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第三章『画廊寄武等とYouしょく!』
67.思い通りにはなってくれない夢
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「く……ずるいでしょうそれは」
追いかけっこで空を飛ぶ、という反則技を編み出した夢の中の僕(夢タケト)を見上げながら、着物少女は悔しがりつつも呟いた。
「というか……。空を飛べるのでしたらそのまま道路の向こう側へ渡れるのでは……」
彼女はそう言ってしまってから、ハッとしたように慌て気味で言葉を続けた。
「で、ではなくてええと……。そもそも対等の条件で正々堂々競うのが男というものではないでしょうか!?」
だが、そんな失言を誤魔化す態度が逆に夢タケトに気付きを与えてしまう。
「ん……? ああ、そうか! 爆走する車の列が邪魔なら飛び越えればいいんだ……その手があったとは!」
そんな彼女のうっかり発言によって、夢タケトはまたまた見失いかけていた本来の目的を思い出してしまったようだ。
「え? ええっ!?」。
「ありがとう名もなき少女よ、感謝する!」
と、まだお互いに自己紹介すらしていない相手に、一方的にそう告げると宙に浮いたまま進路を変えてしまう。
その夢の中では、三途の川を象徴しているらしい、そんな道路を渡るためにだ。
「ちょ、ちょっと待ってください名前はちゃんとあります! ではなくて、他の方法を考えましょう!」
相変わらずピントのズレた言葉を挟みながらも必死に引き留めようとする着物少女だったが、それこそ手の届かない場所に居る夢タケトには通じない。
「ははは。この世界にはもう俺が進むのを邪魔する物は無いってわけだ。君のおかげでそれに気付けたよ、ありがとう感謝する」
文字通り空を飛んでいる彼はは、引き留めようと叫んだ彼女に形ばかりの感謝を示してから、車の列によって横断を阻まれていた道路の上から渡ろうとする。
しかし、
「え!?」
それまで何もなかったはずの上空に空を飛ぶ車が忽然と現われて愕然とする。
――いや何その、いかにもタイムスリップしてきましたよみたいな空飛ぶ車……。
そんな突然の展開に嫌な予感しかしない僕だったが、案の定次の瞬間には、
どーん!!
という感じで……空中に居た夢タケトを撥ねた。
「ぐぎゃああっ!!!」
そんな絶叫と共に、その体は地上へと突き落とされてしまう。
その銀色の空飛ぶ車は僕を跳ね落とした後、救命活動をしようという様子もみせないまま、くるりと旋回をしてスピードを上げると、炎でできた二本のタイヤ痕のようなものを空中に残して消え去ってゆくのだった。
「きゃあああ! だ、大丈夫ですか!?」
「う……うごぉ……」
時間を超越したようなひき逃げに合って一瞬気を失っていたらしき僕は、そんな声で意識を取り戻した。
空飛ぶ車にはねられた後ついでに車道に落下してしまい体中血まみれで、もうワイシャツが赤いのがそれとも血の色なんだか分からない、そんな状態だった。
「く……。だ、大丈夫。今の俺は……不老不死……だから……な」
夢タケトはそんな強がりを口にしていたが、その惨状を目にしている彼女は狼狽していている様子で駆け寄ってくる。
「か、かなりの出血ですが本当に大丈夫なのですか? とにかく体を見せてください、わたしはこう見えても急処置とか医療関係の知識がありますので!」
「大丈夫。こんなのすぐに治るさ。てかもう直った」
夢タケトはそう言いながら立ち上がると、彼女が辿り着く前に再び走り始めていた。
「ちょ、ちょっと! そんな衝撃を受けた後に走るだなんて危ないですよ!」
そんなこちらの様子を心底心配している彼女だったが、夢の中の僕は被害妄想に囚われているかのように逃げながら答える。
「介抱しようと見せかけて捕まえようって腹だろう、そんな手は食うか! 俺は絶対に捕まらないからな!」
「な、何を言い出すのですか!? 誤解です。わたしは本心からあなたを心配して……」
「へへーん。騙されるもんか!」
いい感じでこちらの有利な状況をちらつかせて希望を見い出せたと思った所で、それを裏切られるような展開が続く。そんな世界に対して夢タケトはかなりの不信感を抱いていたようだ。
「それでも俺は諦めはしないからな」
何だかもう強がりの虚勢でしか無いような気もするが、何はともあれ追いかけっこが再開される。
ただ、結果的には瞬時に完全回復したとはいえ、空飛ぶ車に轢かれたのはトラウマになっていたのだろうか。
