阿局という名です。
母は安倍晴明の血を引いた者らしいです。
ある時代に歴史が歪んだため、あなたが知っている世界は異なる世界になりそうです。そうなれば世界は令和に戦争で破滅します。
私は私の使命を達成して元通りの世界を取り戻すつもりですが、謎を解く使命は娘に託すしかありません。
辛い思いをさせるかもしれませんが、どうか最初の手紙の六行の謎を解いてください。
そして愛する夫を将棋の一世名人にしてください。そして令和から世界の破滅を救ってください。
月が小面に。                       葛の葉』

宗古と俺の使命は、おっさんを名人にすることか。
最後の『月が小面に』がわからないが。
世界の破滅を救うのか、このおっさんが名人になれば。
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