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1 サモンサポーター
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人間と魔族との争いが終結を迎え、今年で280年。両者の間に確執があった事など昔の話で、今じゃ互いに良きパートナーだ。色んな意味で。
王都アウロラ。朝の名を冠するこの王都の商業区のその片隅。マーニャの薬草店の前の小道を右に曲がり、左手の階段を下へ。そのまま道なりに真っ直ぐ進んだ所にある、青い屋根のちょっと古びた薄暗い建物。それが俺の、―――訂正。俺達の店だ。
***
アレクには昔から、ちょっと特殊な才能があった。犬だとか猫だとか、つまりは動物の気持ちが何となくだが分かるのだ。直接言葉で伝わってくる訳じゃない。ただぼんやりと、ああ今こいつは嬉しいんだなとか、怒ってるんだな、とか。分かる人には分かるだろう。明確な意思表示をしている訳じゃない。けど、何となく伝わってくるもの。それをある日母親に何気なく話したところ、こう言われた。
「お前は共感力が強いのね」
なんだそれ、と幼いアレクは思った。後に知るところによると、共感力というのはつまり対象の魔力の波動を読み取る力。この才能に突出してる人間は、魔力を持つ相手、つまりは生命体が相手であればその魔力の波動を読み取り、その感情や生命力、果ては考え等を読み取る事が出来るのだそうだ。あくまで突出していればの話であって、アレクのそれはせいぜい人よりちょっと優れてるな、という程度。しかも読み取れる対象は何故か人外ばかり。これといって役に立つような事はなかったけれど、ある日転機は訪れた。
サモンビジネス。昨今流行しているビジネスで、つまりは魔界から魔族を呼び出して契約し、ビジネスパートナーとして一緒に働こう、というもので、これのサポーターとなれるような人材があちこちで求められていた。魔族の呼び出し、と言葉にするのは簡単だが、それにはなかなかの手間がかかる。召喚主となる人間を中心とした召喚用魔術陣を編み、次元1つあっちに向けて発動。向こうからの返事があれば、魔界からのお客様を迎えるべく魔術の波動をあっちからこっちの世界のそれへと調節して落とし、魔族を顕現させる。
この仕事には共感力が大いに関わるそうで、これに応募しない手はないなと暇を持て余していたアレクは街中の広告を見るなり応募したという訳だった。
その結果、今やアレクは王都ではそこそこに名の知れたサモンサポーターとしてそれなりに裕福な生活を送っている。
「アレク。客だ」
振り返る。ドアの隙間から金の目が2つ、こちらを見つめていた。
「あ、分かった。すぐに行く」
仕事道具を手に部屋を出る。ドアのすぐ向こうに、自分より頭1つ分背の高い男がアレクを待っていた。
名前をルディアス。無表情がデフォルトの男は、ぎょっとするほど綺麗な顔立ちに、深紅の長い髪が相まって酷く迫力のある美人に見えた。程よく鍛えられたしなやかな筋肉は服の上からでも分かるほどで、野暮ったい安い服を着てるというのに嫌味なほど様になる。
彼を表す言葉はいくつかある。仕事のパートナー、同居人。そして―――自身の契約相手。
そう、この男は、アレクがこの仕事を始めて最初に召喚した魔族だった。
「こんにちは、いらっしゃい。今日はどういった用件で?」
仕事部屋に入ると、長細いテーブルの向こう、2つ並べられた椅子の片方に青年が座っていた。学校を卒業してすぐくらいだろうか。この時期こういう年頃の客は多い。
「あっ、こ、こんにちは。予約もなくすみません……」
青年はフィークと名乗った。歳は17。今年から冒険者として故郷を出て旅に出るため、パートナーとなる魔族が欲しいのだとか。この季節は学校の卒業シーズンのためか、こういう仕事依頼が増える。それが悪いという訳じゃない。アレクとて、この仕事で食べているのだから。
「フィークさん。魔族の召喚は初めてですか?」
「はい。……あの、やっぱり初めてじゃダメ……ですかね」
ある意味では、とアレクは内心息をつく。
「いえ、そんな事ありませんよ。……ただ、魔族召喚についてどれくらいご存知かと思いまして。……気を悪くしたのならすみません」
慎重になるのには、理由があった。
