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初夜 フロスト視点 *

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 その後のパーティは大いに盛り上がった。招待制ではなく、屋敷の一角と街を使い全体で行う大々的なものだ。
 ……というか、そうしなければ屋敷内に到底入り切らない人が押し寄せてしまったので、そうせざる得なかったのだが……。
 おかげでひっきりなしに祝福を受けた。他の国から来た絵描きだという男は、マリアのウェディングドレス姿から女神を連想したらしく、その姿を描いて吟遊詩人に謳わせるのだと大興奮していた。
 最初はマリアの良さが世界に知れ渡るなんて素晴らしいと思ったけれど、マリア目当ての男が増えそうで……今は少し後悔している。
 絵は売られたら、買い占めてやろうか。
 数時間のパーティの後に、マリアは先に部屋に戻っていった。
 そして、さらに一時間後にようやく解放され、マリアの待つ屋敷に戻る。

「ただいま」

 寝室を開くと、部屋は薄暗く人の気配がない。もしかしたら、疲れて寝てしまったのだろうか。

(初夜……なんて今更か)

 少し、いや、かなり胸を高鳴らせていたので残念に思いながらベッドを覗くが、そこにもマリアはいなかった。

「フロスト」
「!? マリア」

 驚いて顔を上げれば、愛しいマリアはテラスから顔を覗かせている。そこへ駆け足で向かえば、くすくすと笑いながら迎え入れられた。
 その姿はまだウェディングドレスのままで、片手にワイングラスが揺らめいている。

「飲んでたのか」
「少しだけ。舐める程度です。そんな気分だったので」
「ドレスは? キツイだろう?」
「フロストが、見たいかなって」

 微かに頬を膨らませたマリアに、ハッとして抱きしめる。

「待たせて悪かった。……綺麗だ」
「良かった。脱ごうか迷ったんですが……」

 月明かりに純白のドレスが煌めき、今は緩やかにおろしている漆黒の髪の毛も艶を放っている。ワインを飲んでいるからか頬は化粧よりも少し赤く、目も潤んでいるように思えた。
 そっと引き寄せ、頭を撫でながらキスをする。
 聖堂の誓いのキスとは違う、相手を求める激しいキスだ。それにマリアも応えるように舌を絡ませてくれた。

「このまま……しますか?」

 ポッテリとした唇でそんなことを言われれば、今すぐ貪るようにマリアを求めてしまいたくなる。だが、グッと抑えて手を引いて室内へ促した。
 そして、後ろを向かせて丁寧に紐を解き、ドレスを脱がす。フワリと脱がせたドレスを部屋のトルソーに着せる。

「そのままするのかと思ったわ」
「正直、着せたまましたい――けど、ダメ」
「なぜ?」

 小首を傾げるマリアの背後に回り、今度はコルセットを脱がす。髪を退けて現れた首筋に軽く唇を這わせた。

「新婦が着たドレスを娘に着せたら、その娘は母親の幸せと同等以上の幸せを得るんだってさ」

 これは、先程のパーティーで黒蝶騎士団の奴らに言われたことだ。ただの噂。立証などできない伝説だ。
 それでも……いつか娘が産まれたら、幸せになって欲しい。そんな風に思ったのだ。

「なるほど。それならば、フランに頼んでしっかり管理してもらいましょう」

 しっかりと頷いたマリアを後ろから抱き締める。

「先に伝えておけば良かったな。ドレスもコルセットもキツかったはずだ」
「いえ、これからは着慣れていかないと」

 無理して着慣れなくていい。と言いたいのだが、どんなマリアも見てみたい。
 ロックフェルト国の鮮やかな刺繍の衣装も、オッズライルのラフな町娘の伝統衣装も似合うだろう。トレーニングのためにシャツとパンツで走り回ってもカッコイイ。そしてマリアがドレスを着こなしてダンスをすれば、……。ダメだ。どれも良い。
 そんなこちらの心情を読み取ったのか、マリアはクスクスと笑いながら フロストも何でも似合いますよ と言ってくれた。

