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2.交流
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貰った写真に映っていた銀花の表情があまりにも可愛らしくて、帰ってすぐに蓮に見せに行ってしまった……。
そしてハルトに見つかったことも、即バレた。
「僕はアホの塊なのかもしれないな」
「はぁ? 今更??」
「え、風花はずっと僕のことアホだと思ってたの!?」
自室で天花宛に文を書いている風花は、ゴロゴロと転がるこちらに顔を向けた。
「すっごく勘が良くて、驚くほど運が良い。だから今まで無事だったんだろうけど、迂闊な所が多い」
「仰る通りです……」
机に置いていた酒の入ったお猪口に手を伸ばすが、空になっていたので自分のお猪口と風花
お猪口に酒を注ぐ。
自分で漬けた梅酒だが、今年は本当に出来が良い。それをグッと煽り、また酒を注いだ。
「嬉しい、楽しいを誰かと共有したいのは分かる。でも心の内に秘めた方がいいこともあるだろ? まぁ、今回のことは早めに分かって良かったよ」
写真を見せたあと、驚いた恭吾がそっと屋敷に向かいハルトの様子を見に行ったらしい。そして、蓮と話し合い、ハルトから銀花の記憶だけを消したと言われた。
六花のことは今後の様子次第で判断するとのことだが、さすがに神の子である銀花を記憶に残すのは良くないという判断だ。
それを言われた時に蓮と恭吾には謝ったが、内心では自分の記憶だけでも消されなくて良かったとホッとしてしまった。なぜならそれは、六花だけならば行っても良いという暗黙の了解でもあるからだ。
「調子に乗るなよ?」
「分かってるよ」
「あーあ。蓮様は優し過ぎるんだよ。六花の記憶も消して、山下り禁止令でも出せばいい」
「……風花も来る??」
そう言うと、黙った風花に睨まれてしまった。
「ごめんごめん。でも、本当に気を付けるよ。行かせてもらえるだけでありがたい! 最近、じいちゃんも体調良くないし、行かなくなると不安で仕方ないから」
「おじいさん、具合悪いの?」
「んー、本人は歳だからって言ってるけど」
それを聞いた風花は「そっか、人間だもんな」と素っ気なく返事をしてからまた机に向かう。
もうこの話を続けるつもりはないのだろうと思い、酒を手にして涼しい風の吹く縁側に向かった。
満月には薄い雲がかかり明るさには物足りないが、お猪口に入った酒は微かに輝きを放っていた。
それから数日後、今回は銀花の世話が終わった夕方に山を下った。そして、向かったのはハルトの所ではなくじいちゃんの家だ。だいぶ日が延びて、夕方でも晴れの日はとても明るい。
「じぃちゃーん!!」
「おお、六花。珍しいな」
窓が開いたままの縁側から、部屋を覗き込むとそこには二つの人影があった。一つはじぃちゃん。そしてもう一つはハルトだ。
「あ、ハルトも居たんだ」
「こんにちは。いや、もうすぐこんばんはかな。六花はこんな時間にどうしたの?」
草履を脱ぎ捨て部屋に入り、いつもの場所に自分専用の座布団を置く。その上に座ると、じぃちゃんがコップに冷たい麦茶を入れてくれた。
それを一気に飲み干して、おかわりを貰う。
「はぁー。疲れた!! ここに来たのは、ハルトのこと聞きに来たんだよ!!」
「え? オレ??」
訳が分からないという表情で首を傾げたハルトを横目に、じぃちゃんの袖を掴む。
「ねぇ、どうしてあの空き家を貸したの? 僕達がずっと遊んでたの知ってるよね??」
「ははは、すまんすまん。急な話だったからの。ハルトの知り合いがワシの知り合いの知り合いの? なんじゃったか?」
「おじいさんの知り合いとオレの知り合いが従兄弟なんですよ。それより、僕達って?? 六花だけじゃないの??」
その質問にグッと言葉をのむ。ここまでくると、アホでもウッカリでもなくバカなのかもしれない。
「兄弟……」
嘘ではない。そう、銀花は兄弟みたいなものだ。嘘では……ない。
そんなこちらの苦しい言い訳に、ハルトは目を輝かせた。
「へぇ! いいなぁ。オレは兄弟がいないから。兄さん? それとも女の子かな?」
「兄と、弟」
「そっかぁ。あ。銀花は弟か。なるほど! いいなぁー、兄弟!」
「な? 可愛い奴だろ?」
何故か自慢げなじぃちゃんは置いておいて、どうやらハルトからは本当に銀花のことはすっかり抜けているらしい。少し寂しいと感じはしたが、これで良かったのだと思うことにした。
「いつか会わせて欲しいな」
「いつかね」
