Baseball Freak 主砲の一振り 7

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5月 交流戦前

狙いうち

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白石はストレートを待っている。

アルバラードが2球目を投げた。

シンカー気味に沈むチェンジアップが低めいっぱいに決まる。

「ストライクワン!」


「また変化球だ」


「何だ、あの外人は!さっさとストレート投げろっつーの!」


「まさか、コッチの作戦がバレてるのでは…」


それは無いだろう。


カウントはワンナッシング。


「私わかります(^ ^)
次はストレート投げてきますち!」


「…そんな気がしてきた」


果たしてどうか。



ここまでランナーがいるのにもかかわらず、一度も牽制球を投げてない。


それどころか、クイックモーションさえもせずにバッターオンリーのピッチングだ。


要は抑えればいいって考えなのか。



そして3球目を投げた。


(ストレートだ!)


外角低め、152 km/hのストレートだ。


白石は流れるようなスイングでライト方向へ狙いうちした。


「こりゃ行ったろ!」


Glanzベンチは総立ちで打球の行方を追った。


ライト室井は追うのを止めて打球を見上げる。


「入ったぁ~っ!」


ライトスタンドへ第3号の先制ツーランを放った。



「んだな(^ ^)」


「あの攻略法でホームランとは…」


ひろしの攻略法とは、アルバラードはストレートを投げる際、テイクバック時にグラブが下向きになるのだが、モーションが速いせいで打席で捕らえる事は至難の業だ。


そこでひろしは別の方法として、リリースの瞬間、アルバラードの上体が少し低くなる事に気付き、外野フェンスを目印にして、顔半分がフェンスより下になればストレートとアドバイスした。


白石はそのアドバイス通り、ストレートに的を絞り、狙いうちしたのだ。



打たれたアルバラードはグラブを叩きつけ悔しがっている。


白石は無表情でベースを回り、今ホームイン。


Glanzが初回で2点を先制した。




「アルバラードのストレートを狙いうちとは…天才と呼ばれる白石君でも、あの球をライトスタンドへ放り込むのは難しい。
それが出来たのは、ただ一つ…」


櫻井は榊にヘッドロックを掛けられているひろしを見た。


「宇棚ひろし…あの人を何とかしなければ、ウチに勝ち目は無い」


櫻井にとって、ひろしは目の上のたんこぶに等しい。



落ち着きを取り戻したアルバラードだが、白石の一発で頭に血が上っている。


「ヨシ、攻略するなら今のうちだ!」


榊の号令でGlanz打線がアルバラードに襲いかかる。


4番徳川に対してはストレートのフォアボールで塁に出してしまい、続く森高の打席で二盗を許してしまう。


顔を真っ赤にしてエキサイトするアルバラード、もはや冷静さを取り戻す事は不可能だった。


森高は左中間を深々と破るタイムリーツーベースヒットで3点目を追加。


そして6番麻生は初球のストレートをセンターバックスクリーンへ今シーズン第1号ソロを放ち、これで4点目。



その後もアルバラードはめった打ちに遭い、初回6失点でKO。


終わってみれば、9-2でGlanzの圧勝。


二刀流の麻生は6イニングを無失点に抑え、プロ初勝利を飾った。


明後日からインターカンファレンス 交流戦がスタートする。


Glanzの初戦は敵地大阪にてドルフィンズとの二連戦を皮切りに、約1か月に及ぶ戦いが待っている。



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