画廊寄武等とyouれい!

須江まさのり

文字の大きさ
70 / 103
第三章『画廊寄武等とYouしょく!』

67.思い通りにはなってくれない夢

しおりを挟む
「く……ずるいでしょうそれは」

 追いかけっこで空を飛ぶ、という反則技を編み出した夢の中の僕(夢タケト)を見上げながら、着物少女は悔しがりつつも呟いた。

「というか……。空を飛べるのでしたらそのまま道路の向こう側へ渡れるのでは……」

 彼女はそう言ってしまってから、ハッとしたように慌て気味で言葉を続けた。

「で、ではなくてええと……。そもそも対等の条件で正々堂々競うのが男というものではないでしょうか!?」

 だが、そんな失言を誤魔化す態度が逆に夢タケトに気付きを与えてしまう。

「ん……? ああ、そうか! 爆走する車の列が邪魔なら飛び越えればいいんだ……その手があったとは!」

 そんな彼女のうっかり発言によって、夢タケトはまたまた見失いかけていた本来の目的を思い出してしまったようだ。

「え? ええっ!?」。

「ありがとう名もなき少女よ、感謝する!」

 と、まだお互いに自己紹介すらしていない相手に、一方的にそう告げると宙に浮いたまま進路を変えてしまう。

 その夢の中では、三途の川を象徴しているらしい、そんな道路を渡るためにだ。

「ちょ、ちょっと待ってください名前はちゃんとあります! ではなくて、他の方法を考えましょう!」

 相変わらずピントのズレた言葉を挟みながらも必死に引き留めようとする着物少女だったが、それこそ手の届かない場所に居る夢タケトには通じない。

「ははは。この世界にはもう俺が進むのを邪魔する物は無いってわけだ。君のおかげでそれに気付けたよ、ありがとう感謝する」

 文字通り空を飛んでいる彼はは、引き留めようと叫んだ彼女に形ばかりの感謝を示してから、車の列によって横断を阻まれていた道路の上から渡ろうとする。

 しかし、

「え!?」

 それまで何もなかったはずの上空に空を飛ぶ車が忽然と現われて愕然とする。

――いや何その、いかにもタイムスリップしてきましたよみたいな空飛ぶ車……。

 そんな突然の展開に嫌な予感しかしない僕だったが、案の定次の瞬間には、

 どーん!!

 という感じで……空中に居た夢タケトを撥ねた。

「ぐぎゃああっ!!!」

 そんな絶叫と共に、その体は地上へと突き落とされてしまう。

 その銀色の空飛ぶ車は僕を跳ね落とした後、救命活動をしようという様子もみせないまま、くるりと旋回をしてスピードを上げると、炎でできた二本のタイヤ痕のようなものを空中に残して消え去ってゆくのだった。

「きゃあああ! だ、大丈夫ですか!?」

「う……うごぉ……」

 時間を超越したようなひき逃げに合って一瞬気を失っていたらしき僕は、そんな声で意識を取り戻した。

 空飛ぶ車にはねられた後ついでに車道に落下してしまい体中血まみれで、もうワイシャツが赤いのがそれとも血の色なんだか分からない、そんな状態だった。

「く……。だ、大丈夫。今の俺は……不老不死……だから……な」

 夢タケトはそんな強がりを口にしていたが、その惨状を目にしている彼女は狼狽していている様子で駆け寄ってくる。

「か、かなりの出血ですが本当に大丈夫なのですか? とにかく体を見せてください、わたしはこう見えても急処置とか医療関係の知識がありますので!」

「大丈夫。こんなのすぐに治るさ。てかもう直った」

 夢タケトはそう言いながら立ち上がると、彼女が辿り着く前に再び走り始めていた。

「ちょ、ちょっと! そんな衝撃を受けた後に走るだなんて危ないですよ!」

 そんなこちらの様子を心底心配している彼女だったが、夢の中の僕は被害妄想に囚われているかのように逃げながら答える。

「介抱しようと見せかけて捕まえようって腹だろう、そんな手は食うか! 俺は絶対に捕まらないからな!」

「な、何を言い出すのですか!? 誤解です。わたしは本心からあなたを心配して……」

「へへーん。騙されるもんか!」

 いい感じでこちらの有利な状況をちらつかせて希望を見い出せたと思った所で、それを裏切られるような展開が続く。そんな世界に対して夢タケトはかなりの不信感を抱いていたようだ。

「それでも俺は諦めはしないからな」

 何だかもう強がりの虚勢でしか無いような気もするが、何はともあれ追いかけっこが再開される。

 ただ、結果的には瞬時に完全回復したとはいえ、空飛ぶ車に轢かれたのはトラウマになっていたのだろうか。

 夢タケトは、再び空を飛ぶことはせずに普通に地上を走っているあたりが、その心の不安定さを現わしているかのようだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...