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シーズン中盤

三者凡退

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「おい、さっきから何ウダウダ考えてんねん!はよ、サイン出さんかい!」

マウンド上で天海が吠える。


「やかましいわぃ!だったら、お前がサイン出さんかい!」


この二人バッテリーを組んでるが、実は犬猿の仲で球界ではかなり有名だ。


互いに気の強い者同士、しかも自己主張の激しい二人となれば配球にも影響が出る。


「いいから、さっさと投げて下さいよセンパイ」


櫻井はバットをマウンドに向けて挑発する。


「何やと、このクソガキ!」

おまけに天海はかなり気が短い。


まるで現役時代の榊みたいだ。


「うーん、あの天海ってヤツは、何故か他人じゃないような気がするんだが…」


それは榊も感じていた。


右と左の違いはあるが、気の強い性格とマウンド度胸はクリソツだ。


「アイツは今年FA取得するんだろ?もしFAしたら、ウチに来てくんないかなぁ」


「いや、それは無いでしょう」


「何でだよ?アイツがウチに来てくれたら、ぶっちぎりで優勝出来るぜ」


「ドルフィンズは天海を引き留める為に、複数年契約を結ぶつもりですよ」


「複数年契約だと!じゃあ、バカオーナーに10億ぐらい出してもらって、コッチ来いって言えば来るんじゃないのか?」


「それはFA宣言してからの話でしょ!FA宣言する前にそんな事言ったら、ルール違反で罰せられますよ!」

「ウソっ!そんなルールあるのかよっ!」


ベンチではコーチが榊にFAルールの詳細を説明している。


ここまで無知な監督はいないだろう…



「おい天海!はよ投げんかい!」


「そうですよ、こっちは待ちくたびれてるんだから」



「あぁ~っ、腹立つなホンマに!」


これでも一応球界を代表するエースだ。




気を取り直し、今度は天海がサインを出す。

そして六球目を投げた。


アウトローへバレットが勢いよく飛んでくる。


櫻井はこのコースを読んでいたかのようにアジャストした。


「ゲッ!打ち返しよった!」


打球はグーンとライトへ。


「なんちゅうヤツや…まさかアウトローのストレートを引っ張ってライトに打つとは…」

天海の160kmのアウトローを引っ張るなんて、並大抵の事じゃ出来ない。

力と技の両方を兼ね備えてないと打ち返す事など不可能だ。


ライトを守る中西がフェンスギリギリまでバック。

すると、フェンス手前で打球は失速。

中西がキャッチした。


「アウト!」


奈良鹿の公園スタジアムはホームランの出にくい球場だ。

外野スタンドから逆風が吹く事が多く、それがホームラン性の当たりを押し戻している。


まさしく投手有利の球場だ。




天海は3番中山を三振に打ち取り、スカイウォーカーズの攻撃は終了。


一回の裏ドルフィンズの攻撃。

一番スイッチヒッターの伊藤が打席に入る。

マウンド上はサウスポーの加勢。

初球を投げた。

ツーシームが外れてボール。


二球目はインコースに食い込むストレート。

これが僅かに外れてツーボール。


三球目はカーブ。

伊藤はバットを振るが、打球は一塁線に切れてファール。


四球目は外角にストレートを投げるが、コースを外れてスリーボール。


カウントはスリーボール、ワンストライク。


五球目を投げた。

インコースの膝元へ食い込む真っスラ。

伊藤はこれを見送る。

フルカウントからの六球目、真ん中低めから落ちるフォークボール。

伊藤は手を出すが、セカンドゴロ。

鬼束が難なく捌いてワンナウト。


アウトにはなったが、六球も粘られるとは若干の不安が残るピッチングだ。

続いて2番の市原が左打席に入る。


初球は真ん中低めに決まるツーシーム。


テンポ良く二球目を投げた。

今度はアウトコースの低めに決まるツーシーム。

これでツーストライク。


三球目、インコース低めへ真っスラ。


市原はこれに手を出し、サードゴロでツーアウト。


そして3番の助っ人外国人アンソニー・ジョンソン。

今年加入したメジャー通算120本の本塁打を持つ右バッターだ。


加勢の初球は外角低めに決まるカーブでワンストライク。

二球目を投げた。

真ん中低めのツーシーム。


ジョンソンこれに手を出すが、バックネットに当たるファール。

これでツーストライク。


三球目は膝元のクロスファイヤーボール。


低いと思ったのかジョンソンは見送るが、これがギリギリに入って三球三振。


ジョンソンは抗議をするが、僅かに入ってる。

回転数の高いキレのあるストレートは球速が130km台でもノビがある為、体感速度は実際のスピードよりも速く感じる。


一回の裏ドルフィンズの攻撃は三者凡退に終わる。

二回の表、スカイウォーカーズの攻撃は4番の鬼束からだ。
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