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第十一話:新たな攻略対象は先生
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生徒会の攻略対象たちと顔を合わせたあと、彼らのグループの席に案内された私は、右隣に皇太子、左隣にその婚約者という異例の配置で、これでもかというほど身を縮こまらせていた。
周囲からの痛いほどの視線を浴び、授業が始まるのを今か今かと待ち構えていると、紫の長髪をたなびかせ、紫の瞳を持つ褐色の男性が、ふいに音もなく教壇の前に現れた。
丸眼鏡と白いローブ。
まさに魔術師のような風貌で、全身から色気が漂っている。
「おはよう、かわい子ちゃんたち♡昨日はよく眠れた?」
あっ、思い出した。
この人も攻略対象だったはずだ。
ファリード・アル=サリーム。
隣国ザハラッド王国出身で、世界屈指の実力を持つ魔術師。
彼は魔法実習の担当で、いわゆるお色気キャラだったはず。
「今日は転入生が来てるんやろ?転入生の子、こっち来て自己紹介しぃや。」
そう言って手招きされ、全員の視線を感じながら恐る恐る教壇へ向かう。
私がファリードを見上げると、彼はにっこり微笑んだ。
「あら~♡ 可愛らしい子やねぇ♡ 可愛い生徒が増えて、ボク嬉しいわぁ。」
そう言いながら、ナチュラルに私の両肩に手を置いてくる。
「さあ、みんな注目! 今日から君たちのクラスメイトになる子や。お名前は?」
緊張で喉がカラカラになりながらも、なんとか名乗る。
「い、癒しの乙女のリナと申します。どうぞ宜しくお願いします。」
「リナちゃん言うんやね~。緊張しとるのがまた可愛いわ♡ 分からんことがあったらボクたちやクラスメイトを頼るんやで?みんなもリナちゃん、助けたってな?」
こうして、私はクラス全員に顔と名前を覚えられ、注目の的になってしまったのだった。
✦✦✦
私はこの学園では「特待生」として扱われるらしい。
座学は他の生徒と一緒に受けるが、魔法実習は先生やクラスメイトのサポート役を任されることになっている。
なぜなら、私は魔力がゼロだからだ。
五歳の誕生日に全国民が魔力測定を受けるが、その時点で私には一切の魔力が無いと判明していた。
そもそも魔力持ちは百人に一人いれば良い方で、魔力を伸ばす教育も、持っている者にしか意味が無い。
この世界でも科学や魔力装置が発達しているため、魔力がなくても生活に支障はない。
だが、稀に私のような「癒しの乙女」のように、後天的に特別な力を授かる者がいる。
そのため、放課後は先生方とみっちり補習を受け、癒しの力の使い方を学ぶことになっている。
…実は紋章が現れただけで、力の使い方はさっぱり分からないのだが。
そんなことを考えているうちに、長かった授業がようやく終わった。
前世でも今世でも勉強から逃げてきたツケが回ったのか、知恵熱が出そうなほど頭が痛い。
結局、ランチも生徒会の面々と共にすることになり、またもや注目の的。
いじめに発展しないといいけど…そう思うだけで胃がキリキリしてしまう。
「さあ、生徒会室に行こうか。」
エドモンドの輝かしい笑顔に導かれ、生徒会室に着くと、既に全員が揃っていた。
「じゃあリナに生徒会の説明をするね。」
そう言ってエドモンドは話し始めた。
「生徒会は、生徒会長の僕、副会長のウィリアム、書記のキャロライン、体育部長のラウル、環境部長のダグラス、文化部長のリュカで構成されている。そしてリナ、君にはみんなの補佐官として活動してもらう。困ったことや頼みたいことはその都度伝えるから、無理のない範囲で協力して欲しいんだ。もちろん、難しそうなことがあれば僕たちが助けるからね。」
そう言って彼はみんなに目をやる。
「みんな、いいよね?」
皆頷き、リュカだけが朝と同じく少し不機嫌そうだったが、反対は無いらしい。
「分かりました。皆さんをしっかりサポートできるよう頑張ります!」
そういって私もみんなに笑いかける。
