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第二章 『画廊寄武等とyouじん!』
37.アリアさんの応酬
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「なっ!?」
アリアさんが剣を振りかぶると同時に、その背後に突然黒い影のような物が現われた。その黒い影が収束していって人形になってゆく。
僕は更にその後ろに居たため、何が起こっているのかは全く把握できずにいると、その人影の向こうに居るアリアさんの声が聞こえる。
「ん? 何じゃこりゃ? 唐突に儂の胸の谷間から刃のような物が突き出てきおった。まるで背後から日本刀で心臓を貫かれたかのようにも思えるが……」
「いや、こっちとしては解説してもらって助かるけど、状況把握がやたら的確すぎだろ!?」
想定外の出来事だろうに、比喩的な部分を一切排除した完全なる現状認識だ。
もっと抽象的な表現をしようよ……とは思うが、お陰で彼女がどんな状況に居るのかがまるで前面から見えているかのようにはっきりと想像できるのだった。
「え? もしかして儂、背後から刀で貫かれておる?」
ただ、やたら状況説明が的確な女神様だったが現状認識は追い付いていないらしい……。
そうしている内に姿を現した人形のそれは、全身タイツを着ているかのような漆黒の体で手足が長く、そして異形の仮面をかぶっていた。
「く……仲間がいたのか!?」
そんな驚きの声を漏らした僕だったが、よくよく思い返してみれば、アリアさんが既に語っていたことを思い出す。この火災の犯人は、死神と悪魔の二人組だということを。
体を貫かれた状態にもかかわらず、彼女はたいした動揺も見せないままで言う。
「ほほう。ようやくもう一人の片割れが出てきおってくれたようじゃの」
あらかじめ想定していたとはいえそれは異様な対応だった。しかも彼女はそんな事を言いながら、時計回りにその体を勢いよく反転させたのだ。
「何ィ!?」
その全身漆黒タイツ仮面男は動揺したような声を漏らす。そりゃそうだろう、その時アリアさんは背後から心臓を貫かれたままだったのだ。
もうそれだけで十分致命傷である。それこそ攻撃側は其の刀を引き抜くだけで全てが終わるだろうという局面だったはずが、あろうことか貫かれている側のアリアさんはまるで何事もなかったかのように、そのまま反撃を試みたのだ。
当然、その行動によって彼女の体は被害が広がってしまう。
その回転の勢いを乗せた長剣による斬撃を、仮面の男はアリアさんの体を切り裂きつつ後ろへ跳び退りながら上体を逸らせることにより、かろうじて回避してみせるのだった。
結果として、その自身の体を顧みないアリアさんの反撃は無駄に終わってしまったのだが、血まみれの彼女は余裕の笑みを浮かべる。
「ほう、攻撃ついでにその刀ごとブチ折ってやろうかと思ったのじゃがなぁ。まあ、なかなかの反射神経じゃと褒めてやろう」
なんだかもう、どこから描写していいのか分からないが、どうやら彼女は自分の胸部に突き刺さった刃をそのままへし折ろうとしたらしい。
だが、仮面の男がその動きに合わせ瞬時に刃を横向きにひねることで対応したのだろう。
そのため、彼女の体は自らの動きによって心臓から左側に向けて切り裂かれる形になったようだ。
動揺しながらも目を凝らして見ると上腕部の内側にも斬り傷があり、そこから血が滴ってはいたが、どうやら片腕が切り落とされるという事態だけは回避していたようだ。しかし、着ていた和服っぽい衣装は切り裂かれてしまい、その部分からはだけて左腕と肩が露わとなっている。
とはいえさすがは神が身に着けている服。特別な性質を持っているのか、大事な部分だけはしっかりと隠されていた。いや別にそこを特別注目していた訳ではないが……。
そんな事はとりあえず置いておいて、胸の傷から溢れた血がその着物を濡らしていた。
結果的に言えばその目論見は、相手の刀を折る事も出来ず、ただ単に自らの傷を広げただけの結果となってしまったわけだが、彼女はそんな事は露ほども気にしていないかのように平然とした態度のままで更に言葉を投げかける。
「まあ、最初から二人組であるというのは知っておったのでな。それで、わざと隙を見せていたのじゃが、まんまと姿をみせてくれたようじゃの?」
だが仮面の黒い男は反応を返す様子も見せないままに無言で刀を構え直す。その様子にアリアさんは戸惑いも見せずに言う。
「なんじゃ? もしかして儂が自分のミスを隠ぺいすることに夢中で、そんな情報をとある男から聞いていたのに忘れていたのを隠匿するのに必死になっておる、とでも思ったか? 神であるこの儂がそんなミスをするわけなど無いじゃろう?」
実はむっちゃ戸惑っているようだった……。これまでのパターンからいうと、自分の失態を隠そうとするあまり、ついつい言わないでも良いことを暴露しちゃっているパターンだろうか……。
そんな、うっかり自分のミスを打ち明けてしまっている、おバカな言動に対してもツッコミを入れる事もなく沈黙を続ける仮面の男。
その代わりとばかりに、死神が勝利を確信した余裕を浮かべながら答えた。
「くけけけ。俺っちとは違ってその旦那は無口なのが売りでな、迷惑だろう?」
「まあ、おぬしのように鬱陶しい笑いや口癖を連呼する奴もうざいが、無口すぎるというのも困ったもんじゃの」