あえて素っ気なく返事をしたのに、ハルトはよろしくと嬉しそうに返してきた。敢えて返事をせずにまた麦茶を飲んでいると、じぃちゃんは最近ハマっているというやたら堅い煎餅をくれた。
それをボリボリと噛んでいると、ハルトがこちらをじっと見ていることに気が付いた。
「今度は何??」
「あ、いや、その……おじいさんの家の近くの子供達は洋服なのに、やっぱり六花は今日も和服だなって」
「――!!」
「似合ってるけど、これからの時期は暑くない?」
「慣れた」
というか、洋服を着たことがないので比較出来ないだけだ。それを敢えて言う必要は無い。無駄な言葉は今は言わないほうがきっといい。
「ふーん、あ。そうだ、服、いる??」
「え?」
「この前、まぁ色々と付き合いでさ。デザイナーの友達から子供服を数着貰ったんだ。日本に移動するからいらないって言ったんだけど、その先で子供にあげろって押し付けられたんだ。着てみる?」
洋服……憧れがあった訳ではない。それに和服に文句はない。でも、あれを着たら山を降りても、今よりも変に思われることが少なくなるのだろうか。そもそも、じぃちゃんの家からもう少しくらいの街中ならば、着物で極稀に買い物に行ったりはしたが何かを言われることはなかったのだが……。
思わずゴクリと唾を飲み込むと、それに気付いたハルトはふんわりと優しく笑みを浮かべた。
「良かった。明日にでも家においで。サイズが合うといいんだけど」
「う、うん」
「洋服……あぁ、そうじゃ」
何かを思い出したようにじぃちゃんが立ち上がり、台所を漁って一枚の紙を手にして戻ってきた。
「これこれ、これに行けばいい! ワシは明日は用事があるから、二人でな」
「祭り……?」
「地域のお祭りですか?」
「あぁ、二人で行ってきな」
なぜ洋服で祭りを思い出したのかはよく分からないが、ハルトはキラキラと目を輝かせそのチラシを見ている。その輝きが絶対行きたいと物語っているようだ。
「あ、でも、六花の親は夜に外出するのは心配するかな?」
「多分、大丈夫。一応確認するよ。明日、家に行く時に返事するってことでいいかな?」
「もちろん!! ~~!! お祭り!! 楽しみだなぁ!!」
子供のようにはしゃぐハルトを、可愛らしいなと眺めつつ、じぃちゃんから煎餅をもう一枚貰った。
翌日、夕方。
ようやく風花を説得し終え、急いで山をかけ下りた。普段は使わない獣道を走り抜け、足場が悪ければ木から木へ飛び移る。
「だぁー!! 風花は頑固頭過ぎっ!!」
意外とあっさり了承してくれた蓮と恭吾とは違い、風花が危険だなんだと言って行かせないようにしてきたのだ。
分かっている。もしまたうっかり何かしてしまえば、自分にだけが害があるわけではないからだ。皆を心配している風花らしい頑固だ。
(でも、あのハルトの嬉しそうな顔みたら……一緒に行きたくなるって!!)
急な山の斜面を駆け下りれば、もう目の前に家がある。まだきっとハルトは待っているはずだ。庭に向けて木から飛び出すと、目的の人物が庭で立っていた。
「うっわ!! ハルトどいてー!!」
「え? げぇ!?」
空から降ってくるように落ちてしまったので、避けきれなかったハルトに思い切りぶつかってしまった。
下敷きにしているハルトの上から慌てて退いて、手を差し伸べる。
「大丈夫!? まさか居ると思わなくて……ごめんね!」
「いってて、大丈夫大丈夫。驚いただけだから」
手を取って起き上がったハルトは、身体に付いた埃をパンパンと両手で払う。それが終わると、今度は屈んでこちらの身体に触れてきた。
「な、なに!?」
「元気そうだけど、六花は怪我してない?」
「しないしない! こんなことでするわけない」
木から飛び降りるなんて、子供の遊びだ。見た目は幼児でも、中身は大人。今は山を駆け巡る遊びはしていないが、湖を潜ったり山全体で隠れんぼや鬼ごっこは三つ子にとっては日常の遊びだった。
あの頃みたいに、遊べたら楽しいのに。と思う日もあるが、天花は嫁に行ったし風花はどちらかと言うと書を読む方が好きだから、今は相手が誰もいない。
「本当に?」
「うん。大丈夫」
「ならいいけど。それより、凄いな。あんな木から降ってくるなんて」
「山で遊んでれば普通だよ」
「オレにもできるかな?」
「出来るよ!! 一緒にやろう!?」
思わず身を乗り出すように言うと、ハルトはクスクスと笑った。
「じゃぁ、六花先生に良く教えてもらわないと。オレ、運動下手だから優しく教えてくれよ?」
「下手なの……??」
「下手だよ。凄い下手。ヤバいよ。どれ位かな……まず、泳げない」
泳げない? 泳げなかったら魚はどうやって獲るのだろう。
「あと、走るのが遅い」
それは、狼に見つかれば死活問題なのでは?
