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嫉妬・愛・欲望を抱き締める *
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瞼が重い。
酷く泣いた後のように、腫れている感覚がある。瞼を閉じたまま、ほかの感覚を研ぎ澄ませると玄関が開く音がした。
扉ではなく玄関だと分かったのは、外の木々が風で揺れている音とその香りが微かにしたからだ。
「あ、マリア様。おはようございます」
「おはようございます、フロスト」
起き上がり瞼を無理矢理開き、清楚な格好をしたフロストを目にした。
「服、どうしたんですか?」
「少し時間があったので、森を抜けた所の街で買ってきました。マリア様のも用意したから着替えたら?」
「ありがとうございます」
置かれた服は町娘が着るような、白のバルーンシャツにスカイブルーの爽やかな膝丈のワンピースだ。ふと見るといつもの物が無い。
「ねぇ、フロスト。私のさらしは……?」
「無いですよ。ちゃんと女性らしいコルセットを買ってきたから、それ付けて下さい」
「そ、そんなの付けたことないわ!」
「だめ。さらし巻いて、軍服着てたらすぐ身元がバレるから。さらしの無い状態でサイズを合わせてるから。ね?」
そう言われたら仕方ない。そして、さらしを外したサイズを知られている恥ずかしさで顔がカッと熱くなった。
部屋から出たのを見計らい、寝巻き代わりにされていたシャツを脱ぎ、袖を通す。さらりとした着心地だが、スカートは機動性が良くない。こんなものを町娘はよく着ているものだと、感心するが、初めて軍人ではない自分になれたようで少し心が弾んだ。
「フロスト?」
キッチンで、フロストが何か料理をしている。卵とハムの香り、それにパンが机に並んでいた。
促され席に座り、祈りを捧げて食事に口をつけた。
「あの、ありがとうございます。何から何まで……あと今更だけど……ここはどこですか?」
「いいえ、俺が全部してやりたいんです。ここはモルタール王国の森の中。って言ってもモルタール王国とマリア様の居たティアブール国、そして……オッズライルの領土も近い」
「モルタール王国……」
モルタール王国。神話の時代から中立を守り続けている、平和主義の国だ。
平和主義ではあるけれど、他国の争いごとには基本的に介入しない。戦争は勝手にどうぞ、こっちに火の粉飛ばさないでね。そんな国だ。
そして、暗殺者を送り込んだオッズライル。こちらは元々ティアブール国の領土だ。いや、今もティアブール国のはずなのだが、豊かな領土に人が集まり、金も集まり……領主であるボードン伯爵が立国を宣言するという暴挙に出た。
そんな宣言を受け入れられないティアブール国と、戦争を期にティアブール国まで乗っ取ろうとしている欲まみれのオッズライル。
今いる場所が辛うじて中立国のモルタール王国ではあるが、いつどこの国の追っ手が来たとしても不思議ではない。
それに、離れてはいるものの、ロックフェルト国という北方の強国も少し前にティアブール国に進軍しているのだ。そこで森に誘い込む作戦の発案は〝鬼神の乙女 マリア〟だと察した者がいたらしい。生きていることが知られた以上、こちらも……要注意だ。
タルタロスの姫が消えたことで、ティアブール国は上層部が多少混乱するだろう。だが、不要な姫と扱っていたので国を挙げて表立って探すことは出来ないはずだ。……秘密裏に動いてはいるだろうけれど。
やはり、一番の問題はオッズライル。
暗殺の失敗、フロストの本当の姿、それはオッズライルの脅威になっているはずだ。
「……そういえば、フロスト。あなたのその髪……切ったのですか?」
「ん、邪魔だったんで。さすがにシルバーブロンドを伸ばしたままだと目立つんで、適当に切っちゃいました。あ、マリア様は嫌だった? 長い方が好きなら伸ばしましょうか?」
「――いえ、その、似合うと思うわ」
窓から差し込む光で煌めくシルバーブロンドの髪は、爽やかなショートヘアに切られ、美しい首筋が良く見えた。
好青年そのものだ。
街に出たということならば、きっと今頃噂の的なのではないだろうか。しかし、ここで目立つのは良くない。
「……ここにいつまでいるの?」
「マリア様の血を貰ったから、かなり回復したけど……飛べる程じゃないんです。だから、そうだな。新月には治る。そしたら移動しましょう」
「新月……」
「あと十日です」
追手に怯えつつ過ごす十日間は、酷く長くなりそうだ。
「分かったわ。気を付けましょう。……ねぇ、様付けすると違和感があるわ。私のことは……昨日みたいにマリアって呼んで下さい。あと、私は年下だし敬語と砕けた言葉が混ざるのは軍の頃からの癖だからいいけど、フロストは私への敬語も禁止しましょう?」
「――うん、分かった。昨日みたいに……ねぇ。マリア、これからよろしくな」
少し意地悪な笑みを浮かべ、フロストが笑う。昨日みたいにとわざわざ付けたことを後悔したが、昨日のことは後悔していない。
フロストといることの安心感は、人生の中で何にも変え難いからだ。
だが、赤らむ顔を見られまいと顔を俯ける。
その様子を見て、フロストは追い打ちをかけるように「マリア、可愛い」と微笑んだ。
******
森での暮らしは案外快適で、勝手に使っている小屋は元々別国の姫が匿われた場所だとフロストが情報得てきた。もう誰も使うことがなく、街の人が順番に風を通していたらしい。
使うことで家を廃らせることもないので、住むことは構わないとのことだ。
「ねぇ、私も街に行きたいわ」
暮らし始めて四日目。買い出しはフロストがしていたので、この小屋の傍で水汲みと洗濯、掃除に料理くらいしかやることが無い。
そもそも怪我人に買い出しをさせるのは嫌なのだが、妾の子だけれど一応マリアは王女ではある上に、殆ど軍とタルタロスにしかいなかったので常識……が少し疎い。とフロストに判断されてしまったのだ。
「えー、マリアを街に連れて行きたくないなぁ……」
「フロストより目立たないわ」
「いや、目立つよ」
「目立たないです! それに、荷物持ちでもなんでもするわ!」
美しい銀髪と男らしい肉体、そして甘い中に涼しい目元のフロスト。それに比べ、平均より少し小さな身長の黒髪長髪の町娘姿の私が並べば月とスッポンもいいところだ。
余計なことはしないからと目を潤ませる。
こちらの期待の眼差しに、諦めたようにフロストは溜息を吐いた。そして渋々「いいよ」と了承してくれた。
森を抜けると、人々が交差する賑やかな街に出る。人々の笑い声、子供達が駆け回り、商店の呼び込みの声が響く。
三国の国境が近いからこそ、危険もあるが人の流れも多いのだ。
「あっら! フロストじゃない! 今日は寄ってかないの?」
「ふーん、その子が例の病弱の子ぉ?」
「フロストぉ、いつうちに飲みに来てくれるのぉ?」
街に出ただけで、フロストは多くの大人の女性に声を掛けられている。そして、同時に隣に立っているだけで値踏みされるような視線が絡みつく。
(い、居心地が最悪ね……)
軍人の値踏みとは違い、女性として、だ。
己より弱いと思ったら上官でも喧嘩をふっかけるような、血気盛んな筋肉狂いの奴らの方がよっぽどあっさりしている……と初めての感覚に早々に音をあげそうになった。
「そう、俺の大切な人。ね? 可愛いでしょ?」
フロストは何も気にしていない風に返し、女の人達にじゃぁねと手を振りその場を後にした。
それを追い掛け、パン屋に入る。
「いらっしゃーい。おや、フロスト――ってその美人、誰!? うちの街にそんなべっぴんさんいた!?」
「こんにちは、マリアです」
パン屋の男店主に微笑み、挨拶をすると喉元がゴクリと動いたように見えた。
「俺の大切な人。手を出すなよ」
目の前にフロストが立ち、男店主との間に壁ができる。しかし、男店主は後ろを覗き込もうと軽やかな動きで跳ねだした。
「んーだよー! なぁ、マリアちゃん。フロストみたいな軟弱な男やめてさ、俺にしない? パン屋仕込みのこの腕が優しーく激しーく夜も満足させてあげるぞ」
「ふざけんな! 俺のマリアに手を出だしたら食い殺すぞ」
「……はーっはっはっは!! 食い殺すって! フロスト、ムキになり過ぎだろ! いやいや、お前が好き過ぎることは分かったよ。わかった。そんな怖い顔するなってぇー。今日は俺が奢るから好きなパン持ってけよ」
豪快に笑った男店主は、チラリとこちらを見てウィンクをする。そして「まぁ、フロストに飽きたら考えてくれよ」と誘い文句を垂れた。
その後も行く店行く店や、すれ違ったフロスト知り合いや、たまたま一人の待ち時間等々で知らぬ男に口説かれ、容姿を賛辞された。そのような経験は無いので、どうしていいか分からず、適当に笑顔を見せフロストのフォローを待っていた。
だが、帰り道。
街を出て、森を歩いてるとフロストの機嫌が悪いことに気が付いた。それが街からだったのか、どこからなのか分からない。
下手なことを言わないように、ただの町娘に見えるように演技に必死だったからだ。
歩調も早く、こちらを見ないフロストに声をかける。
「あの、フロスト?」
「何」
「連れて行ってくれて、ありがとうございます」
「――ふーん……」
足を止めたフロストは、振り向きこちらを見る。その視線が冷たく、だが燃えるような熱を孕み、戸惑いが隠せない。
手を伸ばし、頬に触れられ、思わずビクリと肩を揺らした。
「俺が怖い? ならパン屋のとこ行く? それとも花屋? 肉屋でもいいけど? いっそ、俺の知らない男の方がいいですか?」
「……何を……言ってるの? フロストが怖いはずないじゃない」
「そう? でも、俺より優しくしてくれるってよ? まぁ、あいつら人間だし? 俺みたいにわけが分からない奴よりいいんじゃない?」
「フロスト……」
「何」
「嫉妬してる?」
「――!!」
苦虫を噛み潰したような顔をして、フロストは抱えていた荷物をその場に捨てるように落とし、両手で頬を捕まれ無理矢理唇を奪われた。激しく、角度を変え貪るように。
息をする暇もないそのキスは、フロストの心のままのようだ。苦しく愛しい、そのキスに答えるように舌を絡ませる。
心を通じあわせたと感じたあとも、フロストの真意をどこかで疑っていた節があった。本当に自分なんかに好意を持って貰えるのだろうか? 好意だとしても、本当に私でいいのだろうか……。その疑い全てを晴らすような嫉妬のキスに、思わず身体の力が抜ける。
「んっ!」
下がった身体を支えられフロストを見上げると、その顔は紅く染まり目元が潤んでいた。
(欲情した獣そのものだわ……)
恐ろしくなるほどのその表情に思わず息をのむ。そして同時にこちらも同じように、熱く頬が染まっていることに気付いた。
「ねぇ、フロスト……」
「――荷物、運んどけ」
「え? あっ、ちょっと!!」
腕を強く握られ、道を外れ森に入る。ただでさえ翳り始めた太陽と、その微かな光でさえ遮る木々により、森は暗くなりはじめている。
足元が不安定な中でも、フロストはまるで舗装された道を歩いているかのように突き進んだ。
やがて森には日が差さなくなり、暗闇が辺りを包む。ホーホーと梟が鳴く声すら、闇の中では別の生き物の声のようだ。
「ねぇ、どこ行くの? 荷物はどうするんです?!」
「……」
「フロスト!」
「……」
無視しているのかと思ったが、どうやらこちらの声が聞こえていないようだ。グッと思い切り足を止め、フロストの腕を振り払う。
「フロスト!!」
「――!? 俺から逃げるのか!?」
振り返ったフロストが泣きそうな顔をしていたので言葉を返せずにいると、それを肯定と受け取ったフロストは堰を切ったように言葉を吐いた。
「俺が人間じゃないからか!? 確かに俺はお前に対して最初は回収先としか思わなかった。そりゃそうだろ? 直接的でも間接的でもかなりの人を殺しているお前の、しかも王族の血を引いてるなんて最高にランクが高い魂だ。タルタロスで会ってすぐにお前の魂が想像以上に良いものだって分かったよ。それを魔王に渡せば、飽きてた低い魂をひたすら戦場で拾うことも暫くしなくて済むだろ。でもお前と話して、人となりを知っちゃったから……お前には俺しかいないんだって思っちゃったんだよ! あの地下の底で、俺を待ってたのかなーなんて人間の頃みたいに夢を……夢を見たんだ。今は、魂なんかより……マリアの心が欲しい……」
一方的な話し方に驚いたが、フロストの素直な言葉にとても安心した。一歩近づき、ビクリと肩を揺らしたフロストの頬に手を伸ばす。背の高い彼を下から見上げているにも関わらず、年齢もきっとずっと年上にも関わらず、とても幼く……寂しそうに見えた。
「逃げないわ。私にはフロストしかいないもの。きっとこの先も私を理解してくれるのは……フロストだけですから」
「……」
「……愛してる。フロストを愛しています」
「……愛してる?」
初めて聞いた言葉のようにフロストが反芻した。言葉にした愛は互いの心に染み渡り暖かな広がりをつくる。
時間をかけ、言葉の意味を理解したのかこちらにもたれ掛かるようにフロストが抱き締めてきた。
「俺も、愛してる。ごめん」
「なんで謝るんですか?」
「人を愛するなんて……もうないと思った。だから人を捨てたのに。この世が壊れたらいいと思って……」
好きで人間であることを捨てた訳では無いのだろう、辛く悲しいことを忘れるため、その理由は聞くことができないけれど、真っ直ぐ向き合うことを恐れるほどだったのは予想ができる。
「ずっと隣に居て欲しい」
「います。フロストの隣に」
「年齢を共に重ねられなくても」
「あら、それは私が心配しなくてはならないのね? しわくちゃになっても隣にいて貰えるように努力しなくちゃ」
そう言うと「大丈夫、俺はしつこいから」とようやくフロストはいつもの優しく狡い笑みを浮かべた。
その笑みに安心し、抱き締められた身体をより密着させるように抱き締め返す。フロストの心臓は確かに動き、トクトクと心地良い音色を奏でている。
彼の音、匂い、仕草、表情、温もり。全てが愛しく感じた。
「ありがとう、マリア」
「私も、少し不安だったんです。でも、口にすると凄くスッキリしました。ありがとうございます」
先程よりもフロストの鼓動が早くなる。身体の熱も上がったようだ。
「……ごめん、シたい。今すぐ、マリアを感じたい。優しく出来ないと思うけど、いい?」
素直な熱い視線に負け、俯くように頷く。それを合図に両手で頬を包まれ上向かせられる。先程の力任せのキスではない、溢れる何かを共有するようなキスが降ってきた。
角度を変え、舌を絡ませ、それでも足りないとフロストの手が髪をクシャクシャになるほど指に絡ませた。
今の呼吸は自身の呼吸なのか、それともフロストのものか、それすら判別がつかないほど溶けて混ざり合う。
「んック、は、んっうッ」
しばらくするとフロストの指は髪をすり抜け、スカートの下から手を差し込み太ももを撫でた。
「あっ、や! 待って!」
「なんで? あぁ、本当だ。これは嫌だよな。キスだけで下着からトロトロに愛液が溢れてる」
恥ずかしさで頭が沸騰しそうだが、溢れて流れ伝うそれを止めることが出来ない。フロストとのキスは、それだけで身体が快楽として反応してしまうのだ。
知られてしまった溢れた愛液をどうにも出来ずただ黙っていると、フロストはスカートを思い切り持ち上げこちらに押し付けてきた。
「持ってて。服を汚したら困るでしょ?」
「でも、こんな自分で持つなんて……」
「早く。垂れちゃう」
急かされるようにスカートの裾を渡され、思わず受け取るとニコリと笑い「良い子です」と囁かれた。
その囁いた唇はフロストが膝をついたことによりスッと下がり、下着の目の前に顔が来てしまった。何をされるのか察したけれど、阻止するよりも早く、下着をズラしたフロストは顔を埋めた。
「――ッッ!! ふァァっ!!」
熱くヌメヌメとしたものが這い、そして時折暖かな空気が太ももにかかる。そのヌメヌメと湿度の高いそれは、太ももから少しずつ登ってきた。
そのヌメリがフロストの舌先だと脳がようやく理解した時には、既に下着がズラされ溢れる蜜は直接太ももに流れはじめる。
「舐めちゃ、や」
「嘘、クリトリスが気持ち良いんでしょ?」
まだ隠れている陰核を暴くようにピンポイントでジュッと吸い上げられ、背筋を反らす。ドクドクと胸の鼓動が全身に、いや、陰核まで心臓になったような感覚だ。
舌先は陰核と蜜口を何度も行き来し、ジュルルと啜る音と同時に腰が震えまた蜜が溢れ出す。
「もう、もう、やめ……」
こちらの言葉など届いていないように、フロストはあらゆる音を奏でて愛撫を続けた。少しずつ舌先は蜜の溢れる場所を解すように、そして中に入ることの許しを得るかのように蜜口をノックをしてきた。
これ以上は駄目だ。もう恥ずかしさではなく、腰が痺れ、立っていられない。足の力が一気に抜けて、ガクンと落ちるように膝が折れた。
「大丈夫?」
顔を離し、こちらの腕を持つようにして支え、立ち上がったフロストを見上げる。暗い森の中でも分かるくらい、フロストの口周りは液体が纏わりつき鈍く光っていた。
それを空いた指先で軽く撫で、口元に運んだフロストは「美味しい」と意地悪な笑みを浮かべた。
「――! そんなはず、ない……」
「本当? 俺は美味しいって思うよ。あぁ、じゃぁ、マリアも俺の舐める?」
そう言われ思わず見たフロストの股間はズボンがこれでもかと持ち上がり、その大きさを現している。
恥ずかしさと微かな期待に戸惑い、視線を外すとフロストに手を握られ立ち上がらされた。
「ごめん、無理は言わない。心の準備ができたら、いつか」
嫌ではない。嫌ではないのだが、ただ驚いただけなのだと言葉が出なかった。ふと口元を緩ませたフロストは、流れるように優しくキスをしてきた。
そしてキスの最中にズボンと下着を下ろし、反り勃った肉棒を露わにし太ももに擦り付ける。
「本当は指でちゃんと慣らしてあげた方がいいんだけど……もう挿れたい。いい?」
スカートを持ち上げながら、口淫で蕩けた部分が熱く硬い楔を欲しがっていることを理解していたので、ゆっくりと頷く。
「ほし、い。もう、ギュッって疼くんです……」
「……ずるいな。可愛い。そんな言葉どこで覚えたの? 戦場の男達? でも言葉を使うのは俺だけにしてね、そのエッチな顔も」
今、自身はどんな表情をしているのだろう。溶かされ恥ずかしいくらいトロトロで、情けない表情に違いない。それを可愛いと言えるフロストは相当物好きだ。
だが、今まさに肉棒を押し当て挿れようとしているフロストの雄のような表情を、とても魅力的だと思っている。きっと同じだ。
少しずつ肉棒が中を広げ侵入してきた。
「――アァァっ!」
押し広げ、慣らしてないはずのそこは痛みを伴うはずなのに、ただ熱で蕩けているようだ。体内に入り込むそれが愛しく、ひたすらに下腹部が疼く。
埋まっている部分が増えるごとに溢れる蜜がツーッと太ももを伝い落ちる。森の静けさに はぁはぁ という二人分の呼吸とぷちゅんと肉棒に押し出された蜜の音が響いた。
ジワジワと柔壁から与えられる快楽が、全身に甘い毒のように広がる。
「ね、左足上がる?」
「んぅ、あ!」
こちらの返事を待たず、フロストはこちらの左足を自らの腕に乗せ、肉棒がより奥を目指せるような体勢になった。
その結果、動きやすくなった腰をフロストが一気に叩きつけるように前後にグラインドさせる。パチュンパチュンと恥ずかしいほどの音と、フロストの下生えに蜜が絡みついてブチュンと泡立つような音も同時に聞こえた。
溢れた蜜を掻き出し、泡立つほど掻き混ぜ、そしてまた溢れるのをサポートするように肉棒が溢れた蜜を引きずり出す。
「――ッッ! アンっ! んっ、ンくっぅっ! あぁ、アァァっ!!」
「すご、ねぇ、本当に二回目? 凄い絡み付いて離さない。それに、愛液が、エッチな汁が溢れ過ぎてグチュグチュだ」
「や、やァ、こんなこと……ここ、外、だから、そんなッ、ならな、いっ、アァッ!!」
「ウソ。興奮してるでしょ? マリアの目、潤んでもっと酷く突いてって言ってるみたい。沢山してあげる。俺のペニスで降りてきた子宮の入口……ポルチオもいつかは良くしていこうな。マリア、愛してる、絶対離さない」
実際、野外で交わり腰を振るなど想像もしたことが無かったが、それが全てフロストから与えて貰っていると思うと、ただただ気持ちが良く、堪らない。
「フロス、イッちゃっ、う! 奥がキュゥって、ァン、んッ、ふァ、イク――!! ンンっ!」
「俺も、で……る!!」
頭が真っ白になるその瞬間、フロストの唇が喘ぎ空気を求めるこちらの唇を塞いだ。思うように息が出来ない中で、夢中でフロストの唇を求める。
ビクビクと腰が震え、それとは別に中の熱がビクンと跳ねる度に熱い飛沫を最奥に叩き付けられた。
じんわりと広がる熱が心地よく、ウットリとフロストを見上げる。まだ息の整わないフロストだが、口元を柔らかく緩ませ「凄い気持ち良い、早く今度はゆっくり布団で抱きたい」と意地悪で優しい笑みを浮かべたのだった。