この魔族召喚には、ちょっと問題があった。大事な大事な、契約の話だ。昔は呼び出した魔族に対価として血や臓器、果ては自分の寿命なんてものを支払っていた業者もあるらしいが、今そんな事をすれば間違いなくブラック企業の仲間入り。店の評判は地に落ちる。かといって魔族に対価を支払わない訳にはいかない。それならば、という事で魔族が対価として要求したのは、契約主の体だった。
肉とか血とか内蔵とか、そういう血生臭い話ではない。肉体関係。つまりは性的な関係だ。
人間の体には魔族のものとは違った質の魔力が流れており、多くの場合一定の条件を満たすとその魔力がぐんと濃度と深みを増してより一層鮮やかになる。それを取り込めば、肉体には瞬く間に力が満ち、極上の味に酔いしれる事が出来る。魔力を糧とする魔族にとって、それは常識と言って良いほどの知識だった。だからこそ、金銭も内蔵もいらない。代わりに極上の魔力を食わせてほしい、そういう事だった。
魔族と人間間には、両者の合意がないと子供が出来ない。つまりビジネスパートナーとしての間柄でいる限り、どれだけ体の関係を結ぼうと肉体的な問題はないという訳だ。
肉体関係と言っても、契約内容や相手の魔族の力によってもかなり差が出てくる。簡単な仕事の手伝い程度なら時々ちょっと交合うくらいの対価で済む事が多いし、一生の冒険のパートナーとして雇うとなればそれはもう実質プロポーズだ。実際結婚、出産を条件に契約を結んだペアも何度も見てきた。だからこそ、あまり生半可な気持ちで召喚に乗り切ってしまうのは良くない、というのがアレクの考えだ。
「けど、俺……ずっと冒険者になりたくて。それも、まだ魔族への偏見がある国もあるって聞いたから……大好きな魔族のために、そんな偏見や差別を無くしたくて……」
涙ながらに語る青年の、なんと健気な事か。対価について知っているのかと尋ねると、フィークは顔を赤くしてこくんと頷いた。知っててここに来たのなら、出来る事はない。いや、出来る事しかない。
「茶でも飲んで落ち着くと良い。体が温まる」
ルディアスが入れたばかりの紅茶をテーブルに置いた。お礼を言って振り向いたフィークが、その顔を見てパチパチと瞬きをする。
いや、分かる。初見はそうなるよな。
声には出さずアレクは心の中で労わるようにそう声をかけた。
「あっ、あ……ありがとうございます」
「どうぞごゆっくり体を休めてください。準備が出来たら奥の部屋へ。召喚から契約までサポート致します」
「……はい!」
紅茶を綺麗に飲み干したフィークを奥の部屋へと案内する。黒の分厚い布で壁一面を覆ったこの部屋はいつ来ても夜のように暗く、布のおかげで防音効果もある。そう広くはないが、召喚や契約を行うには十分だ。
「こちら、契約所と証明書になります。お読み頂けたら記入とフルネームでサインを。…………。ありがとうございます」
これからの注意事項や、召喚は必ずしも成功を約束するものではない事。そして、万が一の事態になった時には責任を持てない事。そういった内容の契約書だった。しっかりサインの入ったそれをルディアスに渡し、私室へと持ち帰ってもらう。ここから、アレクの専門分野だ。
「では、枠の中心へ。……はい、そこで大丈夫です。それでは、これより魔術陣を編みますので、周囲の魔力に求める魔族と契約内容を念じていてください」
「念じるだけでいいんですか?」
「はい。後は俺が読み取って、形にしますので」
「わ、分かりました」
両手を前に出し、魔力を集中させる。やがて魔力が青い光の粒となり、青年の周囲を漂い始めた。
「……そう。その調子です。お上手ですよ」
フィークの念と魔力に反応して、光の粒が集まりアレクの誘導によって魔術陣と形を変えていく。暗かった部屋は眩いほどに青い光で照らされて、魔力の波動で生じた風に服がはためいた。
光の中心で、フィークが祈るようにぎゅっと両手を握った。ぐん、と魔力の質があがる。それを助長してやるように魔力を集めれば、魔術陣の完成だ。
「…………」
それを、魔界の波長に合わせて発動。魔力を次元の向こうに飛ばすイメージで意識を集中させれば、向こうで応じた気配があった。今回はすぐに見つかって良かった。長ければ半日こうしていなければならない事もある。
自身の飛ばした魔力にしっかりと向こうの波動が掴まっているのを確認し、こっちの世界の波長に合わせてやる。それが重なった瞬間、魔術陣が強烈な光を発した。