とりあえずは様子をみよう。
一人一人の自分に対する好感度を確認しつつ、今後どうやって彼らの婚約者とくっついてもらうか、または恋人を作ってもらうか、計画を立てなければ。
そんな時、ドアがノックされた。
「どうぞ。」
エドモンドの声に応じて入ってきたのは、ミカエルと、その隣にファリードの姿もあった。
「これからリナさんの放課後補習なので、彼女をお借りします。」
「さ、リナちゃん、行こか。」
そうして私は二人に連れられ、生徒会室を出る前に控えめにお辞儀をした。
この教師二人も攻略対象だったよなぁ…。
現実世界なら教師と生徒の恋愛なんて御法度だが、この世界ではどうなんだろう。
「リナさん、どうかしましたか?」
黙っていた私にミカエルが心配そうに声を掛ける。
「あ、大丈夫です。今日は初日でちょっと疲れちゃって…。」
「無理してはるん?リナちゃん。今日は疲れてるだろうから、これからの放課後補習について説明するだけにしとくなぁ。」
そう言うとファリードが指をパチンと鳴らし、私たちは異空間に転移した。
そこは宇宙のように暗く、宙に浮いているような錯覚を覚える場所。
ここの世界ではこの様な不思議なことが起きるのが普通だから、あまり驚かなくなってしまった。
「ここは今ボクが作った異空間や。ここでリナちゃんの癒しの力について説明するで。」
そう言ってファリードが右手を掲げると、ホログラムのような私の姿が浮かび上がった。
「これが今のリナちゃん。君の体の中では、血液のように癒しの力が巡っとるんや。そして、力を使う時は、こんなふうに右手に集中するんや。」
ホログラムの右手が白く光る。
「力の使い方はシンプルです。心から『癒したい』と願えば、それだけで力は発動します。今までの癒しの乙女様も皆そうでした。」
ミカエルが補足する。
「まぁ、慣れるまでは時間がかかる。だからボクらが、力の使い方や制御方法を教えるんや。」
歴代の癒しの乙女たちがいたからこそ、方法が分かっているのだ。
それなら、私にも出来るかもしれない。
今の所攻略対象たちは頼れそうだし、私が何もおかしなことさえしなければ、変なことは起きないはず。
そう思った途端、不安だった心にほんの少し、光が差し込んだ気がした。
周囲からの痛いほどの視線を浴び、授業が始まるのを今か今かと待ち構えていると、紫の長髪をたなびかせ、紫の瞳を持つ褐色の男性が、ふいに音もなく教壇の前に現れた。
丸眼鏡と白いローブ。
まさに魔術師のような風貌で、全身から色気が漂っている。
「おはよう、かわい子ちゃんたち♡昨日はよく眠れた?」
あっ、思い出した。
この人も攻略対象だったはずだ。
ファリード・アル=サリーム。
隣国ザハラッド王国出身で、世界屈指の実力を持つ魔術師。
彼は魔法実習の担当で、いわゆるお色気キャラだったはず。
「今日は転入生が来てるんやろ?転入生の子、こっち来て自己紹介しぃや。」
そう言って手招きされ、全員の視線を感じながら恐る恐る教壇へ向かう。
私がファリードを見上げると、彼はにっこり微笑んだ。
「あら~♡ 可愛らしい子やねぇ♡ 可愛い生徒が増えて、ボク嬉しいわぁ。」
そう言いながら、ナチュラルに私の両肩に手を置いてくる。
「さあ、みんな注目! 今日から君たちのクラスメイトになる子や。お名前は?」
緊張で喉がカラカラになりながらも、なんとか名乗る。
「い、癒しの乙女のリナと申します。どうぞ宜しくお願いします。」
「リナちゃん言うんやね~。緊張しとるのがまた可愛いわ♡ 分からんことがあったらボクたちやクラスメイトを頼るんやで?みんなもリナちゃん、助けたってな?」
こうして、私はクラス全員に顔と名前を覚えられ、注目の的になってしまったのだった。
✦✦✦
私はこの学園では「特待生」として扱われるらしい。
座学は他の生徒と一緒に受けるが、魔法実習は先生やクラスメイトのサポート役を任されることになっている。
なぜなら、私は魔力がゼロだからだ。
五歳の誕生日に全国民が魔力測定を受けるが、その時点で私には一切の魔力が無いと判明していた。
