Baseball Freak 主砲の一振り 7

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ラストスパート

おちょくられた天才

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 午後6時、試合はスタート。

 立ち上がり片山はトップバッターの福田をセカンドゴロ、2番島津をスライダーでレフトフライに打ち取りツーアウト。

 3番指名打者で先発の及川を147 km/hのストレートをアウトローにズバッと決めて見逃しの三振。


 三者凡退で1回の表を終了。


「っしゃァァァ!」


 片山にしては珍しく、マウンド上で雄叫びを上げた。




「気合い入ってんなぁ」


「今日明日と連勝すれば、優勝は決まったようなモンだからな」


「んだな(^^)」


 この三人はいつもと同じ様子だ。



 1回の裏、Glanzの攻撃。


 トップバッター石川が右打席に入る。


 ここまで打率.304 本塁打16 打点63

 盗塁はリーグトップの58個をマーク。


 優勝すれば白石、徳川がMVP最有力だが、リードオフマンとして、そしてキャプテンとしてチームを引っ張った石川もMVP候補に挙げられる。



 マウンド上は二刀流及川。


 投手では、12勝7敗 防御率3.64
 打者では、打率.299 本塁打19 打点86

 どちらも申し分無い成績だ。



「アイツだけが二刀流じゃないわい!
 ワシかて、二刀流じゃけんのぉ」


 麻生も二刀流だが、世間では及川の方が圧倒的に知名度は高い。

 オマケに、麻生は素行不良で優等生の及川に比べて印象がかなり悪い。



 麻生は及川をライバル視しているが、及川は麻生の事など眼中に無い。



 その及川が第1球を投げた。


 インコース低めに153 km/hのストレートが決まる。


「ストライクワン!」


 打ってもゴロになるコースだ。


 (今日の及川は絶好調だ…)


 ヒットを打つのは難しい、石川はそう思い、待球作戦に切り替えた。


 2球目はスライダーが外れボール。

 3球目はストレートを上手くカットしてファール。

 石川はツーストライクと追い込まれた。


 4球目、ワンバンになるフォークを見逃しツーナッシング。



 5球目、外のスライダーに手を出すがこれもファール。


 石川はしぶとく食らいつく。


 そして6球目、今度はインコースに食い込むツーシームを見逃すが、ギリギリに入ってストライクアウト。


「ウソッ!今の入ってるの?」


 後ろを振り向き、主審に問う。


「僅かだが入ってる」


 毅然とした態度で主審は答える。


 判定が覆ること無く、石川は見逃しの三振に倒れた。


 続くバッターは2番のクロフォード。


 長身痩躯、漆黒の弾丸と呼ばれる助っ人が左打席に立つ。


 力感の無いフォームながら、鋭い打球をスタンドに放り込むパワーを秘めたバッティングで、現在打率.307 本塁打26 打点99をマーク。


 その上足も速く、盗塁の数は16。

 守備範囲も広く、オマケに強肩。


 5ツールプレイヤーとして今やGlanzに欠かせない助っ人で、首脳陣の評価も高い。


 (厄介なバッターが出てきやがった)


 クロフォードとの対戦成績は、12打数7安打、13打点と打ち込まれてい
 てホームランこそあまり無いが、ランナーがいる時に無類の強さを発揮する。


 初球は152 km/hのストレートが外れワンボール。

 2球目は緩いカーブが決まりワンストライク。

 3球目、もう一度ストレートを外角に決めてツーストライク。


 そして4球目。

 落差のあるフォークを空振り。


「ストライクアウトっ!」


 これでツーアウト。


 この次は天才バッター白石拓海。


 こちらも走攻守三拍子揃った万能プレイヤー。


 だが、及川としてはクロフォードよりも白石の方がやりやすい。


 白石との対戦成績は14打数2安打で打点は0と抑えている。


 (天才と呼ばれているが、オレにはフツーの選手にしか見えない)


抑えてきた自信からか、
「ヨシ、これでスリーアウトチェンジだ!」

と豪語する。


白石は無表情で打席に立つ。


しかし内心は腸が煮えくり返る程の怒りと悔しさに溢れていた。



三年連続首位打者、二年連続MVPを授賞し、史上最高のショートストップと呼ばれる白石だが、及川にはいいように抑えられている。


今年は打率.334 本塁打30 打点89 盗塁31とトリプルスリーをほぼ達成したも同然の成績を挙げ、攻守に渡ってチームに貢献。



(…このままやられっぱなしのワケにはいかない…)



チームの勝利が最優先だが、個人的な問題として及川に一矢報いたいところ。


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