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21章
奪還
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城の正門前に到着。
「いいですか、ここからは、何も言わないように…」
「えっ…?」
「奈々子さんは僕に捕まえられてんですよ。ここからは、僕が上手くやりますから、任せて下さい。」
任せて下さい…?
あのトミーが、任せて下さいなんて…
ちょっとビックリ。
「さっ…行きますよ…」
ちょっ… まだ心の準備が…
城に来ると、前回のワナのことを思い出しちまって、ちょっとビビってしまう…
「MSN02… 先ほど連絡した逃亡中の女性1名、連行しました!」
「話は聞いてる。よし。入れ。」
トミーに連行される俺。
人とすれ違うたびに、ドキドキしちまう。
本当に捕まえられた気分。
トミーが連絡してるって言ったから、すぐに大勢のブラックスーツに囲まれると思ってたのに、全くいないしさ…
やっぱり俺が、心配しすぎてたのか…
どんどん歩いていくトミー。
「あのさ…トミー…」
「しっ!黙って!」
「どこに向かってんだよ…たしか牢獄はこっちじゃ…」
「しっ!黙って!」
「おいったら…」
「大丈夫ですから…!」
大丈夫って…
「どこに向かってんだよ?」
「……………」
「おいっ!トミー!」
「いいから、黙って!気付かれちゃいますよ!」
なんだ…
この変な雰囲気……
どこに行ってんだよ………
やっとトミーが立ち止まった。
「着きましたよ。」
着いたって、ここは…
「さあ…この中に入って…」
「ちょ、この部屋って…」
「いいから、入って!!!」
ちょ…背中を押すな!
ドンッ!
ズサッ!
「トミー!てめぇー!」
強く押すから、こけちまったじゃねえかよ!
痛ててて………
両手を縛られてるから、まともに顔からいっちまった。
「えっ………!?」
なんだこりゃ!!!
なんで、博士と大野がここに…!???
げっ! ブラックスーツ!!!
銃口を突き付けられて、俺と同じように、縛られている………
「トミー!こ、これは…!?」
パチ…パチ…パチ…パチ…
「はいはい…やっと全員が揃いましたね…」
この声は…
バシコォーーーーー!!!
部屋の奥からバシコが現れた。
なんだよ…これ…
何が起きてんだ…!?
「トミー!!!」
そそくさと、バシコの横に行くトミー。
お、お前…………
「フッフッフッ…ごくろうさま。」
「ど、どう言うことだよ!爺さん、どうなってんだよ!!!」
「……………」
「何か言えよ!博士!おい!」
「そんなに大きな声を出さなくても…まあ、この部屋じゃ、どんだけ騒いでも無駄じゃけどな。フッフッフッ…」
この部屋…???
周りを見渡す。
カメラなどの放送機器。
ここって…放送スタジオ………
「とにかくここは、大人しく従うんじゃ…」
「従うったって…」
「ななこさん…逆らっちゃダメです…」
大野まで……
「こっちに座れ!」
ブラックスーツに腕を捕まれ、博士と大野の間に座らされる。
「どうやらまだ、今の状況がわかってないようですな。ほら、トミーよ。説明してあげなさい。」
前に出てくるトミー。
ゆっくりと話し始めた。
「遅すぎたんですよ…」
遅い…?
「あれからどれだけ待っても、あなたは現れない…そりゃ、もう戻って来ないと思うでしょ?」
「トミー…お前………」
俺を待ってたんじゃねーのか!
「博士と大野くんは捕まってしまうし、僕1人じゃ、何も出来る訳ないし…」
な、何言ってんだ…トミー…!?
「1ヶ月ですよ…1ヶ月!!!どれだけ悩んだことか…」
「……………」
「そもそも僕はこっち、7次元の人間なんですよ。これからも、7次元で生活していかないといけない…」
「そ、それは………」
「バシコ様は、優しいお方です…」
なにぃ…!バシコ様だと…!?
「勇気を出して全てを告白したのに、こんな私でも、優しくしてくれた…」
お…おいっ………!
「僕はバシコ様と一緒に、これから7次元のために生きて行くんです!」
「お前、騙したんだな………」
「騙したなんて…最初から僕が間違っていたんです…今の僕が本当の姿なんです。」
「……………」
頭をよぎる、次元のねじれ。
変わったのか…?
ひょっとして、大野と2人じゃなくて、俺1人で7次元に戻ってきたから、前のトミーから変わっちゃったのか…!?
「トミー…?おい…トミー………」
「フッフッフッ…トミーは実に優秀だ。この計画も、全てトミーが考えたんじゃからな。」
「おい、トミーったら!」
ダメだ…
全くこっちを見てくれない。
「この場所を提案してきたのもトミー。この部屋で何が起きても、全く外にはわからない。防音の密室とは、よく思い付いたもんだ…」
一体、何をする気なんだ…!?
