ある日の出来事-THE NANAKO'S STORY-

まっく

文字の大きさ
11 / 24
11章

悪い予感

しおりを挟む
「こら!あんまりキョロキョロするんじゃない!」

そんな事言われたって、こんなもん見せられたら……


あまりにもデカい。
デカ過ぎる……


こんな光景、歴史の教科書でしか見た事ねーぞ。

大理石で作られた壁と床。
所々に立っている、装飾が散りばめられた大きな柱。

天井の高さなんて、6mぐらいあるんじゃねえか。

その中を、晩餐会に出るような格好で歩いている人たち。


そりゃ、思わず見ちゃうでしょ。


「もっと、陰に隠れて……」

爺さんに首元をひっぱられる。

「観光に来てんじゃないんじゃぞ!わかっとるのか!」

「わかってるよ…でも、こんなの見るの初めてだからさ……」

「ここで見つかってしまったら、全てが終わってしまうんじゃぞ!もっと気を引き締めないと…」

「わかってるって……」

そう言いながらも、ついつい見ちゃうんだよな。

「さあ、今がチャンスじゃ!行くぞ!」

人がいなくなったのを見て、一気に飛び出す。



どれぐらい移動したんだろう。

だんだん人の姿がなくなり、薄暗い通路の所まで来た。



「あと、どのぐらいなんだよ?」

「この通路の先を右に曲がると、牢獄のある建物の入り口じゃ。」

って事は、あと100mぐらいで牢獄に着くんだな。

「あのさ、さっきから気になってる事があるんだけどさ……」

ずっと不思議に思っていた事を聞いてみることに…

「ん?なんじゃ?」

「なんでさ、人が少ねーんだよ?」

「それは、牢獄に来る人なんて限られてるからのう……」

違うんだよ。
そうじゃなくて……

「俺が言ってるのはそういう事じゃなくて…城に入った時からの話しだよ。」

「城に入ってから……?」

そうだよ。
ずっと気になってたんだよ。

「何で、ブラックスーツの姿が1人もいねーんだよ?」

あれだけ城の外には、たくさんいたのに、城の中には1人もいない。

「う~ん…確かに、まったく見なかったのう…」

「それって変じゃねーか?」

「変?変と言えば変じゃのう…」

何か嫌な予感がする……

「たぶん、みんな、城の外の警備に行ってしまったからじゃないのかな。」

そうなのか?

いやいや、どう考えたって変だろ?

「あのさ、考え過ぎかも知れねーけど、ほら、映画とかでよくあるじゃんよ。」

「映画じゃと……?」

「実は仕組まれたワナで、誰もいないと思って通路を走っていると、上から網が落ちて来て…」

「ワナじゃと!?」

慌てて上を見上げる爺さん。
思わず、俺もつられて上を見上げる。



ただの天井だ。



「驚かすんじゃないぞ!本当かと思ったじゃないか…」

言った俺も、ビックリしちまったじゃねーかよ!

「じ、爺さんこそ、慌てて上を見るんじゃねーよ。」

「でも、たしかにおかしいな。これは注意をした方が良いかも知れん。」

「やっぱり、変なのかよ?」

「そう思いたくはないんじゃが……」

「変だと思うんなら、どうにかしろよ!ホントにワナだったら、どうすんだよ!」

「ここまで来ておいて、どうしろと言うんじゃ?牢獄は、もうすぐじゃぞ。」

どうしろと言われても……

「たとえワナだとしてもじゃ、もう後戻りは出来んぞ。」

こんな時は、頼むから否定してくれよ。

「確かにな…もう前に進むしかねえよな。」

「じゃろ?……こんな時は、気楽に行くもんじゃよ。どうぞ捕まえて下さ~い…ってな気持ちでな。」

だから、こんな時は否定をしてくれって言ってんだよ!

なんで、捕まる方ばっかり考えんだよ!

「さあ、あとちょっとじゃ! 気を引き締めて行くぞ!」

もう、どうにでもなっちまえ。

爺さんと一緒に走って行く。



「……どなたかぁ~…… たすけ……」



牢獄が近づくにつれ、誰かの声が聞こえてきた。



「ここから出せよぉ~!出してくださぁぁぁい!」



この声は……


間違いなく大野の声だ!



「どこだよ!どこにいるんだよ!」

必死で声のする方に走る。

「爺さん、どっちだよ!早く道を教えろよ!」

「突然どうしたんじゃ?ちょっと落ち着いて…」

「落ち着けったって、大野が待ってんだよ!早く教えろって…」



「だれかぁ~助けてくださぁぁぁい!」



「ほら、早く教えろって!」

「たぶんこっちじゃ!」

だんだん声が大きくなってくる。



「誰かぁぁ!助けてくださぁぁい!」



間違いなくこの中だ!


