41 / 62
シーズン中盤
オーナー賞の行方は?
しおりを挟む
交流戦は2位に終わったスカイウォーカーズ。
ペナント再開の初戦は、交流戦を制覇した99ersとの一戦。
しかも、その試合は賞金マッチとなるだけあって、両チームの気合いはハンパじゃない。
試合前日、榊はオーナーの阿佐に勝った時のオーナー賞の件について話し合いを行った。
ここは武蔵野ボールパーク貴賓席
スーパーボックスと呼ばれるだけあって、球場内最大の豪華席で通常は法人向けに提供されている。
ゲストルームやラウンジで自由にくつろげるなど、非日常的な時間を過ごすことができる。
「カントク、こんな所に呼び出して何の用だぬ?」
何度も言うが、どの球団のフロントもこのような口調になるのが不思議で仕方ない。
「あったりめーじゃん!何せ、明日から99ersとの三連戦がスタートするんだぜ。
という事は、賞金マッチが三試合行われるってワケだ」
榊はアンティーク調のゴールドと黒のキングチェアに座り、エラソーな態度をしている。
それに対してオーナーは、背もたれがハート型のクイーンチェアに座って姿勢を正している。
このVIPルームにミスマッチな椅子だ。
しかも、監督がキングチェアで、オーナーがクイーンチェアとはどういう事なのか。
「にゃるほど、賞金マッチというだけあって、選手達もヤル気が違うというワケかぬ」
「そういう事!しかも、その賞金はソックリそのまま全額寄付するというワケだ」
コミッショナーも、賞金を全額寄付するという条件付きで賞金マッチを承認した。
「だぬだぬ。賞金を全額寄付するなんて、プロ野球も支援活動を行うようになって、イメージアップにも繋がるぬ」
「そこでだ」
「ぬ?何だぬ?」
榊はメモを取り出す。
「オーナー、ちょっとこれを見てくれ」
「ほーほー、何が書かれているんだぬ?」
榊が取り出したメモ帳には、オーナー賞の分配金が細かく記載してある。
「とにかく勝たなきゃこの賞金は手にする事は出来ない。
先ずは勝たなきゃ意味が無いというワケだ」
「そうだぬ。敗けたら貰えないからぬ」
「この前、電話で話したと思うんだが、賞金とは別にオーナー賞を出すという件だが、覚えているよな?」
「にゃるほど、オーナー賞かぬ。勿論、覚えているぬ!
ミーは約束は必ず守るぬ」
「さすがオーナーだぜ!
そこでだ…オーナー賞の分配をしなきゃならないよな?何せ、あれだけの人数に配るんだから、キチンと分けないとな」
榊は満面の笑みを浮かべている。
「そりゃそうだろうぬ。選手は勿論、監督やコーチ、裏方の人達にもちゃんと配らなきゃならないからぬ」
「そういう事!
とは言え、皆平等に配るというのは如何なものだろうか?と」
「それはどういう事だぬ?」
オーナーは不思議そうな表情を浮かべる。
「考えてもみなよ。例え試合に勝ったとしても、決勝のホームランを打った選手と、エラーした選手の分配金が同じだったらおかしいと思わないか?」
「にゃるほど!例え試合に勝っても、活躍した選手によって分配金は変わってくるというシステムかぬ?」
「その通り!さすがオーナーだ、話が分かるね~」
「いや~、ミーもその部分は少しおかしいんじゃないかと思ってたんだが」
実際はそんな事微塵にも思ってない。
「選手に対しては…一番活躍した者が一番多く貰うとして…問題はオレの様な監督やコーチの分配金なんだが」
「確かに、選手だけに配るというワケにはいかないからぬ」
そして榊はメモに書かれてある項目を指した。
「ここを見て欲しい。
これを戦に例えると、我が軍と敵軍との合戦になるよな?」
「にゃんと!まるで戦国時代の天下統一の様な例えだぬ!」
「同じ事じゃん?
で、我が軍が勝利したとする。
一番の功績は誰だと思う?」
「それは、勝った軍の大将じゃないかぬ?」
「ご名答!ちなみに我が軍の大将とは、誰かな~?」
なんてことは無い、ただ単に賞金を独り占めしたいだけだ。
「大将と言ったら、監督だぬ。
て事は、ユーが大将というワケかぬ」
「でしょ、でしょ?大将はオレ!
