緑の令嬢は敵役?

ヨルム

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1章

召喚と出会い

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「~~~。~~、~の~~~おう...」

カーテンの隙間から漏れる光がボクの意識を呼び起こす

「なにか夢を見たような、でも思い出せないな...まぁ分からないからいいか。」

なにか夢?を見ていたような気がするが思い出せないし、心当たりもないから多分くだらない事なんだと思い再度目を閉じる。

と、そこに扉を叩く音がなり続けざまに声がする。
「シオン様、おはようございます。」

2度寝は無理か、と諦め声のする方に言葉を返す
「入っていいよ」

言うが先かポットとティーカップを乗せた台を横手に声の主が扉を開く
「おはようございます、シオン様。今朝はどのお茶に致しましょうか?」

声の主である彼女はマリア
ウィンド家のメイド長であり、ボク付きのメイドさん

「おはよう、マリア。今日はお茶は遠慮しておくよ」

「左様でございますか、それではお水をご用意致しますね」

「うん、そうしてくれるとありがたいかな。」
言い終える頃にはコップに水が注がれ、サイドテーブルにことり、と置かれる

「フフ、これが私共の仕事ですから。いよいよ本日からですね...シオン様が居なくなると御屋敷も寂しくなります」

「あはは、でも長期休の間とかに顔は出すよ」

「私達はいつでもお帰りをお待ちしております、ここはシオン様のお家なのですから」

「うん、ありがとう。慣れない事も多いけど頑張るよ、時間にはまだ余裕ありそう?」

「えぇ、いつものアレですか?」

「うん、当面家じゃ出来なくなるしね」

「それでは、またお呼びに向かいますね」

「ありがとう、ボクも少し着替えて行くとするよ」


言い終えるとマリアは退出していく。
薄手のシャツに着替え屋敷の庭へと移動する、庭に出ると変わらず緑が溢れており思い切り深呼吸をする。

「ん~、ふぅ。やっぱり朝は気持ちいいね、それじゃ始めようかな」


丁寧に揃えられた芝の上に腰をおろし目を閉じる

体内を巡る魔力を捉え意識を集中し元々自然に流れる魔力を、意識して循環させて魔力を操る感覚をより強くしていく。

これはボクがここに来た日からしている日課である、そうして全身の魔力を認知したら次は体外に放出し球状に変化させ維持する。

そうして精神統一を兼ねた魔力コントロールをすること数十分、気配が近づく。
それと同時に魔力の球を消して立ち上がる。

「今日は早く感じたけどいつも通りの時間?」

「えぇ、少し前から見ておりましたが集中されていたようですね」

「そんな気はなかったんだけど、やっぱり名残惜しいんじゃないかな?」

「そうでしたか、それにしても相変わらず凄いコントロールで御座いますね」

屋敷へと戻りながらマリアと話す
家の人は皆褒めてくれるんだけど、比べる事もないから実感が湧かないんだよね

「ん~でも、これくらいのレベルならみんなできるんじゃないかな?それにボクはずっとやってるからイマイチ分からないや」

微笑みながら言葉を返さないマリアと共に少し歩を進め扉の前に着く。

「では、これからの学園生活で見極めてみてはいかがでしょう?きっと楽しいと思いますよ」

「うん、そうしてみるよ」

言葉を交わしながら扉を開く
そこでは2人が椅子に座り談笑している
「おはよう、父さん母さん」

「おはよう、シオン。いよいよね」
「うむ、規則とはいえやはり不安だ…やはり今からでも抗議するべきか」

微笑みながら挨拶を交わす母と不安そうに眉を顰める父

「なにも永遠というわけじゃないし帰っても来るんだから心配ないよ、ほら早くしないと朝食も冷めるよ」


言うと頷きながら朝食が始まる
父でありウィンド家現当主のモーラ・ウィンド
母のシャルフ・ウィンド
2人は実の親ではないがボクが物心着く前から育ててくれた人であり、今は本当の親と思っている。

捨てられていたボクを貴族でありながら、育ててくれた2人には感謝してもしきれない

「今更だけどありがとう、父さん 母さん」

珍しくこんな事を言うボクに2人は少し手を止め、すぐに微笑みを浮かべる(片方は涙と共に)