酷く泣いた後のように、腫れている感覚がある。瞼を閉じたまま、ほかの感覚を研ぎ澄ませると玄関が開く音がした。
扉ではなく玄関だと分かったのは、外の木々が風で揺れている音とその香りが微かにしたからだ。
「あ、マリア様。おはようございます」
「おはようございます、フロスト」
起き上がり瞼を無理矢理開き、清楚な格好をしたフロストを目にした。
「服、どうしたんですか?」
「少し時間があったので、森を抜けた所の街で買ってきました。マリア様のも用意したから着替えたら?」
「ありがとうございます」
置かれた服は町娘が着るような、白のバルーンシャツにスカイブルーの爽やかな膝丈のワンピースだ。ふと見るといつもの物が無い。
「ねぇ、フロスト。私のさらしは……?」
「無いですよ。ちゃんと女性らしいコルセットを買ってきたから、それ付けて下さい」
「そ、そんなの付けたことないわ!」
「だめ。さらし巻いて、軍服着てたらすぐ身元がバレるから。さらしの無い状態でサイズを合わせてるから。ね?」
そう言われたら仕方ない。そして、さらしを外したサイズを知られている恥ずかしさで顔がカッと熱くなった。
部屋から出たのを見計らい、寝巻き代わりにされていたシャツを脱ぎ、袖を通す。さらりとした着心地だが、スカートは機動性が良くない。こんなものを町娘はよく着ているものだと、感心するが、初めて軍人ではない自分になれたようで少し心が弾んだ。
「フロスト?」
キッチンで、フロストが何か料理をしている。卵とハムの香り、それにパンが机に並んでいた。
促され席に座り、祈りを捧げて食事に口をつけた。
「あの、ありがとうございます。何から何まで……あと今更だけど……ここはどこですか?」
「いいえ、俺が全部してやりたいんです。ここはモルタール王国の森の中。って言ってもモルタール王国とマリア様の居たティアブール国、そして……オッズライルの領土も近い」
「モルタール王国……」
モルタール王国。神話の時代から中立を守り続けている、平和主義の国だ。
平和主義ではあるけれど、他国の争いごとには基本的に介入しない。戦争は勝手にどうぞ、こっちに火の粉飛ばさないでね。そんな国だ。
そして、暗殺者を送り込んだオッズライル。こちらは元々ティアブール国の領土だ。いや、今もティアブール国のはずなのだが、豊かな領土に人が集まり、金も集まり……領主であるボードン伯爵が立国を宣言するという暴挙に出た。
そんな宣言を受け入れられないティアブール国と、戦争を期にティアブール国まで乗っ取ろうとしている欲まみれのオッズライル。
今いる場所が辛うじて中立国のモルタール王国ではあるが、いつどこの国の追っ手が来たとしても不思議ではない。
それに、離れてはいるものの、ロックフェルト国という北方の強国も少し前にティアブール国に進軍しているのだ。そこで森に誘い込む作戦の発案は〝鬼神の乙女 マリア〟だと察した者がいたらしい。生きていることが知られた以上、こちらも……要注意だ。
タルタロスの姫が消えたことで、ティアブール国は上層部が多少混乱するだろう。だが、不要な姫と扱っていたので国を挙げて表立って探すことは出来ないはずだ。……秘密裏に動いてはいるだろうけれど。
やはり、一番の問題はオッズライル。
暗殺の失敗、フロストの本当の姿、それはオッズライルの脅威になっているはずだ。
「……そういえば、フロスト。あなたのその髪……切ったのですか?」
「ん、邪魔だったんで。さすがにシルバーブロンドを伸ばしたままだと目立つんで、適当に切っちゃいました。あ、マリア様は嫌だった? 長い方が好きなら伸ばしましょうか?」
「――いえ、その、似合うと思うわ」
窓から差し込む光で煌めくシルバーブロンドの髪は、爽やかなショートヘアに切られ、美しい首筋が良く見えた。
好青年そのものだ。
街に出たということならば、きっと今頃噂の的なのではないだろうか。しかし、ここで目立つのは良くない。
「……ここにいつまでいるの?」
「マリア様の血を貰ったから、かなり回復したけど……飛べる程じゃないんです。だから、そうだな。新月には治る。そしたら移動しましょう」
「新月……」
「あと十日です」
追手に怯えつつ過ごす十日間は、酷く長くなりそうだ。
「分かったわ。気を付けましょう。……ねぇ、様付けすると違和感があるわ。私のことは……昨日みたいにマリアって呼んで下さい。あと、私は年下だし敬語と砕けた言葉が混ざるのは軍の頃からの癖だからいいけど、フロストは私への敬語も禁止しましょう?」
「――うん、分かった。昨日みたいに……ねぇ。マリア、これからよろしくな」
少し意地悪な笑みを浮かべ、フロストが笑う。昨日みたいにとわざわざ付けたことを後悔したが、昨日のことは後悔していない。
フロストといることの安心感は、人生の中で何にも変え難いからだ。
だが、赤らむ顔を見られまいと顔を俯ける。
その様子を見て、フロストは追い打ちをかけるように「マリア、可愛い」と微笑んだ。
******
森での暮らしは案外快適で、勝手に使っている小屋は元々別国の姫が匿われた場所だとフロストが情報得てきた。もう誰も使うことがなく、街の人が順番に風を通していたらしい。
