ダンジョン配信スタッフやります!〜ぼっちだった俺だけど、二次覚醒したのでカリスマ配信者を陰ながら支える黒子的な存在になろうと思います〜

KeyBow

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第12話 提案

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 逃げることに夢中になり、気が付けばどこかのビルの屋上にいた。
 俺は乙姫さんをお姫様抱っこした状態で立っていたが、ようやくアイツラを巻いたと確信したので彼女を降ろした。
 ところが乙姫さんがふらついたのもあり、倒れないように抱きしめる形で受け止めた。
 しかし、付き合ってもいない女性を抱きしめていることに気づいて真っ赤になり、慌てて放した。
 女性特有の柔らかさや温もりを感じてしまい、流石に不味いと思った。

「すみません、つい勢いで・・・」

 俺が言い訳をする間もなく、乙姫は怒ったような目で俺を睨んだ?しかし、その顔には涙で潤んでいたが、それでも毅然としていた。やはり怒らせたか怖がらせたか?

「ドボルさん・・・私の・・・」

 彼女が口を開きかけたが、俺は手を振り上げて制した。
ここは誤魔化そう!うん!それがよい!

「それと俺、乙姫さんの行動に怒っているんですからね。ちょっと歯を食いしばってください。悪いことをしたらお仕置きが必要です!」

「えっ・・・?」

 俺が手を振り上げ、いかにも平手打ちするぞといったポーズをとると、乙姫さんは驚いた顔をしながらも、恐る恐る目を閉じて歯を食いしばった。俺は振り上げた手をゆっくりと降ろし、彼女の頬に軽く触れると涙をやさしく拭った。

「大丈夫です。乱暴なことなんてしないですよ。ましてや女性の顔を殴るなんて俺にはできません。ただ、これだけは言わせてください。さっきも言いましたが、自分をもっと大切にしてください。こんなこと・・・もう二度としないでください!」

 彼女は目を開き、俺の顔を見つめていたがその瞳は再び涙で揺れ、大粒の涙が頬を濡らす。

「・・・椰子が悪いんです。乙姫さんが賠償金を工面する必要なんてない。それを考える必要もありません。賠償のために財産のほとんどを放出したと聞きました。これ以上身を削る必要はないですよ。俺の方は何とかなりますから」

 彼女の目からまた涙が溢れた。

「・・・ずるいです。そんなこと言われたら・・・泣いちゃうじゃないですか」

 乙姫さんは声を震わせながら泣き出した。

「ほら、泣かないでください。落ち着いたら下に降りますよ」

 俺はハンカチで涙を拭い、ティッシュを出して彼女の鼻に当てるとハナチンをさせた・・・あれ?この娘こんなキャラだっけ?まあ良いか。細かいことを気にしたら負けだし・・・

 その後、再び彼女をお姫様抱っこして地上に降ると近くにあるカフェに入った。温かいコーヒーが二人の間に置かれたころ、ようやく落ち着いたようだ。

「乙姫さん、改めてなんですが、ちょっと相談と言うか提案があるんですが・・・」

 俺が話しを切り出すと彼女は首を傾げた。

「相談・・・ですか?」

「ええ。俺と一緒にパーティーを組んでくれませんか?」

 その提案に、彼女は驚いたように目を見開いた。

「私でいいんですか?」

「もちろんです。俺、怪我をしてからずっとソロでやってきました。でも、ずっとパーティーを組むことに憧れていたんです。信頼できる人と一緒に冒険するのって、きっと楽しいだろうなって」

 彼女は少し考えた後、小さく頷いた。

「・・・それなら、こちらこそよろしくお願いします」

「ありがとうございます!それで……パーティーを組むにあたって、もう一つお願いがあるんですが」

「なんですか?」

「拠点が必要だと思うんです。乙姫さんのマンションを拠点として使わせてもらえませんか?まだ売っていないと聞きました」

「でも、あの部屋は売却してドボルさんの義手を買うお金の足しにしようと・・・マネージャーさんも既に退去して不動産屋さんに売却するつもりなんです」

 俺は少し強めの口調で彼女を諭すことにした。

「俺には、乙姫さんから賠償を受けるつもりも必要もありません。それよりも、拠点があれば活動がもっとスムーズになります。それに・・・」

 俺は少し間を置いてから続ける。

「乙姫さん。ダンジョンに近いから拠点として最適なんです」

「そう・・・ですか・・・その、ドボルさんってお住まいは確か八王子でしたよね。誰かと暮らしていたりするんですか?」

「八王子にある古いアパートで、1人で暮らしています」

「えっ、一人暮らし?」

「ええ。両親の死後面倒を見てくれた祖父も祖母も既に他界しています。」

 乙姫は絶句したように言葉を失った。しばらくして、真剣な顔つきになった。

「それなら条件があります。八王子の部屋を引き払って、拠点になるマンションに越してきてください。何か思い入れなどあって離れられないとかあれば別ですが・・・」

「え、俺、男ですよ?」

 彼女は顔を真っ赤にしながらも、必死に力説した。

「ほら、シェアハウスみたいなものですし!パーティーを組むなら拠点に一緒に住んだほうが便利じゃないですか!それにドボルさんは紳士ですし、そういうことがあってもドボルさんなら賠償の一部として・・・」

 その勢いに押され、俺は思わず頷くも、途中で話を遮った。

「わ、わかりましたから。た、確かにシェアハウスみたいなもの・・・ですね。思い入れなんてないですからありがたいくらいです。信用してくれるのはありがたいですが、何度も言いますが賠償は要らないですが・・・それだと乙姫さんの気が済まないのでしょうから、あのマンションの居室の1つを俺にください」

「ええ、分かりました!それで決まりですね。それともう2人だけの仲間になるんですから乙姫さんじゃなくて、乙姫か名前の瑞葉って呼んでください。それにドボルさんは私より4つも歳上なんですから、歳相応に話してくださいね。これからは私へ敬語なんて使わないでほしいんです。駄目・・・ですか?」

 彼女は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔を見て、俺は新たな生活への期待と不安が入り混じるのを感じていた。

「わ、わかった。お、乙姫、じゃ、じゃあさ、俺のこともドボルか名前で呼んでくれ」

 彼女は少し照れたような顔でうなずき、顔を赤くしながら小さな声でつぶやいた。

「・・じゃあ、ドボル・・・さん、じゃなくて・・・ドボル・・・でいい?」

「おう、それで頼むよ!相棒!」

 その瞬間、彼女がほんの少し笑った気がして、俺の胸の中に何か温かいものが広がった。信頼が確かに芽生えた瞬間だった。
 店を出ると固く握手をしスタッフの待つマンションへと歩いていった。

 こうして、俺たちは新たな一歩を踏み出すことになったが、信頼と希望を胸に抱き、ダンジョンへ探索に行くことになる。
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