「あらあら、寂しくなったらいつでも帰って来ていいのよここはもうあなたの居場所なのだから」

「うむ、シャルフよ俺は少し用がてきた。やはりシオンを寮に住まわせる訳にはいかっ…ぐふっ」

ニコニコと笑顔を浮かべながら席を立とうとする父の首に手刀を叩き込んだ母

「このおバカさんの事は気にしないで楽しんで来なさい、きっとまだまだ楽しいことが見つかると思うわ」

「そうだね、さてなんだかしんみりしたけどそろそろ行くよ見送りとかはいいから父さんにも行ってきますって伝えててくれる?」

「あらそう?シオン、行ってらっしゃい」

「うん、行ってきます」



食事も終わり、自室へと戻りこれから毎日着る制服へと着替えていく。

「こうしてお手伝いするのも当分無くなると思うと残念です」

「あはは、マリアに会えるのも当分先だし言っておくよ。いつもありがとう」

「いえいえ、そのお言葉を頂けるだけで私共は冥利に尽きます。ではシオンお嬢様行ってらっしゃいませ」

「うん、行ってきます!」


荷物等は先に送ってあるから、あとは学園へと向かうだけである。
マリアとも挨拶を交わし見慣れた屋敷の門を潜り待っていた馬車へと乗り込む。

「いよいよですね、シオン様」

「うん、よろしく頼むよ」

馭者と少し話し、鞄の中から本を取り出し開く。


取り出した本は魔法に関する物で色々な魔法や魔法陣の事が記されている。

「シオン様、その本の魔法は使えるんですか?」

「う~ん、ある程度は使えるよ。どうしてだい?」

「いえ、理由があるわけじゃないんですが…シオン様は目立つのは」
「嫌い」
馭者が言い終えるより早く質問に応える
貴族と言うだけで目立つし、そもそもにボクは目立ちたくはないんだよね。
でもなぜいきなりそんな話になったんだろうか

「お言葉ですが、奥様や旦那様からなにか言われてはおりますか?」

「?特に何も言われてないよ、それがどうかした?」

「これを私が言ったとは口にしないで下さいよ?」
そう前置きボクにとって驚きの事を言う

「あくまでシオン様のご意志を尊重して申しますとその本の魔法や本来の魔力コントロールは、必要な時が来るまでは隠して置いた方がいいかと」

「どうしてだい?他の7貴族の面々や才ある人ならこれくらいは出来ると思うんだけど」

(奥様方も人が悪い…外との関わりをなるべく絶っていて自分に自信を持たないシオン様にこういう形で自覚を持たせ成長させるとは。それにしてもシオン様は御自身の凄さに自覚がないんでしょうか……)

「…いえ、恐れ多いですがまずは周囲のレベルを計った方がよいかと」

ふむ、彼が言うなら間違いでは無いんだろう
「むぅ、目立つのも嫌だけどそういうのも苦手だなぁ」

多分今のボクの顔はかなりむくれてるだろう
「ハハハ、ですが今のシオン様の実力は新入生の範疇を超えております。他の7貴族の方々がどうかは分かりかねますが、目立ちたくないのでしたら控え周りに合わせる方がよいかと」

「うぅ~、急に学園が嫌になって来たよ。じゃあもしかしてだけど使える属性とかも?」

「左様でございます、象徴である風属性。派生属性等は使わない方がよいかと」

「目立ちたくはないからなるべく使わないけど、試験とか不安になってくるよ」

「では、その制限 縛りを己に課した上で結果を残し自己を磨いていくと言うのを課題にしてみてはいかがでしょう?」

うぅむ、確かに色々便利な魔法 強い魔法を使えるけど色々な属性や応用ありきだから、それを抑えて結果を残すのも修行にはなるか…

「うん、そうしてみるよ。ちなみに魔力量の方は…」

「測定器を誤魔化すのは至難ですのでそこはシオン様次第になるでしょう」

「うぅ~色々ありがとう…」

そんなこんなでやり取りを交わすうちに学園が見えてくる。


王国内で唯一の魔法専門の学園であり、国内の学生は基本的にこのにセント・ルミナシア学園入学する。
 


「では、シオン様私はここで失礼致します」

「うん、色々とありがとう。そっちも帰り道気をつけてね」

「ご心配頂きありがとうございます、では良き学園生活を」


馭者に別れの挨拶を告げ見送る
「さて、なんだか少しめんどくさそうだけどいよいよだ。それにしてもおっきぃな~」

国王様達が住まう城並に大きいんじゃないかと思う大きさに思わず声が漏れる

さ~て、とりあえず今日は何も無いし寮の部屋に入って荷解きと明日の準備だね

「ここにいても仕方ないしちゃちゃっと行こっと」


そうして寮に向けて歩く事数十分

「この学園広すぎやしないかい?いくら歩いても寮らしき建物が見えないんだけど…」

全部似た外観の建物が多く、他の生徒や教師の姿も見当たらない為に少し迷ったのかもしれない。


「うぅ~、わけがわからないよこの学園!」

「なんだ迷子か?新入生」

「ひゃっ!?」

「そんなに驚く事はないだろう?で、迷子か?」

ボクが声をあげた瞬間背後から声がした為らしくない声が漏れてしまう。
というかさっきから迷子迷子って失礼だね

「んっ、違います。これから過ごす場所なので先に見て回ろうと思ってたんです」
恥ずかしさも相まって咄嗟に嘘を並べる、が相手はお見通しなのか薄く意地の悪い笑みを浮かべる