「さあ、そろそろ、博士に最後の質問をしましょうかな…?」
「くっ………」
歯を食いしばる博士。
「さあ、博士!今度こそ、マシンを作って貰えますかな?」
「嫌じゃ…断る…」
「何ですとぉー?よく聞こえませんなぁー!!!」
バシコの声が大きくなる。
「何度言われても断る!誰がお前なんかのために…」
「ほほぉ~う…まだ断る…と…」
「当たり前じゃ!何度言われても、答えは同じじゃ!」
「ほ~う…じゃあこれでも断れますかな…?」
「うぐぅ………」
ラ、ラムカナ王…!!!
縛られたラムカナ王が連れて来られた。
「なんてことするんじゃ!」
「博士…あなたの答え次第ですぞ。」
「ひ、卑怯な………」
「さあクイズです!これからラムカナ王は、3次元のお前たちに殺される…」
「なんじゃと!そんなこと、する訳ないじゃろーが!」
「する訳がない…?フッフッフッ…誰がそれを証明する…?」
………???
「この部屋で起きることは、全て、このバシコの手の中にあるんですぞ!」
くそっ………
「大変だぁ。我々のラムカナ王が、3次元から来た者たちに殺されたぁ~。フッフッフッ…さあ、王国はどうなりますかな…?」
「ぐっ……………」
「さあ、博士!どうするんです?先に博士を殺しても良いんですぞ!」
「わしを殺すと、マシンが手に入らなくなるぞ!」
「ほほぉ~…私を脅してきますか?まだ今の状況が、わかってないようだ。おい!やれ!」
ラムカナ王に、銃口が向けられる。
「待てっ!待つんじゃ!!!」
「博士はとても優秀な学者だから、3次元を手に入れたあとも、大切に優遇しますよ。」
「爺さん!騙されんじゃねえ!こいつはマシンを手に入れたら、必ず爺さんも…!」
「わかっとる!じゃが…じゃが、どうすりゃいいんじゃ!!!」
ホントにどうすりゃいいんだよ!!!
「待て!バシコ!」
「ん…?」
「私はもう、覚悟を決めておる!」
王様………
「バシコよ。最後にお前に言いたいことがある…」
「ほほぉ~う…王様じきじきに、私にお言葉を…」
「そうじゃ。バシコ、よく聞いておけ!」
ゆっくりと立ち上がり、バシコの前に立つ。
「お前は私に、この博士の訪問がきっかけとなり、やがて3次元の人間が攻めて来ると言ったな。だから私は王国民を守るために、まずは、3次元の人間と話し合いをしないといけないと考えた。」
「確かに、そう説明しましたな…」
「そのために、マシンを手に入れるように、バシコ、お前に頼んだ。」
「そうですな。」
「じゃがどうじゃ?博士やこの少年や女の子…この3次元の者たちが、本当に攻めてくると思うか?」
「そんなのはわかりませんなぁ。ただ私は可能性があると説明しただけで…」
「まだ言い訳をするのか!」
「言い訳なんて、とんでもない。私も王様と同じように、王国民のことを思って…」
「じゃあ、なぜ、私が今、ここにいるんじゃ?なぜ私に銃口を向けておる?私がいなくなったあと、お前が王の地位を手に入れ…」
「そこはちょっと違うんですなぁ…。ラムカナ王に銃口を向けていたのは、この3次元の者たち。ラムカナ王を殺害したので、私が、この者たちを葬る。そして私は…この王国の英雄となる!」
………!!!
「最初から、それが目的だったんじゃろーが!!!」
「フッフッフッ………ハッハッハッハッ………」
バシコの高笑いが部屋中に響く。
「あなたは優し過ぎる…優し過ぎて、ヘドが出てくる…」
「なんじゃと…!!!」
「なぜ3次元を手に入れたいと思わない?王国を強くしようと思わない?王国の未来を考えるなら、これはチャンスなんですぞ!」
「そんなことをしてどうなる!王国民は、そんなことを決して望まない。」
「くぅ~………甘い、甘い…甘過ぎて、めまいがしてくる…いつまで平和ごっこを続けるんだか…」
「バシコ!目を覚ませ!」
「目を覚ませ…?覚めていないのは、あなたの方だろーが!!!」
「バシコ… 今から言う、私の言葉をよく聞け!」
ラムカナ王の目が変わった!
突き刺すように睨み付ける。
「我が愛するラムカナ王国の王国民よ!」
王国民…?
な、何を言ってんだ…?
ん…?
王様、どこ見てんだ…?
バシコの後ろを見てるような…
あっ! トミー!
いつの間に…
あいつ、あんなところで何してんだ…!?
「私は王国民に対し、大きな過ちをおかしてしまった。取り返しがつかないほどの、大きな過ちじゃ。決して許して貰えるとは思ってない。じゃが、今、まさに、王国民の未来が失われようとしておる。」
「ラムカナ王、何を言って…」
「黙れ!バシコ!今、まさに、このバシコのせいで、王国民が危険にさらされようとしておる。私は、絶対に許さない。王国民は家族だ!私の命だ!」
トミー…
何してんだ…?
カメラを覗き込んで………
「たとえ、この命をかけても、必ず王国民を守る!」
ラムカナ王の声が、さらに大きくなる。
「ラムカナ王国の全王国民に告ぐ!もし、私を許してくれるのなら、今こそ、団結のとき…」
「おい!何を言ってる…!???」
「この城へ、集え!我が王国民よ!!!」
「ハッハッハッハッ…ラムカナ王…とうとう、気がふれてしまいましたかな…?いくらそんなことを叫んでも、この部屋の中では…」
「果たしてそうかな…?この部屋のことをわかってないのは、バシコ!お前の方じゃ!!!」
「な、なんだと…!!!」
キョロキョロと、周りを見始めるバシコ。
後ろを向くと、トミーがバシコへピースサイン。
カメラ!!!
「ト、トミー…そんなところで、何をしておる…?」
「はいっ!バシコさん!放送中ですよ!もっと笑って…」
「トミー!お前ー!!!」
バンッ!
凄い勢いで、ブラックスーツが入って来た。
「バシコ様! 先ほどから、もの凄い数の王国民が、城に押し寄せて…」
「なんじゃと!くそっ!やりおったな!封鎖じゃ!早く城を封鎖するのだ!」
「はっ!バシコ様!」
「さあバシコ…どうするんじゃ…?」
一気に形勢逆転!
「くっ!こうなったら…」
「うっ…!」
ラムカナ王を羽交い締めにし、銃を突き付けるバシコ。
「ラムカナ王!!!」
「近寄るな!撃つぞ!」
「待て!待つんじゃ!バシコ!考え直せ!」
「うるさい!!!」
どうすりゃ………
あっ!トミー!
あいつは銃を持ってる!
トミーに、目で合図。
ほら、トミー、こっちだ!
こっちを見ろ!
さあ、その銃で………
何度も首を横に振るトミー。
いや、お前しかいないんだって!
行けっ!トミー!!!
ん? 口をパクパクして、何か言ってる…
ム・リ・ム・リ
ゼッ・タ・イ・ダ・メ
デ・キ・マ・セ・ン
ダメだ…
いつものトミーに戻ってる………
「バシコ!もう逃げ道はないぞ!」
「うるさい!黙れ!」
どうすんだよ!
どうやって止めりゃーいいんだよー!!!
「あのぉ~う…バシコさま………」
お、大野…?
「あのですねぇ…実はぼくぅ、マシンの場所を知ってるんですよぉ…」
こ、こいつ…
何を言い出すんだ………
「だから、ぼくだけでも、助けて貰えませんかねぇ…?」
お、大野!
お前って奴は…!!!
「何ぃ~?マシンは破壊されたんじゃ…」
「とんでもなーい!ちゃんとありますよぉ!だって、ぼくがここに来てるし…」
「大野くん、何言ってんのよ!」
「あれぇ~?ななこさんも、一緒に来たじゃないですかぁ~…」
こ、こいつ…
「確かにお前たちは、博士のあとにやって来た…」
「でしょ?だからマシンは、まだあるんですよぉ。」
「おいっ!!!」
「大野!!!」
俺と博士の声が大きくなる。
「おい!2人を黙らせろ!」
銃口が俺と博士に向けられる。
ちっ………
「で、どこだ?どこにあるんじゃ?」
「だから、ぼくだけでも助けて…」
「マシンが本当にあるのか、確認するのが先だ!確認出来たら助けてやる。」
「ほ…ほんとですかぁ~!やったぁー!」
「大野!騙されんじゃねー!」
「バシコを信じるんじゃない!」
「さあ言え!マシンはどこだ?」
「んっと…じゃあ教えるから、この手を自由にしてくださいよぉぉ!」
「教えるのが先だ!」
「バシコさま、早くしないと、王国の人たちが来て、ほんとに、逃げられなくなっちゃいますよぉぉ。」
「ちっ…しょうがない。おい!こいつのヒモを外してやれ!」
パシッ
大野のヒモが切られる。
「さあ、どこだ?どこにあるんだ?」
「それは、この紙に…」
ポケットから、紙を取り出した。
「おい!なんだそれは?」
「この紙に、マシンの場所が…」
「おい!受け取れ!」
「はっ!」
「おい!何が書いてある?」
「今、開いて…ん?何かアルファベットが書いてあります!」
「何だそれは…おい!こっちに持って来い!」
「はっ!こちらでございます。」
「えーけーえーびーゆー…なんだこれは!」
「ちゃんと見てくださいよぉぉ。」
「これのどこに、マシンの場所が書いてあるんだ!」
こっちに紙を見せてきた。
AKAB-UKIN-NIK-IO
えーけーえーびー………
なんだこりゃ…?
