The Baseball 主砲の一振り 続編1

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ストーブリーグ

来季へ向けて

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両リーグのMVPと新人王が発表された。


アポロリーグでは首位打者に輝き、マシンガンズ初優勝に貢献した比嘉が。

ネプチューンリーグではスカイウォーカーズのキャプテンとして全試合に出場。
首位打者、打点王、盗塁王と三冠を獲得した結城が選ばれた。


新人王はアポロリーグでは11勝6敗 防御率3.48の成績でマシンガンズの猪木が。

ネプチューンリーグではマーリンズの張が選ばれた。

張は打率0.288 ホームラン21 打点63


昨年の村上に続いてマーリンズが2年連続で新人王を獲得した。




ベストナインとゴールドグラブ賞ではスカイウォーカーズは結城と鬼束、唐澤が両方を受賞。

毒島はベストナインを、保坂はゴールドグラブ賞を、中山はゴールドグラブ賞、ラファエルはベストナインを受賞した。



更にスカイウォーカーズは右の中継ぎとして優勝に貢献した山本が引退を表明。


左のエースとして期待されたサンピエールはマイナーリーグからメジャーへ挑戦する事を表明。


球団も本人の意思を尊重して任意引退選手扱いで送り出した。





「どうするよ、これ?」


榊は浮かない顔をしている。


「仕方ないですよ。選手の意思を優先するしか無いでしょ」


GMの高梨はサバサバしている。


去るもの追わず…とは言え、打線ではラファエルと中山が抜け、投手ではサンピエールが抜けてジェイクは未だ保留中。


榊にはやる事が山ほどある。


先ずはジェイクの契約を延長する事。

次は梁屋を投手再転向させる事。


その次は…とにかく、やる事が多いのだ。



「ラファエルもゴリラも来年は居ないし、カズトとサンピエールはメジャー挑戦だなんて…」


「去る者がいれば、来る者もいます。
メジャーリーガーの財前も来るし、ドラフト1位の森高や2位の桐生が1年目から一軍に定着するようになれば、二連覇も夢じゃないですよ」


「そうは言うけどさ、コイツら未知数だろ?財前なんて、いくらメジャーでMVP獲ったからって、日本の野球は全くの未経験みたいなもんだろ?
ヒロトはコイツを獲ってワタルをクビにしろとか言ってんだぜ!
いくら何でも、それはねぇだろって」


榊としては、財前よりもケガから復帰した梁屋をライトに定着させたい。


「私もヒロトと同じ考えです。
財前は確かに日本の野球では未知数ですが、日本より過酷なメジャーで何シーズンも戦い抜いて首位打者やMVPを獲得したんです。
適応能力はかなりあると私は見ています」


「じゃあ、ワタルはどうすんだよ?ヒロトと口論になって、売り言葉に買い言葉でピッチャーに再転向させるなんて言ったけど、ホントはアイツを野手で使いたいんだよ」


「榊さん…梁屋を使いたい気持ちは分かりますよ。
でも、彼は野手としてはあれが限界なんですよ…
守備も良くて脚も速い。
だが、レギュラーとして使うにはチョット…」


高梨は言葉を濁した。


「分かってるよ、そんな事は!
…っ!待てよ、て言う事は投手と野手の二刀流にチャレンジすればいいじゃん!」


「えーっ!!二刀流っ!?」


高梨は素っ頓狂な声を上げた。


「そうだよ!アイツをリリーフにして、野手で守った後に終盤から投げるなんてどうよ?」


「負担掛かりすぎじゃないですか?」


無理だ!梁屋は小柄で瞬発力はあるが、スタミナ面に不安を残す。


「そりゃ、ワタルだってビックリするだろうけどさ、やってみる価値あるんじゃない?」



「…モノになるまでどのくらいの期間が掛かるか…
少なくとも、来年は難しいんじゃないですか?」



榊はニヤッと笑って人差し指を横に振った。


「甘いなぁ、高梨!ワタルはもう、ピッチングの練習をしてるんだよ。
しかも、オレがマンツーマンで教えてるんだよ」


「えっ、そうなんですか?」


「だってもう一度ピッチャーをやるとなったら、早い段階から始動しなきゃピッチャーの身体付きにはなれないぜ!
それに、アイツにはオレが現役時代に投げてたカーブを伝授してるんだ」


「あのカーブですかっ!」


高梨は現役時代を思い出した。


榊の投げるカーブは落差が大きく、バッターは次々と空振りをした。


同じチームだった為に対戦した事は無いが、あのカーブを打つのは至難の業だと思った。


「オレが投げてたカーブはフツーと少し違う投げ方をするから、モノになるまで時間が掛かるけど、マスターしたら翔田や天海よりも打てない存在になるぜぇ」


「なる程…榊さんが投げてたカーブをマスター出来れば、彼を起用する場面が増えてくる。
ネプチューンリーグは左バッターが多いし、寶井だけじゃなく梁屋も左キラーとして期待出来ますね」


「アイツを先発にすればサンピエールの穴埋めにもなるし、リリーフで使えば山本の後釜にだってなれる。
野手のユーティリティープレイヤーは沢山いるけど、投手のユーティリティープレイヤーってのは、滅多にお目にかかれないぜ」


投手としてのユーティリティープレイヤー…

つまり先発はもとより、中継ぎや抑えもこなすマルチピッチャー。


「でも…ちょっとハードル高すぎじゃないですか?」


「そりゃ、いきなりは無理に決まってるよ!少しづつ慣らしていって、行く行くはって事よ」



「ウーン…こればかりは何とも言えませんが、ピッチャーの事は私は専門外ですし、榊さんの方が熟知してますからお任せしますけどね」


ホントに大丈夫なのか?


この時点ではまだ半信半疑だった。
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