「とりあえず、今日は……このままでいいか?」

 ベッドに押し倒したマリアはコルセットが外れ、胸を露わになっている。下は白で統一されたガターベルトとガーターストッキング、その上から下着だけという蠱惑的な姿だ。
 その下着を取り払うと、マリアは恥ずかしそうに足を擦り寄せた。
 その足に身体を割り込ませ、見下ろす。愛しくて愛しくて、堪らない。

「可愛いな」
「――ッ、フロスト」
「可愛いのに、綺麗で、美しくて、心まで同じように美しい」
「あ、あの、フロスト?」
「ん?」
「その、言葉にされると……」

 嬉しいけれど、恥ずかしい――そう表情が語っている。そうなると、もっと言ってやりたいと思ってしまうのは必然だろう。
 身体をずらし、ガーターベルトに指を差し込む。その指で吸い付くような太ももを撫でた。

「すべすべしていて、柔らかい。この感触が好きだ」
「――ぅッ」

 その指を移動させ、恥骨を撫で、秘部の厚く盛り上がった肉に触れる。

「広げてないのに、もうしっとりと濡れているな。他の女は知らないけど、きっとマリアは愛液が溢れやすいだろう」
「あ、あっんッ――」

 プッチュと艶かしい蜜の音を立てながら割れ目を撫でる。トントンと軽く叩くだけで、溢れた蜜はピッチャピッチャと音を鳴らし、透明の糸が割れ目と指を繋いだ。
 その光景だけで、達してしまいそうなほどなのだけれど、グッと我慢して身体を屈ませる。
 寝転ぶようにしてマリアの秘部に顔を寄せれば、ムワリと濃厚な女の香りに包まれる。
 指先で蜜口をくすぐりながら、クリトリスに舌を伸ばす。敏感な部分なので、ゆっくりと慣らすようにチロチロと舐めると、マリアの腰は緩く上下に動き始めた。

「はは――、マリアは本当にクリトリスが好きだよな。俺も好き。……あれ? 少し大きくなったか? もしかして、胸と同じで俺がいじりすぎて成長したかな?」

 ジュッと吸ってやると、マリアはキャンと愛らしい声を立てた。どうやら軽く達したらしく、足をピクピクと蠢かしている。

「お、大きくなるの? 変かしら?」

 達しながらもそんなことを気にするのが可愛らしく、空いた手でクリトリスの皮を剥いて舌全体で小さな突起を撫でてやった。

「変じゃないよ。全く。もっと大きくてもいい。そうしたら、ここに可愛い鈴をつけられるって……アランから聞いた」
「また!! 買ったの?!」
「んー、どうだろう」

 本当は買っている。
 真っ赤な紐に小さな鈴が付いており、それを上手く勃起したクリトリスに結ぶ。すると、快楽で腰が揺れたり、肉棒を挿入した後に二人の激しい動きで鈴が鳴るのだ。
 何度か繰り返すと、その鈴の音色だけでクリトリスが疼くようになり、さらに続ければ、音色で達することもあるらしい。
 さすがにそこまですると日常に影響が出そうだけれど、白いマリアの肌に勃ったクリトリス。そこに赤い紐と鈴が加われば……最高に可愛いだろう。
 ちなみに、買ったのはそれだけじゃない。
 乳首につける鈴もある。小型の張型も買ったので、様子をみて後孔も愛していければと考えている。
 痛くない、傷つかないことは全てマリアと経験してみたい。

「絶対買ったでしょう? もう! 私だってイザベラからた――」
「イザベラ?」
「あ、いいえ。なんでもないわ」

 これは何か隠している。そう思って、クリトリスを激しく吸い付くように舐める愛撫をしながら なんて? ともう一度問いかける。

「やぁ、あッ、ンゥっ!!」
「おひえて? イザベラから、何を聞いたの?」

 濡そぼった蜜口に指を埋め、浅いところを擦るようにいじり回す。奥まで触れてもらえないもどかしさと、ジュルジュルと激しく吸われるクリトリスにマリアは早々に根を上げた。

