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トレード
翔田キラー
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「えぇーっ!トレードするんですか?」
高梨は素っ頓狂な声を上げた。
「何だよ、別に驚く事はないだろ」
「トレードは別に驚かないですが、加勢を放出するんですか?」
「中継ぎが多すぎるだろ。ウチとしては先発が欲しいんだよ」
「そりゃ分かりますけど、いくらなんでも加勢を交換条件にするとは」
高梨は加勢を高く評価していた。
左腕から繰り出す真っスラ、いわゆるカットボールには定評があって、安定した成績を挙げている。
「加勢よりもアクーニャの方が速いし、カットボールのキレも上じゃん?
東雲は右のサイドスローで右バッターには有効だし、ワタルは先発も中継ぎも出来るだろ?
そう考えると、加勢を交換条件にして鴻池を獲得するしかないじゃん」
「先発の駒が不足してるのは分かりますけど、加勢はちょっと…」
「中継ぎよりも先発だろ!先発がいなきゃ試合になんないだろうが」
何だかんだと論議を重ね、結局加勢をトレード要員として鴻池を獲得する方針に決まった。
高梨はドルフィンズの監督矢幡とGMの倉科にトレードの話を持ち掛けた。
「鴻池を出す代わりに加勢を出すって?確かにウチは中継ぎ不足だけど、このトレードはコッチの方が不利なんちゃうか?」
「でも、鴻池はウチのチームカラーに合わない選手だし、このトレードはそれ程悪い話ではあるまい」
矢幡は難色を示したが、倉科は好意的に捉えた。
「ウチは終盤に点を取られるケースが多い。それは軸となる中継ぎ投手がいないからだ」
ドルフィンズは先発と抑えは揃っているが、その間の中継ぎ投手が不在。
7回から8回の終盤に打たれるケースが目立つ。
「それに、鴻池は中島とソリが合わない。
彼の為にも、チームを出た方が良いと思うんだがな」
ドルフィンズの投手コーチ、中島とは調整法を巡って対立している。
昨年はそのせいでケガが完治しても一軍にお呼びがかからなかった。
飼い殺しするよりも、中継ぎが欲しいドルフィンズは、鴻池を出して加勢を獲得した方がプラスになると倉科は判断した。
「しゃーない。このトレードを飲むとしよう」
かくしてトレードが成立し、加勢はドルフィンズへ、鴻池はスカイウォーカーズへ移籍した。
鴻池の背番号はドルフィンズと同じ17
ちなみに99ersとの三戦目は、先発の宇田川が6回に4番外崎のスリーランを浴び、3対1で敗れた。
試合後、榊は宇田川を二軍に降格させ、代わりに桐生が一軍に昇格した。
左腕の先発として期待された宇田川だが、一軍の壁は厚く、1勝を挙げただけで再び二軍へ。
その翌日、スカイウォーカーズは鴻池の入団会見を行った。
会見には榊も同席、早速この日のナイトゲームで行われるキングダムとの試合にベンチ入りすると明言。
キングダムの本拠地、東京ボールパークではこれからキングダム対スカイウォーカーズの三連戦がスタートする。
スカイウォーカーズの先発はアクーニャ。
ローテーションの谷間という事もあって、アクーニャをオープナーとして起用。
キングダムは今日一軍に昇格したばかりのプロ3年目、左の佐々木を先発にもってきた。
スカイウォーカーズのスタメンは
1ファースト 結城 23
2ショート 筧 24
3センター 財前 10
4セカンド 鬼束 5
5サード 毒島 6
6ライト 唐澤 1
7レフト 梁屋 51
8ピッチャー アクーニャ 13
9キャッチャー 保坂 27
キングダムのスタメンは
1セカンド 湯原 8
2キャッチャー 丸藤 25
3ファースト ロドリゲス 44
4センター 翔田 1
5サード ウィリアムズ 25
6ライト 坂上 9
7レフト 稲葉 35
8ショート 倉澤 4
9ピッチャー 佐々木 31
今シーズン打率0.237 1本塁打とスランプに苦しむ翔田は、前節のレッズ戦でようやく今季初アーチを放ったが、その後も不調でチャンスの場面で尽く凡退を重ねる。