「ほう、それは関心だな。校舎の正面玄関の場所や寮の場所は把握できたか?」

「ぅ、それは今から確認しに行くところです」

見たところ教師っぽい男は、ヤレヤレと言ったふうに首を振る

「そうか、だったら俺も今から寮に物届けに行くんだが一緒にいいか?」

どうやら寮に用事があったらしい、これはありがたい。
案内人になってもらうとしよう
「じゃあお願いします」

「ククッ、はいはい」
赤子をあやすような対応に少しムッとするが気にしては居られない。

「で、お前名前は?」

「ボク?」
他に居ないだろと笑いながら返される

「シオン シオン・ウィンドです」

「ウィンド?驚いたまさかの7貴族か」

「まぁ、はい」
正直貴族だとかで見られるのは嫌いだ、ボクは血筋はウィンド家ではないし単なる養女でしかない。
なのに特別な扱いをされて距離を置かれるのは お前は違うんだ と言われてるように感じるし実際そうなんだと思ってしまう


「まさか深窓の令嬢だったとは、にしてもその口調疲れねぇの?」

「!いつから?」
気になるワードもあったけどすぐ気づかれるとは思わなかったから、すぐに聞き返してしまう

「いや…(実は同じ所ぐるぐる迷ってて独り言も聞こえてたから、とは言えんな流石に)なんとなくそんな気がしただけだ」

結構鋭い?のかな
まぁバレたならいっか、ボクも楽だし

「ん~バレたならいいや、疲れるし」

「えらくあっさりとしてるんだな」

「そう?別に今は学生だし気にしないよそんなの」

「それもそうか」
(普段表舞台にほとんど出てこないし存在すら怪しまれてたウィンド家の令嬢がまさかこんな変わったやつだとは…こりゃ確かにアイツも心配になるわ)

背中辺りまで伸びたエメラルドの様な色の綺麗な髪に、透き通る様なキメ細かい肌
薄い桜の色の唇に少し眠そうな印象を与えるたれ目がちな緑色の瞳
胸は……普通だが健康的な太腿と見た目はかなり整っているだろう。

見た目だけなら心配もいらないんだろうが、恐らくコイツは自分に関するあらゆる物に自覚がない。
寧ろ下とさえ思ってる可能性がある、たまたま教師でありたまたまウィンド家の現当主とは旧知の中だった為よろしくと言われたが…厄介な3年間になりそうだ



「そういえばまだ先生の名前が」

「あん?いずれ分かるだろうよ、ほら着いたぞここが寮だ。間違えても男子寮の方に行くんじゃないぞ~」
言うだけ言い「じゃあな」とこちらに背を向け歩き出す彼にお礼を言うことも出来ず、寮の扉を開く


そこには見知った顔があり、見た限り全員先程到着したようだ。

「はぁ、シオン?まさかまた迷っていたのではなくて?」
開口1番ボクの迷子を疑うのは雷の7貴族長女であるレイラ・ボルト

「そんな訳ないよ、今だってたまたま用事があった先生?と一緒にここまで来たんだから」

言い終えると、皆またかって顔をしている
「む、疑ってるのかい?ボクは迷子でも方向音痴でもないよ」
「はいはい、分かったからさっさと行くわよ。みんなアンタ待ちだったんだから」
そう言いながらボクの手を引き、受付に進むのは水の7貴族 サリア・アクア

「わわっ、サリア急に危ないじゃないか」

「はいはい、とっとと歩く」

受付に着き管理人さんに名前を告げ部屋の鍵を貰い、魔力登録を済ませる
鍵と言ってもカードのような形で、コレで自室の開閉や食堂の利用などあらゆる物に対応しているようだ。
無くさないようにしないと、と思いながらみんなのもとに戻る

