I Love Baseball 主砲の一振り 6

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8月灼熱の後半戦

入れ替わり

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99ersとの3連戦初戦は二発の本塁打により
Glanzが3対0で勝利。

降谷は完封で12勝目。


新戦力の白石はノーヒットだったが 守備では軽快な動きで降谷を助けた。

唯一の懸念は ファーストを守る徳川が不振のため二軍に降格。

徳川と入れ替わりで一軍昇格したのは
入団3年目の大型内野手 小津 輝明(おづてるあき)
21才。右投左打。

小津は3年前のドラフト5位でGlanz(当時はスカイウォーカーズ)へ入団。

高校時代は通算48本塁打をマークした強打の左バッター。

甲子園出場は無いせいか知名度は乏しく 本人も卒業後は大学で野球をするつもりだったという。


187cm96kgと堂々たる体格で ポジションは主にファースト もしくはサードを守っていたが
守備面は打撃様な期待はあまり出来ない。


二軍では打率.316 本塁打14と二冠を独走。


勢いのある今 一軍で大暴れして欲しいという井原二軍監督の後押しもあって 初の一軍となった。


背番号51を付けた小津が試合前のフリー打撃で快音を飛ばしている。


弾道の高い打球は大きく孤を描いて右中間からライトスタンドへ集中する。


ノーステップでテイクバックもフォロースルーも限りなく小さくバットの面に当てるだけだが
最短距離で捕えた打球はグーンとスタンドへ伸びていく。


教科書通りの基本に忠実な構えでパッと見は何の特徴も無いフォームだが
シンプルで無駄が無く 理想の打撃フォームとも言える。


高校時代から何度も改良を重ね 昨年の暮れにようやく理想のフォームを手に入れた。


そのお陰でファームで好成績を挙げる事が出来た。


「フゥ~っ」


フリー打撃を終え 額に滲み出る汗を拭いながらベンチに戻った。


「まだまだだな…」


バットを手に首を傾げながら呟いた。



あれだけの快音を響かせても表情は渋い。



「今日ヒット打てるだろうか…」


99ersの先発は左腕エースの那須川。


左打者の小津に出番はあるのか?
と思いきや 中田は小津を7番ファーストでスタメン起用させた。


そのGlanzのスターティングメンバーはこちら。


1 RF ルイス 39
2 SS 白石       5
3 LF 唐澤       1
4 CF 森高       7
5 3B ロビンソン 2
6 2B 石川       8
7 1B 小津      51
8 DH 財前     10
9  C   滝沢       9


     P 中邑       18


Glanzの先発はエース中邑。

今年はまだ6勝という勝ち星でエースという活躍にはイマイチなピッチング。



99ersのスターティングメンバーは


1 RF 城戸 7
2 SS 飛鳥 5
3 CF 吉川 3
4 1B 風間 44
5 3B 比嘉  1
6 C   外崎  27
7 2B 秋山  4
8 DH グリフィン 21
9 LF 盛田  33

     P  那須川 

   
99ers先発那須川は9勝5敗 防御率はリーグ2位の2.73
と今年も安定感のあるピッチングを披露している。


【フロントドア】【バックドア】と呼ばれる ツーシーム カットボールを駆使してゴロを打たせるのが那須川の持ち味だが それを上手くリードするのは球界一のキャッチャーと呼ばれる外崎の頭脳だ。



乱暴な言い方をすれば 外崎を潰してしまえば投手陣の防御率は今より悪くなるのだが
百戦錬磨の外崎は百も承知で 他球団の反則スレスレのプレーを先読みして躱す能力にも長けている。


元々はラフプレーや乱闘を好む千葉ヤンキースの正捕手だ。


イザとなれば 返り討ちにするのは造作もない。





午後6時 主審の手が挙がり試合開始。


トップバッターのルイスが右打席に入る。


マウンド上では那須川がボールを手にブツブツと何やら呟く。


こうしてボールに話し掛けるとスーッと気持ちが落ち着くと言う。


那須川の目つきが変わり ゆったりとしたモーションから第1球を投げた。


アウトコースギリギリにフォーシームがズバッと決まった。


「ストライクワンっ!!」


146km/hと表示されたが 球速以上に速く感じる。


それだけ調子が良いという事だ。


ルイスは微動だにせず 球筋をジーッと見て
打席を外して素振りをした。



バットのヘッドが下がり気味になってる。
しかしルイスは気にせず マウンド上の那須川に鋭い視線を向ける。


「うゎ~、初っ端から黒人がガン飛ばしてくるよ…」


那須川がボールを手に話し掛ける。


「…そうだよな、こういう時はエースのオレがビシッとしなきゃな」


一頻りボールに話し掛けると 大きく深呼吸をしてから外崎の出すサインを凝視した。


カウントはワンストライク。



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