浅野監督はいずれ打撃が復調するだろうと、辛抱強く翔田を4番に置くが、レッズとの二戦目、7回の表の攻撃で代打を送られた。
今まで途中交代させられた事は一度も無いだけに、翔田にとってはかなり屈辱な場面だった。
浅野監督はこれ以上不振が続くようなら、休養を兼ねて二軍に降格すると翔田に告げた。
背水の陣で挑むスーパースターはプライドをかなぐり捨て、どんな形でもいいから勝利に貢献しようと必死だ。
午後6時、主審の手が挙がり試合はスタートした。
キングダム先発の佐々木は緩急を付けたピッチングで、1番結城をセンターフライに打ち取ると、2番筧をカーブでショートゴロで打ち取り、3番財前はストレートを詰まらせてライトフライで抑える。
スカイウォーカーズの先発アクーニャは出だしからエンジン全開でトップの湯原を速球でファーストゴロに打ち取り、2番丸藤をクチージョと呼ばれる144km/hのカットボールでサードフライに。
3番ロドリゲスを156km/hのストレートで空振りの三振に斬って取り、三者凡退で終了。
佐々木は2回も三者凡退で抑え、その裏キングダムの攻撃は4番翔田から。
初回で交代と思われたアクーニャだが、榊は続投させる。
翔田キラーとしてマウンドを託されたアクーニャは、この日最速の159km/hのストレートでバットをへし折りレフトフライで打ち取る。
ここで榊はベンチを出て、審判に交代を告げる。
【スカイウォーカーズ、ポジションの交代をお知らせします。
レフト梁屋がピッチャーに、ピッチャーアクーニャがレフトに交代】
アクーニャをレフトに回し、レフトの梁屋がマウンドに上がった。
「これでまた翔田くんの場面でアクーニャがマウンドに上がる事が出来るわ」
この交代を思いついたのは、投手コーチの水卜だ。
ただオープナーとして投げるだけではなく、翔田を抑える為にレフトを守ることで何度も交代が出来る。
翔田を抑えたら再び梁屋がマウンドに上がり、アクーニャはレフトに戻る。
この繰り返しでキングダム打線を封じるつもりだ。
高梨は素っ頓狂な声を上げた。
「何だよ、別に驚く事はないだろ」
「トレードは別に驚かないですが、加勢を放出するんですか?」
「中継ぎが多すぎるだろ。ウチとしては先発が欲しいんだよ」
「そりゃ分かりますけど、いくらなんでも加勢を交換条件にするとは」
高梨は加勢を高く評価していた。
左腕から繰り出す真っスラ、いわゆるカットボールには定評があって、安定した成績を挙げている。
「加勢よりもアクーニャの方が速いし、カットボールのキレも上じゃん?
東雲は右のサイドスローで右バッターには有効だし、ワタルは先発も中継ぎも出来るだろ?
そう考えると、加勢を交換条件にして鴻池を獲得するしかないじゃん」
「先発の駒が不足してるのは分かりますけど、加勢はちょっと…」
「中継ぎよりも先発だろ!先発がいなきゃ試合になんないだろうが」
何だかんだと論議を重ね、結局加勢をトレード要員として鴻池を獲得する方針に決まった。
高梨はドルフィンズの監督矢幡とGMの倉科にトレードの話を持ち掛けた。
「鴻池を出す代わりに加勢を出すって?確かにウチは中継ぎ不足だけど、このトレードはコッチの方が不利なんちゃうか?」
「でも、鴻池はウチのチームカラーに合わない選手だし、このトレードはそれ程悪い話ではあるまい」
矢幡は難色を示したが、倉科は好意的に捉えた。
「ウチは終盤に点を取られるケースが多い。それは軸となる中継ぎ投手がいないからだ」
ドルフィンズは先発と抑えは揃っているが、その間の中継ぎ投手が不在。
7回から8回の終盤に打たれるケースが目立つ。
「それに、鴻池は中島とソリが合わない。
彼の為にも、チームを出た方が良いと思うんだがな」
ドルフィンズの投手コーチ、中島とは調整法を巡って対立している。
昨年はそのせいでケガが完治しても一軍にお呼びがかからなかった。
飼い殺しするよりも、中継ぎが欲しいドルフィンズは、鴻池を出して加勢を獲得した方がプラスになると倉科は判断した。