「何なんだ、この紙は!」
「いやいや、誤解ですよぉぉ…ちゃんとローマ字を読んでくださいよぉぉ!」
「ローマ字…? ん? ア…カ…ブ… アカブキン… ニキオ…… なんだこりゃ???」
「あっ!左じゃなくて、右から読むんだったような…」
「右から…? オイキン… ニック…」
「ちゃんと横棒の位置を見て…」
「オイ-キン-ニ…」
「えっ?何て言いました? もっと大きな声で…!」
「ヤ…ヤバい…」
えっ?爺さん?
「早く部屋の隅に行って、なるべく小さくなって…!」
えっ? えっ? えっ?
「さあ、バシコさま!もっと大きな声で!!!」
「オイ-キン-ニク-バカ」
「う…う…う………」
爺さん!
小さくなるったって、どこで…?
「う~………う~………ちがうもん………バカじゃないもん………」
トミーの様子が…
あいつ………
泣いてんのか…???
「いっしょうけんめい………やったんだもん………」
………???
「ぐ………ぐ………ぐぐぐぐ………」
下を向いて、体が小刻みに震えだした。
「ガガがガガがガガが……………」
「なんじゃ!こいつは!」
だんだん体全体が大きく震え出す。
なんだこりゃ!!!
「うっ…!」
えっ?止まった…???
バタンッ!
その場に倒れちまった………
おい!トミー!
どうなっちまったんだ…?
「なんだこいつ…おい!確認しろ!」
トミーにブラックスーツが近付く。
「はっ!気を失っているようです!」
トミー!!!
「フッフッフ…何が起きるかと思えば…おい、小僧!お前は何がしたかったんだ…?」
「……………」
「私を騙すなんぞ…絶対に許さん!」
大野に銃口を向けるバシコ。
「ラムカナ王より、お前の始末が先だ!!!」
「ガルルルルルーーー!!!」
部屋中に響く大きな声。
「ひぃぃぃぃぃ!」
突然トミーが起き上がり、ブラックスーツを掴み持ち上げた。
「ウギャギャギャギャギャー!!!」
ドカッ!!!
バシコに投げつけやがった!
おい!
王様もいるんだぞ!
吹っ飛ばされる、バシコとラムカナ王。
「いたたた………」
ラムカナ王に駆け寄る。
「王様!動けますか?」
「うぅ…ゆっくりなら、なんとか…」
「さっ!私の体に捕まって…」
パシッ パシッ
ん…?手が自由に…
「さっ!早く部屋の外へ…」
お、大野!
何でお前、ハサミなんか持ってんだよ!
「おい!ラムカナ王を捕まえろー!絶対に城から出すんじゃない!!!」
ヤバい!
ブラックスーツに掴みかかられた!
「うギャギャー!!!」
ドカッ!!!
トミーが、そのブラックスーツを持ち上げて、爺さんに投げつけた。
「トミー!何してんだよー!」
「トミー!トミー!わしがわからんのかー!」
ガシャーン!!!
「違う!わしに物を投げるなー!」
「ガルルル………ガルルル………」
ダメだ…
手当たり次第に暴れてやがる。
「ダメじゃ!早く逃げないと、わしらもやられてしまう!」
「ななこさん!早く外へ!」
そんなこと言ったって、トミーが…
ガシャーン!!!
ガシャーン!!!
「とにかくこの部屋から出るんじゃ!」
「誰か、この怪物を止めろー!!!」
逃げ回るバシコとブラックスーツたち。
ガシャーン!!!
急いでスタジオから飛び出す。
「爺さん、なんだよあれ…!?」
「話しには聞いていたが、まさか…」
「このままで、いいのかよ!まだトミーは中に…」
「いいもなにも、まさかあんなになるとは…」
「さっ!ぼくに付いてきて…」
えっ…?大野…?
「早く!!!」
「うぅ………」
「王さま、まだ体が痛みますか?」
「どうも足をやられてしまったようじゃ…私は大丈夫だから、さあ3人で、早く外へ…」
「さっ、ぼくの背中に乗って…」
ラムカナ王を背負う大野。
「よし!じゃあ、いっきまっすよぉぉ!!!」
走り出す大野。
ちょ…
慌てて、爺さんと一緒に後ろに付いていく。
タッ…タッ…タッ…タッ…
は、早ぇーよ…大野…
「はぁはぁ…王さま、出口は、どっちですか?」
「この先を右じゃ…」
お、大野…
「大野くん…はぁはぁ…だ、大丈夫なの…?」
「はぁはぁ…へっ? はぁはぁ…何が…ですか?」
「何って………」
こんな大野は初めてだ。
「はぁはぁ…ここを右ですよね…」
「そうじゃ。で…次の突き当たりを…」
「ヤバッ!」
大野の足が止まる。
遠くから、ブラックスーツたちが、迫ってくる。
「王さま、他のルートは…?」
「じゃあ、左に行って…」
「左ですね!」
タッ…タッ…タッ…タッ…
タッ…タッ…タッ…タッ…
あっ!
「こっちからも、ブラックスーツが…!」
「じゃあ、そこの階段を…」
階段を降りようとすると、下から多くの足音が…
「はぁはぁ…こっちもダメじゃぞ!」
顔の前で手を振る博士。
「王さま…はぁはぁ…他のルートは…」
「ふむ………残念じゃが、もうない………」
なんだよ…
ここまで走ってきたのに………
とにかくブラックスーツがいない方へ。
タッ…タッ…タッ…タッ…
「はぁはぁ…なかなか…うまく…いかないもんですね…せっかくナビ付きの車みたいで…はぁはぁ…楽しかったのに………」
「こうなったら、私がブラックスーツたちを説得して…」
「はぁはぁ…王さま、ダメですよ。説得出来るぐらいなら、最初から追っかけて来てませんって…たぶん全員…はぁはぁ…バシコの手下のブラックスーツ…」
そうか…
そうだよな。
「ん~…何かないのか?銃さえあれば、わしがなんとか出来るのに…」
「今はこれしか…」
爺さんにハサミを見せる大野。
いや…さすがにそれじゃあ………
「見つけたぞぉー!!!」
ヤバい!
ブラックスーツたちに見つかっちまった……
「早く逃げないと…げっ!こっちからも…」
あっちこっちから、ブラックスーツが集まって来る。
あっという間に、囲まれてしまった。
ここまでか……………
ドッドッドッドッ……………
なんだこの音…?
地響きのような………
ダッダッダッダッ……………
どんどん大きくなる。
ダンッダンッダンッダンッ……………
「王様ー!!!どこですかー!!!」
これは…
「王様ー!!!我らが助けに来ましたー!!!」
王国民だぁぁぁー!!!!!
「おーい!こっちじゃ!私はここにおるぞー!!!」
「王様ー!!!」
慌て出すブラックスーツたち。
「お前たち!直ちに武器を放棄せよ!今ならまだ罪は軽くなる!」
「おい…」
「どうする…」
「お前たちも王国民じゃろーが!王国民同士で戦ってどうする!ラムカナ王国の魂を捨てるなー!!!」
「……………」
「さあ、早く!」
次々に銃を床に置き始める。
「こっちだぁーーー!!!」
「おーーーい!!!」
「王様がいらっしゃったぞー!!!」
どんどん集まって来る王国民。
すぐに周りは、王国民でいっぱいに。
「王様…よくご無事で…」
泣きながら、王様に寄り添う王国民たち。
「おう、おう…ありがとう…本当にありがとう………」
「おうさま~!ぼくも、わるいやつをやっつけにきました!」
「こんな小さな子までも………よく来たな。とても嬉しいぞ!」
「わーい!おうさまが、ほめてくれたー!!!」
「爺さん、大丈夫か…?」
「ふぅ~…なんとか…な…」
ボロボロの爺さん。
疲れた笑いで親指を立てる。
「大野くん…」
「疲れましたね…」
げっ!ウインクしてきやがった…
こいつ… フフッ…
あ~……… 疲れた………
その場に大の字に倒れ込む。
終わったんだよな……………
ホントに終わったんだよな……………
感情が押し寄せる。
「うぅぅぅおっしゃあぁぁぁ!!!」
「さあ!城の外にでるぞー!!!」
ラムカナ王の拳が上がる。
「おぉーーー!!!」
ラームカナ!
ラームカナ!
ラームカナ!
ラームカナ!
掛け声と共に、拳を振り上げる王国民。
みんなの叫びが、どんどん大きくなる
そして、俺たちは、王国民と共に、もみくちゃになりながら城の外へ。
「いいですか、ここからは、何も言わないように…」
「えっ…?」
「奈々子さんは僕に捕まえられてんですよ。ここからは、僕が上手くやりますから、任せて下さい。」
任せて下さい…?
あのトミーが、任せて下さいなんて…
ちょっとビックリ。
「さっ…行きますよ…」
ちょっ… まだ心の準備が…
城に来ると、前回のワナのことを思い出しちまって、ちょっとビビってしまう…
「MSN02… 先ほど連絡した逃亡中の女性1名、連行しました!」
「話は聞いてる。よし。入れ。」
トミーに連行される俺。
人とすれ違うたびに、ドキドキしちまう。
本当に捕まえられた気分。
トミーが連絡してるって言ったから、すぐに大勢のブラックスーツに囲まれると思ってたのに、全くいないしさ…
やっぱり俺が、心配しすぎてたのか…
どんどん歩いていくトミー。
「あのさ…トミー…」
「しっ!黙って!」
「どこに向かってんだよ…たしか牢獄はこっちじゃ…」
「しっ!黙って!」
「おいったら…」
「大丈夫ですから…!」
大丈夫って…
「どこに向かってんだよ?」
「……………」
「おいっ!トミー!」
「いいから、黙って!気付かれちゃいますよ!」
なんだ…
この変な雰囲気……
どこに行ってんだよ………
やっとトミーが立ち止まった。
「着きましたよ。」
着いたって、ここは…
「さあ…この中に入って…」
「ちょ、この部屋って…」
「いいから、入って!!!」
ちょ…背中を押すな!
ドンッ!
ズサッ!
「トミー!てめぇー!」
強く押すから、こけちまったじゃねえかよ!
痛ててて………
両手を縛られてるから、まともに顔からいっちまった。
「えっ………!?」
なんだこりゃ!!!
なんで、博士と大野がここに…!???
げっ! ブラックスーツ!!!
銃口を突き付けられて、俺と同じように、縛られている………
「トミー!こ、これは…!?」
パチ…パチ…パチ…パチ…
「はいはい…やっと全員が揃いましたね…」
この声は…
バシコォーーーーー!!!
部屋の奥からバシコが現れた。
なんだよ…これ…
何が起きてんだ…!?
「トミー!!!」
そそくさと、バシコの横に行くトミー。
お、お前…………
「フッフッフッ…ごくろうさま。」
「ど、どう言うことだよ!爺さん、どうなってんだよ!!!」
「……………」
「何か言えよ!博士!おい!」
「そんなに大きな声を出さなくても…まあ、この部屋じゃ、どんだけ騒いでも無駄じゃけどな。フッフッフッ…」
この部屋…???
周りを見渡す。
カメラなどの放送機器。
ここって…放送スタジオ………
「とにかくここは、大人しく従うんじゃ…」
「従うったって…」
「ななこさん…逆らっちゃダメです…」
大野まで……
「こっちに座れ!」
ブラックスーツに腕を捕まれ、博士と大野の間に座らされる。
「どうやらまだ、今の状況がわかってないようですな。ほら、トミーよ。説明してあげなさい。」
前に出てくるトミー。
ゆっくりと話し始めた。
「遅すぎたんですよ…」
遅い…?
「あれからどれだけ待っても、あなたは現れない…そりゃ、もう戻って来ないと思うでしょ?」
「トミー…お前………」
俺を待ってたんじゃねーのか!
「博士と大野くんは捕まってしまうし、僕1人じゃ、何も出来る訳ないし…」
な、何言ってんだ…トミー…!?
「1ヶ月ですよ…1ヶ月!!!どれだけ悩んだことか…」
「……………」
「そもそも僕はこっち、7次元の人間なんですよ。これからも、7次元で生活していかないといけない…」
「そ、それは………」
「バシコ様は、優しいお方です…」
なにぃ…!バシコ様だと…!?
「勇気を出して全てを告白したのに、こんな私でも、優しくしてくれた…」
お…おいっ………!
「僕はバシコ様と一緒に、これから7次元のために生きて行くんです!」
「お前、騙したんだな………」
「騙したなんて…最初から僕が間違っていたんです…今の僕が本当の姿なんです。」
「……………」
頭をよぎる、次元のねじれ。
変わったのか…?
ひょっとして、大野と2人じゃなくて、俺1人で7次元に戻ってきたから、前のトミーから変わっちゃったのか…!?
「トミー…?おい…トミー………」
「フッフッフッ…トミーは実に優秀だ。この計画も、全てトミーが考えたんじゃからな。」
「おい、トミーったら!」
ダメだ…
全くこっちを見てくれない。
「この場所を提案してきたのもトミー。この部屋で何が起きても、全く外にはわからない。防音の密室とは、よく思い付いたもんだ…」
一体、何をする気なんだ…!?
「さあ、そろそろ、博士に最後の質問をしましょうかな…?」
「くっ………」
歯を食いしばる博士。
「さあ、博士!今度こそ、マシンを作って貰えますかな?」
「嫌じゃ…断る…」
「何ですとぉー?よく聞こえませんなぁー!!!」
バシコの声が大きくなる。
「何度言われても断る!誰がお前なんかのために…」
「ほほぉ~う…まだ断る…と…」
「当たり前じゃ!何度言われても、答えは同じじゃ!」
「ほ~う…じゃあこれでも断れますかな…?」
「うぐぅ………」
ラ、ラムカナ王…!!!
縛られたラムカナ王が連れて来られた。
「なんてことするんじゃ!」
「博士…あなたの答え次第ですぞ。」
「ひ、卑怯な………」
「さあクイズです!これからラムカナ王は、3次元のお前たちに殺される…」
「なんじゃと!そんなこと、する訳ないじゃろーが!」
「する訳がない…?フッフッフッ…誰がそれを証明する…?」
………???
「この部屋で起きることは、全て、このバシコの手の中にあるんですぞ!」
くそっ………
「大変だぁ。我々のラムカナ王が、3次元から来た者たちに殺されたぁ~。フッフッフッ…さあ、王国はどうなりますかな…?」
「ぐっ……………」
「さあ、博士!どうするんです?先に博士を殺しても良いんですぞ!」
「わしを殺すと、マシンが手に入らなくなるぞ!」
「ほほぉ~…私を脅してきますか?まだ今の状況が、わかってないようだ。おい!やれ!」
ラムカナ王に、銃口が向けられる。
「待てっ!待つんじゃ!!!」
「博士はとても優秀な学者だから、3次元を手に入れたあとも、大切に優遇しますよ。」
「爺さん!騙されんじゃねえ!こいつはマシンを手に入れたら、必ず爺さんも…!」
「わかっとる!じゃが…じゃが、どうすりゃいいんじゃ!!!」
ホントにどうすりゃいいんだよ!!!
