ダンジョンから始まる異世界生活〜異世界転移した勇者なのに誰も拾ってくれませんから、ダンジョン攻略しちゃいます〜へなちょこ勇者の成長記

第４章

アルテミスって誰？

　門番の所を離れるのに大した手間も悶着も何もなかった。あっさりしたもので、門番が晃の顔と名前を分っており、昨夜女将に説明をされて手紙を託されていたのだ。身請けの目録は門番が持っているのと晃が持っていたのが同じだからである。

　彼女達は着の身着のままであるが、全員普通の服を着ていて、鞄を身につけていた。おそらく良からぬ奴に襲撃される危険があり屋敷の外に一時的に逃げ出す事可能性が極めて高い旨を伝えていて、身の回りの物を全て持ち出せる準備を指示をしていたのであろう。皆大なり小なり鞄を持っていたのである。着ているのも遊女のそれではなかった。
　皆晃の戦いを見ており、彼に従えば間違いないと、女将の言うとおりだとなったから黙って従い付いてくる。

　取り急ぎ女神アルテミスの屋敷に向かう。屋敷につき、皆に事の顛末を説明し、身請けしてきたというより託された者達をどうするのかとなり、イザベラの本邸ので暫く世話をする事になった。

　先ずは本邸の方へローラン達にお願いして連れて行ってもらうのだが、異変があった。

　アルテミスの配下の冒険者達であるが晃は混乱した。そう言えば誰かがアルテミスをエレクトラと言っていた。その時はニックネームか何かとしか感じていなかったのだ。

　レヴィ達はとりあえずイザベラ様と一旦契約しその後身の振り方を考えればいいんじゃないのかという類のことを言っていたのだが、

「エレクトラ様は残念でしたね。まさかファーストの方に殺されるなんて何ていう事でしょう」

　というような事を話していたのだ。

　晃はガブリエルに確認した。
「女神様がどうのと聞こえたけどどうしたの？」

　と聞くと

「あーお前さんは生き返らせてもらった早々に煙の立ち込めている方に行ってしまったから分かっていないんだな。俺達の所の団長エレクトラ様のファーストであるグリードがエレクトラ様を殺害したんだ。そして彼女は天に召された。俺達で何とか奴を捕らえ、大輔殿に処刑して頂いたんだ。彼曰く同じ団の者で処刑をするなんてしこりが残るからと嫌な役を買ってくれたんだ。
　そして直ぐに別の女神であるアルテミスと言う未契約女神が現れたんだよ。そして何故かお前さんにに懐いていたな。そうこれが大雑把な流れだ。生き返ったのは女神アルテミス様が顕現された時だな。どうだ？理解できたか？エレクトラ様はな、奴のスキルで無理矢理従ってたんだ。しかし、まさかあの方が逝ってしまわれるとは思いもよらなかったかよ。団長の息のかかった者はことごとく追放する事にしたよ。金で雇われている連中だそうでな、普通に集まってきた者は身の振り方を考えねばならないが、先程イザベラ様が我らを引き受けてくれるという。その上で別の女神の所に行きたいという者は快く送り出しと言ってくださっている。こっちはこんなもんだな。あと大輔が寝込んでしまったよ。お前を生き返らせた時に魔力をごっそり持っていかれて、魔力切れだそうだな2、3日は目を覚まさないだろうよ。お前さんの方はどうだった？」

「見ての通り遊郭の方た達の身請けをして来たんだよ。女将さんが予言で既に今日死ぬと分っていたそうです。そこで遊女、禿等を全て解放し、僕を身請け人として託すという事でした。暫く屋敷の方で面倒を見させて頂き、体を売らずとも生きていけるだけの算段を着け、自由に生きられるようにしてあげようかと思っています。勿論遊女だったと分からないように配慮して行こうと思ってます。一旦メイドさんや料理人としてやって行けるようにと考えていますよ。」

　遊女の一部がガブリエルのところに来て

「ガブリエル様、姉様は私達を逃す為に魔物の注意を引き受けてくださりましたが、魔物に下半身を食いちぎられ、私達の目の前で息を引き取られました。遺体は彼女の希望もあり、屋敷で灰になっていきましたが、私達はこれからどうなるのでしょうか？体を売らなくても良いとは言われましたが、私達にはそれしかお金を稼ぐ方法を知らないのです」

「大丈夫だ。いざとなったら俺がお前らを娶取ってやる。俺の事が嫌いじゃなければな」

「お優しいんですね」

　などと話をしていた。その間に晃がイザベラに話をする。
「あのイザベラ様、女神アルテミス様の事がおかしな事になっているようですが、アルテミス様が亡くなっていないのに何故かエレクトラという名の女神がファーストに殺された事になっているのでしょうか？」

　イザベラはハットなった。

「何？晃くんは亡くなった女神が誰だというのだい？」

「はい。亡くなったのではなく、アルテミス様が幼体に戻られました。皆見ていた筈なのに何故亡くなった事になっているのでしょうか？」

「晃くんはちゃんとした記憶があるのね。私も驚いているんだよ。私もその認識でそれをちゃんと見ているんだけども、皆の認識が私と晃くんの知るアルテミスと、幼児退行する前のアルテミスが別人で名前もエレクトラと変貌しているんだよ。こんな事は聞いた事がないのだけれども、まあいいんじゃないのかな？晃くんと私だけだけども、皆の中ではあの女神は亡くなったんだ。そういう事にしておくんだ、いいね。晃は渋々だが頷いていた。そしてこのあとは皆で手分けしての事後処理になるのだが、そんな晃の帰りを知った桜が晃の胸に取り込むのであった。