32 / 134
カラクリを暴け
広報 真野彩香
しおりを挟む
珍太朗不在のピストルズは、本拠地の静岡富士フィールドで東北テクノブレイクとの三連戦をスウィープ(全勝)し、勝率を5割に戻した。
投打のバランスが噛み合い、ようやくエンジンがかかってきたようだ。
スポーツ紙では、【ヤマオカ監督不在のエンペラーズ三連戦】または【坂本代理監督の采配ズバリ的中】等とヤマオカ監督休養が長引くような記事を載せていた。
4番のトーマスJr.は2試合連続ホームランを打ち、調子が上向いてきたようだ。
チーム内は、櫻井がタブレット片手に翻訳アプリを使いながら、トーマスJr.と片言の英語でやり取りしている。
トーマスJr.もそんな櫻井を気に入り、片言の日本語でコミュニケーションを取り、和気あいあいとした風景が見られた。
問題児と言われたトーマスJr.だが、敬意をもって接すれば、彼もそれなりの対応をする。
櫻井だけじゃなく、若手もトーマスJr.を慕い、トーマスJr.も時には身ぶり手振りで、若手にアドバイスを送り、まるでコーチのような存在になりつつあった。
トーマスJr.は思った。
日本の野球も捨てたもんじゃない、と。
そして自分がアドバイスをして、選手がそれを素直に実行してくれる。
こういうのも悪くないな…と。
オープン戦当初に比べると、随分笑顔が増えてきた。
一週間の休養宣言をした、ナダウ・ヤマオカこと、宇棚 珍太朗は、四国に滞在したまま、モンスタードームのカラクリを見破るべき、アメリカ時代に知り合ったエージェント達と共に作戦を遂行しようとしていた。
珍太朗は、ひろしが出会い系で女性からのメールを受け取り、一目散に待ち合わせの場所に向かったのを確認してから、ホテルへ戻った。
後はエージェント達からの連絡を待つのみ。
しばらくして、珍太朗のスマホから着信があった。
2言、3言話すと、珍太朗はホテルを出て、ある場所に向かった。
向かった先は、モンスタードームの側にある、個室で仕切られた居酒屋である。
そこにはエージェント数名と、1人の女性が待っていた。
「すまなかった、変な役を押しつけて」
珍太朗は女性に頭を下げた。
「いいえ、とんでもない。これでお役に立てるなら」
真野 彩香(まの あやか)
土佐モンスターズの球団広報で現在28才。語学留学の経験もあり、英会話堪能の才色兼備である。
「で、さっきまでアイツと会っていたんだって?」
「監督さんのご子息でしたよね、ウチのGMって?でも、何であんなおかしな人なんだろ。オマケに、自分の球団広報の顔も知らないなんてw」
そう、桜と名乗るサイトの女性の正体は、彩香だった。
「しかし、君の球団を追い詰めるようになるんだが、ホントに大丈夫なのかい?」
彩香に再度確認した。
「問題ありません。あの球団は一度、どん底を味わうべきですから」
かなり辛辣な言葉だ。
彩香は球団広報という肩書きだが、実際はモンスターズオーナー、結野の私用に振り回される被害者の1人だった。
セクハラは当たり前、関係を迫られた事も度々あった。
公に発表しようとも思ったが、他の球団職員の行く末を考慮して我慢していた。
珍太朗と接点を持つきっかけとなったのは、珍太朗がナダウ・ヤマオカに扮し、監督に就任した間もない頃だった。
モンスタードームで試合前の練習に彼女から声を掛けてきた。
「あの、失礼ですけど。宇棚 珍太朗さんではないですか?」
これには驚いた。
宇棚 珍太朗と見破った人物は彼女だけである。
彼女の父親が熱狂的なギャランドゥファンで、宇棚 珍太朗のグッズコレクターでもあった。
幼い頃から父親の影響で、宇棚 珍太朗に関する事なら何でも解るようになり、ナダウ・ヤマオカを宇棚 珍太朗と見破る事など容易かった。
投打のバランスが噛み合い、ようやくエンジンがかかってきたようだ。
スポーツ紙では、【ヤマオカ監督不在のエンペラーズ三連戦】または【坂本代理監督の采配ズバリ的中】等とヤマオカ監督休養が長引くような記事を載せていた。
4番のトーマスJr.は2試合連続ホームランを打ち、調子が上向いてきたようだ。
チーム内は、櫻井がタブレット片手に翻訳アプリを使いながら、トーマスJr.と片言の英語でやり取りしている。
トーマスJr.もそんな櫻井を気に入り、片言の日本語でコミュニケーションを取り、和気あいあいとした風景が見られた。
問題児と言われたトーマスJr.だが、敬意をもって接すれば、彼もそれなりの対応をする。
櫻井だけじゃなく、若手もトーマスJr.を慕い、トーマスJr.も時には身ぶり手振りで、若手にアドバイスを送り、まるでコーチのような存在になりつつあった。
トーマスJr.は思った。
日本の野球も捨てたもんじゃない、と。
そして自分がアドバイスをして、選手がそれを素直に実行してくれる。
こういうのも悪くないな…と。
オープン戦当初に比べると、随分笑顔が増えてきた。
一週間の休養宣言をした、ナダウ・ヤマオカこと、宇棚 珍太朗は、四国に滞在したまま、モンスタードームのカラクリを見破るべき、アメリカ時代に知り合ったエージェント達と共に作戦を遂行しようとしていた。
珍太朗は、ひろしが出会い系で女性からのメールを受け取り、一目散に待ち合わせの場所に向かったのを確認してから、ホテルへ戻った。
後はエージェント達からの連絡を待つのみ。
しばらくして、珍太朗のスマホから着信があった。
2言、3言話すと、珍太朗はホテルを出て、ある場所に向かった。
向かった先は、モンスタードームの側にある、個室で仕切られた居酒屋である。
そこにはエージェント数名と、1人の女性が待っていた。
「すまなかった、変な役を押しつけて」
珍太朗は女性に頭を下げた。
「いいえ、とんでもない。これでお役に立てるなら」
真野 彩香(まの あやか)
土佐モンスターズの球団広報で現在28才。語学留学の経験もあり、英会話堪能の才色兼備である。
「で、さっきまでアイツと会っていたんだって?」
「監督さんのご子息でしたよね、ウチのGMって?でも、何であんなおかしな人なんだろ。オマケに、自分の球団広報の顔も知らないなんてw」
そう、桜と名乗るサイトの女性の正体は、彩香だった。
「しかし、君の球団を追い詰めるようになるんだが、ホントに大丈夫なのかい?」
彩香に再度確認した。
「問題ありません。あの球団は一度、どん底を味わうべきですから」
かなり辛辣な言葉だ。
彩香は球団広報という肩書きだが、実際はモンスターズオーナー、結野の私用に振り回される被害者の1人だった。
セクハラは当たり前、関係を迫られた事も度々あった。
公に発表しようとも思ったが、他の球団職員の行く末を考慮して我慢していた。
珍太朗と接点を持つきっかけとなったのは、珍太朗がナダウ・ヤマオカに扮し、監督に就任した間もない頃だった。
モンスタードームで試合前の練習に彼女から声を掛けてきた。
「あの、失礼ですけど。宇棚 珍太朗さんではないですか?」
これには驚いた。
宇棚 珍太朗と見破った人物は彼女だけである。
彼女の父親が熱狂的なギャランドゥファンで、宇棚 珍太朗のグッズコレクターでもあった。
幼い頃から父親の影響で、宇棚 珍太朗に関する事なら何でも解るようになり、ナダウ・ヤマオカを宇棚 珍太朗と見破る事など容易かった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる