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二十七 何故か罪悪感
しおりを挟む「ん……」
吉永の脚が俺の足に絡みつく。至福だ。
(なんて、のんびりしてると延長料金取られるからな……)
残念ながらフリータイムではないので、そろそろ出ないといけない。ベッドに転がって、休憩という名の軽いスキンシップを十分に楽しむ。キスしたり、脚を絡めたりと、そういうヤツ。
吉永の唇が何度も俺の唇を求めてくっついてくる。そういうの好きだけど。まあ、好きだから相手にしちゃうんだけど。
「は……、そろそろ、シャワー浴びないとマズくない……?」
「ん……、もうそんな時間?」
そう言いながら、吉永の舌が伸びて来る。本当に、イタズラ好きな舌め。
「あれだけヤっといて、足らないのかよ? アンタ、マジで淫乱だな」
「ん、うるさい。そう言うなら、ケツ弄るの止めろよっ……ん」
「あれ? ヤだった?」
ニヤニヤと笑いながら、ぐちゅ、ぐちゅとアナルに挿入した指を掻きまわす。
「あっ……! 嫌、なわけ……ねー、けど……んっ」
「続きはシャワーで、する? ナカ、綺麗にして欲しいだろ?」
「っ……、ん……」
ずるりと指を引き抜く。吉永はもう一度、噛みつくようにキスをして、身体を起こした。吉永の身体には、無数の痕跡。赤く残るキスの痕と、歯形。首筋と胸、脚が特に多い。俺の方も、吉永が引っ掻いた傷やら、キスマークやら、そういうのが無数についている。
「時間ないし、綺麗にするだけな」
「フリ?」
「マジで!」
まあ、俺もふざけてはいるけど、もう限界かな。もう少し休めばイケる気もするけど。
吉永がベッドから降りる。俺もそれに続いてベッドから降りた。と。
ピコン。
スマートフォンの通知が響く。吉永が振り返った。
「航平の?」
「あー、俺っぽい。何だろ」
宮脇あたりだろうか。今すぐ確認する必要もないのだが、なんとなくスマートフォンに手を伸ばし、メッセージを確認した。
『河井美緒』の名前に、胃がヒヤッとした。心臓が早鐘を打つ。
(え、河井さん?)
内心ドギマギしながら、メッセージアプリを起動させる。
『久我くん、ランチの件みんなに聞いたんだけど、みんなランチより飲みの方が良いみたい。 都合はどうかな』
何でもないメッセージに、ホッとしながら酷く焦っている自分が居た。吉永が見ている、気がした。
(いや、何でこんな、気まずくなってんの……)
ドクドクと、心臓が鳴る。
別に、二股掛けているわけじゃない。吉永とは何でもないし、河井さんともまだどうにもなっていない。
(――なのに、なんでこんな、すげえ罪悪感が湧くんだ)
酷く、悪いことをしている気分だ。変な汗が出て来て、口の中が渇いてくる。
「航平? 入ろう」
「あ、う、うん。ちょっと、返事だけしちゃうわ」
動揺を押し隠し、スマートフォンを操作する。焦っているのか、何度かミスタップを繰り返す。
『解りました。飲みの方向でメンツ集めます!』
と、外面を前面に押し出した返信をして、送信ボタンを押す。既読になるのを確認せずにスマートフォンを慌ててバッグの中に隠すと、その足で風呂場へと向かった。
「わ、悪い」
「……」
無言でシャワーのノズルを捻って、吉永が俺をチラリと見た。なんか、機嫌悪い気がする。
(気のせい、だよな……?)
吉永からは河井さんからの連絡だって、解らなかったはずだし。解ったとしても、吉永には関係のないことだし。
「は、早くシャワー浴びて出ようぜ」
「……」
吉永は少し考える表情をして、俺の足に脚を絡めた。ぞく、と背筋が粟立つ。
「吉永っ……脚……っ」
「おれ疲れちゃったから。航平が洗って?」
「――」
綺麗にするだけって、さっき言ったじゃん。
(明らかに、挑発してんじゃん……)
誘惑されているのは明らかだった。けど、どうして抗えようか。
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