「何より、木には登れない」
……何をして生きてきたのだろうか。不安になっていると、それが表情に出ていたらしくハルトは吹き出した。
「まぁ、そんなとこだから」
「よく生きてるね」
「ぷっ、はははっ!! ただ運が良いのさ」
「僕も運が良いって言われてるけど、ハルトの方が良さそうだね!」
その言葉に目を瞬かせたハルトは、大笑いをしてから立ち上がる。
「そうだね、オレら二人で居たら運が良すぎて周りが驚くかもしれないな。さ、部屋に入ろう。とりあえず昨日言っていた服を着てみないと」
「うん!!」
差し出された手を握り、ニコリと笑いあって縁側から部屋に入っていった。
「それにしても、Tシャツもパンツもピッタリだな」
ハルトが選んでくれた服は、まるで誂えたように身体にフィットした。着物でも不便は無いが、長い袖が無く、足を高く上げても乱れないのはとても便利だ。
着た後に、庭で木に登ったり走ったりしてみたが、とても動きやすい。人間が着物を着なくなった理由が少しだけ理解出来た気がする。
並んで歩きながら祭りに向かう途中、ハルトは何度も似合っていると褒めてくれて、何だかとても心地が良い。
「ハルトは着物は着たことある?」
「ないよ。オレの産まれた場所にも独自の衣装はあるけど、着たことないなぁ」
「そっかぁ。ねぇねぇ、着物、着てみたい?」
「え? いやいや、オレの顔を見てみてよ。日本人要素全くないだろ? さすがに似合わないよ」
そうだろうか。ハルトの深い青の瞳に金色の髪は、きっと蓮のような白い着物でも天狗のような黒い着物でも似合うだろう。確かに日本人には似ても似つかないだろうけれど、その違いが神々しさになるような気がする。
「今度、機会があったら着せてあげる!!」
「えぇー? 六花みたいなおチビに着せられるのか?」
「出来るし!! 着付けなんて余裕だし!!」
「ははっ、じゃぁ今度な」
そんな話をしていると、祭りの会場まですぐに到着した。祭りは山にあるいくつかの集落が合同で開催している。その集落の中で毎年順番に場所を変え、開催されているものだ。
趣旨はこれから梅雨に向けて、雨による災害が起きないように願うものだったはずだが、いつの間にか豊作や健康祈願や何だかんだと付け加えられ、今はただ各集落の交流祭のようになっていた。
まだ幼かった三十年ほど前は天花と風花を連れて来て、遠目で何度か見たことはある。しかし、その頃はただ緩く長い演舞があっただけだったと思う。だから、大して興味が湧くことも無く祭りに来ることはなかったのだが……。
「凄い……こんなに変わってたんだ……」
提灯が至る所にかけられ、出店が幾つも並び、多くの人間が呼び込みや笑い声を上げている。小さな山間の町にこんなにも人間が住んでいたかと思ったが、他の集落からも来ているのだから人混みは当たり前なのだろう。
「最近、テレビで取り上げられたから、今年はいつもより多いんじゃないか?」
「そうなんだ。ずっと来てなかったから、こんなに楽しそうになってたなんて知らなかった」
「ずっとって六花は数年しか生きてないだろ?」
五十年ですとはもちろん言えずに、べーっと舌を出す。するとハルトは声を上げて笑ってくれた。
「さて、何食べる? それとも遊ぶか?」
「うーん……」
キョロキョロと見渡す。食べ物の屋台だけでもかなり多く、甘味系を含めると相当ある。しかもどれも美味しそうで迷っていると、ハルトが手を握ってきた。
「悩むなら、気になるの片っ端から食べようぜ!」
「え、でも」
「お金ならこのハルト様に任せなさい。仕事で色々行ってる時はそんなに使わなかったりするんだよ。物価が安かったりな。だから、祭りで相当使っても問題無いわけだ!」
「え、あ。ごめん。お金の心配はしてなかった」
「じゃぁ、なんの心配だよ」
「二人で食べ切れるかなって」
そう言うと、またハルトが笑い声を出した。
「ぷっははは!! 大丈夫大丈夫!! オレ、すっごい食べるタイプなんだ。だから、六花は気になるのを一口ずつとかでも良いぞ? 食べ切れなかったら持って帰ってもいいしな」
「そっか!」
「そういうこと、じゃぁいざ祭りへ!!」
そう言ったハルトは、握った手を離さずに歩きだした。
ハルトは本当に……気になった食べ物は全て買って食べていった。持ち帰り用の袋を貰うこともあったが、基本的にはその場でペロリと食べきってしまう。その上に、美味しいからオカワリをしたりするので、もうどれだけ食べたか分からないほどだった。