「うわっ!」
フィークが驚いて悲鳴をあげる。光が収まると、フィークの目の前には1人の魔族が立っていた。彼より少し年下に見える少年だ。浅黒い肌に、黄色い大きな目が目立つ。背には薄く細長い透明な羽が2対。蟲属と呼ばれる種族だった。
「オレは蟲属のレーゲン! オレを読んだのは、オマエ?」
レーゲンと魔族は名乗った。にっかりと歯を見せて笑う姿は年相応で、可愛らしいとすら感じる。無邪気なその表情に、緊張でかたくなっていたフィークの頬が緩んだ。
「あ……ああ! 俺はフィーク。君達の……魔族への偏見をなくすために、世界中を回って魔族の力になりたい! 力を、貸してくれないか……?」
「オレ達のために……? オマエ、いい奴だなあ! うん、気に入った! オレ、オマエついてくよ!」
蟲属は魔族として力のある方ではないが、その分契約が結びやすい。初心者にはうってつけの相手と言えるだろう。召喚に応じてくれた時点でほぼほぼ契約は結べたも同然だが、実際に会ってみて思ってたのと違うと帰られてしまう事もある。そうならずによかった、とそっと安堵の息を吐く。
「本当に! ああ、ありがとう、嬉しいよ!」
「仲良くしような、フィーク!」
「もちろん!」
兄弟のように、親友のように笑い合って寄り添う2人はとっくに成人を迎えたアレクからすればちょっと眩しい。こんな頃もあったなあ、とつい遠い目をしてしまう。
「なー、フィーク、オマエの魔力……ちょっと食べてみたいなあ」
下から除きこまれ、フィークがえっと言葉に詰まった。契約が成立したんだ。ならば次は対価の話になるだろう。当然の流れだ。
実は、ここからもアレク達の仕事になる。契約成立したペアが、まず初めにすべき事。最初の対価。内金と表現するのが近いだろうか。口付け1つで終わる場合は良い。自分に出来ることはない。ただ、そうはいかないのがほとんどの場合だ。魔術陣が消え、すっかり暗さを取り戻した部屋に、おろおろとしたフィークの声が響く。
「え、えっと…………いきなり、するのか?」
「うん。したい。ダメ?」
「だ、ダメ……じゃない。俺も、ちゃんと分かって召喚したから……」
ぱ、とレーゲンが表情を明るくする。
「それでは、ここからはこちらがお手伝いしますね」
「うん、頼む!」
魔族は大体の場合、初めて召喚されてこちらにやってくる。つまり人間と関係を結んだ事がないのだ。当然、肉体関係を持ったこともない。魔力濃度を高めてやりたくとも、その方法が分からないということだった。それを手伝い、最後まで契約成立を見届けてこそ、自分達の仕事となる。
「フィークさん、少し肌に触れますが……大丈夫ですか?」
歩み寄り、確認すると、理由はちゃんと分かってくれてるんだろう。フィークは素直に頷いた。
「良かった。では、その場で大丈夫です、腰を下ろして。……はい。では、少し服を寛げますね……」
下の衣服に触れやすいよう広い外套のような上着の前を寛げてやると、体の線に沿うような上下の衣服が現れた。最近の少年の間で流行しているその服はぴっちりとしていて、こういう場面で目にすると少々目に毒だ。
「いいですか、レーゲン様。人間の体は、ここで快感を感じます」
ここ、とフィークの股間を優しく撫でる。びく、と驚いたように腰が跳ねた。
「ここ、か……。分かった。オレ達と変わんないんだな。……触ってもいいか?」
「あ……う、うん」
細い指が、まだ静かなフィークのそこをまた撫であげる。少し強い力だったからか、ズボンを少し押し上げるほどそこは反応を示した。
「ぅ……ふっ、」
「へへ……気持ちいーか? フィーク」
「あっ、……う、……ん」
同じ動きを何度も繰り返すレーゲンは楽しそうだが、フィークはもどかしそうだ。無理もない、服の上からさすられてばかりいるんだ。弄りたくもなるだろう。
「すげえ、大きくなってきた……」
レーゲンの息があがる。楽しげだった雰囲気が色を帯び、黄色かった目に徐々に赤みが混ざり始める。興奮すると目や髪等体の一部に変化が生じる、というのも多くの魔族の特徴だった。
「ぁ、……あ……っ」
ずり、とズボンが音を立てるほど強く摩られ、再びフィークの腰が跳ねた。緩やかに伸ばしていた足が無意識だろう開かれ、淫靡な雰囲気が漂う。