「しゃーない。このトレードを飲むとしよう」
かくしてトレードが成立し、加勢はドルフィンズへ、鴻池はスカイウォーカーズへ移籍した。
鴻池の背番号はドルフィンズと同じ17
ちなみに99ersとの三戦目は、先発の宇田川が6回に4番外崎のスリーランを浴び、3対1で敗れた。
試合後、榊は宇田川を二軍に降格させ、代わりに桐生が一軍に昇格した。
左腕の先発として期待された宇田川だが、一軍の壁は厚く、1勝を挙げただけで再び二軍へ。
その翌日、スカイウォーカーズは鴻池の入団会見を行った。
会見には榊も同席、早速この日のナイトゲームで行われるキングダムとの試合にベンチ入りすると明言。
キングダムの本拠地、東京ボールパークではこれからキングダム対スカイウォーカーズの三連戦がスタートする。
スカイウォーカーズの先発はアクーニャ。
ローテーションの谷間という事もあって、アクーニャをオープナーとして起用。
キングダムは今日一軍に昇格したばかりのプロ3年目、左の佐々木を先発にもってきた。
スカイウォーカーズのスタメンは
1ファースト 結城 23
2ショート 筧 24
3センター 財前 10
4セカンド 鬼束 5
5サード 毒島 6
6ライト 唐澤 1
7レフト 梁屋 51
8ピッチャー アクーニャ 13
9キャッチャー 保坂 27
キングダムのスタメンは
1セカンド 湯原 8
2キャッチャー 丸藤 25
3ファースト ロドリゲス 44
4センター 翔田 1
5サード ウィリアムズ 25
6ライト 坂上 9
7レフト 稲葉 35
8ショート 倉澤 4
9ピッチャー 佐々木 31
今シーズン打率0.237 1本塁打とスランプに苦しむ翔田は、前節のレッズ戦でようやく今季初アーチを放ったが、その後も不調でチャンスの場面で尽く凡退を重ねる。
浅野監督はいずれ打撃が復調するだろうと、辛抱強く翔田を4番に置くが、レッズとの二戦目、7回の表の攻撃で代打を送られた。
今まで途中交代させられた事は一度も無いだけに、翔田にとってはかなり屈辱な場面だった。
浅野監督はこれ以上不振が続くようなら、休養を兼ねて二軍に降格すると翔田に告げた。
背水の陣で挑むスーパースターはプライドをかなぐり捨て、どんな形でもいいから勝利に貢献しようと必死だ。
午後6時、主審の手が挙がり試合はスタートした。
キングダム先発の佐々木は緩急を付けたピッチングで、1番結城をセンターフライに打ち取ると、2番筧をカーブでショートゴロで打ち取り、3番財前はストレートを詰まらせてライトフライで抑える。
スカイウォーカーズの先発アクーニャは出だしからエンジン全開でトップの湯原を速球でファーストゴロに打ち取り、2番丸藤をクチージョと呼ばれる144km/hのカットボールでサードフライに。
3番ロドリゲスを156km/hのストレートで空振りの三振に斬って取り、三者凡退で終了。
佐々木は2回も三者凡退で抑え、その裏キングダムの攻撃は4番翔田から。
初回で交代と思われたアクーニャだが、榊は続投させる。
翔田キラーとしてマウンドを託されたアクーニャは、この日最速の159km/hのストレートでバットをへし折りレフトフライで打ち取る。
ここで榊はベンチを出て、審判に交代を告げる。
【スカイウォーカーズ、ポジションの交代をお知らせします。
レフト梁屋がピッチャーに、ピッチャーアクーニャがレフトに交代】
アクーニャをレフトに回し、レフトの梁屋がマウンドに上がった。
「これでまた翔田くんの場面でアクーニャがマウンドに上がる事が出来るわ」
この交代を思いついたのは、投手コーチの水卜だ。
ただオープナーとして投げるだけではなく、翔田を抑える為にレフトを守ることで何度も交代が出来る。
翔田を抑えたら再び梁屋がマウンドに上がり、アクーニャはレフトに戻る。
この繰り返しでキングダム打線を封じるつもりだ。
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