「待て!バシコ!」
「ん…?」
「私はもう、覚悟を決めておる!」
王様………
「バシコよ。最後にお前に言いたいことがある…」
「ほほぉ~う…王様じきじきに、私にお言葉を…」
「そうじゃ。バシコ、よく聞いておけ!」
ゆっくりと立ち上がり、バシコの前に立つ。
「お前は私に、この博士の訪問がきっかけとなり、やがて3次元の人間が攻めて来ると言ったな。だから私は王国民を守るために、まずは、3次元の人間と話し合いをしないといけないと考えた。」
「確かに、そう説明しましたな…」
「そのために、マシンを手に入れるように、バシコ、お前に頼んだ。」
「そうですな。」
「じゃがどうじゃ?博士やこの少年や女の子…この3次元の者たちが、本当に攻めてくると思うか?」
「そんなのはわかりませんなぁ。ただ私は可能性があると説明しただけで…」
「まだ言い訳をするのか!」
「言い訳なんて、とんでもない。私も王様と同じように、王国民のことを思って…」
「じゃあ、なぜ、私が今、ここにいるんじゃ?なぜ私に銃口を向けておる?私がいなくなったあと、お前が王の地位を手に入れ…」
「そこはちょっと違うんですなぁ…。ラムカナ王に銃口を向けていたのは、この3次元の者たち。ラムカナ王を殺害したので、私が、この者たちを葬る。そして私は…この王国の英雄となる!」
………!!!
「最初から、それが目的だったんじゃろーが!!!」
「フッフッフッ………ハッハッハッハッ………」
バシコの高笑いが部屋中に響く。
「あなたは優し過ぎる…優し過ぎて、ヘドが出てくる…」
「なんじゃと…!!!」
「なぜ3次元を手に入れたいと思わない?王国を強くしようと思わない?王国の未来を考えるなら、これはチャンスなんですぞ!」
「そんなことをしてどうなる!王国民は、そんなことを決して望まない。」
「くぅ~………甘い、甘い…甘過ぎて、めまいがしてくる…いつまで平和ごっこを続けるんだか…」
「バシコ!目を覚ませ!」
「目を覚ませ…?覚めていないのは、あなたの方だろーが!!!」
「バシコ… 今から言う、私の言葉をよく聞け!」
ラムカナ王の目が変わった!
突き刺すように睨み付ける。
「我が愛するラムカナ王国の王国民よ!」
王国民…?
な、何を言ってんだ…?
ん…?
王様、どこ見てんだ…?
バシコの後ろを見てるような…
あっ! トミー!
いつの間に…
あいつ、あんなところで何してんだ…!?
「私は王国民に対し、大きな過ちをおかしてしまった。取り返しがつかないほどの、大きな過ちじゃ。決して許して貰えるとは思ってない。じゃが、今、まさに、王国民の未来が失われようとしておる。」
「ラムカナ王、何を言って…」
「黙れ!バシコ!今、まさに、このバシコのせいで、王国民が危険にさらされようとしておる。私は、絶対に許さない。王国民は家族だ!私の命だ!」
トミー…
何してんだ…?
カメラを覗き込んで………
「たとえ、この命をかけても、必ず王国民を守る!」
ラムカナ王の声が、さらに大きくなる。
「ラムカナ王国の全王国民に告ぐ!もし、私を許してくれるのなら、今こそ、団結のとき…」
「おい!何を言ってる…!???」
「この城へ、集え!我が王国民よ!!!」
「ハッハッハッハッ…ラムカナ王…とうとう、気がふれてしまいましたかな…?いくらそんなことを叫んでも、この部屋の中では…」
「果たしてそうかな…?この部屋のことをわかってないのは、バシコ!お前の方じゃ!!!」
「な、なんだと…!!!」
キョロキョロと、周りを見始めるバシコ。
後ろを向くと、トミーがバシコへピースサイン。
カメラ!!!
「ト、トミー…そんなところで、何をしておる…?」
「はいっ!バシコさん!放送中ですよ!もっと笑って…」
「トミー!お前ー!!!」
バンッ!
凄い勢いで、ブラックスーツが入って来た。
「バシコ様! 先ほどから、もの凄い数の王国民が、城に押し寄せて…」
「なんじゃと!くそっ!やりおったな!封鎖じゃ!早く城を封鎖するのだ!」
「はっ!バシコ様!」
「さあバシコ…どうするんじゃ…?」
一気に形勢逆転!
「くっ!こうなったら…」
「うっ…!」
ラムカナ王を羽交い締めにし、銃を突き付けるバシコ。
「ラムカナ王!!!」
「近寄るな!撃つぞ!」
「待て!待つんじゃ!バシコ!考え直せ!」
「うるさい!!!」
どうすりゃ………
あっ!トミー!
