ハズレギフト土生成で成り上がる!〜追放から始まる英雄譚〜

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第36話 エルフの誉れ

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 ギルド内に緊張が走る。
 入り口に立つのは、エルフのみで構成されたAランクパーティー【エルフの誉れ】のリーダーだった。
 見た目は20歳前後に見えるが、エルフの年齢は外見では計れない。

「貴様、何を土地狂ったか知らぬが、赤毛の少女 の肩を掴み、更に我らの同胞を突き飛ばしたな。そしてよりによって無力な受付嬢に手を出すとは言語道断だ。何か言いたいことはあるか?」

 彼女は静かに言ったが、その声には鋭い威圧感があった。

「ぐ・・・! だ、だが、アイツが・・・!」

 ガイは必死に反論しようとするが、ギルド内のハンターたちの視線が突き刺さる。
 その視線に耐えられず、ガイは拳を握りしめながら押し黙った。
 沈黙の中、アルがふと思い出す。

「セリーナはどうしたんだ?」

 アルの問いに、ガイはぎこちなく顔をそらし、低く唸るように言った。

「…、もういないよ」
「いない? どういうことだ?」
「おまえのせいだからな……!」
 捨て台詞を吐くと、ガイは振り返らずにギルドを飛び出していった。
 ギルド内は一瞬の静寂に包まれ、その後、誰かが小さくつぶやく。
「……何だったんだ、あいつ……?」
「セリーナがいないってどういうこと?」
 アルの心に、不安が広がっていく。
 ——彼女に何があったのか?
 アルはガイを追おうとした。しかし——

「うっ・・・」

 リリィが肩を押さえて痛がっている。
 ガイに掴まれた衝撃で痛めたのか、それとも打撲か。
 アイリスもうずくまっているが、サラが彼女を助け起こそうとしているのが見えたので、アルはリリィの方へと駆け寄る。

「リリィ、大丈夫か?」

 アルが声をかけると、彼女は無理に笑ってみ

「へへへ、大丈夫だよ。でも、ちょっと痛むかな」

 無理をしているのは明らかだった。
 一方、アイリスも胸を押さえてうずくまっていた。

「・・・、少し、胸が痛むわ」

 そこへ、先ほどガイを制したエルフの誉れのメンバーが歩み寄ってきた。

「念のために治療しておこう」

 パーティのヒーラーらしきエルフの女性がそっとリリィとアイリスの肩と胸に手をかざす。柔らかな緑の光があふれ、傷ついた筋肉を癒やしていく。

「わっ」

 リリィが驚いたように目を見開くと、じんわりとした温かさに表情が和らいだ。
「ありがとう……! もう痛くない!」
 アイリスもまた、痛みが引いていくのを感じ、安堵の息を漏らした。

「感謝いたしますわ」

「無理をするな。ハンターにとって、体は資本だからな」

 エルフの女性は静かに言い、アルに目を向ける。
「そちらの受付嬢も、精神的なショックを受けているようだ。落ち着けるように、話を聞いてやれ」

 アルははっとなる。
 視線を移すと、受付嬢のエミリーが涙をこぼしていた。

「エミリーさん?」
「ごめんなさい・・・ 私のせいで・・・」

 彼女は震える手で胸元を押さえ、こぼれる涙を拭おうともせずに立ち尽くしていた。

「私がもっと・・・ちゃんとできていれば…・・・。あんな風に腕を掴まれるなんて・・・」

 さっきまで毅然とガイをたしなめていたが、その裏で恐怖とショックに耐えていたのだろう。

「エミリーさん、悪いのはガイだ。貴女が謝る必要なんてない」

 アルはそう言いながら、そっと彼女にハンカチを差し出す。
 エミリーは目を伏せ、震える声で「ありがとう・・・」と小さく呟いた。

(ガイを追うより、今は三人を落ち着かせる方が先だな・・・)

 アルは心の中で息を吐き、今すべきことを考えるのだった。


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