何故そんなに食べれるのかと聞いたが、それはハルト本人も分からないらしい。ただ、戦地のような場所で仕事をする時は水だけの生活が三日程続く時もあり、それでも大丈夫だというので常に大食いというわけではないと話してくれた。
「要は食べたい時に沢山食べれて、食べれない環境の時はどうにかなる。ありがたい身体だよ」
「すごいね。僕は朝ご飯少なかっただけで、昼にはヘロヘロだよ」
「はははっ、本当はその方が健康的だよ。ちゃんと腹が減って、きちんと食べる。ちゃんと噛む。大事な事だ。そろそろ甘い物も食べたいなー。六花はかき氷とりんご飴どっちがいい?」
「うーん。りんご飴かな」
「おっけー、待ってて!」
そう言って、繋いでいたハルトの手が離れて買いに行ってしまった。
食事の時やお金を支払う時には離していたので、常に繋いでいた訳では無いが、なんだかふとその手が寂しいように思えてしまう。
ハルトにとっては迷子にならないように気遣いをしてくれているのだろうけれど、なんだか大事にされている気がして嬉しかった。
「早く帰ってこないかな」
「ボク、一人?」
「え?」
知らない声に頭上から話しかけられ、上をむく。すると、割腹の良い男が汗を流しながら話しかけてきていた。
正直、ちょっと気持ち悪い。見た目では無い。こう、ねっとりとまとわりつくような気持ち悪さを感じるのだ。
「一人じゃない」
敢えてキツく突き放すように返事をすると、男は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「一緒に来たのはパパとママかなぁ?」
「……教える必要ある?」
「違うの? 迷子ぉ? なら、おじさんと一緒に探しに行く??」
こちらの返答には耳を貸さないらしい。男はいいように解釈しているのか、そうやってこちらを油断させようとしているのか。
まだ何か言っているが、耳障りな音でしかない。
ここで、自分がこの大人を撒くだけならば至って簡単だ。しかし、目標が達成されなければきっと男は別の子供を標的にするだろう。
「おじさん」
「!? なぁに? あ、そうだ。これをあげようね。飴ちゃんだよ」
「この地域では、鬼が出るって知ってる?」
「ん? 飴ちゃん足りない? 一緒に行ってくれたらもっといいのあげるよ??」
一粒の小さな飴を乗せた手が汗ばんでいるのが、提灯の明かりでもよく分かる。それらの肌に触れないように、男に顔を近付ける。
ハルトの清潔な香りとは違い、風呂に入っていない酷い匂いが立ち込めているようだ。
「いらねぇよカス」
周囲の時を止める。男と自分だけが動く空間を作り出し、頭から一気に角を出す。肌が裂ける音が鈍く響き、男は目を開いたままそれから目を離せなくなっているようだ。
子供の身体に似合わない、大きな角と口をニヤリと歪ませ敢えて涎を纏わせた鋭い犬歯を見せびらかす。
「子供に混じって鬼が出る。お前なら死んでも誰も心配しないだろ?」
そう言うと、男はヒィと情けない声を出して腰を抜かした。ガクガクと震え、失禁でもしているのか独特の臭いに鼻が曲がりそうだ。
「た、た、た、助けてくれぇぇ!!」
「ん? 死にたくないのか? あぁ、助けてやるよ。地獄の鬼は俺より優しいから」
「!?」
「地獄の鬼はな、鼻から口からケツから、全部の穴から虫が入り込ませて内臓を食い尽くさせるんだ。食い尽くしたら鬼がまた生き返らせてくれて同じことを繰り返す。ずーっと生きていられる。優しいだろ? 僕が首を切ったらもう生き返れないからな。さぁ、どっちがいい?」
そう言って首に手を伸ばす仕草をすると、男は泡を吹いて倒れた。
「はぁー。こんなので倒れてたら、地獄行ったらもっと辛いよ? おじさん、ちゃんと善行するんだね」
男から離れ、見えなくなったところで時の解除をする。人々は何も無かったように、今まで通りに動き出す。
「りっかー?」
「ハルトー!!」
呼ばれた方向を向くと、両手にりんご飴……といちご飴や何故かチョコバナナにわたあめと甘味だらけで戻ってきた。
「買いすぎじゃない?」
「飴は袋に入ってるから帰って食べよう! オレ、チョコ大好きなんだ」
ニコニコと笑いながら一口食べているハルトは、それをこちらに差し出してきた。チョコレートを垂らしたばかりなのか、少し柔らかくバナナとよく合う。
「ありがと」
甘くて優しくてハルトようだ。
「おいしい? ん? なんかあっち騒がしくない??」
「んぅ?」
それは先程の男がいる場所だ。きっと誰かが男を見つけたのだろう。見たくもない顔を思い出し、舌打ちをしてしまいそうになるのを抑え、ハルトの服の裾を摘んだ。
「ねぇ、お腹いっぱいになったし遊ぼう? 射的やってみたい!」
「おお! いいな! 行こう行こう!!」
その場から離れ嫌なことを忘れるように、思い切り遊ぶことに専念した。
そしてハルトに見つかったことも、即バレた。
「僕はアホの塊なのかもしれないな」
「はぁ? 今更??」
「え、風花はずっと僕のことアホだと思ってたの!?」
自室で天花宛に文を書いている風花は、ゴロゴロと転がるこちらに顔を向けた。
「すっごく勘が良くて、驚くほど運が良い。だから今まで無事だったんだろうけど、迂闊な所が多い」
「仰る通りです……」
机に置いていた酒の入ったお猪口に手を伸ばすが、空になっていたので自分のお猪口と風花
お猪口に酒を注ぐ。
自分で漬けた梅酒だが、今年は本当に出来が良い。それをグッと煽り、また酒を注いだ。
「嬉しい、楽しいを誰かと共有したいのは分かる。でも心の内に秘めた方がいいこともあるだろ? まぁ、今回のことは早めに分かって良かったよ」
写真を見せたあと、驚いた恭吾がそっと屋敷に向かいハルトの様子を見に行ったらしい。そして、蓮と話し合い、ハルトから銀花の記憶だけを消したと言われた。
六花のことは今後の様子次第で判断するとのことだが、さすがに神の子である銀花を記憶に残すのは良くないという判断だ。
それを言われた時に蓮と恭吾には謝ったが、内心では自分の記憶だけでも消されなくて良かったとホッとしてしまった。なぜならそれは、六花だけならば行っても良いという暗黙の了解でもあるからだ。
「調子に乗るなよ?」
「分かってるよ」
「あーあ。蓮様は優し過ぎるんだよ。六花の記憶も消して、山下り禁止令でも出せばいい」
「……風花も来る??」
そう言うと、黙った風花に睨まれてしまった。
「ごめんごめん。でも、本当に気を付けるよ。行かせてもらえるだけでありがたい! 最近、じいちゃんも体調良くないし、行かなくなると不安で仕方ないから」
「おじいさん、具合悪いの?」
「んー、本人は歳だからって言ってるけど」
それを聞いた風花は「そっか、人間だもんな」と素っ気なく返事をしてからまた机に向かう。
もうこの話を続けるつもりはないのだろうと思い、酒を手にして涼しい風の吹く縁側に向かった。
満月には薄い雲がかかり明るさには物足りないが、お猪口に入った酒は微かに輝きを放っていた。
それから数日後、今回は銀花の世話が終わった夕方に山を下った。そして、向かったのはハルトの所ではなくじいちゃんの家だ。だいぶ日が延びて、夕方でも晴れの日はとても明るい。
「じぃちゃーん!!」
「おお、六花。珍しいな」
窓が開いたままの縁側から、部屋を覗き込むとそこには二つの人影があった。一つはじぃちゃん。そしてもう一つはハルトだ。
「あ、ハルトも居たんだ」
「こんにちは。いや、もうすぐこんばんはかな。六花はこんな時間にどうしたの?」
草履を脱ぎ捨て部屋に入り、いつもの場所に自分専用の座布団を置く。その上に座ると、じぃちゃんがコップに冷たい麦茶を入れてくれた。
それを一気に飲み干して、おかわりを貰う。
「はぁー。疲れた!! ここに来たのは、ハルトのこと聞きに来たんだよ!!」
「え? オレ??」
訳が分からないという表情で首を傾げたハルトを横目に、じぃちゃんの袖を掴む。
「ねぇ、どうしてあの空き家を貸したの? 僕達がずっと遊んでたの知ってるよね??」
「ははは、すまんすまん。急な話だったからの。ハルトの知り合いがワシの知り合いの知り合いの? なんじゃったか?」
「おじいさんの知り合いとオレの知り合いが従兄弟なんですよ。それより、僕達って?? 六花だけじゃないの??」
その質問にグッと言葉をのむ。ここまでくると、アホでもウッカリでもなくバカなのかもしれない。
「兄弟……」
嘘ではない。そう、銀花は兄弟みたいなものだ。嘘では……ない。
そんなこちらの苦しい言い訳に、ハルトは目を輝かせた。
「へぇ! いいなぁ。オレは兄弟がいないから。兄さん? それとも女の子かな?」
「兄と、弟」
「そっかぁ。あ。銀花は弟か。なるほど! いいなぁー、兄弟!」
「な? 可愛い奴だろ?」
何故か自慢げなじぃちゃんは置いておいて、どうやらハルトからは本当に銀花のことはすっかり抜けているらしい。少し寂しいと感じはしたが、これで良かったのだと思うことにした。
「いつか会わせて欲しいな」
「いつかね」
あえて素っ気なく返事をしたのに、ハルトはよろしくと嬉しそうに返してきた。敢えて返事をせずにまた麦茶を飲んでいると、じぃちゃんは最近ハマっているというやたら堅い煎餅をくれた。
それをボリボリと噛んでいると、ハルトがこちらをじっと見ていることに気が付いた。
「今度は何??」
「あ、いや、その……おじいさんの家の近くの子供達は洋服なのに、やっぱり六花は今日も和服だなって」
「――!!」
「似合ってるけど、これからの時期は暑くない?」
「慣れた」
というか、洋服を着たことがないので比較出来ないだけだ。それを敢えて言う必要は無い。無駄な言葉は今は言わないほうがきっといい。
「ふーん、あ。そうだ、服、いる??」
「え?」
「この前、まぁ色々と付き合いでさ。デザイナーの友達から子供服を数着貰ったんだ。日本に移動するからいらないって言ったんだけど、その先で子供にあげろって押し付けられたんだ。着てみる?」
洋服……憧れがあった訳ではない。それに和服に文句はない。でも、あれを着たら山を降りても、今よりも変に思われることが少なくなるのだろうか。そもそも、じぃちゃんの家からもう少しくらいの街中ならば、着物で極稀に買い物に行ったりはしたが何かを言われることはなかったのだが……。
思わずゴクリと唾を飲み込むと、それに気付いたハルトはふんわりと優しく笑みを浮かべた。
「良かった。明日にでも家においで。サイズが合うといいんだけど」
「う、うん」
「洋服……あぁ、そうじゃ」
何かを思い出したようにじぃちゃんが立ち上がり、台所を漁って一枚の紙を手にして戻ってきた。
「これこれ、これに行けばいい! ワシは明日は用事があるから、二人でな」
「祭り……?」
「地域のお祭りですか?」
「あぁ、二人で行ってきな」
なぜ洋服で祭りを思い出したのかはよく分からないが、ハルトはキラキラと目を輝かせそのチラシを見ている。その輝きが絶対行きたいと物語っているようだ。
「あ、でも、六花の親は夜に外出するのは心配するかな?」
「多分、大丈夫。一応確認するよ。明日、家に行く時に返事するってことでいいかな?」
「もちろん!! ~~!! お祭り!! 楽しみだなぁ!!」
子供のようにはしゃぐハルトを、可愛らしいなと眺めつつ、じぃちゃんから煎餅をもう一枚貰った。
翌日、夕方。
ようやく風花を説得し終え、急いで山をかけ下りた。普段は使わない獣道を走り抜け、足場が悪ければ木から木へ飛び移る。
「だぁー!! 風花は頑固頭過ぎっ!!」
意外とあっさり了承してくれた蓮と恭吾とは違い、風花が危険だなんだと言って行かせないようにしてきたのだ。
分かっている。もしまたうっかり何かしてしまえば、自分にだけが害があるわけではないからだ。皆を心配している風花らしい頑固だ。
(でも、あのハルトの嬉しそうな顔みたら……一緒に行きたくなるって!!)
急な山の斜面を駆け下りれば、もう目の前に家がある。まだきっとハルトは待っているはずだ。庭に向けて木から飛び出すと、目的の人物が庭で立っていた。
「うっわ!! ハルトどいてー!!」
「え? げぇ!?」
空から降ってくるように落ちてしまったので、避けきれなかったハルトに思い切りぶつかってしまった。
下敷きにしているハルトの上から慌てて退いて、手を差し伸べる。
「大丈夫!? まさか居ると思わなくて……ごめんね!」
「いってて、大丈夫大丈夫。驚いただけだから」
手を取って起き上がったハルトは、身体に付いた埃をパンパンと両手で払う。それが終わると、今度は屈んでこちらの身体に触れてきた。
「な、なに!?」
「元気そうだけど、六花は怪我してない?」
「しないしない! こんなことでするわけない」
木から飛び降りるなんて、子供の遊びだ。見た目は幼児でも、中身は大人。今は山を駆け巡る遊びはしていないが、湖を潜ったり山全体で隠れんぼや鬼ごっこは三つ子にとっては日常の遊びだった。
あの頃みたいに、遊べたら楽しいのに。と思う日もあるが、天花は嫁に行ったし風花はどちらかと言うと書を読む方が好きだから、今は相手が誰もいない。
「本当に?」
「うん。大丈夫」
「ならいいけど。それより、凄いな。あんな木から降ってくるなんて」
「山で遊んでれば普通だよ」
「オレにもできるかな?」
「出来るよ!! 一緒にやろう!?」
思わず身を乗り出すように言うと、ハルトはクスクスと笑った。
「じゃぁ、六花先生に良く教えてもらわないと。オレ、運動下手だから優しく教えてくれよ?」
「下手なの……??」
「下手だよ。凄い下手。ヤバいよ。どれ位かな……まず、泳げない」
泳げない? 泳げなかったら魚はどうやって獲るのだろう。
「あと、走るのが遅い」
それは、狼に見つかれば死活問題なのでは?
「何より、木には登れない」
……何をして生きてきたのだろうか。不安になっていると、それが表情に出ていたらしくハルトは吹き出した。
「まぁ、そんなとこだから」
「よく生きてるね」
「ぷっ、はははっ!! ただ運が良いのさ」
「僕も運が良いって言われてるけど、ハルトの方が良さそうだね!」
その言葉に目を瞬かせたハルトは、大笑いをしてから立ち上がる。
「そうだね、オレら二人で居たら運が良すぎて周りが驚くかもしれないな。さ、部屋に入ろう。とりあえず昨日言っていた服を着てみないと」
「うん!!」
差し出された手を握り、ニコリと笑いあって縁側から部屋に入っていった。
「それにしても、Tシャツもパンツもピッタリだな」
ハルトが選んでくれた服は、まるで誂えたように身体にフィットした。着物でも不便は無いが、長い袖が無く、足を高く上げても乱れないのはとても便利だ。
着た後に、庭で木に登ったり走ったりしてみたが、とても動きやすい。人間が着物を着なくなった理由が少しだけ理解出来た気がする。
並んで歩きながら祭りに向かう途中、ハルトは何度も似合っていると褒めてくれて、何だかとても心地が良い。
「ハルトは着物は着たことある?」
「ないよ。オレの産まれた場所にも独自の衣装はあるけど、着たことないなぁ」
「そっかぁ。ねぇねぇ、着物、着てみたい?」
「え? いやいや、オレの顔を見てみてよ。日本人要素全くないだろ? さすがに似合わないよ」
そうだろうか。ハルトの深い青の瞳に金色の髪は、きっと蓮のような白い着物でも天狗のような黒い着物でも似合うだろう。確かに日本人には似ても似つかないだろうけれど、その違いが神々しさになるような気がする。
「今度、機会があったら着せてあげる!!」
「えぇー? 六花みたいなおチビに着せられるのか?」
「出来るし!! 着付けなんて余裕だし!!」
「ははっ、じゃぁ今度な」
そんな話をしていると、祭りの会場まですぐに到着した。祭りは山にあるいくつかの集落が合同で開催している。その集落の中で毎年順番に場所を変え、開催されているものだ。
趣旨はこれから梅雨に向けて、雨による災害が起きないように願うものだったはずだが、いつの間にか豊作や健康祈願や何だかんだと付け加えられ、今はただ各集落の交流祭のようになっていた。
まだ幼かった三十年ほど前は天花と風花を連れて来て、遠目で何度か見たことはある。しかし、その頃はただ緩く長い演舞があっただけだったと思う。だから、大して興味が湧くことも無く祭りに来ることはなかったのだが……。
「凄い……こんなに変わってたんだ……」
提灯が至る所にかけられ、出店が幾つも並び、多くの人間が呼び込みや笑い声を上げている。小さな山間の町にこんなにも人間が住んでいたかと思ったが、他の集落からも来ているのだから人混みは当たり前なのだろう。
「最近、テレビで取り上げられたから、今年はいつもより多いんじゃないか?」
「そうなんだ。ずっと来てなかったから、こんなに楽しそうになってたなんて知らなかった」
「ずっとって六花は数年しか生きてないだろ?」
五十年ですとはもちろん言えずに、べーっと舌を出す。するとハルトは声を上げて笑ってくれた。
「さて、何食べる? それとも遊ぶか?」
「うーん……」
キョロキョロと見渡す。食べ物の屋台だけでもかなり多く、甘味系を含めると相当ある。しかもどれも美味しそうで迷っていると、ハルトが手を握ってきた。
「悩むなら、気になるの片っ端から食べようぜ!」
「え、でも」
「お金ならこのハルト様に任せなさい。仕事で色々行ってる時はそんなに使わなかったりするんだよ。物価が安かったりな。だから、祭りで相当使っても問題無いわけだ!」
「え、あ。ごめん。お金の心配はしてなかった」
「じゃぁ、なんの心配だよ」
「二人で食べ切れるかなって」
そう言うと、またハルトが笑い声を出した。
「ぷっははは!! 大丈夫大丈夫!! オレ、すっごい食べるタイプなんだ。だから、六花は気になるのを一口ずつとかでも良いぞ? 食べ切れなかったら持って帰ってもいいしな」
「そっか!」
「そういうこと、じゃぁいざ祭りへ!!」
そう言ったハルトは、握った手を離さずに歩きだした。
ハルトは本当に……気になった食べ物は全て買って食べていった。持ち帰り用の袋を貰うこともあったが、基本的にはその場でペロリと食べきってしまう。その上に、美味しいからオカワリをしたりするので、もうどれだけ食べたか分からないほどだった。
何故そんなに食べれるのかと聞いたが、それはハルト本人も分からないらしい。ただ、戦地のような場所で仕事をする時は水だけの生活が三日程続く時もあり、それでも大丈夫だというので常に大食いというわけではないと話してくれた。
「要は食べたい時に沢山食べれて、食べれない環境の時はどうにかなる。ありがたい身体だよ」
「すごいね。僕は朝ご飯少なかっただけで、昼にはヘロヘロだよ」
「はははっ、本当はその方が健康的だよ。ちゃんと腹が減って、きちんと食べる。ちゃんと噛む。大事な事だ。そろそろ甘い物も食べたいなー。六花はかき氷とりんご飴どっちがいい?」
「うーん。りんご飴かな」
「おっけー、待ってて!」
そう言って、繋いでいたハルトの手が離れて買いに行ってしまった。
食事の時やお金を支払う時には離していたので、常に繋いでいた訳では無いが、なんだかふとその手が寂しいように思えてしまう。
ハルトにとっては迷子にならないように気遣いをしてくれているのだろうけれど、なんだか大事にされている気がして嬉しかった。
「早く帰ってこないかな」
「ボク、一人?」
「え?」
知らない声に頭上から話しかけられ、上をむく。すると、割腹の良い男が汗を流しながら話しかけてきていた。
正直、ちょっと気持ち悪い。見た目では無い。こう、ねっとりとまとわりつくような気持ち悪さを感じるのだ。
「一人じゃない」
敢えてキツく突き放すように返事をすると、男は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「一緒に来たのはパパとママかなぁ?」
「……教える必要ある?」
「違うの? 迷子ぉ? なら、おじさんと一緒に探しに行く??」
こちらの返答には耳を貸さないらしい。男はいいように解釈しているのか、そうやってこちらを油断させようとしているのか。
まだ何か言っているが、耳障りな音でしかない。
ここで、自分がこの大人を撒くだけならば至って簡単だ。しかし、目標が達成されなければきっと男は別の子供を標的にするだろう。
「おじさん」
「!? なぁに? あ、そうだ。これをあげようね。飴ちゃんだよ」
「この地域では、鬼が出るって知ってる?」
「ん? 飴ちゃん足りない? 一緒に行ってくれたらもっといいのあげるよ??」
一粒の小さな飴を乗せた手が汗ばんでいるのが、提灯の明かりでもよく分かる。それらの肌に触れないように、男に顔を近付ける。
ハルトの清潔な香りとは違い、風呂に入っていない酷い匂いが立ち込めているようだ。
「いらねぇよカス」
周囲の時を止める。男と自分だけが動く空間を作り出し、頭から一気に角を出す。肌が裂ける音が鈍く響き、男は目を開いたままそれから目を離せなくなっているようだ。
子供の身体に似合わない、大きな角と口をニヤリと歪ませ敢えて涎を纏わせた鋭い犬歯を見せびらかす。
「子供に混じって鬼が出る。お前なら死んでも誰も心配しないだろ?」
そう言うと、男はヒィと情けない声を出して腰を抜かした。ガクガクと震え、失禁でもしているのか独特の臭いに鼻が曲がりそうだ。
「た、た、た、助けてくれぇぇ!!」
「ん? 死にたくないのか? あぁ、助けてやるよ。地獄の鬼は俺より優しいから」
「!?」
「地獄の鬼はな、鼻から口からケツから、全部の穴から虫が入り込ませて内臓を食い尽くさせるんだ。食い尽くしたら鬼がまた生き返らせてくれて同じことを繰り返す。ずーっと生きていられる。優しいだろ? 僕が首を切ったらもう生き返れないからな。さぁ、どっちがいい?」
そう言って首に手を伸ばす仕草をすると、男は泡を吹いて倒れた。
「はぁー。こんなので倒れてたら、地獄行ったらもっと辛いよ? おじさん、ちゃんと善行するんだね」
男から離れ、見えなくなったところで時の解除をする。人々は何も無かったように、今まで通りに動き出す。
「りっかー?」
「ハルトー!!」
呼ばれた方向を向くと、両手にりんご飴……といちご飴や何故かチョコバナナにわたあめと甘味だらけで戻ってきた。
「買いすぎじゃない?」
「飴は袋に入ってるから帰って食べよう! オレ、チョコ大好きなんだ」
ニコニコと笑いながら一口食べているハルトは、それをこちらに差し出してきた。チョコレートを垂らしたばかりなのか、少し柔らかくバナナとよく合う。
「ありがと」
甘くて優しくてハルトようだ。
「おいしい? ん? なんかあっち騒がしくない??」
「んぅ?」
それは先程の男がいる場所だ。きっと誰かが男を見つけたのだろう。見たくもない顔を思い出し、舌打ちをしてしまいそうになるのを抑え、ハルトの服の裾を摘んだ。
「ねぇ、お腹いっぱいになったし遊ぼう? 射的やってみたい!」
「おお! いいな! 行こう行こう!!」
その場から離れ嫌なことを忘れるように、思い切り遊ぶことに専念した。
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