「な、サポーター、こっからどうすればいいのか教えてくれよ……」
「はい。レーゲン様は、普段自慰はどのように?」
「えっ、そりゃ、性管を取り出して、刺激して種を出すけど……」
レーゲンがきょとんと目を丸くした。虫属にとっての性管、とは人間でいうところの性器だ。多くの虫属にとって、性管は人間の性器とそう大きな差があるものではない。無論、例外はあるが。
自慰の概念がある相手で良かった。そうでなければまずそこから説明せねばならなかった。
「それと同じです。ただ、人間の性管は短く敏感なので、優しく扱う事。出来ますね」
力強く頷いたのを確認し、ひと言断ってからフィークのズボンをずり下げた。ぶるんと勢いよく勃ち上がっていた性器が飛び出した。年頃の子らしく、まだ若い、けどしっかりと使われた跡の残るそれ。先端は僅かに滲んだ先走りで濡れていた。
「これを、こうして、包み……」
「ぁ、あっ!」
手で丸を作って、その中に収めてやるようにすると、また腰が大きく震えた。ぷく、と透明な雫が先端から生まれる。羞恥で真っ赤に染まった顔を僅かにアレクとレーゲンから逸らし、けれど目を閉じないようにする姿が健気だ。
「ゆっくりと上下に動かします」
「ひっ、ん、ぁあ……っ」
「うん……」
くちゅ、と手の平から濡れた音がする。見入っていたレーゲンが、ごそごそと腰を揺らした。刺激を求めてゆっくりと腰を動かし始めたフィークの姿にあてられたのだろうか、股間がしっかり膨らんでいる。虫属のそれは人間と比べて太さこそ変わらないものの長さがある。顔に似合わず膨らみが大きい事を認識してしまい、未来のフィークを労わった。
「さ、どうぞやってみて下さい」
「分かった。……手をこうして、包んで……」
はあ、と熱い息。怖々とした手付きがもどかしいのか、フィークがそろそろとこちらに目を向けた。潤んだ目で自身を包む細い手を見つめ、呟くように口を開く。
「……ぁ……、も、少し、強くしても、大丈夫……」
「そ、そうか」
ゆっくりと握る力が強まった。刺激を感じたのだろう、ん、と甘い声がフィークから漏れる。
「上下に動かすんだな……」
「ぁ、あ! ん……っ、……!」
拙いながらも、感じさせてはいられるらしい。切なげに眉を寄せ、フィークは息を荒らげていく。さら、と踵が床の布を掻いた。
―――くち、……ぷちゅ。……ずちっ。
徐々に音が粘度を帯びてきた。レーゲンが小さく上下させていた手の動きを大きくすると、気持ちが良いのだろう、ゆるゆるとフェークの腰が揺れ始める。
「時々、ここを親指でこうして……刺激されるのも良いかと」
しばらく様子を見守っていたアレクだったが、蜜を零す鈴口を、ほんの少し親指で円を描くよう弄ってやる。
「ぁ、あああっ! ゃ、やだぁあ……っ!」
一際大きい声があがった。後ろについていた手が震え、力が入らなくなったのか肘をつく。ふるふると腰を震わせる様は、爽やかな青年という最初の印象が嘘のように色を纏っていた。びん、と硬度を増した性器が力強く上を向き、腰の揺れに合わせて震える。他人に触られる事に慣れていないのだろう、いくらも刺激していないというのに限界が近そうだという事が分かった。が、レーゲンは『やだ』という言葉に反応してか、すっかり手の動きを止めている。
「い、嫌だって言ってるぞ? 大丈夫なのか?」
「はい。大丈夫です。今のは快感からの喘ぎですので」
「じゃ……ここ?」
「ぁ、ああっ! ゃ、も、……くぅうっ……! 出、るぅっ……」
何度もそこを弄られ、上下に竿を扱かれて。瞳に涙を浮かべてフィークは腰を大きく跳ねさせた。
「ひあ、ぁ、あう…っ! 出る、ぁ、も、……あっ、あくっ、ぅうう!!」
甲高い声が上がり、フィークの体がぶるぶると震えた。と思えば、握られていた性器が白い液を吐き出す。腹の上まで散ったそれに、レーゲンは恍惚とした様子で唇を寄せた。
「うわあ……これが、人間の……」
そうして口から物理的に。そして目には見えないところでも、濃度の高まった魔力をレーゲンは余すところなく吸収していく。実際に体を繋げる行為とは違い、手淫で高められる魔力には限界がある。だというのに味わった魔力にこれまでにない幸福感と満足感、そして快感を感じ、虫属特有の羽が喜びにぶるぶると震えた。
は、は、と荒い息を吐き出すフィークに、レーゲンが口付ける。濡れた水音が終わるのを待って、アレクは2人に声をかけた。
