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ブラスバンド部。美緒と一美に会って、話をする。美緒が聞いてくる。
「ねぇねぇ夏稀、昨日の事、詳しく聞かせてよ」
昨日の事を思い出すと、思わずニヤニヤしてしまう。
「うん。――上手くいったわ」
「上手くいったって、どうだったの?」
一美の問いに、恥ずかしかったけれど、こう答えた。
「ペルセウス座流星群を見て……それから……涼太先輩とキスしたの――」
「――キス!」
「――夏稀、キャー!」
「うん」と答える。昨日の夜の事を思うと、嬉し恥ずかし、顔が赤くなってくる。
そしてその後、ブラスバンド部の活動を終えて、帰る時間になる。
「夏稀も涼太先輩と上手くいった事だし、お盆前最後の部活だったし……。今日はかき氷でも食べていかない?」
美緒の提案。そうね、かき氷を食べるのもいいわね、でも。
「私、涼太先輩と一緒に居たいな」
「だったら、涼太先輩にも一緒にかき氷食べてもらおうよ!……ところで、夏稀も、涼太先輩って呼ぶようになったわね――昨日で、相当進展したわね――」
一美がそう言うのに、私も「うん」と答える。二人も、凄く嬉しそうだ。
「なつきー!」
涼太先輩が天文部の活動を終えて、こちらに駆け出してきた。私の名を呼び捨てにする先輩に、美緒と一美が、やったわね!という顔をする。
「涼太先輩、私達、これからかき氷を食べるんですけど、一緒にどうですか?」
「――うん、ああ、いいよ」
「――行きましょう、先輩!」
美緒の誘いに乗る先輩。促す私。
かき氷を食べに行くんだ。夏の日の時分、冷たいかき氷は、火照った体に涼しく心地よい出合いを運んでくれる。夜空の星々は瞬き、地上と天空の幻想的でロマンチックな雰囲気が、二人を優しく包んでくれる。
ふと、私達のいる校庭の端っこに、サッカーボールが飛んでくる。美緒がそれをキャッチする。
「なに?サッカーボール?」
そこへ、サッカー用のユニフォームを着た永斗高校の学生がやってくる。美緒に話し掛けてきた。
「すいませーん。ボール、飛んできちゃいましたね」
その人は、笑顔が素敵な好青年だった。美緒がモジモジしながら答える。
「これ、サッカーボール……」
サッカーボールを手渡す美緒。その人は、受け取ってお礼を言ってきた。
「ありがとう。じゃあ、またね」
その場を去ろうとする青年。美緒が「あの!」と呼び止める。
「なに?」
「あ、あなたは?」
青年は、こう答えた。
「俺、サッカー部の、小宮山翔。宜しく」
「あっ、はい!」
名乗った青年に美緒が応えて、翔君はグラウンドに駆け出して行った。
美緒は、ポーっとその場に立ち尽くす。
「うん?なに、美緒?」
立ち尽くす美緒。一美がその様子に気付く。美緒はポーっと呆けている。
「――かっこいい……」
「えっ?」と一美は驚く。そう、美緒は――。
「なに、なに!?美緒まで恋しちゃったの!?」
そうだ、美緒は、恋をしたのだ。恋愛は、突然やってくる。好きになったら、もう止められないのだ。
「はは」と笑う涼太先輩。私も「フフフ」と笑みを零す。美緒。二人は、恋に落ちたのだ。
恋愛は、とても甘く、甘美で、素敵で、大事な何かをくれる。誰かを想う事は、こんなにも愛おしさを感じ、大切な時間をくれる。恋は、万人に与えられた人を想う心だ。
「キュルキュル―!」
私も、涼太先輩と出会った。恋する事、愛する事は、私達に大切なものをくれる。この世界の全ての人が、愛し合える、誰かと出会えます様に。
了
「ねぇねぇ夏稀、昨日の事、詳しく聞かせてよ」
昨日の事を思い出すと、思わずニヤニヤしてしまう。
「うん。――上手くいったわ」
「上手くいったって、どうだったの?」
一美の問いに、恥ずかしかったけれど、こう答えた。
「ペルセウス座流星群を見て……それから……涼太先輩とキスしたの――」
「――キス!」
「――夏稀、キャー!」
「うん」と答える。昨日の夜の事を思うと、嬉し恥ずかし、顔が赤くなってくる。
そしてその後、ブラスバンド部の活動を終えて、帰る時間になる。
「夏稀も涼太先輩と上手くいった事だし、お盆前最後の部活だったし……。今日はかき氷でも食べていかない?」
美緒の提案。そうね、かき氷を食べるのもいいわね、でも。
「私、涼太先輩と一緒に居たいな」
「だったら、涼太先輩にも一緒にかき氷食べてもらおうよ!……ところで、夏稀も、涼太先輩って呼ぶようになったわね――昨日で、相当進展したわね――」
一美がそう言うのに、私も「うん」と答える。二人も、凄く嬉しそうだ。
「なつきー!」
涼太先輩が天文部の活動を終えて、こちらに駆け出してきた。私の名を呼び捨てにする先輩に、美緒と一美が、やったわね!という顔をする。
「涼太先輩、私達、これからかき氷を食べるんですけど、一緒にどうですか?」
「――うん、ああ、いいよ」
「――行きましょう、先輩!」
美緒の誘いに乗る先輩。促す私。
かき氷を食べに行くんだ。夏の日の時分、冷たいかき氷は、火照った体に涼しく心地よい出合いを運んでくれる。夜空の星々は瞬き、地上と天空の幻想的でロマンチックな雰囲気が、二人を優しく包んでくれる。
ふと、私達のいる校庭の端っこに、サッカーボールが飛んでくる。美緒がそれをキャッチする。
「なに?サッカーボール?」
そこへ、サッカー用のユニフォームを着た永斗高校の学生がやってくる。美緒に話し掛けてきた。
「すいませーん。ボール、飛んできちゃいましたね」
その人は、笑顔が素敵な好青年だった。美緒がモジモジしながら答える。
「これ、サッカーボール……」
サッカーボールを手渡す美緒。その人は、受け取ってお礼を言ってきた。
「ありがとう。じゃあ、またね」
その場を去ろうとする青年。美緒が「あの!」と呼び止める。
「なに?」
「あ、あなたは?」
青年は、こう答えた。
「俺、サッカー部の、小宮山翔。宜しく」
「あっ、はい!」
名乗った青年に美緒が応えて、翔君はグラウンドに駆け出して行った。
美緒は、ポーっとその場に立ち尽くす。
「うん?なに、美緒?」
立ち尽くす美緒。一美がその様子に気付く。美緒はポーっと呆けている。
「――かっこいい……」
「えっ?」と一美は驚く。そう、美緒は――。
「なに、なに!?美緒まで恋しちゃったの!?」
そうだ、美緒は、恋をしたのだ。恋愛は、突然やってくる。好きになったら、もう止められないのだ。
「はは」と笑う涼太先輩。私も「フフフ」と笑みを零す。美緒。二人は、恋に落ちたのだ。
恋愛は、とても甘く、甘美で、素敵で、大事な何かをくれる。誰かを想う事は、こんなにも愛おしさを感じ、大切な時間をくれる。恋は、万人に与えられた人を想う心だ。
「キュルキュル―!」
私も、涼太先輩と出会った。恋する事、愛する事は、私達に大切なものをくれる。この世界の全ての人が、愛し合える、誰かと出会えます様に。
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