画廊寄武等とyouれい!

須江まさのり

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youれい!

20.やっぱり僕が悪いのか……?

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 こちらの必死の弁明に、彼女は純粋な追及を重ねてくるのだった。

「嘘ではないというのなら、どうしてその人の事を説明できないのです?」

「えーとそれは……。なんだか一ヶ月くらい前からぷっつりと来なくなって……。それなら、もう必要ない記憶だから忘れちゃってもいいと脳がそう判断したとか……」

「必要のない記憶ってなんです」

 それまで他意の無い問い掛けに、なんだか怒りのようなものが混じっているように感じた。何か失言でもあったのだろうかと、しどろもどろになってしまう。

「なんですって訊かれてもな……、もう会う事も無くなった人の記憶なんてあっても意味無いだろ……」

「それこそなんなのですか! ひどいですよそれ。わざわざ何度も届け物をしてくれるような、そんな親切な人の事をあっさりと忘れてしまうなんて、あなたは人として間違っています!」

 なんだろう、もしかしてその相手に感情移入でもしているのだろうか。そんな強引な指摘に僕は何故か完全に押されぎみになってしまっていた。

「そ、そうなのかな……」

「そうですよ!」

 そんな指摘を真摯に受け入れて、僕なりにその答えをひねり出そうとする。

「ああ、そうだよな……。いつかどこかでひょっこり出会う事もあり得るわけだし……。その時にお礼を言ったりしなければならないから、会わなくなった人間の事も覚えておく必要があるということだな……」

 そんな僕の言葉は彼女をさらにイラつかせてしまったようで、言葉の圧がさらに高まる。

「ではなくて、もしかしたらその女の人があなたに好意を抱いていた、そんな可能性だってあるわけで。なのに忘れられてしまっていたら、それは相手からすればショックでしょう? わたしだって……」

 そう言いかけた彼女だったが、唐突に黙ってしまう。

「ん……?」

 その様子を不審に思った僕の問いかけにも答えず、何かに驚いたように見開かれていた目は何も見ていないかのように虚ろだった。

「お、おい、どうしたんだ? まさか、またさっきの横断歩道の時みたく何か変な幻覚でも視ているのか?」

 そんな声にも反応を示しはしない彼女に、僕はどうする事も出来なかった。

「玲衣ちゃんどうした?」

 それが普通の人ならば、肩をゆすったり出来るのだろうが、彼女は霊体。試しに手を伸ばしてみたが案の定こちらの手は触れる事も出来ずに通過してしまうだけだ。

 先ほどの横断歩道で同じような状態になった時は、こちらの問いには反応してくれていたので口先八丁で何とか出来たのだが、今回はその声も届いてはいないようで、そうなるとこちらにはもう為すすべも無い。

「せめて前みたいに状況を解説してくれなきゃ、何の情報も無しじゃ対応のしようがないぞ……」

 そんな感じで何もできず彼女を見守るしかないまま、数分ほど経ってからようやく我に返りつつあるような、そんな気がしたのですかさず声を掛ける。

「玲衣ちゃん、だいじょうぶか?」

「え……?」

 どうやらやっとこちらの声が届く状態になってくれたようだ。どういう状況なのか即座に確認したい所だったが、それはやめておく。
 もしも何らかの幻覚を見ていたのだとしたらそれを思い出すことでまた彼女の意識がそちらの世界に入ってしまいそうな、そんな気がしたのだ。考え過ぎなのかもしれないが、そうなっては元も子もないので、敢えて何も起こっていなかったように演じ、それまでの会話の続きを促してみる。

「会話の途中で無言にならないでくれよ。えーと……『わたしだって……』の続きは何だい?」

「あ……。すいません、少しばかり考え事をしてしまっていたようで……」

「そうか、何はともあれ大丈夫そうだな」

「え、えーと……。わたし、どれくらいぼっとしていました?」

 僕のやり方が正しかったのか、それともそこまで気を回さずとも同じ結果だったのかは分からないが、とりあえず意識を取り戻してくれたようだ。

「たいした時間じゃないよ、しかしいったいどんな状況だったんだ?」

「どうやら、急に昔の記憶が蘇ってきて混乱してしまっていたようで……」

「ああ、幽霊に…じゃなくて透明人間になる前の記憶が無かったんだっけ……」

 なるほど。今まで忘却していた記憶が戻ったせいで思考停止状態になっていたらしい。本当なのかどうかは知りようは無いがそういう事にしておく。

「で、どんな記憶を思い出したんだ? 何か役に立つような記憶だといいんだが」

「え、ええと、それはその……」

 僕の質問に彼女はなんだか動揺しているようだった。

「たわいもない事で、決して重要な事というわけでもなくて、えーと……そういえばわたしも同じ年頃の男子の部屋に入るのは初めてだったなー、なんて、あはは……」

 どうやらまたどうでもいい事しか思い出してはいなかったようだ。

 普通の記憶喪失ならこうやって少しずつでも記憶が戻ってゆくのは良い兆候なのかもしれないが、彼女の身の上を考えるとそれも疑問だ。なぜなら彼女が失っている記憶の中には、自分の人生が終わった時の体験も含まれているだろうからだ。

 そんな事を考えてしまった僕は、彼女の思い出したのがしょうもない記憶だった事にがっかりするべきなのか、それとも喜ぶべきなのかも分からないままに感想を述べた。

「なんだよ、こっちの事を散々からかっておいて、君も同じようなもんだったんじゃないか」

「ううっ」

 どうやらその場を取り繕うために適当に言っただけの言葉がどうやらカウンターになってしまったようだ。

 何だか気まずい気分になりかけたが、それまでのモテない扱いされてきた事への仕返しとばかりに、なんだか問い詰めるみたいな口調で続けてしまう。

「で感想は? 初めての男子の部屋はどうだったのかなぁ~?」

「そ、そりゃあ、男子の部屋に入ってみたいとか、そんな感じの興味は持っていましたけれど……」

 そんな事を口にしてしまってから、彼女はハッと我に返ったように表情を変え、毅然と言い返してくる。

「って何の話ですか! 今の話題は、タケトさんが酷い人間だという、そんな話だったはずでしょう!?」

「ええ、何それ……」

 ついつい恥ずかしい告白をしてしまったのを誤魔化したいのだろうが、こちらとしてはなんだか腑に落ちない気がしてならないのだった。
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