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第8話 誘い
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アルはギルドへ向かうべく通りを早歩きで移動していた。先ほど騒ぎに巻き込まれたと言うか、自ら首を突っ込んだのもあり、通行人たちの視線が少し気になったが特に何か言われたわけでもない。
ただ、道端の子供が「あっ!土のお兄ちゃんだ!」と呟くのが聞こえた気がした。
・
・
・
その後、何事もなくギルドに着くとそのまま依頼の紙が貼り出されている掲示板の前に立ち、依頼を物色していく。
良さそうな依頼の紙に手を伸ばしかけた時、ふいに後ろから声を掛けられた。
「お兄さん、先ほどぶりなの・・・です」
えっ?となるも振り返るしかなく、そこにいたのは先ほど助けた三人組みの女冒険者だった。ローブを纏った赤毛の剣士、銀髪で長い耳を持つエルフの弓使い、そして紫の髪に魔法使いのローブを纏った小柄な少女。
声をかけて来たのは魔法使いの少女だった。
「あっ・・・」
思わず声が漏れたが、アル自身、助けたこと自体に大した意味を持っていなかった。ところがまさか向こうから話しかけてくるとは思っていなかったのだ。ひょっとして胸元を見たことに抗議に来たのか?ヤバイヤバイ、言い訳できない・・・変態さんがここにいます!って言われたら詰んでしまう。
3人の立ち位置は完全にアルを取り囲んでいて、逃げられそうにない。仮に逃げるならば、突き飛ばすなり強引になる。だがここはギルドの中であり、そのような真似はできない。
(終わった・・・まさか、胸元を見たことがバレたのか!?言い訳を考えないと!)
アルが動揺していると、エルフの少女が一歩前に出た。
「もしかしてあなた様はソロの方なのでしょうか?」
あれ?事案じゃないのか?と安堵するも、鋭い観察眼だなとアルは感心した。
だが、返事をする前に今度は魔法使いの少女がオドオドしながらも、勇気を振り絞るように言った。
「あのう・・・少し、話を聞いて欲しいの・・・です」
アルはいきなりのことに、彼女たちをじっと見つめるしかなかった。
改めて見るとやはり三人とも整った顔立ちをしている。赤毛の剣士は今はローブを着ていて目のやり場に困らないが、健康的で活発そうな美少女剣士だ。
エルフは・・・よく見ると、他の二人と同じような年齢も、種族特有なのか洗練された美しさを持っている。そして魔法使いの少女もかなり可愛い。ただ、3人共本来なら可憐な雰囲気があるのだろうが、髪がボサボサだったり手入れがほとんどされていないのが気になった。
しかし、こんな美少女3人に詰め寄られるとドギマギするが、エルフさんがそっと耳元で呟いた。
「リリィは先ほど、あの愚か者たちにローブを取られていたのですわ」
先程、ローブを剥ぎ取られ町中でビキニアーマー姿を晒していただけだったと知らされたが、それは先ほど赤毛の子の胸元を見たのを知られたことを意味しており、アルは更に狼狽える。
相手はアルに赤毛の剣士には露出癖がないということを知らせたかったのだが、アルの方は別の意味に受け取り、追い詰められ・・・背中に冷や汗が流れるのを感じた。
だがしかし、ふと思ったのは彼女たちの格好は年頃の女子らしくないなだった。
特に魔法使いの少女は髪の手入れが行き届いておらず、服もツギハギだらけで年頃の女のそれではない。とても余裕のある生活をしているようには見えない。つまり困窮していることがひと目で分かる。
(余裕がない感じだな)
アルは小さく呟くと一瞬だけ迷い、何を言われるか分からないのもあり諦めてため息をつくも頷いた。このまま去ろうとしても、また直ぐに出くわすだろうから、話くらいならと付き合うことにした。
「わ、わかったよ。その、話くらいなら聞くよ」
その瞬間三人の少女の表情が少し明るくなる。
「ありがとう! じゃあ、えっと・・・」
赤毛の剣士が言葉を探していると、エルフが続けた。
「私たちのパーティに入ってほしいのですわ」
「へっ!?・・・」
アルは思わず目を瞬かせる。
自分を追ってきたようだが、てっきり何か文句を言うのだと、トラブルの予感しか無かった。
だが、どうしてこうなるんだ?と、良い方に意味が分からずについ情けない声を上げた。
「ふへ?」
「さっき、助けてくれたじゃない。あんな風にあしらえる人、そうそういないと思ったの・・・駄目かな?」
「つまり、私たちのパーティーに加わって頂きたいということなのですわ!」
三人娘が真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。
いきなりの思いがけない申し出にアルは驚き耳を疑った。まさか助けた相手からパーティーに誘われるとは思っていなかったのだ。
しかし、その反応を見て魔法使いの少女が慌てて二人をたしなめた。
「ちょ、ちょっと待つの・・・です! いきなりそんなこと言ったから、彼は困っているの・・・です!」
「えっ、でも・・・」
「まずはちゃんと事情を説明するの・・・です!」
魔法使いの少女はおどおどしながらも、真剣な表情で訴えた。
アルは長くなりそうだなと思い、とりあえず周囲を見渡した。すると空いている打ち合わせ用のテーブルを見つけ、軽く手を動かして促した。
「とりあえず座って話そうよ」
三人もアルの指示に従いテーブルの方へ向かった。
ただ、道端の子供が「あっ!土のお兄ちゃんだ!」と呟くのが聞こえた気がした。
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その後、何事もなくギルドに着くとそのまま依頼の紙が貼り出されている掲示板の前に立ち、依頼を物色していく。
良さそうな依頼の紙に手を伸ばしかけた時、ふいに後ろから声を掛けられた。
「お兄さん、先ほどぶりなの・・・です」
えっ?となるも振り返るしかなく、そこにいたのは先ほど助けた三人組みの女冒険者だった。ローブを纏った赤毛の剣士、銀髪で長い耳を持つエルフの弓使い、そして紫の髪に魔法使いのローブを纏った小柄な少女。
声をかけて来たのは魔法使いの少女だった。
「あっ・・・」
思わず声が漏れたが、アル自身、助けたこと自体に大した意味を持っていなかった。ところがまさか向こうから話しかけてくるとは思っていなかったのだ。ひょっとして胸元を見たことに抗議に来たのか?ヤバイヤバイ、言い訳できない・・・変態さんがここにいます!って言われたら詰んでしまう。
3人の立ち位置は完全にアルを取り囲んでいて、逃げられそうにない。仮に逃げるならば、突き飛ばすなり強引になる。だがここはギルドの中であり、そのような真似はできない。
(終わった・・・まさか、胸元を見たことがバレたのか!?言い訳を考えないと!)