「あぁァツ! ンッ! んクゥ!! 言うから、イッ――!! 止まって、イッちゃうッ――い、イザベラ、イザベラがァッ!」
「うん?」

 口での愛撫を止めると、マリアは息も絶え絶えに聞いた話を呟きだした。

「そ……その、男性に、男性のッ――大きくなった……おちんちんに付けるッ……リングが……凹凸のあるリングをつけてシてもらうと、――いつもと違う所を刺激されて――とても、いいよって押し付けてきたの……」
「リング……ふーん?」

 実はそれも知っている。というか、ある。ベッドサイドの自分専用の引き出しに、いくつかあるマリアを悦ばせる玩具のうちの一つだ。
 そのリングは激しめの凹凸が付いている。それを勃起した肉棒に付けると、柔壁に普段とは違う圧迫感を感じ、数秒で絶頂を迎えて潮が止まらなくなる……。という代物だ。
 多分、イザベラはそこまで話してはいないだろうけれど、マリアが気になるなら今度使ってみようと思う。
 正直、そんなものを使わなくとも何度だって絶頂を与えられる。
 それに……。
 今だって、潮を吹かせる自信はある。

「今度使ってみようか。でも、今は俺の舌に集中して?」

 クチュンと音を立てながら指を三本埋める。そしてそれを激しく出し入れしながら、クリトリスを軽く甘噛みをした。

「あぁぁぁッ!! ンッ! あ、らめ、フロスト、それ、ダメェッ! んッゥッ――キモチ、くなりすぎちゃッ――!!」
「らいじょうぶ。もっとかんじれ?」

 三本の指をマリアの腹側を撫でるようにグイグイと曲げる。その曲げた先では、口腔に包まれたクリトリスが強く吸う。
 ビクンビクンッと何度もマリアの腰が跳ねる。それを止めるように身体で押さえ、激しさを増した。

「ングゥ!! フロスト、フロスト! ダメェっ!! で、出ちゃう、アレがまた、そのッ――沢山、たくさん出そうなの!! でちゃ――ッ!! ンゥゥゥッ――!!」

 それは最高だ。そう思って、三本の指はマリアが強く感じる部分を撫で続ける。そして、優しく前歯でクリトリスを扱くとマリアは今までで一番大きく腰を振るわせ、大量の潮を噴き出した。

「アァァァァァァツ!! やァァッ!! でちゃ、でてるゥ!! んクゥ――!! ァァァァッ――!!」

 挿入している指は手のひらまで垂れた蜜と噴き出した潮でびっしょりだ。なんなら、顔とまだ脱いでいないこちらの新郎の服も濡れている。
 だが、そんなことは気にせずにさらにマリアを追い立てるように中の指を激しく動かし、クリトリスに吸い付いて愛撫を続けた。

「らめぇえぇぇ! イッて、イッてるの!! ずっと、ヒクヒクしてるの!!」
「知ってう。凄いな。ほら、全部マリアから出たのだ。はァ、んむ、ンゥ――美味ひぃ」

 ジュルジュルルとわざと音をたててクリトリスごと吸い付くと、マリアの蜜口は指をぎゅうぎゅうと締めながら再び潮を噴いた。

「ンゥ――あぁぁぁ! んぅー!! やぁッ!! ひぐ、またイグゥぅ!! しお、しおがれちゃう、――イグゥゥゥ――ッッ!!」

 激しくクリトリスを吸い出すようにすると、マリアは三度目の潮を噴く。
 ゆっくりと指を抜き、名残惜しいけれど硬く勃起した愛らしいクリトリスにチュッとキスをして離れる。その軽いキスでマリアは再びピュッと少ない潮を噴いた。

