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トレード
柔らかく強靭なリスト
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どうやら鬼束はここ最近、スタメンを外される事が多い。
不調でもないのに、何故主砲を外すのか。
鬼束は干されていた。
外野へコンバートする事を拒否した為、首脳陣への造反行為と見なされ懲罰的な意味でスタメン落ちしている。
ヘッドコーチの中田は鬼束を庇うが、監督や他のコーチ連中は鬼束と対立している。
かつては名手としてピストルズのセカンドを担った中田は、鬼束のセカンドとしての守備力は決して悪くないと見ている。
寧ろ、守備力はかなり良いと評価する。
鬼束と共に二遊間を守る、ショートの末吉との連携が上手くいかないだけだ。
中田の目から見ると、鬼束よりも末吉の方がお粗末に感じる。
しかし、監督達はその事を理解していない。
中田が進言するが、一向に埒があかない。
(これじゃ、鬼束が可哀想だ)
見かねた中田が、榊にトレードの話を持ち込んだ。
新天地を求めている鬼束にとって、スカイウォーカーズ移籍は吉となるか。
試合は一回の裏、先頭の梁屋が打席に入る。
先発のシャムロックは余裕の笑みを浮かべる。
スカイウォーカーズなど眼中に無いという感じか。
シャムロックが初球を投げた。
出だしからエンジン全開の155kmをマークするも、僅かに外れてボール。
首を傾げるシャムロック。
続けて二球目。今度はスラーブを外角に。
カーブのような軌道で鋭く曲がる変化球なのだが、カーブと言えばカーブ、スライダーと言えばスライダーになるのだが、変化球の線引きは非常に曖昧だ。
梁屋はバットを出さずカウントはワンボール、ワンストライク。
三球目はツーシームを内角に。
これが逸れて梁屋の足元へ。
梁屋は飛び上がって避けた。
今日もシャムロックの球は荒れている。
結局、梁屋はフォアボールで出塁。
唐澤とのタイマン勝負を制し、代わりにスタメン出場した畑中がバッターボックスに入る。
左の天才が唐澤なら、右の天才は畑中だ。
しかもマウンド上は左のシャムロック。
理にかなってると言えばそうなのだが、アキレス腱に爆弾を抱えてる畑中には守備への負担が気になるところ。
シャムロックが初球を投げた。
今度は152kmのフォーシームが高目に外れる。
「ボール!」
カウントはワンボール。
「こりゃ、荒れてるなぁ~。おい、ガイジンさん!頼むからぶつけないでくれよなぁ!」
どんな状況でも物怖じしない、強心臓の持ち主だ。
二球目はチェンジアップ。
これも外れてツーボール。
「この様子じゃ、バット振る必要も無いな」
飄々とした表情で小刻みに身体全体でリズムをとる。
落ち着きの無い構えだが、これでタイミングを取り打球を真芯で捕らえる。
インパクトの瞬間は力強く、流れるようなフォームでボールをバットに乗せてスタンドに運ぶ。
卓越した技術が無いと出来ない芸当だ。
三球目は得意のスラーブがインコースやや内よりに決まりワンストライク。
「あちゃ~っ、今の振れば良かったなぁ!」
(ったく、いちいちうるさい人だなホントに…)
キャッチャーの山田が【うぜえ】という感じで畑中を見る。
シャムロックがサインに頷き四球目を投げた。
もう一度スラーブを、今度はアウトコースからギリギリに入るコースへ。
「ストライクツー!」
フルカウントになった。
「さてと…それじゃ打つかな」
そう言うと、小刻みに動かしていた身体を止めてバットを上段に構えた。
(そんな上にバットを構えて、どうやって打つんだよ)
山田はアウトローのストレートを要求した。
シャムロックが五球目を投げた。
スピードの乗ったキレのある球がアウトローに。
しかも上段に構えているので、バットの出だしが遅れて打ってもファールになってしまう。
すると、畑中は物凄い速さのスイングでボールを捕らえた。
強靭で尚且つ柔らかいリストでバットに乗せ、ボールを上手く運んだ。
快音と共に打球は右中間へ伸びる。
ライトが懸命にバックするが、高く上がった弾道は美しい放物線を描いて、スタンド最前列へ吸い込まれた。
「おぉ、よく飛んだなぁ」
畑中の先制ツーランが飛び出した。
武蔵野ボールパークは歓声に包まれ、悠々とベースを回る。
それにしても、わざと上段に構えて低めギリギリのボールを捕らえるとは、天才の成せる技というべきか。
唐澤が自然体から流れるようなフォームでボールを捕らえるなら、畑中は腰の回転と柔らかく強靭なリストで、ボールをバットに乗せて運ぶ技術を持つ。
この2人が常にスタメンで名を連ねていたら、相手ピッチャーはどう打ち取ればいいのやら。