「お待たせ、わざわざ待ってくれてありがとう」

「お気になさらず、シオンちゃんもお久しぶりですですね」

「うん、ルミアも皆も久しぶり。半年ぶりかな?」

「いやいや、1年ぶりだぜ」

「そんなに経ってたんだ」

「まぁ最後にあったのがシオンの誕生日パーティだもんね、久しぶり!」


光の7貴族ルミア・ライト
火の7貴族マグナ・バーン
土の7貴族ニア・アース
「あれ?アルスは?」
見当たらない闇の7貴族アルス・ダークのことを尋ねる

「あぁ、アルスならもう部屋で寝てるわ」

「まぁシオンちゃんも来たことですしお食事時には来られるでしょう」

「そっか、じゃあボクも部屋の片付けあるから部屋に行こうかな」
これから過ごす部屋だし気になってたんだよね

「じゃあ僕達もまだだし、終わらせてご飯にしようよ!」

「そうね、7人での食事も久しぶりだしそうしましょ」

「じゃあしゅっぱーつ!」
ニアの一声で各々部屋に向かい終わり次第何故かボクの部屋に集まる事になった






予め送っておいた荷物 と言っても最低限の私服と私物 後は大量の本を棚に入れるだけの作業だしすぐに終わる

一息つこうと紅茶を入れていると扉が叩かれた

扉を開けると先程はいなかった人物アルスが居た

「やぁアルス、久しぶりだね」

「あぁ久しぶり、忙しかったか?」

「いや、今からお茶にしようかと思ってたんだ。お茶菓子とかはないけど飲むかい?」

「あぁ、貰う」

「うん、入りなよ」

「失礼する」

そうして鍵をかけるのを忘れつつもお茶の用意を進めていく。

「何にしようかな~」
茶葉を選びながら空間魔法であるボックスになにか作り置きのお菓子がないかと探し、用意を終えリビングへと運ぶ

が、テーブルにアルスの姿は無い
「アルス?はぁまたか…本当によく寝るなぁ」
大方ベッドだろうと見当をつけると案の定眠るアルスが居た
「アルス、お茶の用意できてるよ~ほら起きて」
丁寧に布団まで被り眠るアルスを、ベッドに半身乗り込み揺さぶり起こす

「アールースー」
こうなったアルスは中々起きないからいつも苦労するんだよね、皆はまだマシだって言うけど絶対嘘だと思ってる


「もうっ、起きてってば!」
少し強く声をあげると突然身体がくるんと回り気づけば身体が横を向いていた

「あ、アルス??起きてるんでしょ?」
若干戸惑いながらも問いかけるけど、返答はなく代わりに彼の腕がボクの身体に回され抱き締められた。


「んっ、もう、イタズラも程々にしないと怒るよ!」
ボクの抗議は虚しくも空気に溶けていく
「ひぅっ、あるす?ねぇってば、ぁ」

より強く抱き締められ首筋にアルスの息がかかる
そしてこの状況を理解すると同時に顔に熱が集まり、首にかかる息が余計敏感に感じ取れるようになってしまう。


「っ、なに、このかんかく…ぼくこんなの、し、らにゃいぃ」
恐らく抱き枕と勘違いしているのだろう

彼の腕はボクの腕を抑え、もう片方の手でシャツの上からお腹を触っている
そして足はボクの足と絡み合い、時たま動く彼の足が、太ももや足にこそばゆい感覚を与える

「ね、ねぇあるす?おきてるんでしょ?ねぇったらぁ!」

再度抗議の声をあげるも直後に後悔する
耳障りと思ったのか、またボクの身体をコロンと転がしボクの顔を抱き込んだのだ


「なななっ、んっ、この体制...だめかも…」

目を開けば少しはだけたシャツから覗くアルスの素肌、その視線を少し上に向けると気持ちよさそうに眠る寝顔がチラりと見える。
先程は見えるものも何も無かったけど、この体制では視界には彼が写り、目を閉じても感覚が鋭くなりなおかつ彼の胸元にボクの吐息がかかっている。


あうぅ、多分今のボクの顔真っ赤だよ~もういっそ誰か穴に埋めて欲しい…

「ひぁっ、ゃぁあ…///」

向かい合わせになった事によりぉ、ぉ、お尻…や腰を撫でられ、足はボクの足の間に割り込むように侵入してくる

味わったことのない感覚に戸惑い、恐怖から涙が滲む

と同時に扉が叩かれる音がする

「ぁう、るみあぁたすけてぇぇ」

無論、届くはずがない
そんな間もアルスはすやすやと寝息をたてており、髪の毛にその息がかかっている。


「!?んっ!」
どうにか方法はないかと考えていた時に身体全身に電流が走り抜けた

寝づらい体制だったのか身体をアルスが動かしたのだろう、先程までは腰周りだった腕はボクの割れ目にあてがわれ膝は秘部に強く押し付けられた。
頭を抱えていた腕はそのまま首筋に触れながら背中に移動していく
今まで感じた事のない感覚に頭が追いつかない
その感覚が怖くて泣きそうになった時扉が開く音がした

「シオンちゃん?」
滲む視界の先で心配そうな顔をしたルミアが映る


「る、るみぁ?ひぅ//た、たすけてぇ!ぼくこ、なの、しらにゃいぃ///」

泣こうが泣きつこうが恥なんてなくて、この感覚から逃げたい一心で懇願しているボク
息は乱れ顔も紅くて、口元からは少し唾液が漏れ涙が流れている
うぅ、こんなみっともないのルミア達にも見られたくなかった…

