Baseball Freak 主砲の一振り 7

sky-high

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開幕だぁ〜っ!

チャンス

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2回の表、Glanzの攻撃は4番徳川から。

「おい、何でアイツを4番にしたんだよ!いくら結城に似てるからって、バッティングまでソックリなワケないだろ!
それに、アイツは4番タイプのバッターじゃないだろうが!」


榊にしてみれば、徳川は下位で繋ぐバッティングが適役だと思っている。


だが、ひろしは彼こそが4番に相応しいと主張する。


「私ココロが25歳だから分かります(^ ^)」


「オレはお前が全く分からねえよ」


榊だけじゃなく、他の人もひろしには理解不能だ。


「徳川選手は長打率でチームナンバーワンです(^^)
朝の朝食にもずく酢とコーンポタージュ、カレーうどんにカルパッチョありですか?」


「んな食い合わせの悪いモン食ったら、腹壊すわ!」


「んだな(^_^)」


「もう、コイツヤダ!」


目眩がしてきた。


その徳川だが、後ろ姿は結城にソックリだ。


「徳川選手と結城選手の共通点は、左投左打、背番号23、ポジションはファースト、身長体重はほぼ一緒です(^^)」


「外見だけじゃねぇか!」


「私わかります(^^)」


これ程会話が噛み合わないのも珍しい。


その徳川は自然体の状態からゆっくりバットを構える。


その所作が結城と瓜二つだ。




「4番に据えた真意は何なのか…単なるマネか、それとも」


櫻井はひろしを警戒している。



(初球からスクリューだ)


キャッチャーの武内がサインを出した。


高山は頷き初球を投げた。


インコース膝元へ曲がるスクリューだ。


「…」


徳川はこれを振り払うようにスイング。


「エッ…」


快音と共に打球は右中間へ。


センター唐澤、ライト室井が俊足を飛ばして打球を追う。


「ウソだろ、あのスクリューを読んでたのかよ!」


高山は打球の行方を追う。


「クソッ、届けっ…」


室井が一か八かのダイビングキャッチを試みるが、グラブの先を掠めた。


すると、バックアップしていた唐澤がボールを捕って二塁へ。


徳川は一塁を蹴って二塁へ全速力で走る。


ボールはノーバンで二塁へ。

強肩は健在だ。


だが、徳川の足が一瞬早くセーフ。


ノーアウトランナー二塁、絶好のチャンスだ。



「アイツ、打ち方まで結城にクリソツじゃねぇかよ」


「私わかります(^_^)」


「何でお前が分かるんだよ?」


「徳川選手はラインドライブの中距離ヒッターですけど、結城選手を意識し過ぎてスイングが大振りになってました(^^)」


「結城だってラインドライブの中距離ヒッターじゃねぇかよ」


「んだな(^_^)」


「それしかないのかよ!」


もう帰りたい…そんな気分だ。



【5番ん、レフトぉ~、森高ぁ~、背番号ぉ~、7ぁ~ん】


段々アナウンスがセクシーになってきている。



ノーアウトランナー二塁で迎えるバッターは昨年まで不動の4番だった森高。


打率.253 本塁打19 打点64と主砲とは言い難い成績だった。


今年はレフトにコンバートとなり、打順も5番に下げられた。


センターをクロフォードに、4番を徳川に奪われた森高のプライドはさぞかし、ズタズタにされただろうと思うだろうが、本人は至ってフツー。


しかも、4番でセンターのプレッシャーが無くなり、今年はノビノビと野球を楽しんでいる。


キャンプでは長打力よりも広角に打ち分けるバッティングを意識していた。


去年までは4番バッターとしてホームラン狙いのバッティングをしていたが、本来は3割を打てるタイプだ。


バットのグリップを昨年よりも少し下げ、やや前かがみだったフォームを改造して背筋を伸ばし、クローズドスタンス気味に構える。


「高山くん、ランナーは気にせずバッター集中でいこう!」


ファーストの結城が声をかける。


「ハイ…」


「まだ試合は始まったばかりだ。仮に点を取られても、1点ぐらいはどってことない。それよりも、ドンドン攻めのピッチングをするんだ、いいね?」


「ハイ、分かりました!」


キャプテンらしく、高山を鼓舞する。



ロジンバッグを手にし、丹念に手に馴染ませる。



二塁ランナー徳川はやや大きめなリードをとっている。


セットポジションの体勢に入り、一呼吸置いてからクイックモーションで初球を投げた。


糸を引くようなキレイなフォーシームがインサイドを突いた。


「ストライクワン!」


143km/hのストレートがズバッと決まった。
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