「――ッあぁ、ンゥ――ッ」

 達しすぎて力が入らないのか、マリアはだらしなく両足を広げ、ひくつく蜜口が露わになっている。
 トロトロに蕩けたそこが、あまりに美味しそうだけれど、これ以上口で愛してやったらきっとマリアは気を飛ばしてしまうだろう。
 マリアの休憩がてら、自らの服を脱ぎ捨て全裸になる。
 両足を広げるマリアの間に膝立ちになり、自らの肉棒を握り擦った。
 淫らに愛液と潮の残滓を溢れさせ、ピクンピクンと蠢いている蜜口。その上には愛撫されすぎて大きく勃起したクリトリス。そして、何もしていないのにふっくらと大きくなっている乳首。赤く染ったマリアの頬。閉じた瞼に揺れるまつ毛。
 散らばって乱れた髪の毛一本すら愛おしい。

「はぁ、はぁ、マリア。愛してる。大好きだ。あぁ、そうだ。潮は美味しかったよ。今度また飲ませてくれ。あの――マリアの味が大好きなんだ」
「ん……――フロスト」

 ゆっくりとマリアが肉棒に触れた。指先が軽く亀頭に触れただけなのに、鈴口から先走りだけではなく精液も溢れてしまったらしく、うっすらと白く濁っている。
 それだけ、マリアが触れることが快楽なのだ。
 触れられるだけで、堪らない。

「ごめ、ん。もう、挿れていいか?」
「ん、いいですよ」
「あぁ、でも一回抜いときたかったな。挿れたら持たなそうだ」

 そう言うと、マリアは肉棒を掴み自らの蜜口に添わせてきた。そして、肉棒を揺らし亀頭と蜜口を擦り合わせている。
 クチクチと音を立て、探っているような手つきが絶妙だ。

(あぁ……ダメだろ。可愛すぎる。マリアも――俺が欲しくて堪らないのか)

「外で、出しちゃダメです」
「え?」
「その、ずっと、中で出さないようにしてたでしょう? 奥が……寂しかったの」

 ………………。あぁ、こんな愛らしいオネダリをされて、誰が拒否できるだろうか。少なくとも、俺はできない。

「俺も、マリアの一番奥に出したい」

 グッと腰を落とす。
 マリアの蜜口は亀頭を嬉しそうに飲み込み、締め付けながら奥へと誘う。
 ヌルヌルと滑るのに、締め付けが激しく、うっかり気を抜けば奥に到着するまえに達してしまいそうだ。

「ンッ、気持ちい――フロスト」

 ウットリと薄く目を閉じるマリアが、艶やかで美しい。

「俺も。凄い、無理だ。ペニスを全部食おうとしてるみたいで」

 眉間に皺を寄せ、力を入れる。そうしないと暴発するからだ。
 すると、その眉間にマリアが指を添えてきた。

「ど、した?」
「かっこいい」
「は?」
「フロスト。我慢していても、かっこいいなって思ったの」

 うぐぅっ。変な声が出たような気がする。いや、多分本当に出た。
 その上、軽く出た。
 無理だ。もう、無理。一秒だって待てない。

「マリア、愛してる――――ぁァツ、グ、ぅぅ!!」

 懺悔のようにそう言って、腰を大きく揺らして一気に最奥を穿った。数度、穿っただけで陰嚢から一気に精液が駆け上ってくるのを感じ、すぐさま鈴口から物凄い勢いで吐き出した。
 叩きつけるように亀頭を子宮の入口に押し付けて吐き出し、その後それを塗り込むように腰を回す。
 そしてようやく落ち着き、固く閉じていた瞼を開く。すると、ピクピクと身体を痙攣させるマリアが飛び込んできた。
 どうやら、マリアも絶頂を迎えたらしい。その証拠に、腹に大量の潮が付いている。潮を噴き出すのが癖になったのだろうか。
 ……最高だな。