「シ、シオンちゃん?ちょっと待っててくださいね!」
言うと同時にルミアの周りに魔力が集まり出す

「ホーリーボール!」
咄嗟に放たれた小さい魔法はアルスの頭に直撃した、んだけど

「っっっっっ!ひぁぁぁああ!」
防衛本能によりアルスの手足に力が入り、より強い刺激にボクの頭が真っ白に弾け飛ぶ

「!なんだ?」
ボクの嬌声と魔法の衝撃でアルスが目を覚まし絶句する

「ん、はぁ、はぁ…んぁっ、はぅ///」

「し、シオン?!」
まだボクは知る由もないが、絶頂の余韻に犯されていた
そんなボクを見てアルスは頬を染め、ルミアは怒りを顕にしている

そして、認知してしまえば反応もしてしまう…
硬い棒のような感触がボクを擦り上げ、そこで意識は途絶えた。
「んっ~~!!」




~ルミアサイド~

時は少し遡り数分前

おかしい、おかしいです…
鍵は開いているのにノックをしても反応がありません。
「シオンちゃん~?」
先程から何回か声もかけてるんですが一向に反応がなく、流石に少し心配になってきました…

「ルミア?何してるのよ」

「あぁ、サリアちゃん。先程からシオンちゃんに反応がなくて」
困っている所に他の皆さんも集まりだしました
「そうなの?」

「えぇ…倒れたりとかしてなければいいのですが」

「いやいや流石にそれは無いでしょ~、ねぇルミア鍵はしてるの??」
ないないって顔で笑いながら、ニアが尋ねてきます
「いえ、それが鍵は開いてるんです」

「でしたら入って確認したらよろしいのでは?」

「そうだね、僕が見てこよっか?」

「でもいいのでしょうか?勝手に入ったりして」
私だったら心配をかけたとしても勝手に入られるのは、少し嫌ですし…

「ん?そういえばマグナ、アルスはどうしたのよ」

「最初に部屋に伝えに行った時は寝てたんだが、ここに来る前に覗いたら居なくなってたな」

もしかして!!
その言葉を聞いた途端私の中に嫌な予感がしました
「少しだけ待っててください!」
即座に扉を開いて中に入りキチンと施錠してからシオンちゃんを探しに行きます

「あっ、ちょ!ルミア?!…ダメちゃんと鍵も閉めてるわ、まぁ仕方ないし少し待ちましょ」

「僕がシオンの部屋一番乗りと思ったのに~!」

「ニア、諦めなさいな」


シオンちゃんの部屋には既に靴がひとつあり、それは来訪者がいる事を示しています。
リビングにはお茶の用意、つまりシオンちゃんはアルスに巻き込まれて抱き枕に…

「私だってシオンちゃんと一緒に寝たことなんてないですのに!」
そうして勢いよく寝室と思われる扉を開けると、涙をため、紅潮した顔のシオンちゃんとアルスの背中越しに目があいます

「シオンちゃん?」

「る、るみぁ?ひぅ//た、たすけてぇ!ぼくこんなの、しらにゃいぃ///」

時折身体を跳ねながら、舌足らずに助けを求めるシオンちゃんを見て即座に魔力を集めました。
 
「シ、シオンちゃん?ちょっと待っててくださいね!」

「ホーリーボール!」
放った小さい魔法はアルスの頭に直撃しました

「っっっっっ!?ひぁぁぁああ!」
ですがシオンちゃんの達する声が響き、それと間法の衝撃でやっとアルスが目を覚ましました

シオンちゃんを強く抱きしめながら…

息があがり見る人が見たら…いえ、女の子である私も少しソノ気になりそうな誘う顔でアルスを見つめるシオンちゃん

アルスも男の子です
それを見てしまえば反応もしてしまうのでしょう、シオンちゃんが声にならない絶叫をあげながら果てそのまま気絶してしまいました。


「アルス」

「ル、ルミアか。ちょうど良かったこれは一体…」

「アルス」

「ルミア?」

「ア ル ス」

「はい…」

「まず、シオンちゃんを離しなさい。そして転移で私の横へ」

「い、いやそうしたいんだがシオンが抱き着いてて離れないんだ。それと転移なんて魔法俺はまだ使えんぞ」

「口答えするんですか?そうですか、分かりました」

詠唱を破棄の転移を唱えシオンちゃんを私の腕の中に移動させ、そのまま対魔法結界を張りアルスだけを包み込みます。
「ホーリーバインド ライトボム ライトレーザー!!!」

「んな、おいっやめろ!わざとじゃないんだぞ!!」

「ふんっ、知りません。転移!」
ボロボロになったアルスをロビーに移動させて、シオンちゃんをベッドに再度寝かせます。

「癒しの光 キュア」
回復の魔法を唱えシオンちゃんが目覚めるまでに、さっとココアをボックスから取り出し作ります
「全く、アルスは…私達が起こしても起きないし反応もしないのに、どうしてシオンちゃんだけは抱き枕にするのでしょうか…」

