Baseball Freak 主砲の一振り 7

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チャンピオンズカップ

敵は寒波

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底冷えするニックスフィールドでチャンピオンズカップ初戦はスタート。

ニックス先発尾崎はレギュラーシーズンの勢いそのままに、立ち上がりからエンジン全開。


石川、クロフォード、白石の3人を得意のスイーパーで三振に斬って取る。


一方、Glanz先発仲邑はこの寒さで指先の感覚が鈍っている。


「クッソ~、指が悴んで上手く投げれない」


息をハァ~っと吹きかけるが、感覚は戻らない。


仲邑だけではない、守備につく選手の殆どが寒さでブルブルと震えている。


ニックスベンチは初回から動く。


トップバッター高橋はコントロールの定まらない仲邑のピッチングに一度もバットを振ることなく、フォアボールを選ぶ。


2番吉田も待球戦法で、フルカウントまで粘り、最後はよく見てフォアボール。


2者連続フォアボールとなったところで、早くも内野陣がマウンドに集まる。


「おい、大丈夫か?」

キャプテン石川が心配そうに声をかける。


「ヤベェよ、指が悴んで動かねぇよ」


「アイツら、寒くねぇのかよ」


ニックスナインも寒いのだが、本拠地とあって、寒さ慣れしているせいか、動きは悪くない。


「次は推川だ。最悪満塁策をとって、澤村でゲッツーを狙おう」


「OK」


次のバッター推川とは無理に勝負せず、4番澤村でゲッツー狙いをする作戦をとる。


しかし、この作戦が裏目に出た。


推川との勝負は高目のボール球で歩かせようとした。

だが、指先の感覚が鈍っているせいで、コントロールミスが生じた。


何の変哲もない、142 km/hのストレートが真ん中やや内側に入った。


推川はそれを見逃さずフルスイング。


「やられたっ…」


打球はピンポン玉の様にグーンとレフトスタンドまっしぐら。


あっという間にニックスが3点を先制。


仲邑はアウト一つも取れずにスリーランを献上。



「あぁ~あ……こりゃ、ダメかもな」


「まだ初回じゃんかよ!カントクがそんな事言っちゃダメだろ!」


財前はヘッドコーチという立場上、試合を投げ出すような事は言えない。


「ムリだって!だってよぉ、こんなクソ寒い状況で試合なんて出来っかよ!」


 「寒いのは向こうだって一緒だろうが!」


「一緒なワケあるかっ!アイツらはここがホームタウンなんだぞ!オレらより寒さには慣れっこじゃんかよ!」


「だからって、早くも諦めたような言い方しなくてもいいだろうが!」


「いいんだよ、初戦はくれてやらぁ」


早くも敗北宣言だ。


「んじゃ、ちょっくら行ってくる」


「どこ行くんだよ?」


榊は立ち上がりベンチを出た。


主審に交代を告げた。



「バカかっ!初回でしかも、アウト一つも取れずにエースを降ろすのかよ!」


「いいんだよ、あれじゃ仲邑が可哀想だろうが」


「余計プライドが傷つかないか?」


2番手は中継ぎエースの左腕冴島がコールされた。


アウトを取れず、推川にスリーランを食らった仲邑はうつむき加減でベンチに戻った。


「おい、仲邑。今日のことは気にすんな。こんな極寒な場所で試合させるのが悪い」


「でも、それは言い訳にはなりませんし…」


「オレが現役だったら、登板拒否してるぞ。無理して投げたら余計調子悪くなっちまう」


「しかし…」


「今日は好きなだけ点を取らせてやれ。その代わり、埼玉に来たらボッコボコにしてやれ、いいな?」


「はぁ…」


初戦は捨てた。


しかし、本拠地に戻ったら倍以上に仕返ししてやると決めた。
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