「――はぁはぁはぁ……マリアも、イったんだな」
「……ん――」

 返答もできないほどの深い絶頂だったらしく、力を失わない肉棒を挿入したままマリアを横抱きするように、対面のまま共にベッドに寝転がる。

「大丈夫か?」
「大丈夫……、奥、熱くて……んッ、これ、――とても、幸せなの」

 愛しそうに自らの腹を撫でるマリア。そんな姿を見せられたら、興奮するに決まっている。
 というか、マリアの全てが興奮するのだが。
 まだ愛撫していなかった乳房を両手で包み、乳首をクリクリと撫でてやる。

「俺も幸せだ。あぁ、マリア。まだ弄ってなかったのに乳首がこんなに勃っていたんだな。ごめんな、今から沢山愛してやるから」

 身体を曲げて、乳首を口に含む。口の中の感触はクリトリスと違い、すこしおおきくポッコリとしていて絶妙に柔らかい。
 その桃色に勃った乳首を唇で挟んでフニフニと食む。そして先だけに舌を当て舐めてやると、マリアは自ら反対の乳首を弄り始めた。
 それを指摘すればやめてしまいそうなので、黙ってその指遊びを眺めつつ、チュウチュウと乳首に吸い付いた。
 どうやら、マリアは乳首を優しく弄られるのが好きらしい。指の腹で先端や側面を撫で、時折爪先でカリカリと弄っている。
 確かにクリトリス同様、敏感で薄い皮膚だ。無理をすれば痛むだろう。
 同じように優しく愛撫を続ければ、マリアの柔壁は煽動するように肉棒を締め付け始めた。その締め付けが心地よくて、思わず中で肉棒を跳ねさせる。

「ンッ、フロストぉ……」
「気持ちいい? 静かな時は中の動きに集中できるようになったから、どんな時でも良い感じだな」

 意地悪をするように肉棒を意識して跳ねさせ、同時に乳首を大きく口を開いて包みこむ。モグモグと赤子のように吸い付くと、マリアがギュッと頭を覆うようにして抱きついてきた。

「んぐッ」
「ァツ、だめ、じわじわって――イくッ――!!」

 ビクンとマリアの身体が硬くなり、そして柔壁が絞り上げるように肉棒を圧迫している。
 このままでは、また不覚にも達してしまいそうだ。それでは男の矜持というものが……。
 ゴロリとマリアをベッドに寝転がらせ、再び上から覆うように被さる。今度は身体全体で密着するように、挿入している肉棒から腹、胸、そして首に顔を埋めてひとつになった。
 心地良い。マリアの甘い香りが胸いっぱいに広がり、このまま溶けてしまいそうだ。

「マリアの香りってさ」
「ん? なに? フロスト」
「マリアの香り。菓子のように甘いのに、みずみずしい果実みたいに爽やかで、可憐な花のように清楚で……美味しそう」

 そう言って、首筋に舌を這わせ、吸い付いた。そうすれば、もっとマリアの香りが濃くなったような気がした。
 何度も何度も吸い付き時折噛み付けば、マリアは不安そうに また血が飲みたくなりましたか? と聞いてきた。

(そういえば、そんなこともしたな……)

 今では、マリアを傷付けて血を流させるなんて自分であっても許せない。あの頃の自分が目の前にいたら、きっと殴って殺してしまうかもしれない。
 それだけ、マリアが傷付くのは嫌なのだ。

「血はいらない。もう二度とそんなことはしない。マリアが傷付くことは、……身体的な傷も、心の傷も、絶対俺がそんな傷は誰にも負わさせないし、負わせないから」

 決意のように呟き、再び首筋に吸い付く。何度も何度も角度を変えて、鎖骨も、肩も、この体勢で唇が届く範囲を余すことなく吸い尽くす。
 そんなこちらの頭をマリアがゆっくりと優しく撫でてくれていた。
 そして、ようやく満足して顔を上げる。