「ここを優しく刺激してやるのが、最初は良いかと。また深く知りたい事があればいつでもお尋ねください」
王都アウロラ。朝の名を冠するこの王都の商業区のその片隅。マーニャの薬草店の前の小道を右に曲がり、左手の階段を下へ。そのまま道なりに真っ直ぐ進んだ所にある、青い屋根のちょっと古びた薄暗い建物。それが俺の、―――訂正。俺達の店だ。
***
アレクには昔から、ちょっと特殊な才能があった。犬だとか猫だとか、つまりは動物の気持ちが何となくだが分かるのだ。直接言葉で伝わってくる訳じゃない。ただぼんやりと、ああ今こいつは嬉しいんだなとか、怒ってるんだな、とか。分かる人には分かるだろう。明確な意思表示をしている訳じゃない。けど、何となく伝わってくるもの。それをある日母親に何気なく話したところ、こう言われた。
「お前は共感力が強いのね」
なんだそれ、と幼いアレクは思った。後に知るところによると、共感力というのはつまり対象の魔力の波動を読み取る力。この才能に突出してる人間は、魔力を持つ相手、つまりは生命体が相手であればその魔力の波動を読み取り、その感情や生命力、果ては考え等を読み取る事が出来るのだそうだ。あくまで突出していればの話であって、アレクのそれはせいぜい人よりちょっと優れてるな、という程度。しかも読み取れる対象は何故か人外ばかり。これといって役に立つような事はなかったけれど、ある日転機は訪れた。
サモンビジネス。昨今流行しているビジネスで、つまりは魔界から魔族を呼び出して契約し、ビジネスパートナーとして一緒に働こう、というもので、これのサポーターとなれるような人材があちこちで求められていた。魔族の呼び出し、と言葉にするのは簡単だが、それにはなかなかの手間がかかる。召喚主となる人間を中心とした召喚用魔術陣を編み、次元1つあっちに向けて発動。向こうからの返事があれば、魔界からのお客様を迎えるべく魔術の波動をあっちからこっちの世界のそれへと調節して落とし、魔族を顕現させる。
この仕事には共感力が大いに関わるそうで、これに応募しない手はないなと暇を持て余していたアレクは街中の広告を見るなり応募したという訳だった。
その結果、今やアレクは王都ではそこそこに名の知れたサモンサポーターとしてそれなりに裕福な生活を送っている。
「アレク。客だ」
振り返る。ドアの隙間から金の目が2つ、こちらを見つめていた。
「あ、分かった。すぐに行く」
仕事道具を手に部屋を出る。ドアのすぐ向こうに、自分より頭1つ分背の高い男がアレクを待っていた。
名前をルディアス。無表情がデフォルトの男は、ぎょっとするほど綺麗な顔立ちに、深紅の長い髪が相まって酷く迫力のある美人に見えた。程よく鍛えられたしなやかな筋肉は服の上からでも分かるほどで、野暮ったい安い服を着てるというのに嫌味なほど様になる。
彼を表す言葉はいくつかある。仕事のパートナー、同居人。そして―――自身の契約相手。
そう、この男は、アレクがこの仕事を始めて最初に召喚した魔族だった。
「こんにちは、いらっしゃい。今日はどういった用件で?」
仕事部屋に入ると、長細いテーブルの向こう、2つ並べられた椅子の片方に青年が座っていた。学校を卒業してすぐくらいだろうか。この時期こういう年頃の客は多い。
「あっ、こ、こんにちは。予約もなくすみません……」
青年はフィークと名乗った。歳は17。今年から冒険者として故郷を出て旅に出るため、パートナーとなる魔族が欲しいのだとか。この季節は学校の卒業シーズンのためか、こういう仕事依頼が増える。それが悪いという訳じゃない。アレクとて、この仕事で食べているのだから。
「フィークさん。魔族の召喚は初めてですか?」
「はい。……あの、やっぱり初めてじゃダメ……ですかね」
ある意味では、とアレクは内心息をつく。
「いえ、そんな事ありませんよ。……ただ、魔族召喚についてどれくらいご存知かと思いまして。……気を悪くしたのならすみません」
慎重になるのには、理由があった。
この魔族召喚には、ちょっと問題があった。大事な大事な、契約の話だ。昔は呼び出した魔族に対価として血や臓器、果ては自分の寿命なんてものを支払っていた業者もあるらしいが、今そんな事をすれば間違いなくブラック企業の仲間入り。店の評判は地に落ちる。かといって魔族に対価を支払わない訳にはいかない。それならば、という事で魔族が対価として要求したのは、契約主の体だった。