あんなシオンちゃんにせがまれたら、と考えてそこで頭を振り再度様子を見に行きます。
「ん、すぅ…」

服の乱れはあれど、穏やかに寝息を立てる姿に安心します。

「シオンちゃん、シオンちゃん」
「んぅ、あぇ…ルミア?なんで……///」
「ほらほら、そんな事よりココアがありますよ。飲めますか?」

「うん、ありがとう」

「ね、ねぇルミア。少し聞きたいんだけど…」

「なんですか?でも今は皆を待たせてるのでまた夜にしませんか?」

「あっ、そうだね。美味しかったよありがとうルミア!」
立ち上がろうとするシオンちゃんが、急に止まる
「シオンちゃん、どうかされました?」

「う、ううん。なんでもないよ、少し外すね」

「では、私は皆を連れて下のロビーに移動しておきますね」
そう言って立ち上がる私の袖が引っ張られます、振り向くと少し恥ずかしそうなシオンちゃんがちょこんと袖を摘んでました

「あ、あの、ルミアにはいて欲しいなって。だめ?」

「え、と、では皆さんにロビーでお待ち頂くように伝えてきますね?」

袖をつかんだまま首だけこくこくと振るシオンちゃんですが、このままだと歩けません
どうしましょうか…
「あの、シオンちゃん?少しだけ離してくれませんか?」

「あ、うん、ごめんね」
パッと離してくれるんですが、また伸びたり戻ったり…男の子達もいるから見せるのが少し躊躇われるんですけど
「仕方ありませんね、ほら一緒に行きましょう?」

「う、うん!」
途端に嬉しそうに返事をするシオンちゃん
前まではこんな子じゃなかったと思うんですけど、余程さっきのが怖かったんでしょうか?

まぁ私的には可愛いのでなんでもいいです♪




~シオンサイド~

あれから、落ち着くまでルミアと居てさっとシャワーだけ浴びて着替えた後に皆とご飯に行った。

それからアルスとは何も無いように装いたくて、謝られたけど気にしないでと言ったんだけど、後ろからルミアの怒ってる雰囲気がアルスを威圧してたなぁ。
ボクはあんまり怒ってないんだけど…

そうして明日からはいよいよ学園生活が始まる、んだけどどうにも胸騒ぎが止まらない。
隣ではルミアが規則正しく寝息を立てている。

あの後部屋でルミアに聞いてみたんだけど、ボクが納得するような返答は帰ってこなくて明日も早いからとベッドに連れ込まれ、2人で寝ているんだけど…

「なんだったんだろう、あの感覚…」
少しふわふわして、背中にはゾクッとする感じ、そして時たま襲いかかる電流のような刺激
どれも感じた事がなくて、知りたいという気持ちはあったけど有耶無耶にされたため、もどかしいまま、ルミアに抱きつきボクの意識も落ちていった…





翌朝、少し早いけどルミアも支度があるからと自室に戻りボクも着替え味気ないけど部屋で日課のコントロールを始める。
本当は外に出てやりたいんだけど、探すのが大変だからって渋々部屋で行う事に。


「すぅ~……ん、この魔力はなんだろう」
意識を魔力に集中させていると、昨日までは感じなかった珍しい感じの魔力を2つ程感じる。

「気になる、危険な感じはしないけど…確かめに行ったらルミアに怒られるよね………」
悩むなぁ、でも探った感じ寮からかなり近い場所にあるみたいだし…

行くか否かを悩んでいると扉が叩かれ、ルミアが入ってくる

「シオンちゃん?まさか外に行こうとしてましたか?」

「んにぇっ?!そんな事ないよ?」

「はぁ…なにか気になることでもありましたか?」

少し呆れた顔をしながらも聞いてくれるルミア
でも言ってしまってもいいんだろうか、仮に勘違いだったり危険だった場合対処しきれないかもしれない…
「いいや、少しだけ気になる魔力があったんだけど勘違いだったみたい。でも外には出たいな~」

「そうですか?では私も準備は済んでますので少しだけその辺を歩きましょうか」

「いいの?じゃあ行こ」
よしっ、これで朝の日課をする場所を探せる
元々皆とはあまり合わなかったんだけど、ルミアだけは頻繁に合ってたからボクの日課とかも知ってるんだ。
だからよく一緒に練習とかもしたし、多分7貴族の中では1番仲がいいと思う。