「マリア、動いていいか?」

 小さく頷いてくれたので、ありがとうと返事をして腰を淫らに動かし始めた。
 最初だけゆっくりと引き抜き押し込んだが、溢れすぎたマリアの蜜と奥に注いだ精液によって動きは滑らかで痛みはなさそうだ。
 もう一度ゆっくりと往復してから、今度は激しく肉棒を挿れた。バジュバジュッと蜜が混じり、恥骨の周りではネチョネチョと透明の糸が引いているのだろう。それが切れる前に再び挿いれこみ、奥をこじ開け引き抜いた。
 透明の蜜の糸に空気が混じり白く濁る頃、マリアは足をピンと伸ばして腰を浮かした。

「アァァッ!! ンアッッ!! おぐが――しゅごいッ――ッ!! らメェぇ!!」
「凄いな。本当に。ポルチオがぽってりして、俺の先っぽを何度も吸い付いてくる」

 マリアの浮いた腰を掴み、無慈悲に何度も凶悪に育った肉棒を捩じ込む。もう最奥へ辿り着いているというのに、もっと奥を望んでしまう。
 それはきっと、もっともっとマリアと溶け合いたいからだろう。
 握ったマリアの腰に汗を感じる。自分の額からも汗が流れ、それにまた興奮し、さらに行為は激しさを増した。

「ンッッッッ!! アァァァッ!! ――イ゛ッ!! フロストッ!! イ゛った、イ゛ッだっからァ!!」

 マリアの中が酷くうねっている。言葉通り、達したのがよく分かる。だが、もう少し――。
 激しい動きを止めずに続け、下半身だけでなく全身を快楽が包んでいく。そして、叩き付けるようにマリアの奥を貫き、身体の中でドビュッッ――っと大量の精液を吐き出した音が聞こえた。
 その全てを吐き出し、最後の一滴まで奥に送り込むように腰を落とす。

「んぁ――あぁー……」

 ハッとしてマリアを見れば、激しすぎる行為に気を飛ばしてしまっていた。

「――!? だ、大丈夫か!?」

 しまったと思い、急いで肉棒を引き抜けば、同時にドロリと多くの液体が溢れ出す。
 その光景に思わず生唾を飲み込んだ。
 ヒクヒクと蠢く蜜口、その蜜口が動く度に、白濁混じりの愛液がトロリトロリと流れる。時折、ピュッと勢いをつけて噴き出して、ベッドシーツにベットリと染みを広げているのだ。
 あまりにも卑猥で蠱惑的で魅力を放つ光景に目が離せず、二度射精したはずの肉棒は既に力を取り戻して天を仰いで先走りを流し始めている。
 身体を曲げて、その雌と雄の香りが混じる場所に顔を近付けた。

「綺麗にしてやろうな」

 自分の精液を口にするのは複雑だと言うけれど、マリアの中を通ったのなら、それはもうマリアの一部だ。
 ……いや、相当変態なのかもしれないけれど、こんなに淫らなマリアを見たら吸い付きたくもなるものだ。
 濡れた蜜口を舌で舐め取り、そのまま舌と指を差し込んだ。そして中を掻き出すようにしてやれば、痙攣したような柔壁がまたヒクヒクと締め付け出す。
 興奮して無心で舐め尽くしていると、視線を感じて顔を上げる。

「……マリ……ア」
「もぉぉぉ……」

 身体を起こしたマリアが、何とも言えない表情をこちらに向けていた。
 何だか夢中に舐めまわしていたことが、妙に子供っぽかったように思えて、恥ずかしさで視線を泳がせてしまう。そして、それを誤魔化すように身体を起こしてマリアをうつ伏せにさせた。

「アッ、ちょっと、フロストまだするの!?」
「ん。する」

 丸みを帯びた白い尻を両手で撫で、その手で蜜口が開くようにしっかりと掴む。そして、三度目は最初から激しく最奥を穿ち、マリアの中を楽しんだのだった。
 




 翌日、まだ眠い目を擦りながら起き上がる。
 太陽はすっかりと昇っているので、今はもう昼過ぎなのだろう。
 今日は夕方から、和平同盟を結んだメンバーとの懇談会……という名のただマリアを囲みたいだけの大人たちが集まる食事会がある。時間はまだ余裕があるけれど、女性は何かと準備が必要なはずだ。
 髪をかきあげながらマリアを起こそうとベッドを改めて見れば、…………酷い有様だ。

