ハズレギフト土生成で成り上がる!〜追放から始まる英雄譚〜

KeyBow

文字の大きさ
12 / 52

第12話 買い物

しおりを挟む
 その後、周辺を歩いていると一体のゴブリンが現れたが、今度は余裕を持って対峙できそうだった。
 正面に立つリリィが剣を構え、右手に回ったアイリスが木の陰から弓を引き絞る。逆側に回ったサラは、得意のアイスボールの詠唱を始めた。

「これ、完全に狩る側だよな?」

 アルはオーバーキルだなあと、ちょっと魔物が可哀想だなと思いつつも、まあ自信がつくならいいかと黙って見守ることにした。

 いざとなれば守れるよう、サラの近くで控えている。アイリスは一応近接も可能らしいが、サラは完全な後衛だから守らなければならない。
 3人だとリリィが突っ込み、サラが援護、アイリスがサラの側で守りつつ矢を放って牽制するしかなく、魔物から見えているサラが放つ矢の軌道は読まれやすかったと思う。

 しかし、アイリスがサラの守りから解放されたことにより攻撃の幅が広がった。
「行くよ!」
 リリィが先陣を切り、剣を振るう。しかし、ゴブリンも棍棒で迎え撃ち、ガキンッ!と火花を散らして弾かれた。リリィは、弾かれた剣を素早く立て直し、ゴブリンの次の攻撃に備える。

「想定内!っと。はいアイリスどうぞ!」
 リリィが軽く距離を取った瞬間、アイリスの放った矢がゴブリンの右腕に突き刺さる。矢はゴブリンの筋肉を貫き、骨に食い込む。

「ギュグアアアッ!!」

 ゴブリンは悲鳴を上げ、矢を抜こうと動きを止めた――つまり動かない恰好の的になった。ゴブリンは、必死に矢を抜こうとするが、激痛で力が入りにくい。

「くらうの・・です!アイスボール!」

 サラの詠唱が完了し、青白い魔法球が宙を駆ける。魔法により生成された氷の球はゴブリンの顔面に向かって一直線に飛んでいく。
 ――ボスンッ!!
 ゴブリンの顔面にクリーンヒット。氷の球はゴブリンの鼻をへし折り、顔面を凍りつかせる。直後に「ギュブッ!」という情けない声を出しながら鼻血を吹き、ふらつく。ゴブリンは顔を両手で押さえ、よろよろと後ずさる。

「おー、いいところに当たったねぇ」

「トドメェ!」

 アルがのんびりとした声を出すと、リリィが跳躍して一気に首を斬り払った。銅の剣がゴブリンの首に吸い込まれ、首の骨と筋肉を断ち切る。
 少し浅く首は落ちなかったが、首を押さえながらゴブリンが倒れ込むと数秒ほどで霧散した。すると3人は顔を見合わせ、次の瞬間――

「やったー!!」

 ハイタッチを交わして飛び跳ねる。
(いい感じに息があってきたな)
 アルは微笑みつつ、彼女たちの成長を実感した。

 ・
 ・
 ・

 その後辺りを探索し、単独で歩いていたゴブリンとバッタリ遭遇したが慌てることもなく、危なげなく倒し、満足げに戦利品を拾って街へと戻ることにした。
 更に運よく帰路に現れたホーンラビットを狩ったが、運よく毛皮をドロップした。

 街に戻るとその足で毛皮を装具店に持ち込み、銀貨4枚の収入となった。
 その後ギルドに行き、受付で魔石を渡すことにより初めての討伐(間引き)依頼が無事完了した。
 本日の収益:
 討伐依頼報酬 → 銀貨2枚
 魔石(ゴブリン銀貨2枚×3、ホーンラビット銀貨2枚×1)→ 銀貨8枚
 毛皮換金 → 銀貨4枚
 合計金貨1枚、銀貨4枚
「金貨だよ!金貨!!初めて見たのです!」
「おぉぉ!」
「さすがアル殿ですわね!やりましたわ!」
 リリィたちは目を輝かせ、大興奮。アルも彼女たちの喜ぶ姿に、つい口元が緩む。
「さて、お金の分配だけど・・・」
 アルが話し始めたが、3人が勝手に話を進める。
「アルが半分で、残りを私たちで分ければよいよね」
「ええ。アル殿がいなければ、こんなに稼ぐことは出来ませんでしたもの」
「問題ないの・・・です!」
 アルは苦笑しながら【何を言っても無駄だな】と観念し、彼女たちに銀貨2枚ずつを渡した。
「ところでさ、せっかくの初仕事記念だし、少し奮発して服を買おうよ。今回は僕はゴブリン1匹分で良いからさ」
「えっ?」
「金貨1枚は僕からのプレゼントってことで」
 そう言って今回の稼ぎの銀貨6枚と、金貨1枚を渡すと、3人は一瞬驚いた顔をした。
「いいの?」
「うん。次からもガンガン稼げばよいからね。このお金でとりあえず服を買ってね。本当は買ってプレゼントしたいけど、サイズとかわからないからさ」
 アルがニヤリと笑うと、リリィたちは嬉しそうに頷いた。

「じゃあ服屋に見に行くの・・・です!」
「ありがとうございます、アル殿!」
「下着が欲しかったの!アル大好き!」
「うんうん。行ってらっしゃい。僕はちょっと用事と言うか他に買うものがあるから、宿でね」

 彼女たちを見送りつつ、アルは宿へ戻ろうと歩き出した。
 そんなアルの後ろ姿に向け、3人は頭を下げ、行くよお!とムードメーカーのリリィの先導で服を買いに向かった。
 アルはアルで、収納に入れる保存食やちょっとした小物を買いに向かう。

 ・
 ・
 ・

 一件目の買い物が終わり、次の店に向かっていた時に異変を感じた。
「ん?」
 ふと耳に入る、物騒な声。
 視線を向けるとリリィたち3人が、数人の屈強な男たちに絡まれていた。
(また厄介事か・・・よく絡まれるなあって、あいつら今朝の!?)
 アルは小さく息を吐き、呟きながらゆるりと歩き出す。

「あーあ、せっかくの楽しい買い物タイムなのに、懲りずに困った連中だな。さて、と・・・」
 
アルの表情はどこか余裕たっぷりで、どこまでも軽かった。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...