使うことで家を廃らせることもないので、住むことは構わないとのことだ。
「ねぇ、私も街に行きたいわ」
暮らし始めて四日目。買い出しはフロストがしていたので、この小屋の傍で水汲みと洗濯、掃除に料理くらいしかやることが無い。
そもそも怪我人に買い出しをさせるのは嫌なのだが、妾の子だけれど一応マリアは王女ではある上に、殆ど軍とタルタロスにしかいなかったので常識……が少し疎い。とフロストに判断されてしまったのだ。
「えー、マリアを街に連れて行きたくないなぁ……」
「フロストより目立たないわ」
「いや、目立つよ」
「目立たないです! それに、荷物持ちでもなんでもするわ!」
美しい銀髪と男らしい肉体、そして甘い中に涼しい目元のフロスト。それに比べ、平均より少し小さな身長の黒髪長髪の町娘姿の私が並べば月とスッポンもいいところだ。
余計なことはしないからと目を潤ませる。
こちらの期待の眼差しに、諦めたようにフロストは溜息を吐いた。そして渋々「いいよ」と了承してくれた。
森を抜けると、人々が交差する賑やかな街に出る。人々の笑い声、子供達が駆け回り、商店の呼び込みの声が響く。
三国の国境が近いからこそ、危険もあるが人の流れも多いのだ。
「あっら! フロストじゃない! 今日は寄ってかないの?」
「ふーん、その子が例の病弱の子ぉ?」
「フロストぉ、いつうちに飲みに来てくれるのぉ?」
街に出ただけで、フロストは多くの大人の女性に声を掛けられている。そして、同時に隣に立っているだけで値踏みされるような視線が絡みつく。
(い、居心地が最悪ね……)
軍人の値踏みとは違い、女性として、だ。
己より弱いと思ったら上官でも喧嘩をふっかけるような、血気盛んな筋肉狂いの奴らの方がよっぽどあっさりしている……と初めての感覚に早々に音をあげそうになった。
「そう、俺の大切な人。ね? 可愛いでしょ?」
フロストは何も気にしていない風に返し、女の人達にじゃぁねと手を振りその場を後にした。
それを追い掛け、パン屋に入る。
「いらっしゃーい。おや、フロスト――ってその美人、誰!? うちの街にそんなべっぴんさんいた!?」
「こんにちは、マリアです」
パン屋の男店主に微笑み、挨拶をすると喉元がゴクリと動いたように見えた。
「俺の大切な人。手を出すなよ」
目の前にフロストが立ち、男店主との間に壁ができる。しかし、男店主は後ろを覗き込もうと軽やかな動きで跳ねだした。
「んーだよー! なぁ、マリアちゃん。フロストみたいな軟弱な男やめてさ、俺にしない? パン屋仕込みのこの腕が優しーく激しーく夜も満足させてあげるぞ」
「ふざけんな! 俺のマリアに手を出だしたら食い殺すぞ」
「……はーっはっはっは!! 食い殺すって! フロスト、ムキになり過ぎだろ! いやいや、お前が好き過ぎることは分かったよ。わかった。そんな怖い顔するなってぇー。今日は俺が奢るから好きなパン持ってけよ」
豪快に笑った男店主は、チラリとこちらを見てウィンクをする。そして「まぁ、フロストに飽きたら考えてくれよ」と誘い文句を垂れた。
その後も行く店行く店や、すれ違ったフロスト知り合いや、たまたま一人の待ち時間等々で知らぬ男に口説かれ、容姿を賛辞された。そのような経験は無いので、どうしていいか分からず、適当に笑顔を見せフロストのフォローを待っていた。
だが、帰り道。
街を出て、森を歩いてるとフロストの機嫌が悪いことに気が付いた。それが街からだったのか、どこからなのか分からない。
下手なことを言わないように、ただの町娘に見えるように演技に必死だったからだ。
歩調も早く、こちらを見ないフロストに声をかける。
「あの、フロスト?」
「何」
「連れて行ってくれて、ありがとうございます」
「――ふーん……」
足を止めたフロストは、振り向きこちらを見る。その視線が冷たく、だが燃えるような熱を孕み、戸惑いが隠せない。
手を伸ばし、頬に触れられ、思わずビクリと肩を揺らした。
「俺が怖い? ならパン屋のとこ行く? それとも花屋? 肉屋でもいいけど? いっそ、俺の知らない男の方がいいですか?」
「……何を……言ってるの? フロストが怖いはずないじゃない」
「そう? でも、俺より優しくしてくれるってよ? まぁ、あいつら人間だし? 俺みたいにわけが分からない奴よりいいんじゃない?」
「フロスト……」
「何」
「嫉妬してる?」
「――!!」
苦虫を噛み潰したような顔をして、フロストは抱えていた荷物をその場に捨てるように落とし、両手で頬を捕まれ無理矢理唇を奪われた。激しく、角度を変え貪るように。
息をする暇もないそのキスは、フロストの心のままのようだ。苦しく愛しい、そのキスに答えるように舌を絡ませる。
心を通じあわせたと感じたあとも、フロストの真意をどこかで疑っていた節があった。本当に自分なんかに好意を持って貰えるのだろうか? 好意だとしても、本当に私でいいのだろうか……。その疑い全てを晴らすような嫉妬のキスに、思わず身体の力が抜ける。
「んっ!」
下がった身体を支えられフロストを見上げると、その顔は紅く染まり目元が潤んでいた。
(欲情した獣そのものだわ……)
恐ろしくなるほどのその表情に思わず息をのむ。そして同時にこちらも同じように、熱く頬が染まっていることに気付いた。