「爺さん、早く開けろよ!」

「ちょっと、そんなにせかすな……」



バンッ!



お…大野!!!



鎖でつながれ、壁に貼り付けられている大野。


てめぇ~!
なんて事しやがんだ!


「早く!早く助けて!」

こっちに向かって必死に叫ぶ大野。

待ってろ!
すぐ助けてやるから……

牢獄の中に入り、大野の元に走って行く。



ガンッ!



ん?

なんだ……???



なんだよ!
これは!!!



大野との間に透明な壁が……



ガンッ!ガンッ!



いくら叩いても、割れりゃしねえ。


どうなってんだよ……



「じ、爺さん……!!」

振り返ると、数名のブラックスーツに銃口を向けられた爺さんの姿が……


「残念じゃが悪い予感は当たってしまったのう……」

や、やっぱり、ワナだったのか……

ちっ…ちっくしょー!



すぐに俺も、ブラックスーツたちに囲まれてしまった。



牢獄の中でブラックスーツたちに銃を突きつけられ動けない二人。



「はっはっはっは…… 久しぶりですな。ダイリック博士…」

高らかな笑い声と共に、1人の男が現れた。


「くっ…… バシコ……」

小さな声で爺さんが呟く。

こ…こいつがバシコって奴なのか…?



「おやおや、あまりご機嫌がよろしくないようですな…私はこんなに再会を喜んでいるのに……」


間違いなくこいつだ!
こいつがバシコなんだ…!



「バシコ!お前の悪だくみはもうすでに知っておるんじゃぞ!」

「悪だくみ…?なんのことですかな?ラムカナ王を裏切って逃げたのは、あなた…博士の方じゃないですか…?」

「ち…違う……わしは逃げたんじゃ……」

「何をいまさら…逃げたから、今、こうやってここにいるのでしょう…?」


終始ニタニタしながら話すバシコ。

なんだよこいつ……


「ところでそちらの女の子は…?」

「この子は関係ない!」

「ほほぉ~う…  関係ない?じゃあ、なぜ一緒にこの牢獄にやって来たのですかな…?」

「か…関係ない……関係ないんじゃ…!」


爺さん、あんがとな。
その気持ちだけ、ありがたく貰っておくよ。


でもな大野も捕まっちゃってるんだよ。
もう、ごまかしようがない……



コホンッ…

「私はお城の近くでナンパされて…」

「ナ…ナンパ…???」


こら!  爺さん!
そんな顔でこっちを見るんじゃねー。
バレちまうだろうが……



「いやね…断っても断っても、このお爺ちゃん、しつこくて……」


だからそんな顔でこっちを見るなって……



「ハッハッハッハッ……なかなか面白い!実にユニークな女の子だ。」


あれ?ひょっとして、バレちゃってる…?


「………たくっ…嘘をつくなら、もう少し考えて……」

呆れ返る爺さん。

やっぱりバレちゃってるのね……



「まあいい…女の子の正体はこれからゆっくりと調べていくってことで…ところでダイリック博士、ここに戻られたってことは、今度こそマシンを完成して貰えるんでしょうな?」

「……………」

「フフフ…お返事なしですか…まあいい…そのうち嫌でもマシンをまた作りたくなりますから……」


絶体絶命。
どうしたらいいんだよ……



「おいっ!こいつらを牢獄にぶち込んでおけ!今度は絶対に逃げられないようにな!」



俺と爺さんの両脇をしっかり掴み連れて行こうとするブラックスーツたち。



「ちょ…ちょっと待って!大野くん…大野くんを解放して!」

思わず声が大きくなる。


「ほほぉ~う…このギャーギャーうるさい男の子は、そんな名前なのか…よかろう、その男の子も一緒に連れて行け!」



カチッ

ウィーン……



ブラックスーツが壁のボタンを押すと、俺たちと大野の間にあった透明な壁が上がった。



「なーなーこさぁぁん!なんで来ちゃたんですかー!」

叫ぶ大野。

な…なんだよ!
お前、助けてくれって叫んでたじゃねえかよ。


「大野くん…何言ってるの?あなたが大声で呼ぶから……」

「ぼく、呼んでなんかないですよぉぉ!外にななこさんの声が聞こえたから、来ちゃダメだ…罠だって、ずっと叫んでいたんですからぁ……」

「何だって……?」


「お前たちが言ってるのは、このことかな…?」


バシコが何かのスイッチを入れると、あの声が聞こえてきた。



「助けてくださぁぁい!ぼくはここにいますぅぅ……」

「あれ…?ぼくの声……?」


「これはその男の子の声から作った合成音声…つまりお前たちを捕まえるためのエサだよ。」


なんだよそれ…
完全に打ちのめされちまった。



「よしっ!3人を連れて行けー!」



こうして俺と大野と爺さんは、とらわれの身になっちまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

処理中です...