肉とか血とか内蔵とか、そういう血生臭い話ではない。肉体関係。つまりは性的な関係だ。
人間の体には魔族のものとは違った質の魔力が流れており、多くの場合一定の条件を満たすとその魔力がぐんと濃度と深みを増してより一層鮮やかになる。それを取り込めば、肉体には瞬く間に力が満ち、極上の味に酔いしれる事が出来る。魔力を糧とする魔族にとって、それは常識と言って良いほどの知識だった。だからこそ、金銭も内蔵もいらない。代わりに極上の魔力を食わせてほしい、そういう事だった。
魔族と人間間には、両者の合意がないと子供が出来ない。つまりビジネスパートナーとしての間柄でいる限り、どれだけ体の関係を結ぼうと肉体的な問題はないという訳だ。
肉体関係と言っても、契約内容や相手の魔族の力によってもかなり差が出てくる。簡単な仕事の手伝い程度なら時々ちょっと交合うくらいの対価で済む事が多いし、一生の冒険のパートナーとして雇うとなればそれはもう実質プロポーズだ。実際結婚、出産を条件に契約を結んだペアも何度も見てきた。だからこそ、あまり生半可な気持ちで召喚に乗り切ってしまうのは良くない、というのがアレクの考えだ。
「けど、俺……ずっと冒険者になりたくて。それも、まだ魔族への偏見がある国もあるって聞いたから……大好きな魔族のために、そんな偏見や差別を無くしたくて……」
涙ながらに語る青年の、なんと健気な事か。対価について知っているのかと尋ねると、フィークは顔を赤くしてこくんと頷いた。知っててここに来たのなら、出来る事はない。いや、出来る事しかない。
「茶でも飲んで落ち着くと良い。体が温まる」
ルディアスが入れたばかりの紅茶をテーブルに置いた。お礼を言って振り向いたフィークが、その顔を見てパチパチと瞬きをする。
いや、分かる。初見はそうなるよな。
声には出さずアレクは心の中で労わるようにそう声をかけた。
「あっ、あ……ありがとうございます」
「どうぞごゆっくり体を休めてください。準備が出来たら奥の部屋へ。召喚から契約までサポート致します」
「……はい!」
紅茶を綺麗に飲み干したフィークを奥の部屋へと案内する。黒の分厚い布で壁一面を覆ったこの部屋はいつ来ても夜のように暗く、布のおかげで防音効果もある。そう広くはないが、召喚や契約を行うには十分だ。
「こちら、契約所と証明書になります。お読み頂けたら記入とフルネームでサインを。…………。ありがとうございます」
これからの注意事項や、召喚は必ずしも成功を約束するものではない事。そして、万が一の事態になった時には責任を持てない事。そういった内容の契約書だった。しっかりサインの入ったそれをルディアスに渡し、私室へと持ち帰ってもらう。ここから、アレクの専門分野だ。
「では、枠の中心へ。……はい、そこで大丈夫です。それでは、これより魔術陣を編みますので、周囲の魔力に求める魔族と契約内容を念じていてください」
「念じるだけでいいんですか?」
「はい。後は俺が読み取って、形にしますので」
「わ、分かりました」
両手を前に出し、魔力を集中させる。やがて魔力が青い光の粒となり、青年の周囲を漂い始めた。
「……そう。その調子です。お上手ですよ」
フィークの念と魔力に反応して、光の粒が集まりアレクの誘導によって魔術陣と形を変えていく。暗かった部屋は眩いほどに青い光で照らされて、魔力の波動で生じた風に服がはためいた。
光の中心で、フィークが祈るようにぎゅっと両手を握った。ぐん、と魔力の質があがる。それを助長してやるように魔力を集めれば、魔術陣の完成だ。
「…………」
それを、魔界の波長に合わせて発動。魔力を次元の向こうに飛ばすイメージで意識を集中させれば、向こうで応じた気配があった。今回はすぐに見つかって良かった。長ければ半日こうしていなければならない事もある。
自身の飛ばした魔力にしっかりと向こうの波動が掴まっているのを確認し、こっちの世界の波長に合わせてやる。それが重なった瞬間、魔術陣が強烈な光を発した。
「うわっ!」
フィークが驚いて悲鳴をあげる。光が収まると、フィークの目の前には1人の魔族が立っていた。彼より少し年下に見える少年だ。浅黒い肌に、黄色い大きな目が目立つ。背には薄く細長い透明な羽が2対。蟲属と呼ばれる種族だった。
