Baseball Love 主砲の一振り

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優勝争い

榊の挑発

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一回の裏、ピストルズの攻撃は三者凡退に終わる。

そして二回の表、バッターは4番八幡からだ。

「オイオイ八幡ぁ！オメーも、不良グループの仲間入りか、えぇ？」

マウンド上で、榊が口撃する。

八幡は、榊の挑発には乗らない。

初球胸元を突く、ストレートを投げる。

「ボール！」

榊は遠慮なく、相手の胸元に投げる度胸がある。

「どうした、八幡クン。打ってみろよ、おいっ！」

榊の口撃は止まらない。

二球目、これも内角をえぐるスライダー。

「ストライク！」

榊は更にギアを上げていく。

三球目は、インコース低めに決まるツーシーム。
八幡は思わず、バットを途中で止めた。

「ストライク！」

ツーストライクと追い込まれた。

「よぉ！突っ立ってねぇで、打ってみろや、でくの坊！」

「やかましい！黙って投げろや、オイッ！」

八幡もつい、榊の挑発に乗ってしまう。

人をおちょくる事にかけては、右に出る者はいない。

（ドアホが！挑発させて、緩い球放ってくるんやろが！お前の魂胆は、見え見えや！）

八幡はカッカさせて、最後はスローカーブを投げて、空振りをさせようと思ってるに違いないと、読んだ。

そして、四球目を投げた。

「なにっ！」

インコース、膝元にズバッと決まる榊の決め球、クロスファイヤボールだ。

「ストライクアウト！」

完全に裏をかかれた八幡は、見逃しの三振を喫した。

榊は、ヘンダーソンだの何だのと、そんなヤツはどうでもいい！
八幡と守山さえ抑えりゃ、負ける事はないと読んでいた。

続いて5番の守山が打席に入る。

「おい、番長！オメー、4番をあの新顔に獲られたのかよ？あんなのが4番じゃ、5番も大したことねぇな」

守山にも口撃する。

「んだ、テメー！ケンカ売ってんのか、おいっ！」

「ボス猿が主役の座を奪われたら、引退しかねぇぞ、オイッ！」

「あぁ？バーチーの文句は、オレに言え！！」

榊はシカトして、初球スローカーブを投げた。

「ストライク！」

「お前、他に言う事ねぇのかよ？なぁにが、バーチーだ？オメーはバーチーじゃなく、茨城に逆戻りしてろや！」

この挑発で、守山は完全に我を見失った。

「ブッ殺す！！」

こうなると、完全に榊のペースだ。

榊はストライクゾーンに投げる必要もない。

際どいボール球を投げるだけだった。

榊の術中にハマり、守山はボール球を打たされ、ショートゴロで凡退に終わった。

しかし榊も、八幡、守山と立て続けに対戦するのは、かなりの神経を労する。

それを悟られないよう、ビッグマウスで心理的有利に立ったのだ。

榊はこの後も快投を続け、五回の裏は自らタイムリーを放ち、先制。

七回には櫻井のタイムリースリーベースヒットと、トーマスJr.の31号ツーランで、勝負を決めた。

首位攻防戦の第1ラウンドは、エンペラーズが6対0の完封勝利を納めた。

榊はこれで14勝目、防御率を1.73とした。

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