気がつくとノンケの俺が年下の性悪ホストにひたすら犯される

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO

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4 気怠い朝

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 最初は。なんというか、なし崩しだった。いや、今もなし崩しか。

 身体を繋げたのがいつだったのかはハッキリしていないが、キスだけは覚えている。あの頃、北斗は新人で。少なくとも今よりは可愛げがあった。



   ◆   ◆   ◆



「うっ……、う……」

 バックヤードに響く呻き声に、俺は顔をしかめながら声の主を探した。トイレの水道で、吐きそうになりながら唇を拭っている北斗に、唖然として声をかける。

「北斗!? おま、どうした?」

「ア、アキラ……」

『ブラックバード』に来たばかりの北斗は、着なれないスーツに違和感があった。俺から見れば、ずいぶん子供に見えたものだ。

「何かあったのか? 大丈夫か?」

 新人イジメなどないと、思っていたが、『ブラックバード』にもあったのだろうか。不安に思いながらそうたずねると、北斗は意外な言葉を口にした。

「あの女――あ、客が……。キスしてきて」

「は?」

 嫌そうに顔をしかめ、唇を赤くなるほど擦る北斗に、目を丸くする。その時の俺は、それほど深刻に考えもせず、少し笑っていたほどだった。

「なんだお前、まさかファーストキスだとか、気にするタイプか?」

「あ?」

 苛立ちを隠そうともせず睨み付け、ついでに腹に一発お見舞いしてきた北斗に、俺は小さく呻く。

「うぐっ! お、おまっ……」

「るせえ。誰がファーストキスだ。くそムカつく……」

「なにキレて」

 そこから先の言葉は、紡げなかった。北斗がキスして来たからだ。咄嗟に反応できず、固まったところに舌が入ってきた。

「ん、んむっ!?」

 驚いて押し返そうとするが、剥がれない。それどころか、キスが深くなる。

「んっ、んむっ……、っあ」

 舌先を擽られゾクンと背筋が粟立つ。先ほど未経験をからかったが、訂正すべきだろう。絶対に初めてではない。

 結局、膝が崩れるほど舐られ、その様子に北斗は満足したように去っていった。





「え? ゲイ?」

 しばらくして、ユウヤから聞いたのは、北斗がゲイであるという事実だった。

(ああ、だから――)

 女の子にキスされて、嫌がっていたのだ。あの日の行動が腑に落ちて、同時に少し悪かったな、と思う。

「なんでゲイのくせに、ホストなんかになったんすかね」

 首をかしげる俺に、ユウヤが「お前が言う?」とすごい顔をしていたのが印象的だった。



   ◆   ◆   ◆



 と、キスをしたきっかけは、アレだったのは間違いない。その後、なにかと不機嫌な北斗に、八つ当たりのようにキスされ――今では身体まで繋いでいる。

 つまり、何となくだ。

 あれからユウヤがアドバイスなどをしたらしく、北斗は『王子様キャラ』で行く事になった。恋人のような関係性を作るより、アイドルのような関係の方が、距離感を保てる――らしい。

 キスされそうになると、大抵は黄色いバラを代わりに唇に返すと言うなんともキザったらしい方法をとっていて、中身を知っている側としては、少々薄気味悪いものがあるが、ホストとしてやっていけているのだから、正解なのだろう。

 総じて、北斗はホストに向いている。――というか、社会に向いていない。だから、はみ出しものの集まるホストくらいが丁度良い。普通のバイトだったら、一日ももたず喧嘩して辞めるのではないだろうか――…。

「はあ……。腰イタ…」

 吐息を吐きながら天井を見上げる。カーテンの隙間から漏れる光の具合から察するに、もう昼を過ぎているだろう。

 隣にはうつ伏せで眠る北斗の顔がある。性悪ホストも寝ていると、平和そのものだ。

(結局、朝までコースだったし……)

 擦られた部分が、まだ違和感を訴えている。なんなら、シャワーも浴びていないし、精液がナカに入ったままだし。

(面倒……。いや、でも綺麗にしねえと、もっと面倒……)

 ふあ、と欠伸をしながら、のそりと起き上がる。時刻をみると十二時半を回ったところだった。身体が軋んで痛む。

「あー、ダルい……」

 飲みかけのペットボトルから水を飲み干し、シャワーに向かう。バスルームの鏡を見ると、北斗がつけた痕跡があちこちに残っていた。

「あの野郎……。痕つけんなって、何度いったら解るんだよ……」

 これのせいで、女の子からはモテないし。一部の女子からは変な目でみられるし。

 なんなら、長いこと店に通っている常連の子たちは、俺と北斗の関係を知ってるし。

「はぁ……」

 北斗の悪癖も悪いが、俺も悪いところがあるのは自覚している。結局、こんな風に抱かれることを容認してしまっている。

(でも、まあ……)

 このままじゃマズいよな。そう思いながらも、何かを変えることのわずらわしさに、俺は問題を先送りするのだった。




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