「オレは蟲属のレーゲン! オレを読んだのは、オマエ?」
レーゲンと魔族は名乗った。にっかりと歯を見せて笑う姿は年相応で、可愛らしいとすら感じる。無邪気なその表情に、緊張でかたくなっていたフィークの頬が緩んだ。
「あ……ああ! 俺はフィーク。君達の……魔族への偏見をなくすために、世界中を回って魔族の力になりたい! 力を、貸してくれないか……?」
「オレ達のために……? オマエ、いい奴だなあ! うん、気に入った! オレ、オマエついてくよ!」
蟲属は魔族として力のある方ではないが、その分契約が結びやすい。初心者にはうってつけの相手と言えるだろう。召喚に応じてくれた時点でほぼほぼ契約は結べたも同然だが、実際に会ってみて思ってたのと違うと帰られてしまう事もある。そうならずによかった、とそっと安堵の息を吐く。
「本当に! ああ、ありがとう、嬉しいよ!」
「仲良くしような、フィーク!」
「もちろん!」
兄弟のように、親友のように笑い合って寄り添う2人はとっくに成人を迎えたアレクからすればちょっと眩しい。こんな頃もあったなあ、とつい遠い目をしてしまう。
「なー、フィーク、オマエの魔力……ちょっと食べてみたいなあ」
下から除きこまれ、フィークがえっと言葉に詰まった。契約が成立したんだ。ならば次は対価の話になるだろう。当然の流れだ。
実は、ここからもアレク達の仕事になる。契約成立したペアが、まず初めにすべき事。最初の対価。内金と表現するのが近いだろうか。口付け1つで終わる場合は良い。自分に出来ることはない。ただ、そうはいかないのがほとんどの場合だ。魔術陣が消え、すっかり暗さを取り戻した部屋に、おろおろとしたフィークの声が響く。
「え、えっと…………いきなり、するのか?」
「うん。したい。ダメ?」
「だ、ダメ……じゃない。俺も、ちゃんと分かって召喚したから……」
ぱ、とレーゲンが表情を明るくする。
「それでは、ここからはこちらがお手伝いしますね」
「うん、頼む!」
魔族は大体の場合、初めて召喚されてこちらにやってくる。つまり人間と関係を結んだ事がないのだ。当然、肉体関係を持ったこともない。魔力濃度を高めてやりたくとも、その方法が分からないということだった。それを手伝い、最後まで契約成立を見届けてこそ、自分達の仕事となる。
「フィークさん、少し肌に触れますが……大丈夫ですか?」
歩み寄り、確認すると、理由はちゃんと分かってくれてるんだろう。フィークは素直に頷いた。
「良かった。では、その場で大丈夫です、腰を下ろして。……はい。では、少し服を寛げますね……」
下の衣服に触れやすいよう広い外套のような上着の前を寛げてやると、体の線に沿うような上下の衣服が現れた。最近の少年の間で流行しているその服はぴっちりとしていて、こういう場面で目にすると少々目に毒だ。
「いいですか、レーゲン様。人間の体は、ここで快感を感じます」
ここ、とフィークの股間を優しく撫でる。びく、と驚いたように腰が跳ねた。
「ここ、か……。分かった。オレ達と変わんないんだな。……触ってもいいか?」
「あ……う、うん」
細い指が、まだ静かなフィークのそこをまた撫であげる。少し強い力だったからか、ズボンを少し押し上げるほどそこは反応を示した。
「ぅ……ふっ、」
「へへ……気持ちいーか? フィーク」
「あっ、……う、……ん」
同じ動きを何度も繰り返すレーゲンは楽しそうだが、フィークはもどかしそうだ。無理もない、服の上からさすられてばかりいるんだ。弄りたくもなるだろう。
「すげえ、大きくなってきた……」
レーゲンの息があがる。楽しげだった雰囲気が色を帯び、黄色かった目に徐々に赤みが混ざり始める。興奮すると目や髪等体の一部に変化が生じる、というのも多くの魔族の特徴だった。
「ぁ、……あ……っ」
ずり、とズボンが音を立てるほど強く摩られ、再びフィークの腰が跳ねた。緩やかに伸ばしていた足が無意識だろう開かれ、淫靡な雰囲気が漂う。
「な、サポーター、こっからどうすればいいのか教えてくれよ……」
「はい。レーゲン様は、普段自慰はどのように?」
「えっ、そりゃ、性管を取り出して、刺激して種を出すけど……」