「それにしてもシオンちゃん、また強くなりました?私もさっき探知してみましたけどそん反応全く分かりませんでした」

「う~ん、気になるっていっても珍しいってだけだしボクの思い違いだと思う。それにルミアの方がボクより凄いじゃないか」

ルミアは色々知ってるし光属性の魔法や魔力の扱いが上手くて、ボクも見習う点が多いんだ。
これからは他のみんなの魔法も見れるから、より勉強になると思うと今から楽しみで仕方がないよ。

「ありがとうございます、でもシオンちゃんも十分凄いですよ?」

「どうなんだろうね~、でもある人から目立ちたくないんだったら抑えろって言われてるからボクは当面の間は大人しくしてるつもりだよ」

「そうなんですか?では私もそうしましょう」

「ルミアも?でもルミアは凄いしそんな事しなくてもいいんじゃないかな?ボクは目立ちたくないから…」

「ふふ、きっと嫌でもシオンちゃんは目立ちますよ」

うえぇ、それは聞きたくなかった…
でもルミアとか他のみんなも凄いだろうし、みんなの方が可愛かったり綺麗だったり、かっこいいからボクなんて目立たないと思うんだけどなぁ

「それは聞きたくなかったよ…!」
少し開けた広場のような場所に出た時、朝感じた魔力が知っている魔力と共に近づいてくる
「シオンちゃん?どうかしましたか」

「朝言ってた魔力が近づいてくる」

「??そうなんですか、どうします?」

「このまま顔見ちゃおっか、そのまま朝食も済ませよう」

「ではそうしましょうか」





魔力の方に近づいていくと、優しそうな男の子と周囲を警戒した様子の男の子 そしてこの国の王女 シャリアが歩いてくる

「おや、シャリアじゃないかおはよう」

「あら?シオン様にルミア様!おはようございます」

「おはようございます、シャリア」

「もう、そろそろ様付けはやめて欲しいな。本来ならボク達がそう呼ばなきゃダメなんだよ?」

「いいんです、私がそうして欲しいんですから!」

「相変わらずで安心したよ、それでそちらのお2人は?」

「あっ、あの~少しだけお時間取れますか?」

「構わないけど、それならこれから一緒に朝食でもどうだい?」

「ですが」
場所が気になるのだろう、後ろを気にしているシャリア
例の2人は小声で話しながら空気を読みこちらには干渉してこない


「ふむ、だったらボクの部屋にしよう。そこなら問題はないと思うよ、ね?ルミア」

「えぇ、シオンちゃんがそう言うなら大丈夫だと思いますよ。でもシオンちゃんは後でお話があります」

「どうしてだい?!ま、まぁ今は時間も惜しいし移動しようか」

「は、はい。ではお2人もこちらへ、予定が変わってしまって申し訳ないのですがシオン様のお部屋に行きましょう」

「?分かったよ、自己紹介とかは後ででいいかな」

「そうだね、落ち着いてボクの部屋でするとしよう」


「はぁ、シオンちゃんってば初対面の男性をこうも簡単に部屋にいれるなんて…後で怒らないと」
少し悪寒がしたけど、誰と会うこともなく再びボクの部屋へと戻ってきた。

「いらっしゃい、あまり場所はないけど好きな所にかけてもらって構わないよ。さっと簡単な物だけど用意してくるね」

「では、私はお茶の方を」

「いいの?ありがとうルミア、ボクもすぐ終わらせるね」


ルミアの方は香りからしてダージリンと思われる紅茶を用意しており、すぐに用意は終わった。
でもその横で何故か違う甘い香りが漂ってくる

「ルミア?そのココアは誰のかな?」
「もちろん、シオンちゃんのですよ」
うん、だと思ったよ…
なんでかルミアがボクに用意してくれる飲み物はココアとかミルクが多いんだ…
何でも大きめのカップを両手で持ちながら飲んでるボクが可愛いんだとか、全くもってわけが分からないよ。


少し話しながらも人数分のサンドイッチが出来上がる、パンにバターを塗り野菜とチーズを挟んだ簡単な物だけど、材料もないためこれくらいしか用意出来なかった。
男の子はよく食べるから足りなかったらどうしようか…


