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バラエティに富んだ人種

勝つために

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近衛とミリアはベンチを出て神殿内を探索した。

何か手がかりはないかと見て回った。

神殿内のあちらこちらに黒い百合の花が植えられている。


「何だか薄気味悪い花だな」


「でも、綺麗な黒ね」


どうやったらこんな色に咲くのだろうか。




神殿内をくまなく探し回ったが、手がかりになる物は見当たらない。



「一体この匂いの元はどこからなんだ?」


「この神殿自体が匂いを発するのかしら」


建物がこんな匂いを発するワケが無い。


「そんなワケ無いだろ」


「じゃあ、何処から発してるっていうのよ」


「それを探してるんじゃないか」


神殿内は甘い匂いが充満している。



「ねぇ、カツヤ」


「ん?」


「何か…場所によって匂いが強い所と弱い所があるんだけど」


ミリアは匂いに差がある事に気づいた。


「どういう事?」


「気のせいかもしれないけど、今いる場所より、さっき通った選手専用の通路の方が強い匂いを発してるのよ」


今いる場所はスタンドに通ずる通路だ。


「そう言われみれば」


近衛はクンクンと匂いを嗅いだ。


さっきよりも匂いが薄れている。


「選手用の通路に行ってみよう」


2人は選手専用の通路に向かった。






「ね、すごい匂いでしょ?」


選手専用の通路の壁は蔦のように黒い百合の花が咲き誇っている。



「ホントだ、メッチャ匂う」



目の前にいるミリアに欲情しそうな程の強い匂いだ。



「カツヤ、大丈夫?何かボーッとしてるけど」


ミリアが顔色を伺う。


アマゾーンの選手に比べるとやや露出はおとなしめだが、それでも皮のビキニアーマーに身を包んだミリアのナイスバディは十分ソソられる。


(おい、ミリアで勃ったらヤベェぞ!)


下半身に集中しないよう、他の事を考えていた。



「な、何でもない!…それよか、匂いの原因は何処なんだ」


壁にもたれ掛かると、更に匂いが強くなる。



(…わかったぞ)


近衛は匂いの原因をつき止めた。


「ミリア、匂いの元はこれだ」


百合の花を手に取った。


「エッ、これが…」

ミリアは匂いを嗅いだ。


「アッ、ホントだ!この花から発してるのね」


神殿内の至る所に百合の花が植えられているのは、この匂いを相手選手に嗅がせる為だ。


「ようやく分かったぞ!つまり、この花の匂いで相手を骨抜きにして勝つというワケだ」


「なる程、アウェイじゃこの花は植えられてないから、正攻法で戦うしかないってワケね」


百合の花の匂いが無ければ勝てる相手…といきたいたころだが、ワイズスはそんなチームにも負け越している。



「匂いの元は分かった。後はどうやって勝つか…」


頭の中で勝つ方法を練ってみた。



(あのお色気攻撃に惑わされないにはどうするか?…難しいなぁ)


本能には逆らえないのか。


(っ!…1つだけ方法があるっ)


何かを閃いた。


「ミリア、悪いけど監督に攻略法が見つかったからちょっと出てくるって伝えておいてくれっ」


「エッ、何処行くのよ!」


「ちょっと市場まで行ってくる!帰りは夜になるから、それまで待っててくれ!それじゃっ」


近衛は神殿を出て市場へと向かった。







近衛が戻ってきたのはその晩だ。


ワイズスが泊まる宿に着き、ミリアの部屋をノックした。

コンコン…



「はぁ~い、誰?」


「オレだ、近衛だ」


「カツヤ?チョット待って、今開けるから」


ガチャっとドアが開くと、リュックを背負っている近衛が立っていた。


「何処まで行ってたの?」


「…はぁ~、疲れたぁっ!」


リュックには液体の入った小瓶が多数入っている。



「これ、何?」


「何って、全部ポーションだよ」


近衛は市場でありったけの金を使ってポーションを買い漁った。



「何でこんなに?」


「これがアマゾーンに勝つ唯一の方法だ!」


「勝てるの?」


「あぁ、勿論。実はな…」


近衛は秘策を授けた。



「えぇ~っ、ホントにそれで勝てるのっ?!」


何の作戦だろうか。
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