レーゲンがきょとんと目を丸くした。虫属にとっての性管、とは人間でいうところの性器だ。多くの虫属にとって、性管は人間の性器とそう大きな差があるものではない。無論、例外はあるが。
自慰の概念がある相手で良かった。そうでなければまずそこから説明せねばならなかった。
「それと同じです。ただ、人間の性管は短く敏感なので、優しく扱う事。出来ますね」
力強く頷いたのを確認し、ひと言断ってからフィークのズボンをずり下げた。ぶるんと勢いよく勃ち上がっていた性器が飛び出した。年頃の子らしく、まだ若い、けどしっかりと使われた跡の残るそれ。先端は僅かに滲んだ先走りで濡れていた。
「これを、こうして、包み……」
「ぁ、あっ!」
手で丸を作って、その中に収めてやるようにすると、また腰が大きく震えた。ぷく、と透明な雫が先端から生まれる。羞恥で真っ赤に染まった顔を僅かにアレクとレーゲンから逸らし、けれど目を閉じないようにする姿が健気だ。
「ゆっくりと上下に動かします」
「ひっ、ん、ぁあ……っ」
「うん……」
くちゅ、と手の平から濡れた音がする。見入っていたレーゲンが、ごそごそと腰を揺らした。刺激を求めてゆっくりと腰を動かし始めたフィークの姿にあてられたのだろうか、股間がしっかり膨らんでいる。虫属のそれは人間と比べて太さこそ変わらないものの長さがある。顔に似合わず膨らみが大きい事を認識してしまい、未来のフィークを労わった。
「さ、どうぞやってみて下さい」
「分かった。……手をこうして、包んで……」
はあ、と熱い息。怖々とした手付きがもどかしいのか、フィークがそろそろとこちらに目を向けた。潤んだ目で自身を包む細い手を見つめ、呟くように口を開く。
「……ぁ……、も、少し、強くしても、大丈夫……」
「そ、そうか」
ゆっくりと握る力が強まった。刺激を感じたのだろう、ん、と甘い声がフィークから漏れる。
「上下に動かすんだな……」
「ぁ、あ! ん……っ、……!」
拙いながらも、感じさせてはいられるらしい。切なげに眉を寄せ、フィークは息を荒らげていく。さら、と踵が床の布を掻いた。
―――くち、……ぷちゅ。……ずちっ。
徐々に音が粘度を帯びてきた。レーゲンが小さく上下させていた手の動きを大きくすると、気持ちが良いのだろう、ゆるゆるとフェークの腰が揺れ始める。
「時々、ここを親指でこうして……刺激されるのも良いかと」
しばらく様子を見守っていたアレクだったが、蜜を零す鈴口を、ほんの少し親指で円を描くよう弄ってやる。
「ぁ、あああっ! ゃ、やだぁあ……っ!」
一際大きい声があがった。後ろについていた手が震え、力が入らなくなったのか肘をつく。ふるふると腰を震わせる様は、爽やかな青年という最初の印象が嘘のように色を纏っていた。びん、と硬度を増した性器が力強く上を向き、腰の揺れに合わせて震える。他人に触られる事に慣れていないのだろう、いくらも刺激していないというのに限界が近そうだという事が分かった。が、レーゲンは『やだ』という言葉に反応してか、すっかり手の動きを止めている。
「い、嫌だって言ってるぞ? 大丈夫なのか?」
「はい。大丈夫です。今のは快感からの喘ぎですので」
「じゃ……ここ?」
「ぁ、ああっ! ゃ、も、……くぅうっ……! 出、るぅっ……」
何度もそこを弄られ、上下に竿を扱かれて。瞳に涙を浮かべてフィークは腰を大きく跳ねさせた。
「ひあ、ぁ、あう…っ! 出る、ぁ、も、……あっ、あくっ、ぅうう!!」
甲高い声が上がり、フィークの体がぶるぶると震えた。と思えば、握られていた性器が白い液を吐き出す。腹の上まで散ったそれに、レーゲンは恍惚とした様子で唇を寄せた。
「うわあ……これが、人間の……」
そうして口から物理的に。そして目には見えないところでも、濃度の高まった魔力をレーゲンは余すところなく吸収していく。実際に体を繋げる行為とは違い、手淫で高められる魔力には限界がある。だというのに味わった魔力にこれまでにない幸福感と満足感、そして快感を感じ、虫属特有の羽が喜びにぶるぶると震えた。
は、は、と荒い息を吐き出すフィークに、レーゲンが口付ける。濡れた水音が終わるのを待って、アレクは2人に声をかけた。
「ここを優しく刺激してやるのが、最初は良いかと。また深く知りたい事があればいつでもお尋ねください」
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