「さぁおまたせ、君たち男の子には少し少ないかもしれないけど大丈夫かい?少し多めに用意はさせてもらったんだけど…」

「いや、十分だ。ありがたくいただくとしよう」
既に紅茶を飲みながら、お礼を言う男の子

「うん、初めて会うのにご飯まで用意してもらって申し訳ないよ」
律儀にボクが戻ってくるのを待っていたのか優しそうな男の子も、ありがとうと言う

「シャリアといたから危険では無いだろうし、遠慮もいらないよ。ボクはシオン・ウィンド、よろしくね」

用意してもらったココアを飲みながら自己紹介をする
「私はルミア・ライトです、よろしくお願いします」

「俺は天羽悠璃だ、こっちこそよろしく」

「僕は星宮結希、よろしくね!」

変わった名前だ…名前をバカにするつもりじゃないんだけど…
「あぁ、すまない分かりやすく伝えるとユウリ・アモウだ。こっちはユウキ・ホシミヤ」

「ユウリ君にユウキ君、うんよろしく」

「少し気になったんだがウィンドにライトという事は7貴族ってやつか?」

「えぇ、シオン様とルミア様はウィンド家とライト家の方です。ですのでいずれ知る事でもあるのでご紹介をと」

「いまいち話が掴めないけど、彼らは勇者様だったりするのかい?シャリア」

「!シオン様は相変わらずの慧眼ですね…えぇ、彼らは先日勇者召喚でこちらの世界に来られました」

ふむ、なるほど…それならこの微妙な魔力の違和感にも納得が行く。
2人っていうのが引っかかるところだけどね。
「う~ん、少しだけ彼らの魔力に違和感があってね。でも他の人には分からないと思うし大丈夫だと思うよ」

「ふむ、そうか…シオンだったか?お前は強いのか?」

ユウリ君がそれを聞き、シャリアとルミアに少しだけ緊張が走り、ユウキ君はまたかって顔をしながらサンドイッチを口にしていた。

どうでもいいんだけどユウキ君の食べ方に不覚にも可愛いと思ってしまったんだけど、どうすればいいだろうか?

「ボク?ボクは…どうだろう?少なくとも隣にいるルミアや他の7貴族の皆より強くないと思うけど」

「………そうか、変な事を聞いてすまなかった。美味しかったぞ」

「ふふ、どういたしまして。行くのかい?」

「あぁ、王女様は忘れてるだろうが俺達は少し早めに学園長の所に行かないといけないからな」

「あぁ!忘れておりました…シオン様 ルミア様!後片付けも出来ず申し訳ありませんが失礼致します!」

「ちょっと待ってよ悠璃!あ、美味しかったよご馳走様!」

「どういたしまして、シャリアも気にしなくていいよ。気をつけてね」


返事も程々にスタスタと歩いて行ったユウリ君を追いかける2人
隣には少し怒気を孕んだ様子のルミア、ボクも着いていけば良かったかな…

「シオンちゃん?」

「うぅ、はい」

「私が言いたい事は分かりますか?」

「うぅ…はい…」

「では何が言いたいか教えてください」

これはどう答えても怒られるやつだ…!!
でもはいと言った手前答えないともっと怒られる!!

「初対面の男の子にご飯を作ったから…?」
怖くて顔を直視出来ないため、上目遣いになりながらも答えるんだけど、これで合ってるだろうか

「うふふ、さてはシオンちゃん。適当にお返事をしましたね?全然違います、それ以前のお話です」

「ごめんなさい…でもしょうがないと思わないかい?」

「はぁ、まぁシオンちゃんがそういう子なのは今に始まった事じゃないですが…これだけは約束してください。これからは安易に男の子をお部屋に入れない事!」

んなっ、まさかそこに怒っていたとは…
でも部屋に入れるくらいなら問題はないと思うんだけど
「で、でも部屋に入れるくらいなら何も…」

「あ ん い に部屋に入れない事、守れますか?」

「ぁい…」

「分かってくれたならいいんです、にしても勇者ですか。シオンちゃんはなにか聞いてましたか?」

「ぃ…いや、何も聞いてなかったよ。それにそこまで魔族との関係性が緊迫してるとも知らなかった」

「やはりですか…まぁ私達が気にしてもどうしようもないでしょうし、片付けて私達も行きましょうか」

「そうだね、あまりのんびりしててもしょうがない」


それからは片付けロビーで他のみんなと合流し講堂にて入学の式や学園長の話を聞きクラスの表を見に来ている

「AからDまでのクラスか、それでボクらはA組と。家柄で決められているのかな」

「聞いた話家柄と成績とかも考慮されてるらしいよ、流石に僕達やシャリア辺りは変わる事がないと思うけどそれ以外は成績で決められてるんじゃないかな?」

「そうなの?みんなと一緒なのは嬉しいな」

「そうだね~、僕もシオンとはあまり会わなかったから楽しみ!」

「それは皆一緒だと思うぜ、ルミア以外はほとんどシオンと会わなかったからな!」

「そうね、シオンだけは中等部ほとんど来てなかったしこれからは楽しみましょう」

そう、ボクは中等部の時は少し違うことをしてたからほとんど学校に行ってなかったんだよね
だからこれからの学園生活は案外楽しみだったりする、何をしてたか?それは内緒だよ


そうしてボクを入れた7貴族
王女であるシャリアと勇者の2人
その他21人のAクラスとなるのが決まった
これからどんな学園生活が待っているのか楽しみだよ
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