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退学届け

76th worst1

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松葉杖を使って歩くのは疲れる。

何より、思う様に歩けないのは辛い。

行く途中で波多野とバッタリ会った。

「小野っち、痛そう~!大丈夫なの?」

「あー、歩くのしんどい。波多野、肩貸して」

歩けるのだが、波多野に甘えてみたくなった。

波多野の肩を借りて喫茶店に着いた。

「ちょっと、小野っち!変なとこ触らないでよ!」

(え?変なとこって?)

僕は右手をダランと下げていたので、無意識に波多野の胸に触れていた事に気づかなかった。

 (デケェ!卒業してから、随分と成長したな!)

「あぁ、ワルいワルい。もうここまで来たから大丈夫。ありがとう」

腕を離した。

「小野っち、ホントに大丈夫なの?」

心配そうに覗きこむが、足以外は丈夫だから問題ない。

「あら、慶子ちゃんいらっしゃい!今日は彼氏を連れてきたの?あれ、アンタ前に何度か来たことあったよね?」

喫茶店の女主人は僕の事を覚えてたみたいだ。

「あー、はい。前に何度か来てます」

「小野くんよ。中学の同級生なの」

波多野が僕を紹介した。

「そう言えば、前にタバコ吸ってたわよね?ホントは、まだ吸っちゃいけない年なんだから!といっても、慶子ちゃんはたまにここでお酒飲むけどね、アハハハハハ!」

酒もタバコも同じじゃねえか!

ここでタバコを吸うのは控えよう。

「ミルクティとブレンドを。それと、オバサン!あのシュークリーム出して。ここはね、オバサンが作ったシュークリームがすごい美味しいの!小野っちも食べるでしょ?」

「シュークリーム?うん…」

シュークリームを追加した。

「あれ、今日はタバコ吸わないの?あっ、オバサンに言われたから、吸わないようにしてるんでしょ?大丈夫よ、ここで吸っても」

「いや、今日は大丈夫っす…」

タバコを吸う気分では無い。

「小野っち、いつまで学校休むの?」

ただでさえ休みが多いんだから、これ以上休んだら留年確定だ。

辞める事は言わないでおこう。

「歩けるようになったら学校に行くよ」

「ねえ、小野っち。2年に進級出来ないって聞いたけど、ホントなの?」

(はぁ?誰からそんな事聞いたんだ?)

「そこは問題ないよ。オレ、テストの点数がいいからさ」

勿論ウソだ。

中間テストの結果は、5教科合わせて76点だ…

これは、周りから散々ツッコまれた。

元々勉強なんてヤル気がない。


テスト用紙を見たが、内容が中学の頃の問題ばかりで回答する気にもなれない。

(何だこの問題は?中学の時の御復習いじゃないか、バカバカしい!)

テストをほぼ白紙の状態で提出した。


レベッカのアルバム【REBECCA IV ~Maybe Tomorrow~】がヒット、収録曲の『76th STAR』の歌詞をもじって、【76ht Worst1 Star】と呼ばれた。

…これも黒歴史だな。

でも、あのシュークリームは確かに美味かった。

もう一度食べたいなぁ。
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