人間ならば即死であろう切り傷をみせながら、アリアさんは苦笑いをしただけでそう返すのだった。
アリアさんが剣を振りかぶると同時に、その背後に突然黒い影のような物が現われた。その黒い影が収束していって人形になってゆく。
僕は更にその後ろに居たため、何が起こっているのかは全く把握できずにいると、その人影の向こうに居るアリアさんの声が聞こえる。
「ん? 何じゃこりゃ? 唐突に儂の胸の谷間から刃のような物が突き出てきおった。まるで背後から日本刀で心臓を貫かれたかのようにも思えるが……」
「いや、こっちとしては解説してもらって助かるけど、状況把握がやたら的確すぎだろ!?」
想定外の出来事だろうに、比喩的な部分を一切排除した完全なる現状認識だ。
もっと抽象的な表現をしようよ……とは思うが、お陰で彼女がどんな状況に居るのかがまるで前面から見えているかのようにはっきりと想像できるのだった。
「え? もしかして儂、背後から刀で貫かれておる?」
ただ、やたら状況説明が的確な女神様だったが現状認識は追い付いていないらしい……。
そうしている内に姿を現した人形のそれは、全身タイツを着ているかのような漆黒の体で手足が長く、そして異形の仮面をかぶっていた。
「く……仲間がいたのか!?」
そんな驚きの声を漏らした僕だったが、よくよく思い返してみれば、アリアさんが既に語っていたことを思い出す。この火災の犯人は、死神と悪魔の二人組だということを。
体を貫かれた状態にもかかわらず、彼女はたいした動揺も見せないままで言う。
「ほほう。ようやくもう一人の片割れが出てきおってくれたようじゃの」
あらかじめ想定していたとはいえそれは異様な対応だった。しかも彼女はそんな事を言いながら、時計回りにその体を勢いよく反転させたのだ。
「何ィ!?」
その全身漆黒タイツ仮面男は動揺したような声を漏らす。そりゃそうだろう、その時アリアさんは背後から心臓を貫かれたままだったのだ。
もうそれだけで十分致命傷である。それこそ攻撃側は其の刀を引き抜くだけで全てが終わるだろうという局面だったはずが、あろうことか貫かれている側のアリアさんはまるで何事もなかったかのように、そのまま反撃を試みたのだ。
当然、その行動によって彼女の体は被害が広がってしまう。
その回転の勢いを乗せた長剣による斬撃を、仮面の男はアリアさんの体を切り裂きつつ後ろへ跳び退りながら上体を逸らせることにより、かろうじて回避してみせるのだった。
結果として、その自身の体を顧みないアリアさんの反撃は無駄に終わってしまったのだが、血まみれの彼女は余裕の笑みを浮かべる。
「ほう、攻撃ついでにその刀ごとブチ折ってやろうかと思ったのじゃがなぁ。まあ、なかなかの反射神経じゃと褒めてやろう」
なんだかもう、どこから描写していいのか分からないが、どうやら彼女は自分の胸部に突き刺さった刃をそのままへし折ろうとしたらしい。
だが、仮面の男がその動きに合わせ瞬時に刃を横向きにひねることで対応したのだろう。
そのため、彼女の体は自らの動きによって心臓から左側に向けて切り裂かれる形になったようだ。
動揺しながらも目を凝らして見ると上腕部の内側にも斬り傷があり、そこから血が滴ってはいたが、どうやら片腕が切り落とされるという事態だけは回避していたようだ。しかし、着ていた和服っぽい衣装は切り裂かれてしまい、その部分からはだけて左腕と肩が露わとなっている。
とはいえさすがは神が身に着けている服。特別な性質を持っているのか、大事な部分だけはしっかりと隠されていた。いや別にそこを特別注目していた訳ではないが……。
そんな事はとりあえず置いておいて、胸の傷から溢れた血がその着物を濡らしていた。
結果的に言えばその目論見は、相手の刀を折る事も出来ず、ただ単に自らの傷を広げただけの結果となってしまったわけだが、彼女はそんな事は露ほども気にしていないかのように平然とした態度のままで更に言葉を投げかける。
「まあ、最初から二人組であるというのは知っておったのでな。それで、わざと隙を見せていたのじゃが、まんまと姿をみせてくれたようじゃの?」
だが仮面の黒い男は反応を返す様子も見せないままに無言で刀を構え直す。その様子にアリアさんは戸惑いも見せずに言う。
「なんじゃ? もしかして儂が自分のミスを隠ぺいすることに夢中で、そんな情報をとある男から聞いていたのに忘れていたのを隠匿するのに必死になっておる、とでも思ったか? 神であるこの儂がそんなミスをするわけなど無いじゃろう?」
実はむっちゃ戸惑っているようだった……。これまでのパターンからいうと、自分の失態を隠そうとするあまり、ついつい言わないでも良いことを暴露しちゃっているパターンだろうか……。
そんな、うっかり自分のミスを打ち明けてしまっている、おバカな言動に対してもツッコミを入れる事もなく沈黙を続ける仮面の男。
その代わりとばかりに、死神が勝利を確信した余裕を浮かべながら答えた。
「くけけけ。俺っちとは違ってその旦那は無口なのが売りでな、迷惑だろう?」
「まあ、おぬしのように鬱陶しい笑いや口癖を連呼する奴もうざいが、無口すぎるというのも困ったもんじゃの」
人間ならば即死であろう切り傷をみせながら、アリアさんは苦笑いをしただけでそう返すのだった。
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