畑中は今ホームイン。
スカイウォーカーズが2点先制した。
不調でもないのに、何故主砲を外すのか。
鬼束は干されていた。
外野へコンバートする事を拒否した為、首脳陣への造反行為と見なされ懲罰的な意味でスタメン落ちしている。
ヘッドコーチの中田は鬼束を庇うが、監督や他のコーチ連中は鬼束と対立している。
かつては名手としてピストルズのセカンドを担った中田は、鬼束のセカンドとしての守備力は決して悪くないと見ている。
寧ろ、守備力はかなり良いと評価する。
鬼束と共に二遊間を守る、ショートの末吉との連携が上手くいかないだけだ。
中田の目から見ると、鬼束よりも末吉の方がお粗末に感じる。
しかし、監督達はその事を理解していない。
中田が進言するが、一向に埒があかない。
(これじゃ、鬼束が可哀想だ)
見かねた中田が、榊にトレードの話を持ち込んだ。
新天地を求めている鬼束にとって、スカイウォーカーズ移籍は吉となるか。
試合は一回の裏、先頭の梁屋が打席に入る。
先発のシャムロックは余裕の笑みを浮かべる。
スカイウォーカーズなど眼中に無いという感じか。
シャムロックが初球を投げた。
出だしからエンジン全開の155kmをマークするも、僅かに外れてボール。
首を傾げるシャムロック。
続けて二球目。今度はスラーブを外角に。
カーブのような軌道で鋭く曲がる変化球なのだが、カーブと言えばカーブ、スライダーと言えばスライダーになるのだが、変化球の線引きは非常に曖昧だ。
梁屋はバットを出さずカウントはワンボール、ワンストライク。
三球目はツーシームを内角に。
これが逸れて梁屋の足元へ。
梁屋は飛び上がって避けた。
今日もシャムロックの球は荒れている。
結局、梁屋はフォアボールで出塁。
唐澤とのタイマン勝負を制し、代わりにスタメン出場した畑中がバッターボックスに入る。
左の天才が唐澤なら、右の天才は畑中だ。
しかもマウンド上は左のシャムロック。
理にかなってると言えばそうなのだが、アキレス腱に爆弾を抱えてる畑中には守備への負担が気になるところ。
シャムロックが初球を投げた。
今度は152kmのフォーシームが高目に外れる。
「ボール!」
カウントはワンボール。
「こりゃ、荒れてるなぁ~。おい、ガイジンさん!頼むからぶつけないでくれよなぁ!」
どんな状況でも物怖じしない、強心臓の持ち主だ。
二球目はチェンジアップ。
これも外れてツーボール。
「この様子じゃ、バット振る必要も無いな」
飄々とした表情で小刻みに身体全体でリズムをとる。
落ち着きの無い構えだが、これでタイミングを取り打球を真芯で捕らえる。
インパクトの瞬間は力強く、流れるようなフォームでボールをバットに乗せてスタンドに運ぶ。
卓越した技術が無いと出来ない芸当だ。
三球目は得意のスラーブがインコースやや内よりに決まりワンストライク。
「あちゃ~っ、今の振れば良かったなぁ!」
(ったく、いちいちうるさい人だなホントに…)
キャッチャーの山田が【うぜえ】という感じで畑中を見る。
シャムロックがサインに頷き四球目を投げた。
もう一度スラーブを、今度はアウトコースからギリギリに入るコースへ。
「ストライクツー!」
フルカウントになった。
「さてと…それじゃ打つかな」
そう言うと、小刻みに動かしていた身体を止めてバットを上段に構えた。
(そんな上にバットを構えて、どうやって打つんだよ)
山田はアウトローのストレートを要求した。
シャムロックが五球目を投げた。
スピードの乗ったキレのある球がアウトローに。
しかも上段に構えているので、バットの出だしが遅れて打ってもファールになってしまう。
すると、畑中は物凄い速さのスイングでボールを捕らえた。
強靭で尚且つ柔らかいリストでバットに乗せ、ボールを上手く運んだ。
快音と共に打球は右中間へ伸びる。
ライトが懸命にバックするが、高く上がった弾道は美しい放物線を描いて、スタンド最前列へ吸い込まれた。
「おぉ、よく飛んだなぁ」
畑中の先制ツーランが飛び出した。
武蔵野ボールパークは歓声に包まれ、悠々とベースを回る。
それにしても、わざと上段に構えて低めギリギリのボールを捕らえるとは、天才の成せる技というべきか。
唐澤が自然体から流れるようなフォームでボールを捕らえるなら、畑中は腰の回転と柔らかく強靭なリストで、ボールをバットに乗せて運ぶ技術を持つ。
この2人が常にスタメンで名を連ねていたら、相手ピッチャーはどう打ち取ればいいのやら。
畑中は今ホームイン。
スカイウォーカーズが2点先制した。
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