で、ここにも書いてあると思うんだが、オーナー賞は一旦オレに渡して、オレが選手達に配るというシステムだ」
「にゃんと!監督のユーが自ら分配するというワケかぬ?」
この時点でネコババしそうな可能性大だ。
「オット、勘違いしないでくれよ。
オレは大将として、家来に見合った禄を支給するという役目があるんだ」
試合を合戦に見立てたトークは、オーナーが歴史好きという事をリサーチして、昨晩必死で考えたアイデアだ。
「ほーほー、如何にも一国の主っぽい感じだぬ!」
「プロ野球の監督なんて、ペナントという天下統一を目指す戦みたいなもんだし、どうやって制覇するのかは、選手の能力も勿論必要だけど、それを上手く使う大将の能力も問われるんだぜ?」
もっともらしい事を言ってるが、所詮は金に目が眩んだゲスな考えだ。
「素晴らしい!監督、是非とも我が軍を天下統一に導いてくれだぬーーーん!」
オーナーはガッチリと握手をした。
「任せなさいって!それより、オーナー賞シクヨロ頼むよ?」
「分かってるぬーーーん!明日からの三連戦はガッポリ儲けてくれだぬ!」
「あいよ~、任せてちょうだい!」
ちなみに選手やコーチにはオーナー賞は白紙になったとウソをついている。
ペナント再開の初戦は、交流戦を制覇した99ersとの一戦。
しかも、その試合は賞金マッチとなるだけあって、両チームの気合いはハンパじゃない。
試合前日、榊はオーナーの阿佐に勝った時のオーナー賞の件について話し合いを行った。
ここは武蔵野ボールパーク貴賓席
スーパーボックスと呼ばれるだけあって、球場内最大の豪華席で通常は法人向けに提供されている。
ゲストルームやラウンジで自由にくつろげるなど、非日常的な時間を過ごすことができる。
「カントク、こんな所に呼び出して何の用だぬ?」
何度も言うが、どの球団のフロントもこのような口調になるのが不思議で仕方ない。
「あったりめーじゃん!何せ、明日から99ersとの三連戦がスタートするんだぜ。
という事は、賞金マッチが三試合行われるってワケだ」
榊はアンティーク調のゴールドと黒のキングチェアに座り、エラソーな態度をしている。
それに対してオーナーは、背もたれがハート型のクイーンチェアに座って姿勢を正している。
このVIPルームにミスマッチな椅子だ。
しかも、監督がキングチェアで、オーナーがクイーンチェアとはどういう事なのか。
「にゃるほど、賞金マッチというだけあって、選手達もヤル気が違うというワケかぬ」
「そういう事!しかも、その賞金はソックリそのまま全額寄付するというワケだ」
コミッショナーも、賞金を全額寄付するという条件付きで賞金マッチを承認した。
「だぬだぬ。賞金を全額寄付するなんて、プロ野球も支援活動を行うようになって、イメージアップにも繋がるぬ」
「そこでだ」
「ぬ?何だぬ?」
榊はメモを取り出す。
「オーナー、ちょっとこれを見てくれ」
「ほーほー、何が書かれているんだぬ?」
榊が取り出したメモ帳には、オーナー賞の分配金が細かく記載してある。
「とにかく勝たなきゃこの賞金は手にする事は出来ない。
先ずは勝たなきゃ意味が無いというワケだ」
「そうだぬ。敗けたら貰えないからぬ」
「この前、電話で話したと思うんだが、賞金とは別にオーナー賞を出すという件だが、覚えているよな?」
「にゃるほど、オーナー賞かぬ。勿論、覚えているぬ!
ミーは約束は必ず守るぬ」
「さすがオーナーだぜ!
そこでだ…オーナー賞の分配をしなきゃならないよな?何せ、あれだけの人数に配るんだから、キチンと分けないとな」
榊は満面の笑みを浮かべている。
「そりゃそうだろうぬ。選手は勿論、監督やコーチ、裏方の人達にもちゃんと配らなきゃならないからぬ」
「そういう事!
とは言え、皆平等に配るというのは如何なものだろうか?と」
「それはどういう事だぬ?」
オーナーは不思議そうな表情を浮かべる。
「考えてもみなよ。例え試合に勝ったとしても、決勝のホームランを打った選手と、エラーした選手の分配金が同じだったらおかしいと思わないか?」
「にゃるほど!例え試合に勝っても、活躍した選手によって分配金は変わってくるというシステムかぬ?」
「その通り!さすがオーナーだ、話が分かるね~」
「いや~、ミーもその部分は少しおかしいんじゃないかと思ってたんだが」
実際はそんな事微塵にも思ってない。
「選手に対しては…一番活躍した者が一番多く貰うとして…問題はオレの様な監督やコーチの分配金なんだが」
「確かに、選手だけに配るというワケにはいかないからぬ」
そして榊はメモに書かれてある項目を指した。
「ここを見て欲しい。
これを戦に例えると、我が軍と敵軍との合戦になるよな?」
「にゃんと!まるで戦国時代の天下統一の様な例えだぬ!」
「同じ事じゃん?
で、我が軍が勝利したとする。
一番の功績は誰だと思う?」
「それは、勝った軍の大将じゃないかぬ?」
「ご名答!ちなみに我が軍の大将とは、誰かな~?」
なんてことは無い、ただ単に賞金を独り占めしたいだけだ。
「大将と言ったら、監督だぬ。
て事は、ユーが大将というワケかぬ」
「でしょ、でしょ?大将はオレ!
で、ここにも書いてあると思うんだが、オーナー賞は一旦オレに渡して、オレが選手達に配るというシステムだ」
「にゃんと!監督のユーが自ら分配するというワケかぬ?」
この時点でネコババしそうな可能性大だ。
「オット、勘違いしないでくれよ。
オレは大将として、家来に見合った禄を支給するという役目があるんだ」
試合を合戦に見立てたトークは、オーナーが歴史好きという事をリサーチして、昨晩必死で考えたアイデアだ。
「ほーほー、如何にも一国の主っぽい感じだぬ!」
「プロ野球の監督なんて、ペナントという天下統一を目指す戦みたいなもんだし、どうやって制覇するのかは、選手の能力も勿論必要だけど、それを上手く使う大将の能力も問われるんだぜ?」
もっともらしい事を言ってるが、所詮は金に目が眩んだゲスな考えだ。
「素晴らしい!監督、是非とも我が軍を天下統一に導いてくれだぬーーーん!」
オーナーはガッチリと握手をした。
「任せなさいって!それより、オーナー賞シクヨロ頼むよ?」
「分かってるぬーーーん!明日からの三連戦はガッポリ儲けてくれだぬ!」
「あいよ~、任せてちょうだい!」
ちなみに選手やコーチにはオーナー賞は白紙になったとウソをついている。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる