【R18】タルタロスの姫は魔族の騎士に溺愛される

麦飯 太郎

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冷える夜、ひとつのベッド *

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 浴場で全身をオイルマッサージされた翌日、フロストが去り際に〝俺〟と言ったのが気になり聞いてみた。すると、あっさりと答えてくれて普段の一人称は〝俺〟だという事が判明した。 
 正式な場では控えるべきだが、幽閉されたタルタロスの中では口調も一人称も飾らなくて良いと提案すると、暫く考えていたようだが、すぐにニコリと笑い「せっかくなので、少しだけ自分らしくいようと思います」と返された。
 砕けた会話の中に敬語があるのは、まるでかつての学友のようで心地が良かったが、フロストとの距離が心だけでなく実際の距離も縮まってしまい、こちらが困惑することもままある。
 今がそうだ。

「この戦争ですが、戦況の悪さは先王の愚策からと言えますね。ここで大量に死者を出すのは互いの歪みを大きくするだけだったと思うんです。私なら、まず敵陣のファーチス特攻長を拘束し……ってフロスト、聞いてます?」
「えぇ、聞いてますよ? それよりチョコレート食べませんか? これ他国で人気らしくて、すっごい美味しいって」
「……答えたら食べるわ」

 ムスッと苛だちを隠さずにフロストに顔を向けると、冷たい目線を持っていた書物に落とされた。視線を落とされたそこから凍り付いたのではないかと思うほど、手も身も凍るような視線に息を飲む。

「……ファーチスは捕まりませんよ。彼は人を殺すことと、無駄なプライドに関してだけは一流です。頭は悪いけど。下手に捕虜になるくらいなら、自害するでしょうね」
「――頭が悪いなんて出典、見たことないわ。彼は策士だと多くの書物で出てますし」

 絞り出すように言葉を出すと、すでにいつもの柔和な笑顔に戻りチョコレートをこちらの口に押し付けられた。

「そうですか? ほら、答えたから食べて下さい!」

 またはぐらかされた。
 最初は知りたいと思わなかった世話人の過去も、フロストだとどうも知りたいと思ってしまう。それは、多くの事をこうしてはぐらかされるから故により気になるのか、それとも、別の感情なのかは分からない。ただ、このチョコレートのように甘い気持ちは確実に心の隅に住んでいると思う。

「あ、チョコレートが唇に付いてますよ」
「え?」

 ハンカチで拭おうとすると、それより先にフロストの人差し指がそこを撫でる。そしてその指を口に含み、甘いですねとニコリと笑った。その笑顔をいつまでも向けてもらえるのか、答えの無い問いに口を噤み、心で バカ と悪態をついた。


 それからまた暫く経った。
 フロストからの接触は、髪にキスをされたり、唇に触れてきたりといったことが稀にある程度だ。今やあの浴室で触れられたのは、妄想や幻覚だったのではと疑ってしまう。
 穏やかなタルタロス生活だ。
 外界は小康状態らしく、軍からの依頼も無い。季節もいつの間にか冬を迎えたらしく、この年中気温が変わることの少ないタルタロスでさえ、夜は冷えるようになった。

「今日は雪でも降りそうね」
「よく分かりましたね! 朝から小雪がパラパラしてますよ。夜には本格的になって、明日には積もると宮廷預言者が言ってましたよ」
「そうなのね……夜は更に冷えそうだわ」

 すると、ふと思案した顔をしたフロストは自身の考察に納得したのか、ウンウンと首を縦に振りにこやかな表情を向けてきた。

「では、今日は抜け出して俺のベッドで寝ますか? 有難いことに、ここの世話係をしているのでとっても広い一人部屋を与えられているんです。暖炉もあるので暖かいですよ」
「え、でもそれは……」
「しかも、床はあの温水路が通ってるんです! 元は要人の接待室だったらしいので」

 確かに城の中は温めた水を床に通している場所がある。それは王族が使う場所のみに張り巡らされており、軍人学校に入る前まではその恩恵にあずかっていた。
 その暖かさと心地良さは、朝までぐっすりと眠れるだろう。

「では、一晩だけお願いします」
「かしこまりました。部屋を片さなきゃ」

 そういって笑みを浮べる顔は、最近はとても穏やかに感じることが多くなった気がした。

 
 夜もすっかり更け、少ない人数での警備に切り替わった頃にフロストと共にタルタロスを出た。深夜にこの地下深くからあの〝タルタロスの姫〟が出てくるとは誰も思っていないだろう。しかし、それでもこの場所からこっそりと抜け出すのは妙に緊張する。

「見つかったらどうなるかしら?」
「んー、とりあえず俺は世話係から外れて、戦争前線特攻部隊の更に前へ異動ですかね。あとは、死ぬ気のスパイとかですかね?」

 少し笑いながらフロストがふざけたように答える。だが、その答えは非常に正解に近いだろう。そっと一歩ずつ、確実にフロストの部屋に近付き、ようやくその部屋の扉の中に入り込んだ時はドッと力が抜けた。
 その場でへたり込むように床に座ると、じんわりと床から温もりが伝わってくる。

「暖かい……でも、緊張したわ。これを明日の朝も繰り返すと思うと……うーん、よっぽど寒い時だけでいいですね」

 くすりと笑ってフロストを見上げると、口に手を当てて笑いを堪えている。眼鏡の奥で優しく弧を描く目元に心臓の鼓動が少しだけ早まった。そんな胸を高鳴らせる瞳と視線が交わると、座り込んでいるこちらに合わせるようにしゃがみ込み顔を覗き込んできた。

「また来てくれるなら、もっと寒くなる事を祈りますね」

 もうこれっきりよ。そう言えばいいのに、そんなことを言いたくない気持ちもあり、無言でフロストの顔を睨む。

「それでは失礼して。よっと」
「え、ちょっと!」

 軽々と身体を横抱きで持ち上げられ、部屋の奥に連れて行かれる。そのままベッドに降ろされ、靴を脱がされた。タルタロスで着ていた防寒用の上衣も脱がされ、軽いネグリジェ一枚になってしまった。

「ちょっと、もう大丈夫よ。ありがとうございます、あとは一人で寝れ――ま、待って、なんでフロストも入ってくるんですか!?」
「え?」

 自身の軍服を脱ぎ捨て、軽いシャツ一枚に緩いズボンに履き替えたフロストは当たり前のようにベッドに腰掛け、寝転がる。
 そして毛布を上げ、自身の隣をポンポンと叩いた。

「マリア様、もしかして寝相悪いんですか?」
「そ、そんなことないです! でも、フロストは別の場所だと……」
「えぇ……俺も寒いんですよ?」
「……そ、そうだけどっ!!」

 そこまで言うと、寝転がっていたフロストが動き、こちらの腰を引き寄せるようにして毛布の中に引きずり込まれた。中で抱き締められている背中が暖かく、いつもどこかでフロストは生きていない別の生き物なのではと思っていたが、その考えがじんわりと溶けるようだ。
 毛布をかぶった暗闇の中では、自身の呼吸とフロストの呼吸だけが響く。この世界に二人きりになったようでどこか恥ずかしい。耐えきれず話しかけようとすると、腰に回されていたフロストの手が動いた。

「ひぁん!」
「大丈夫ですか?」
「は、はい。ん、大丈夫……です。でも、手を動かすのは止めて下さ、いっ」

 こちらの要求を無視したフロストの手が薄いネグリジェの上を滑り背中を撫でていき、肩から首に、そして頬に触れた。その手がスっと立ち上がり指先だけで唇をなぞる。
 形を確かめるように、湿りを伸ばすように、ゆっくり、丁寧に。こちらの呼吸が乱れ始めようと気にせず、それを続けている。
 徐々に毛布の中が息苦しくなり、空気を求めるように毛布から顔だけを無理矢理出す。しかし、フロストは出てこない。それどころか、顔を出したことによって乱れた髪を退かされ、首筋にキスをされた。

「――んッ」

 柔らかいフロストの唇、更に柔くしっとりとした内側を押し付け濡らされ、それを舐めとるように今度は舌が這う。こんなことは止めさせねばならないと理解してはいるが、フロストを拒否することができない。

(――違う、したくない――止めて欲しくないんだわ、私……)

 首筋を許されたフロストはモゾりと動き、こちらのネグリジェの肩の布をずらして背中にキスを落とし始めた。

「ァ、ん、――ふ、ぁ……」

 精一杯押し殺し吐息と混じるように、誤魔化せるように声を出す。一つ一つのキスが身体の内側を駆け巡り、その度にジワジワと身体の奥に熱がこもるのを感じた。
 ビクンと腰が動いてしまい、それを察知したフロストは手をするりと動かしネグリジェの裾をたくしあげ、太ももに触れる。

「ちょっ、ちょっと、フロスト!?」

 思わず毛布を捲ると、乱れたネグリジェから肩と太ももを露わにした淫らな自身の姿と、そこに縋り付くようなフロストが現れた。捲ったことを後悔するようなその淫猥さに目が眩みそうになるが、持ち堪えてフロストに声をかける。

「こんなこと、止めて下さい……」
「――本当に?」
「え?」
「本当に止めて欲しいですか? ほら、胸の先だってこんなに勃ちあがって、ネグリジェを押し上げてるんですよ? あぁ、あと太ももの内側からは淫乱な愛液の香りが凄いな。――堪らない」

 そう言うと、こちらをベッドに両手を縫うように押し倒し、ネグリジェ越しに乳首を舌先で弾く。その光景を見ていることしかできず、ただ口を薄く開け、短い呼吸を繰り返す。
 形の良い唇で挟むようにコリコリと動かされた乳首から、電気のようにビリビリと身体に痺れが伝わった。フロストの唾液でしっとりと濡れたネグリジェを吸い上げるように乳首が口の中に消えると、はしはしたなく腰が動いてしまう。
 もう抵抗しないと判断したのか、フロストの右手は手首から離れ身体をなぞりネグリジェの上から蜜の垂れる場所へと移動した。

