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03・名前はリュカ
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ガンガン、と金属のぶつかる音が響き渡る。
目を覚ますと、どうやらオーナーがご立腹らしい。
こういう時は、どんなに戦いに勝ってもご飯はもらえない。
なんとも不運な日だ。
おれは黙って座り込み、様子を見ることにした。
昨日来たばかりの獣人の子は、かなり怯えている。
仕方なく、その子のそばに寄り添って横に座った。
驚いた顔をされたけど、とりあえず背中をそっと擦って、
心の中で「大丈夫だよ」と声をかける。
オーナーがここを通り過ぎるまで、そのまま動かずにいた。
やがて、怒鳴り声を上げながら出て行く。
今日は誰にも八つ当たりをしなかった。
運はよかったけど……たぶん、ご飯はない。
そう思うと、少し憂鬱だった。
「○×&%$#……」
何か言っているけど、さっぱりわからない。
だから、ジェスチャーで「言葉がわからない」と伝えた。
すると、クリクリした目がまん丸になった。
「#、%&」
「ん?」
「#、%、&……」
獣人の子が、自分を指さした。
ああ、これは自分の名前を言ってるんだな。
だから、おれも下手な発音で繰り返してみた。
「りゅ、カ?」
「うんうん」と頷いて、満足そうに笑う。
どうやらこの子の名前はリュカらしい。
なので、おれも自分の名前を教えた。
「アキヒト」
「アキぃひとぉ?」
「……アキ」
「アキ! リュカ!」
お互いの名前がわかったところで、
おれは横になるようにジェスチャーで促す。
リュカはおれに抱きついて、目を閉じた。
久しぶりに、人の体温に触れた。
すごく暖かくて、いつもより早く眠りに落ちた。
それから、リュカとの生活が始まった。
一緒に戦闘に出たときは並んで食事をし、どちらかが戦闘に出たときは、食べ物を半分ずつ分け合った。
考えてみれば、リュカは意外と強い。
おかげで、空腹ばかりだった毎日が少し楽になった。
食べ物を分け合うことで、おれの中の敵意も少しずつ和らいでいった気がする。
それからも、助け合う日々が続いた。
リュカから少しずつ言葉を教わり、彼が犬の獣人だということも知った。
奴隷になってから、初めて“楽しみ”というものができた。
そんなある日。
いつものように戦闘に出されるため、コロシアムへ向かっていたとき、
突然、爆音が響いた。
――それが、好機になるなんて
目を覚ますと、どうやらオーナーがご立腹らしい。
こういう時は、どんなに戦いに勝ってもご飯はもらえない。
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おれは黙って座り込み、様子を見ることにした。
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仕方なく、その子のそばに寄り添って横に座った。
驚いた顔をされたけど、とりあえず背中をそっと擦って、
心の中で「大丈夫だよ」と声をかける。
オーナーがここを通り過ぎるまで、そのまま動かずにいた。
やがて、怒鳴り声を上げながら出て行く。
今日は誰にも八つ当たりをしなかった。
運はよかったけど……たぶん、ご飯はない。
そう思うと、少し憂鬱だった。
「○×&%$#……」
何か言っているけど、さっぱりわからない。
だから、ジェスチャーで「言葉がわからない」と伝えた。
すると、クリクリした目がまん丸になった。
「#、%&」
「ん?」
「#、%、&……」
獣人の子が、自分を指さした。
ああ、これは自分の名前を言ってるんだな。
だから、おれも下手な発音で繰り返してみた。
「りゅ、カ?」
「うんうん」と頷いて、満足そうに笑う。
どうやらこの子の名前はリュカらしい。
なので、おれも自分の名前を教えた。
「アキヒト」
「アキぃひとぉ?」
「……アキ」
「アキ! リュカ!」
お互いの名前がわかったところで、
おれは横になるようにジェスチャーで促す。
リュカはおれに抱きついて、目を閉じた。
久しぶりに、人の体温に触れた。
すごく暖かくて、いつもより早く眠りに落ちた。
それから、リュカとの生活が始まった。
一緒に戦闘に出たときは並んで食事をし、どちらかが戦闘に出たときは、食べ物を半分ずつ分け合った。
考えてみれば、リュカは意外と強い。
おかげで、空腹ばかりだった毎日が少し楽になった。
食べ物を分け合うことで、おれの中の敵意も少しずつ和らいでいった気がする。
それからも、助け合う日々が続いた。
リュカから少しずつ言葉を教わり、彼が犬の獣人だということも知った。
奴隷になってから、初めて“楽しみ”というものができた。
そんなある日。
いつものように戦闘に出されるため、コロシアムへ向かっていたとき、
突然、爆音が響いた。
――それが、好機になるなんて
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