夢タケトは、再び空を飛ぶことはせずに普通に地上を走っているあたりが、その心の不安定さを現わしているかのようだった。
追いかけっこで空を飛ぶ、という反則技を編み出した夢の中の僕(夢タケト)を見上げながら、着物少女は悔しがりつつも呟いた。
「というか……。空を飛べるのでしたらそのまま道路の向こう側へ渡れるのでは……」
彼女はそう言ってしまってから、ハッとしたように慌て気味で言葉を続けた。
「で、ではなくてええと……。そもそも対等の条件で正々堂々競うのが男というものではないでしょうか!?」
だが、そんな失言を誤魔化す態度が逆に夢タケトに気付きを与えてしまう。
「ん……? ああ、そうか! 爆走する車の列が邪魔なら飛び越えればいいんだ……その手があったとは!」
そんな彼女のうっかり発言によって、夢タケトはまたまた見失いかけていた本来の目的を思い出してしまったようだ。
「え? ええっ!?」。
「ありがとう名もなき少女よ、感謝する!」
と、まだお互いに自己紹介すらしていない相手に、一方的にそう告げると宙に浮いたまま進路を変えてしまう。
その夢の中では、三途の川を象徴しているらしい、そんな道路を渡るためにだ。
「ちょ、ちょっと待ってください名前はちゃんとあります! ではなくて、他の方法を考えましょう!」
相変わらずピントのズレた言葉を挟みながらも必死に引き留めようとする着物少女だったが、それこそ手の届かない場所に居る夢タケトには通じない。
「ははは。この世界にはもう俺が進むのを邪魔する物は無いってわけだ。君のおかげでそれに気付けたよ、ありがとう感謝する」
文字通り空を飛んでいる彼はは、引き留めようと叫んだ彼女に形ばかりの感謝を示してから、車の列によって横断を阻まれていた道路の上から渡ろうとする。
しかし、
「え!?」
それまで何もなかったはずの上空に空を飛ぶ車が忽然と現われて愕然とする。
――いや何その、いかにもタイムスリップしてきましたよみたいな空飛ぶ車……。
そんな突然の展開に嫌な予感しかしない僕だったが、案の定次の瞬間には、
どーん!!
という感じで……空中に居た夢タケトを撥ねた。
「ぐぎゃああっ!!!」
そんな絶叫と共に、その体は地上へと突き落とされてしまう。
その銀色の空飛ぶ車は僕を跳ね落とした後、救命活動をしようという様子もみせないまま、くるりと旋回をしてスピードを上げると、炎でできた二本のタイヤ痕のようなものを空中に残して消え去ってゆくのだった。
「きゃあああ! だ、大丈夫ですか!?」
「う……うごぉ……」
時間を超越したようなひき逃げに合って一瞬気を失っていたらしき僕は、そんな声で意識を取り戻した。
空飛ぶ車にはねられた後ついでに車道に落下してしまい体中血まみれで、もうワイシャツが赤いのがそれとも血の色なんだか分からない、そんな状態だった。
「く……。だ、大丈夫。今の俺は……不老不死……だから……な」
夢タケトはそんな強がりを口にしていたが、その惨状を目にしている彼女は狼狽していている様子で駆け寄ってくる。
「か、かなりの出血ですが本当に大丈夫なのですか? とにかく体を見せてください、わたしはこう見えても急処置とか医療関係の知識がありますので!」
「大丈夫。こんなのすぐに治るさ。てかもう直った」
夢タケトはそう言いながら立ち上がると、彼女が辿り着く前に再び走り始めていた。
「ちょ、ちょっと! そんな衝撃を受けた後に走るだなんて危ないですよ!」
そんなこちらの様子を心底心配している彼女だったが、夢の中の僕は被害妄想に囚われているかのように逃げながら答える。
「介抱しようと見せかけて捕まえようって腹だろう、そんな手は食うか! 俺は絶対に捕まらないからな!」
「な、何を言い出すのですか!? 誤解です。わたしは本心からあなたを心配して……」
「へへーん。騙されるもんか!」
いい感じでこちらの有利な状況をちらつかせて希望を見い出せたと思った所で、それを裏切られるような展開が続く。そんな世界に対して夢タケトはかなりの不信感を抱いていたようだ。
「それでも俺は諦めはしないからな」
何だかもう強がりの虚勢でしか無いような気もするが、何はともあれ追いかけっこが再開される。
ただ、結果的には瞬時に完全回復したとはいえ、空飛ぶ車に轢かれたのはトラウマになっていたのだろうか。
夢タケトは、再び空を飛ぶことはせずに普通に地上を走っているあたりが、その心の不安定さを現わしているかのようだった。
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