The Baseball 主砲の一振 続編4

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16球団と、新しいチーム名

榊の独壇場

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翌日のスポーツ紙にはスカイウォーカーズの新球場と新しいチーム名が一面を飾った。


そのせいか、試合前櫻井の前にはたくさんの報道陣が。


「カントク、来年から新球場とチーム名が変わると発表がありましたが?」


「カントク、新しい球場はちょっとしたアミューズメントパークみたいだという事ですが、カントクご自身も球場を視察したのでしょうか?」


「チーム名がさいたまGlanzと変わりますが、このチーム名をどう思われますか?」


とにかく矢継ぎ早に質問が飛び交う。


「あの…シーズン中だし、視察もまだだし、チーム名に関してはボクがどうこう言える事でもないし…まぁ、これもプロ野球のならではの事だから」


櫻井は一介の監督にすぎない。


球場が変わろうと、チーム名が変わろうと、自分はチームをまとめて采配を振るのみ。


すると、ベンチから高級ブランドのスーツに身を固めた榊が満面の笑みで報道陣の前に現れた。


「榊さん…名古屋まで来たんですか?」


「おい、何しに来やがった?」


GMがビジターに同行するとは。


「いやぁ、諸君!ここにいる櫻井監督や中田ヘッドコーチは言わば雇われの身!
その2人に新しい球場やチーム名の事を聞いても大したコメントは残せないよ!
ここはGMでもあり、新しいチーム名の名付け親でもあるワタシがお答えしよう!」


「何言ってやがる、大体GMが名古屋まで来るかフツー」


「どうせ、この件について話をしたいから名古屋まで来たんですよ」


図星だ。


今日は新たな球場やチーム名について質問させるだろうと思い、名古屋まで足を運んだ。


「ええっと…榊GM。
確か、チーム名の名付け親はGMらしいですが、どういった意味でグランツと命名したのですか?」


記者が質問する。


待ってましたとばかりに、榊は誇らしげに答えた。


「キミ、中々良い質問をするね!よろしい、質問に答えようじゃないか。
グランツとは、ドイツ語で輝きを意味する。
我々はこの世界で常に光り輝く存在でなきゃならない…
そこでワタシは考えた。
輝くなら、スターでもいい。
しかし英語というのはあまりにも在り来りだ。
そんな時、ワタシはドイツ語を習っていた頃を思い出した」


「ウソつけ、テメーがドイツ語をいつ習っていたんだよ」


「よくもまぁ、こんなでまかせを堂々と言えますね」


櫻井と中田は冷ややかな眼差しを送る。


「チーム名にドイツ語を入れるなんて、日本球界では初めての事ですよ」


「その通り、チーム名は必ずしも英語じゃなきゃダメだという決まりは無い。
ワタシはドイツ語の他に、スワヒリ語も日常会話程度なら話せるんだが、スワヒリ語よりはドイツ語の方がしっくりくるかなと思い、敢えてドイツ語を選んだというワケだ」


いかにもという口調で熱弁を振るう。


「GMより詐欺師の方が向いてるんじゃないですかね」


「詐欺師の方がもっと賢いぞ」


ごもっとも。


「スワヒリ語はともかく、ドイツ語をチョイスしたGMのセンスはさすがですね!
でも、ドイツ語なんていつ勉強してたんですか?」


もう一人の記者が質問する。


「うむ、ワタシは高校を卒業して社会人野球を経てこの世界に入った。
最終学歴は高卒だが、せめて学力ぐらいは大卒レベルまで上げておかねばと社会人時代にドイツ語を学んだ…そのお陰で、新たなチーム名はドイツ語が相応しいと思い、グランツという言葉を選んだ」


デタラメもここまでくると、かえって清々しい。


「…偏差値最下位のバカ学校を留年ギリギリで卒業したクセに、何が大卒レベルだ!」


「平然とウソを言えるなんて、これもある種の才能ですかね」


聞いてるコッチが恥ずかしくなる…そんな思いで2人はサッサとベンチに引っ込んだ。






第3戦はスカイウォーカーズが5勝4敗と、ここ数試合は勝ち星に恵まれない東山。

対する99ersはルーキーながら5勝負け無しと勝ち運に恵まれている衛藤が先発。


衛藤はMAX142km/hと今のピッチャーにしては速くないストレートだが、90km/h台のスローカーブとスライダー、シンカー気味に沈むチェンジアップと落差の大きいフォークでバッターを牛耳る。


しかも、腕の振りがどの球種も同じで見分けがつかないせいか、バッターはタイミングが合わない。


ナダウ・ヤマオカ監督は衛藤を右のエースとして育てるつもりだ。



両チームのスターティングメンバーは次の通り。


スカイウォーカーズ


1レフト藤村
2ショート石川
3センター唐澤
4セカンド森高
5サード吉岡
6ライト鬼束
7ファースト結城
8指名打者ジョーンズ
9キャッチャー滝沢

先発 東山



99ers


1サード 比嘉 
2センター 吉川 
3ショート 飛鳥
4ファースト 風間 
5ライト 城戸
6セカンド 秋山 
7キャッチャー 外崎 
8レフト 窪田
9指名打者 バーグマン


先発 衛藤


マーリンズには白石、スカイウォーカーズには石川とリーグを代表するショートストップが攻守の軸として大きな働きを見せるが、99ersは飛鳥というショートストップがチームを支える。


前の2人に比べて派手さは無いが、基本に忠実で堅実な守備と、中距離ヒッターでコンスタントに3割 20本 30盗塁をマーク出来るバッティングが持ち味。


2番吉川、3番飛鳥のコンビが臨機応変なバッティングで99ers連覇のカギを握る。


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