「ねぇ、フロスト……」
「――荷物、運んどけ」
「え? あっ、ちょっと!!」
腕を強く握られ、道を外れ森に入る。ただでさえ翳り始めた太陽と、その微かな光でさえ遮る木々により、森は暗くなりはじめている。
足元が不安定な中でも、フロストはまるで舗装された道を歩いているかのように突き進んだ。
やがて森には日が差さなくなり、暗闇が辺りを包む。ホーホーと梟が鳴く声すら、闇の中では別の生き物の声のようだ。
「ねぇ、どこ行くの? 荷物はどうするんです?!」
「……」
「フロスト!」
「……」
無視しているのかと思ったが、どうやらこちらの声が聞こえていないようだ。グッと思い切り足を止め、フロストの腕を振り払う。
「フロスト!!」
「――!? 俺から逃げるのか!?」
振り返ったフロストが泣きそうな顔をしていたので言葉を返せずにいると、それを肯定と受け取ったフロストは堰を切ったように言葉を吐いた。
「俺が人間じゃないからか!? 確かに俺はお前に対して最初は回収先としか思わなかった。そりゃそうだろ? 直接的でも間接的でもかなりの人を殺しているお前の、しかも王族の血を引いてるなんて最高にランクが高い魂だ。タルタロスで会ってすぐにお前の魂が想像以上に良いものだって分かったよ。それを魔王に渡せば、飽きてた低い魂をひたすら戦場で拾うことも暫くしなくて済むだろ。でもお前と話して、人となりを知っちゃったから……お前には俺しかいないんだって思っちゃったんだよ! あの地下の底で、俺を待ってたのかなーなんて人間の頃みたいに夢を……夢を見たんだ。今は、魂なんかより……マリアの心が欲しい……」
一方的な話し方に驚いたが、フロストの素直な言葉にとても安心した。一歩近づき、ビクリと肩を揺らしたフロストの頬に手を伸ばす。背の高い彼を下から見上げているにも関わらず、年齢もきっとずっと年上にも関わらず、とても幼く……寂しそうに見えた。
「逃げないわ。私にはフロストしかいないもの。きっとこの先も私を理解してくれるのは……フロストだけですから」
「……」
「……愛してる。フロストを愛しています」
「……愛してる?」
初めて聞いた言葉のようにフロストが反芻した。言葉にした愛は互いの心に染み渡り暖かな広がりをつくる。
時間をかけ、言葉の意味を理解したのかこちらにもたれ掛かるようにフロストが抱き締めてきた。
「俺も、愛してる。ごめん」
「なんで謝るんですか?」
「人を愛するなんて……もうないと思った。だから人を捨てたのに。この世が壊れたらいいと思って……」
好きで人間であることを捨てた訳では無いのだろう、辛く悲しいことを忘れるため、その理由は聞くことができないけれど、真っ直ぐ向き合うことを恐れるほどだったのは予想ができる。
「ずっと隣に居て欲しい」
「います。フロストの隣に」
「年齢を共に重ねられなくても」
「あら、それは私が心配しなくてはならないのね? しわくちゃになっても隣にいて貰えるように努力しなくちゃ」
そう言うと「大丈夫、俺はしつこいから」とようやくフロストはいつもの優しく狡い笑みを浮かべた。
その笑みに安心し、抱き締められた身体をより密着させるように抱き締め返す。フロストの心臓は確かに動き、トクトクと心地良い音色を奏でている。
彼の音、匂い、仕草、表情、温もり。全てが愛しく感じた。
「ありがとう、マリア」
「私も、少し不安だったんです。でも、口にすると凄くスッキリしました。ありがとうございます」
先程よりもフロストの鼓動が早くなる。身体の熱も上がったようだ。
「……ごめん、シたい。今すぐ、マリアを感じたい。優しく出来ないと思うけど、いい?」
素直な熱い視線に負け、俯くように頷く。それを合図に両手で頬を包まれ上向かせられる。先程の力任せのキスではない、溢れる何かを共有するようなキスが降ってきた。
角度を変え、舌を絡ませ、それでも足りないとフロストの手が髪をクシャクシャになるほど指に絡ませた。
今の呼吸は自身の呼吸なのか、それともフロストのものか、それすら判別がつかないほど溶けて混ざり合う。
「んック、は、んっうッ」
しばらくするとフロストの指は髪をすり抜け、スカートの下から手を差し込み太ももを撫でた。
「あっ、や! 待って!」
「なんで? あぁ、本当だ。これは嫌だよな。キスだけで下着からトロトロに愛液が溢れてる」
恥ずかしさで頭が沸騰しそうだが、溢れて流れ伝うそれを止めることが出来ない。フロストとのキスは、それだけで身体が快楽として反応してしまうのだ。
知られてしまった溢れた愛液をどうにも出来ずただ黙っていると、フロストはスカートを思い切り持ち上げこちらに押し付けてきた。
「持ってて。服を汚したら困るでしょ?」
「でも、こんな自分で持つなんて……」
「早く。垂れちゃう」
急かされるようにスカートの裾を渡され、思わず受け取るとニコリと笑い「良い子です」と囁かれた。
その囁いた唇はフロストが膝をついたことによりスッと下がり、下着の目の前に顔が来てしまった。何をされるのか察したけれど、阻止するよりも早く、下着をズラしたフロストは顔を埋めた。
「――ッッ!! ふァァっ!!」