「凄いな。ネグリジェもビショビショになるくらいに濡れてますよ? というか、マリア様は寝る時はネグリジェ一枚なのですね。でも、男の部屋に来るのにショーツも付けないのは不用心過ぎないですか?」
「そ、言われても、一緒に寝る予定なんて無かったもの!」
「ふーん、それか俺が男として見られて無かったのかな? この外見は好みでは無かったですか? あなたと同じ黒髪、ゴールド……あぁ、シルバーブロンドとかどうです? 貴女の好みなら変えてもいいなぁ」

 ふわりと柔らかい、何処にでもいる焦げ茶の髪の毛の人が何を言っているのだろうか。しかし、その反論を口にする前にフロストの指の腹がネグリジェ越しの陰核に触れた。

「ひぁッ! アン、ん、や、めっ、そこヤダぁ!」

 意地悪そうにペロリと舌を出し下唇を舐めたフロストは、覆い被さるように身体をずらし濡らした唇を耳元に付けた。

「こっちの方が好き? それとも慣れてないだけですか? こんなに大きな乳房なのに、普段は押し付けてるなんて勿体無いですよ。ほら、本当はこんなに敏感なんだから」

 左手は乳房を、右手は陰核を、唇は耳を弄ぶ。

「あぁァ! ――ダメ、つ、まんじゃやぁ――ッあぁっ!」
「ならこれは? 摘ままないで乳首を爪先でカリカリって。マリア様、気持ち良くて堪らないって腰が動いてますよ。ベッドまで愛液で濡れてるんじゃないかな?」
「ほんっ、と、やめなさ……ああっ! だめ、よぉっ!」

 初めての経験に頭がふわりふわりと浮かぶようだ。目の前のフロストの表情は影が落ちているが、淫靡に笑みを浮かべていることがわかる。
 耳元にかかるフロストの興奮した熱い息遣い、爪先で弾かれ弄ばれる固くピンと勃つ乳首。ネグリジェ越しに触れられた陰核はフロストの身体が差し込まれ、更に触りやすいように太ももを大きく開いている。
 ネグリジェが吸いきれなくなった女の欲望と卑猥な香りを放つ蜜がツーッとベッド垂れていく。その微かな感覚さえも敏感になり、全身が性的な感覚を捉えているようだ。

「フロスト、フロス――トォ! おかし、なんか、フワッて……くぅ、あッ! ンゥ!」
「あぁ、限界ですか? 俺のもこんなになってるんですけど、今日は勘弁してあげますね。ほら、分かりますか?」

 陰核に触れていた手を退け、こちらの身体を反転させてきた。うつ伏せになると、フロストが腰を動かしグイグイと尻に熱の塊を押し付ける。
 その真ん中に人生で感じたことのない、脈打つ猛々しい肉の塊が確かにある。知識では知っていたそれは、こんなにも熱くそして力強く……想像以上に大きい。
 軍の酒の席で聞いた猥談では、これを女は悦んで身体に受け入れるといっていた。だが、本当にこんな大きなものを女は受け入れているのだろうかと不安よりも疑問が浮かぶ。

「……マリア様、ちょっと冷静になってしまいましたか? じゃぁ、俺も良くなりたいから」
「ダメっ! 挿れないでくだ……さい……その、怖いので――んッ」
「大丈夫ですよ、今日は入れない。だから、こうして俺のペニスを可愛いマリア様の勃起したクリトリスに押し付けるだけです。ほら、布越しだけど先っぽから根元までゴシゴシ擦ると――んッ、俺も気持ち良い」

 ネグリジェをたくし上げ、太ももに肉棒を差し込まれた。リズム良くフロストの腰が上下に動き、陰核が擦られ熱くなる。ますます溢れ出る蜜を肉棒の先が掬うように持ち上げ、脈打つ棒で擦り付け、根元が押し込むように熱を伝えてきた。自然とこちらの腰も浮き上がり、フロストの手が尻を持ち上げるとそのリズムは速くなる。
 揺れる身体に合わせ、乳房が大きく揺れる。それでもしっかりと濡れたネグリジェから乳首がぷっくりと主張している。
 背を向けて喘ぐ私に向け、フロストは「堪らない」と言葉にした。
 性に興奮した男の声に、身体はヒクヒクと反応してしまう。

「や、あッ、イッちゃっ、イクぅ……こんな、はしたな――イッッ」
「いいですよ。可愛い、ねぇ、マリア」
「あぁ、んっ、ぁぁァァッ!!」

 フロストが一際大きく腰を動かし陰核が擦れて取れるほど押し付けられ、それと同時に腰がビクンと跳ね、目の前に閃光が走る。

「――ッ、でるッ! はぁはぁ、すっご……ねぇ、俺ね。マリア様に言わなきゃ……」

 白くなった目の前が徐々に黒に染まっていく。何かフロストが大事な話をし始めているはずなのに、一切内容が入ってこない。
 ただじんわりと心の内にフロストへの確かな気持ちが広がっていくのを感じていた。
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