(グッシャグシャで、ドロドロで……染みも酷いな。……洗えるか?――いや、うん。捨てよう)

 こんなシーツをメイド達に洗わせるのは申し訳ないし、フランやゴードンが知ればニヤニヤしながら 孫はいつですか? なんて聞いてくるだろう。

「ん――んぅ」
「おはよう、マリア」
「んぅぅ――ッ、おはようございます。フロスト」

 掠れたマリアの声もセクシーだけれど、喉が痛むのは可哀想だ。用意してあったコップに水を注ぎ、手渡そうと振り向いた時――身体が硬直した。

「……? フロスト? お水、頂けますか?」
「あ、あぁ。あぁ、もちろん」

 冷静を装い、装えてないけれど、起き上がっているマリアにゆっくりとコップを手渡す。少しずつ飲み干す様子を眺めながら、頭の中では昨晩の自身に文句を言い続けていた。

(だぁぁぁ!! 何やってんだ!! こんな――こんなキスマークと噛み跡だらけの首元――酷すぎるぞ!! 独占欲丸出しのガキか俺は!!)

 くっきりと白い首筋に浮かぶいくつもの赤い跡。それに、血が出ない程度の噛み跡。傷付けないと言いながら、これでは傷も同然だ。

「マリア……今日のドレスってさ」
「ん? フロストが選んでくれた濃紺のドレスって話をしてましたよね」
「……うん」

 そうだ。そうなのだ。自分で選んだ、マリアの華奢ながらに鍛えられているので……首筋のフォルムが美しく生える……濃紺のガッツリと胸元の開いたドレスだ。

「きょ、うは……その、違うのにしない……か?」

 あまりにも挙動不審の様子にマリアは察したらしく、自らの首を撫でながら頭を傾げた。
 いや、その仕草も可愛すぎる。
 知ってるのに、知らないフリをしているのだろう。
 ――可愛すぎる。

「着るの、楽しみにしていたんですよ……?」
「………………はい」
「どうしても、ダメですか?」
「えっ、と……その、うん。そ、う、です、ね?」

 思わずベッドに正座をして俯く。

「…………フロスト?」
「……………………はい」
「今後は、先を考えて……跡を付けて下さいね?」

 ちらりと視線をあげると、可笑しそうに笑っているマリアが見えた。

「跡は……付けてもいいのか?」
「えぇ。フロストだけの私って感じで、嬉しいです。あ、でも今度は私も付けたいです。フロストが嫌でなければ」
「それはもちろん!! いくつでも付けてくれ!! あ、で、ドレスだけど」

 すると、マリアはまだ綺麗なシーツを簡単に身体に巻き付けると、フラフラと立ち上がり棚の引き出しから小さな白い布を取り出した。

「これがあるので、今回は大丈夫です」

 なんだそれは? と首を傾げると、丁寧に広げて見せてくれた。

「これは、つけ襟です。今、モルタール王国で流行ってるらしくて、昨日、ルーン王妃から頂戴したの」
「…………………………こうなることを予想して?」

 たぶんね と言ってマリアはクスクスと笑った。目に手を当てて、全てお見通しかと呟いた。
 恥ずかしさはあるけれど、なんだか嬉しくなってきた。

「はぁーー、マリア」
「何かしら??」
「家族って…………良いもんだな」

 指の隙間からチラリと視線をやると、何度も驚いたように瞬きをして、マリアは満面の笑みを浮かべた。

「私も、そう思うわ! 愛してます、フロスト!」

 初夏の日差しの煌めきと、マリアの笑顔が眩しい。
 そんな夫婦の一日目が始まった。
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