熱くヌメヌメとしたものが這い、そして時折暖かな空気が太ももにかかる。そのヌメヌメと湿度の高いそれは、太ももから少しずつ登ってきた。
そのヌメリがフロストの舌先だと脳がようやく理解した時には、既に下着がズラされ溢れる蜜は直接太ももに流れはじめる。
「舐めちゃ、や」
「嘘、クリトリスが気持ち良いんでしょ?」
まだ隠れている陰核を暴くようにピンポイントでジュッと吸い上げられ、背筋を反らす。ドクドクと胸の鼓動が全身に、いや、陰核まで心臓になったような感覚だ。
舌先は陰核と蜜口を何度も行き来し、ジュルルと啜る音と同時に腰が震えまた蜜が溢れ出す。
「もう、もう、やめ……」
こちらの言葉など届いていないように、フロストはあらゆる音を奏でて愛撫を続けた。少しずつ舌先は蜜の溢れる場所を解すように、そして中に入ることの許しを得るかのように蜜口をノックをしてきた。
これ以上は駄目だ。もう恥ずかしさではなく、腰が痺れ、立っていられない。足の力が一気に抜けて、ガクンと落ちるように膝が折れた。
「大丈夫?」
顔を離し、こちらの腕を持つようにして支え、立ち上がったフロストを見上げる。暗い森の中でも分かるくらい、フロストの口周りは液体が纏わりつき鈍く光っていた。
それを空いた指先で軽く撫で、口元に運んだフロストは「美味しい」と意地悪な笑みを浮かべた。
「――! そんなはず、ない……」
「本当? 俺は美味しいって思うよ。あぁ、じゃぁ、マリアも俺の舐める?」
そう言われ思わず見たフロストの股間はズボンがこれでもかと持ち上がり、その大きさを現している。
恥ずかしさと微かな期待に戸惑い、視線を外すとフロストに手を握られ立ち上がらされた。
「ごめん、無理は言わない。心の準備ができたら、いつか」
嫌ではない。嫌ではないのだが、ただ驚いただけなのだと言葉が出なかった。ふと口元を緩ませたフロストは、流れるように優しくキスをしてきた。
そしてキスの最中にズボンと下着を下ろし、反り勃った肉棒を露わにし太ももに擦り付ける。
「本当は指でちゃんと慣らしてあげた方がいいんだけど……もう挿れたい。いい?」
スカートを持ち上げながら、口淫で蕩けた部分が熱く硬い楔を欲しがっていることを理解していたので、ゆっくりと頷く。
「ほし、い。もう、ギュッって疼くんです……」
「……ずるいな。可愛い。そんな言葉どこで覚えたの? 戦場の男達? でも言葉を使うのは俺だけにしてね、そのエッチな顔も」
今、自身はどんな表情をしているのだろう。溶かされ恥ずかしいくらいトロトロで、情けない表情に違いない。それを可愛いと言えるフロストは相当物好きだ。
だが、今まさに肉棒を押し当て挿れようとしているフロストの雄のような表情を、とても魅力的だと思っている。きっと同じだ。
少しずつ肉棒が中を広げ侵入してきた。
「――アァァっ!」
押し広げ、慣らしてないはずのそこは痛みを伴うはずなのに、ただ熱で蕩けているようだ。体内に入り込むそれが愛しく、ひたすらに下腹部が疼く。
埋まっている部分が増えるごとに溢れる蜜がツーッと太ももを伝い落ちる。森の静けさに はぁはぁ という二人分の呼吸とぷちゅんと肉棒に押し出された蜜の音が響いた。
ジワジワと柔壁から与えられる快楽が、全身に甘い毒のように広がる。
「ね、左足上がる?」
「んぅ、あ!」
こちらの返事を待たず、フロストはこちらの左足を自らの腕に乗せ、肉棒がより奥を目指せるような体勢になった。
その結果、動きやすくなった腰をフロストが一気に叩きつけるように前後にグラインドさせる。パチュンパチュンと恥ずかしいほどの音と、フロストの下生えに蜜が絡みついてブチュンと泡立つような音も同時に聞こえた。
溢れた蜜を掻き出し、泡立つほど掻き混ぜ、そしてまた溢れるのをサポートするように肉棒が溢れた蜜を引きずり出す。
「――ッッ! アンっ! んっ、ンくっぅっ! あぁ、アァァっ!!」
「すご、ねぇ、本当に二回目? 凄い絡み付いて離さない。それに、愛液が、エッチな汁が溢れ過ぎてグチュグチュだ」
「や、やァ、こんなこと……ここ、外、だから、そんなッ、ならな、いっ、アァッ!!」
「ウソ。興奮してるでしょ? マリアの目、潤んでもっと酷く突いてって言ってるみたい。沢山してあげる。俺のペニスで降りてきた子宮の入口……ポルチオもいつかは良くしていこうな。マリア、愛してる、絶対離さない」
実際、野外で交わり腰を振るなど想像もしたことが無かったが、それが全てフロストから与えて貰っていると思うと、ただただ気持ちが良く、堪らない。
「フロス、イッちゃっ、う! 奥がキュゥって、ァン、んッ、ふァ、イク――!! ンンっ!」
「俺も、で……る!!」
頭が真っ白になるその瞬間、フロストの唇が喘ぎ空気を求めるこちらの唇を塞いだ。思うように息が出来ない中で、夢中でフロストの唇を求める。
ビクビクと腰が震え、それとは別に中の熱がビクンと跳ねる度に熱い飛沫を最奥に叩き付けられた。
じんわりと広がる熱が心地よく、ウットリとフロストを見上げる。まだ息の整わないフロストだが、口元を柔らかく緩ませ「凄い気持ち良い、早く今度はゆっくり布団で抱きたい」と意地悪で優しい笑みを浮かべたのだった。
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