そもそも魔力持ちは百人に一人いれば良い方で、魔力を伸ばす教育も、持っている者にしか意味が無い。
この世界でも科学や魔力装置が発達しているため、魔力がなくても生活に支障はない。
だが、稀に私のような「癒しの乙女」のように、後天的に特別な力を授かる者がいる。
そのため、放課後は先生方とみっちり補習を受け、癒しの力の使い方を学ぶことになっている。
…実は紋章が現れただけで、力の使い方はさっぱり分からないのだが。
そんなことを考えているうちに、長かった授業がようやく終わった。
前世でも今世でも勉強から逃げてきたツケが回ったのか、知恵熱が出そうなほど頭が痛い。
結局、ランチも生徒会の面々と共にすることになり、またもや注目の的。
いじめに発展しないといいけど…そう思うだけで胃がキリキリしてしまう。
「さあ、生徒会室に行こうか。」
エドモンドの輝かしい笑顔に導かれ、生徒会室に着くと、既に全員が揃っていた。
「じゃあリナに生徒会の説明をするね。」
そう言ってエドモンドは話し始めた。
「生徒会は、生徒会長の僕、副会長のウィリアム、書記のキャロライン、体育部長のラウル、環境部長のダグラス、文化部長のリュカで構成されている。そしてリナ、君にはみんなの補佐官として活動してもらう。困ったことや頼みたいことはその都度伝えるから、無理のない範囲で協力して欲しいんだ。もちろん、難しそうなことがあれば僕たちが助けるからね。」
そう言って彼はみんなに目をやる。
「みんな、いいよね?」
皆頷き、リュカだけが朝と同じく少し不機嫌そうだったが、反対は無いらしい。
「分かりました。皆さんをしっかりサポートできるよう頑張ります!」
そういって私もみんなに笑いかける。
とりあえずは様子をみよう。
一人一人の自分に対する好感度を確認しつつ、今後どうやって彼らの婚約者とくっついてもらうか、または恋人を作ってもらうか、計画を立てなければ。
そんな時、ドアがノックされた。
「どうぞ。」
エドモンドの声に応じて入ってきたのは、ミカエルと、その隣にファリードの姿もあった。
「これからリナさんの放課後補習なので、彼女をお借りします。」
「さ、リナちゃん、行こか。」
そうして私は二人に連れられ、生徒会室を出る前に控えめにお辞儀をした。
この教師二人も攻略対象だったよなぁ…。
現実世界なら教師と生徒の恋愛なんて御法度だが、この世界ではどうなんだろう。
「リナさん、どうかしましたか?」
黙っていた私にミカエルが心配そうに声を掛ける。
「あ、大丈夫です。今日は初日でちょっと疲れちゃって…。」
「無理してはるん?リナちゃん。今日は疲れてるだろうから、これからの放課後補習について説明するだけにしとくなぁ。」
そう言うとファリードが指をパチンと鳴らし、私たちは異空間に転移した。
そこは宇宙のように暗く、宙に浮いているような錯覚を覚える場所。
ここの世界ではこの様な不思議なことが起きるのが普通だから、あまり驚かなくなってしまった。
「ここは今ボクが作った異空間や。ここでリナちゃんの癒しの力について説明するで。」
そう言ってファリードが右手を掲げると、ホログラムのような私の姿が浮かび上がった。
「これが今のリナちゃん。君の体の中では、血液のように癒しの力が巡っとるんや。そして、力を使う時は、こんなふうに右手に集中するんや。」
ホログラムの右手が白く光る。
「力の使い方はシンプルです。心から『癒したい』と願えば、それだけで力は発動します。今までの癒しの乙女様も皆そうでした。」
ミカエルが補足する。
「まぁ、慣れるまでは時間がかかる。だからボクらが、力の使い方や制御方法を教えるんや。」
歴代の癒しの乙女たちがいたからこそ、方法が分かっているのだ。
それなら、私にも出来るかもしれない。
今の所攻略対象たちは頼れそうだし、私が何もおかしなことさえしなければ、変なことは起きないはず。
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