アルが動揺していると、エルフの少女が一歩前に出た。
「もしかしてあなた様はソロの方なのでしょうか?」
あれ?事案じゃないのか?と安堵するも、鋭い観察眼だなとアルは感心した。
だが、返事をする前に今度は魔法使いの少女がオドオドしながらも、勇気を振り絞るように言った。
「あのう・・・少し、話を聞いて欲しいの・・・です」
アルはいきなりのことに、彼女たちをじっと見つめるしかなかった。
改めて見るとやはり三人とも整った顔立ちをしている。赤毛の剣士は今はローブを着ていて目のやり場に困らないが、健康的で活発そうな美少女剣士だ。
エルフは・・・よく見ると、他の二人と同じような年齢も、種族特有なのか洗練された美しさを持っている。そして魔法使いの少女もかなり可愛い。ただ、3人共本来なら可憐な雰囲気があるのだろうが、髪がボサボサだったり手入れがほとんどされていないのが気になった。
しかし、こんな美少女3人に詰め寄られるとドギマギするが、エルフさんがそっと耳元で呟いた。
「リリィは先ほど、あの愚か者たちにローブを取られていたのですわ」
先程、ローブを剥ぎ取られ町中でビキニアーマー姿を晒していただけだったと知らされたが、それは先ほど赤毛の子の胸元を見たのを知られたことを意味しており、アルは更に狼狽える。
相手はアルに赤毛の剣士には露出癖がないということを知らせたかったのだが、アルの方は別の意味に受け取り、追い詰められ・・・背中に冷や汗が流れるのを感じた。
だがしかし、ふと思ったのは彼女たちの格好は年頃の女子らしくないなだった。
特に魔法使いの少女は髪の手入れが行き届いておらず、服もツギハギだらけで年頃の女のそれではない。とても余裕のある生活をしているようには見えない。つまり困窮していることがひと目で分かる。
(余裕がない感じだな)
アルは小さく呟くと一瞬だけ迷い、何を言われるか分からないのもあり諦めてため息をつくも頷いた。このまま去ろうとしても、また直ぐに出くわすだろうから、話くらいならと付き合うことにした。
「わ、わかったよ。その、話くらいなら聞くよ」
その瞬間三人の少女の表情が少し明るくなる。
「ありがとう! じゃあ、えっと・・・」
赤毛の剣士が言葉を探していると、エルフが続けた。
「私たちのパーティに入ってほしいのですわ」
「へっ!?・・・」
アルは思わず目を瞬かせる。
自分を追ってきたようだが、てっきり何か文句を言うのだと、トラブルの予感しか無かった。
だが、どうしてこうなるんだ?と、良い方に意味が分からずについ情けない声を上げた。
「ふへ?」
「さっき、助けてくれたじゃない。あんな風にあしらえる人、そうそういないと思ったの・・・駄目かな?」
「つまり、私たちのパーティーに加わって頂きたいということなのですわ!」
三人娘が真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。
いきなりの思いがけない申し出にアルは驚き耳を疑った。まさか助けた相手からパーティーに誘われるとは思っていなかったのだ。
しかし、その反応を見て魔法使いの少女が慌てて二人をたしなめた。
「ちょ、ちょっと待つの・・・です! いきなりそんなこと言ったから、彼は困っているの・・・です!」
「えっ、でも・・・」
「まずはちゃんと事情を説明するの・・・です!」
魔法使いの少女はおどおどしながらも、真剣な表情で訴えた。
アルは長くなりそうだなと思い、とりあえず周囲を見渡した。すると空いている打ち合わせ用のテーブルを見つけ、軽く手を動かして促した。
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三人もアルの指示に従いテーブルの方へ向かった。
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