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第一章 冒険者編

第56話 魔石合成

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 震えと光が収まると、ゴブリンはその場に倒れたまま動かなくなった。
 すると胸の辺りから何かがこぼれ落ちるのが見えた。

 倒れたままのゴブリンに動く気配はなく、生きているとは思えなかった。
 なので、生きているのか?死んだのかどうか確かめることにした。   
 すると、どう見ても死んでおり、魔石抜き取りを発動するも反応は無かった。
 念の為ナイフで胸を切り裂いたが魔石はない。
 体はソニアの収納に入ったことから、どうやら魔石が合成され、体から出てきた何かに変質したのだと判断した。
  
 ロイは疑問を抱きながら落ちた何かに近づくと、玉だと分かった。
 指先で小突いて反応がないことを確認すると、ゴブリンの体から転がり落ちた玉を拾い上げた。

「何だこれは?魔石じゃないな...」

 ロイは不思議そうに首を傾げた。

 リラが前に出て来ると、そっとその手に渡すと、不思議そうにその玉を手に取りながら言った。

「私が鑑定するね!」

 彼女は鑑定ギフトを使い、玉の秘密を解き明かそうと集中した。

 数瞬の沈黙の後、リラの目が輝く。

「これは【棍棒術】のスキルが封じられているわ。私が使ってみようかしら?モーニングスターは棍棒の一種だから、このスキルは私にぴったりね。それに何かあっても、受付業務に戻る私なら影響は少ないわ。ギルドマスターに報告するにしても、検証が先よね」

 リラは確信に満ちた声で言った。

「へえ、それは面白そうね。リラが新しいスキルを使うのを見るのは楽しみだぜ。」

 ミランダが興味津々といった感じに近付くと、リラから渡された玉を手に取り笑いながら言った。

 リラは勇敢にもその場で新しいスキルを試すことにした。

「ちょっと待て!リラが使うのは良いが、こんな所でやるのはだめだぞ。それに何が起こるか分からないんだからさ。リラの身に危険を及ぼすこともあるだろ?もう少し慎重にしたほうが良いと思うけど」

「分かっているわ。でも、私なら大丈夫よ。皆と違って明日からは受付業務に戻るだけだから」

 そう告げるとリラはロイに近づき、そっと耳打ちした。

「その代わりに、後でちょっとしたご褒美をお願いするわ」

 リラはいたずらっぽく微笑んだ。

 ロイは微笑みを返しながら答える。

「もちろんだよ。リラの好奇心と勇気を讃えるご褒美を用意しよう。」

 ロイは当たり障りのない約束をした。

 スキル玉を手に入れた一行は、その力を試したい心を押さえ、ゴブリンの集落へと向かった。
 他の者は知らなかったが、リラはその存在を知っていた。
 ただ、見たことがなく、本当に安全かどうかは、知識として大丈夫らしいとしか言えなかった。
 初めて見たスキル玉に興奮し、慎重さよりも興味が勝ったのだ。

 彼らの目標、つまり、引き受けた依頼は、ゴブリンの集落の調査、可能なら殲滅。要するにこの地域を荒らし回っているゴブリンたちを討伐し、村人たちに平和をもたらすことだった。この日、彼らはゴブリンの巣窟である集落を目指していた。

 太陽が山の端に沈み始める頃、集落に到着した。

 集落には、予想以上の数のゴブリンが生活していた痕跡が見られたが、そのほとんどはもう生きてはいない。

 どうやら先程遭遇し、撃破したゴブリンの群れは、目的地であるこの集落から狩りに出ていたところ、ロイたちと鉢合わせしたようだった。

 ロイたちは颯爽と動き、ゴブリンたちに気付かれることなく何体かを静かに倒していった。ロイとソニアも、それぞれの経験と技術を駆使して、ゴブリンたちを効率よく討伐していく。

 約十分ほどだろうか、戦闘がほぼ終わり、集落内のゴブリンのほとんどが倒され、残った数体は昏倒していた。

 ロイは、この機会を利用して魔石合成の実験を行うことにしたのだ。
 余裕が出てくると、最後の数体は殺さずに無力化するに留めていた。

 ロイたちは見張りと縛るものとに別れ、念のため昏倒したゴブリンたちを縛り上げる。

 これまでに確保した魔石を使い、慎重に合成していく。この過程は非常に繊細であり、少しの誤差も許されないため、彼らは細心の注意を払いながら作業を進めた。

 合成の結果、いくつかの魔石は強化され、新たな力を宿した。リラたちはこれらの魔石を今後の冒険で役立てることを楽しみにしていた。彼らは集落を完全に潰すことに成功し、村人たちが再び安心して生活できるようになったことを確信していた。

 色々なパターンを試した。
 生きたゴブリンから抜いた魔石をα、死んだゴブリンから抜いた魔石をβ。
 生きているゴブリンをγ、死んだゴブリンをδとする。

 1. αγ - 成功
 2. αδ - 失敗
 3. βγ - 失敗
 4. βδ - 失敗

 全てのパターンを試したが、生きたゴブリンから抜いた魔石かつ、生きているゴブリンに合成した時のみスキル玉になることが判明した。

 それ以外は単なる魔石合成だった。
 それと、魔石は一度しか合成できないことが判明した。少なくとも今のロイではそういうことになった。

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 冒険からの町に帰還後、一行は疲れながらも満足感に包まれており、ゴブリンの集落から帰還した彼らの背中には、達成感と共に、これからの冒険に対する新たな期待が満ち溢れていた。


 食堂で夕食を食べながらリラは、玉を手に取り、再び鑑定のスキルを使い、その力を確かめた。

「やっぱりこれは特別なスキルが封じられているわ。使うのが待ちきれない!」

 リラはわくわくした様子で言った。

 ロイは微笑みながら、リラの肩を叩いた。

「安全な場所で試すんだぞ。」

「もちろんよ。工房で試そうかしら?」

「そうしてくれるとありがたいな」

 夕食を終えたのは夜の帳が下りた頃で、一行は食堂を後にするとまっすぐリックガント魔法道具店に行き、工房に集った。

 この日の戦利品を囲みながら、今日の戦いと、得た新しいスキルを得られるはずのスキル玉について話し合った。

 ほとんど流通しないが、ダンジョン内で希にドロップする。大抵はゲットした者が使うため滅多に流通しないのだそうだ。

 ギフトと違い、スキルは修行すれば身に付く。現にロイも剣術スキルを持っている。

 準備が整うとリラは、玉を手に取り皆の前で力を発動させることにした。

 彼女は玉を握りしめ、力を発動させた。しかし、突然彼女の表情が歪み、苦しみ始めた。リラは倒れ、ロイは慌てて駆け寄り、彼女を抱き起こした。

「リラ、大丈夫か?!」ロイは心配そうに尋ねた。

「お姫様抱っこして...」

 リラは弱々しく目を開けおねだりをした。ロイは彼女を優しく抱き上げたが、その時ミランダが近づき、リラのお腹を容赦なくくすぐり始めた。

「キャー!くすぐったい!」リラは笑いながら叫び、突然の変化に皆が驚いた。

 リラはニヤリと笑い、「ばれたか。」と言った。

 ロイは安堵の息をつきながらも、リラのいたずらに苦笑いした。「君は本当に手がかかるな。」

 そして、一行は笑い声を残しながら、次の冒険に向けて歩き出す。彼らの背後には新たな力の可能性と、未知への好奇心が残されており、彼らの旅は続く。
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