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お荷物球団

GMと監督のミーティング

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来賓席でGMと監督が、今後の事について話し合っている。

そう言えば聞こえはいいが、グダグダな話ばかりだ。



「大体よぉ、スカイウォーカーズなんて、名前が良くねぇよ!もっと、闘争心掻き立てるような名前にしなきゃダメだろ!」


「それは、ファンからの公募で決めた名前ですから」

「そんなの、随分前の話だろ?静岡からこっち(武蔵野)に来てから、ずっと最下位じゃんかよ。この名前が良くないんだ、そうに決まってるって!」


ムチャクチャな意見だ…



「じゃあ、榊さんが付けるとしたら、どんなチーム名にしますか?」


「オレか?オレだったら、【TOKIOボンバヘッ】なんてどうだ?」


「…榊さん、ネーミングセンス0ですね」


「何でだよ!いいじゃん、TOKIOボンバヘッ。何がダメなんだよ?」


「だって、TOKIOはまだ解りますが、ボンバヘッって、何ですかそれは?」


全くだ、この男の考えてる事はサッパリ解らない…


「ボンバヘッは、ボンバーヘッドを縮めた言葉だよ」


高梨は目眩がした。


こうなったら、自分が監督やるしかないか、と思った。



「チーム名はともかく、今やらなきゃならないのは、如何にしてチームが勝つか、それですよ」


「何だかめんどくせえな、監督業って。…あれ、ここ灰皿無いの?」

榊はウインドブレーカーのポケットからタバコを取り出した。


「申し訳ありません。球場内は禁煙でして」


「ウソっ!だって、オレ監督室で吸ってるぞ」


「えーっ!!ダメですよ、禁煙なんですから!」


「いいじゃねぇかよ、ケチケチすんなって」


(全く、現役時代と変わらず傍若無人な人だな…)


これでも球界の先輩な故、逆らう事は出来ない。


こんなパイセンは、甚だ迷惑だ(汗)


「私に考えがあるのですが」

高梨は話題を変えようとした。


「ん?考えって、何?」

「今から選手の補強は難しいでしょう。ですが、首脳陣の補強なら、難しくはないかと思うんですけど」


「ちょっ、ちょっと待てよ!まさか、オレをクビにするのかよっ!」

榊は狼狽えた。


「榊さんは3年契約ですから、解任というワケにはいきません。要はコーチ陣の入れ替えです」


コーチを入れ替える…それは何を意味するのか?


「コーチったって、そんな良いコーチがいるかよ?」


「確かに、現時点では優秀なコーチを見つけるのは難しいでしょう。ですから、我々の目で見てコーチに相応しい人物を見つけるのです」


今からコーチを探すというのか。


「探すって言ってもなぁ…そういや、オレたちが現役の頃は、ヤマオカのとっつぁんや、佐久間のオヤジという、有能な上司がいたよなぁ」



榊が現役の頃、ナダウ・ヤマオカ監督と佐久間 義一(さくまよしかず)ヘッドコーチの布陣でピストルズ黄金期を築いた。


トップバッターで、走攻守三拍子揃ったショートストップの大和俊次。

天才と呼ばれ、数々の打撃タイトルを総ナメにした安打製造機、櫻井大翔。


現役メジャーリーガーで、パワフルなプレイが売り物だったウェイン・トーマスJr.


速球を武器に、榊と左右のエースとして活躍した高峰 圭右(たかみねけいすけ)

日本初の女子選手としてナックルボールを操り、中継ぎエースに君臨した希崎 舞(きざきまい)

そして、榊と高梨。



スタープレイヤー達が投げて打って走る。


あの頃の興奮を、もう一度味わいたい…

今度は指導者として、栄冠に輝いてみたい…

これは夢物語なのだろうか。






「榊さん…我々はあのチームで、選手時代に優勝を経験しました。今度はあのチームが首脳陣となって、優勝を経験しましょう!」


高梨の顔は自信に満ち溢れていた。


「あのチームって…もしかして、アイツらをコーチにしようってのか?」


高梨は無言で頷いた。


静岡ピストルズのチームメイトを、コーチで迎えようとしている。

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