あいつは銃を持ってる!
トミーに、目で合図。
ほら、トミー、こっちだ!
こっちを見ろ!
さあ、その銃で………
何度も首を横に振るトミー。
いや、お前しかいないんだって!
行けっ!トミー!!!
ん? 口をパクパクして、何か言ってる…
ム・リ・ム・リ
ゼッ・タ・イ・ダ・メ
デ・キ・マ・セ・ン
ダメだ…
いつものトミーに戻ってる………
「バシコ!もう逃げ道はないぞ!」
「うるさい!黙れ!」
どうすんだよ!
どうやって止めりゃーいいんだよー!!!
「あのぉ~う…バシコさま………」
お、大野…?
「あのですねぇ…実はぼくぅ、マシンの場所を知ってるんですよぉ…」
こ、こいつ…
何を言い出すんだ………
「だから、ぼくだけでも、助けて貰えませんかねぇ…?」
お、大野!
お前って奴は…!!!
「何ぃ~?マシンは破壊されたんじゃ…」
「とんでもなーい!ちゃんとありますよぉ!だって、ぼくがここに来てるし…」
「大野くん、何言ってんのよ!」
「あれぇ~?ななこさんも、一緒に来たじゃないですかぁ~…」
こ、こいつ…
「確かにお前たちは、博士のあとにやって来た…」
「でしょ?だからマシンは、まだあるんですよぉ。」
「おいっ!!!」
「大野!!!」
俺と博士の声が大きくなる。
「おい!2人を黙らせろ!」
銃口が俺と博士に向けられる。
ちっ………
「で、どこだ?どこにあるんじゃ?」
「だから、ぼくだけでも助けて…」
「マシンが本当にあるのか、確認するのが先だ!確認出来たら助けてやる。」
「ほ…ほんとですかぁ~!やったぁー!」
「大野!騙されんじゃねー!」
「バシコを信じるんじゃない!」
「さあ言え!マシンはどこだ?」
「んっと…じゃあ教えるから、この手を自由にしてくださいよぉぉ!」
「教えるのが先だ!」
「バシコさま、早くしないと、王国の人たちが来て、ほんとに、逃げられなくなっちゃいますよぉぉ。」
「ちっ…しょうがない。おい!こいつのヒモを外してやれ!」
パシッ
大野のヒモが切られる。
「さあ、どこだ?どこにあるんだ?」
「それは、この紙に…」
ポケットから、紙を取り出した。
「おい!なんだそれは?」
「この紙に、マシンの場所が…」
「おい!受け取れ!」
「はっ!」
「おい!何が書いてある?」
「今、開いて…ん?何かアルファベットが書いてあります!」
「何だそれは…おい!こっちに持って来い!」
「はっ!こちらでございます。」
「えーけーえーびーゆー…なんだこれは!」
「ちゃんと見てくださいよぉぉ。」
「これのどこに、マシンの場所が書いてあるんだ!」
こっちに紙を見せてきた。
AKAB-UKIN-NIK-IO
えーけーえーびー………
なんだこりゃ…?
「何なんだ、この紙は!」
「いやいや、誤解ですよぉぉ…ちゃんとローマ字を読んでくださいよぉぉ!」
「ローマ字…? ん? ア…カ…ブ… アカブキン… ニキオ…… なんだこりゃ???」
「あっ!左じゃなくて、右から読むんだったような…」
「右から…? オイキン… ニック…」
「ちゃんと横棒の位置を見て…」
「オイ-キン-ニ…」
「えっ?何て言いました? もっと大きな声で…!」
「ヤ…ヤバい…」
えっ?爺さん?
「早く部屋の隅に行って、なるべく小さくなって…!」
えっ? えっ? えっ?
「さあ、バシコさま!もっと大きな声で!!!」
「オイ-キン-ニク-バカ」
「う…う…う………」
爺さん!
小さくなるったって、どこで…?
「う~………う~………ちがうもん………バカじゃないもん………」
トミーの様子が…
あいつ………
泣いてんのか…???
「いっしょうけんめい………やったんだもん………」
………???
「ぐ………ぐ………ぐぐぐぐ………」
下を向いて、体が小刻みに震えだした。
「ガガがガガがガガが……………」
「なんじゃ!こいつは!」
だんだん体全体が大きく震え出す。
なんだこりゃ!!!
「うっ…!」
えっ?止まった…???
バタンッ!
その場に倒れちまった………
おい!トミー!
どうなっちまったんだ…?
「なんだこいつ…おい!確認しろ!」
トミーにブラックスーツが近付く。
「はっ!気を失っているようです!」
トミー!!!
「フッフッフ…何が起きるかと思えば…おい、小僧!お前は何がしたかったんだ…?」
「……………」
「私を騙すなんぞ…絶対に許さん!」
大野に銃口を向けるバシコ。
「ラムカナ王より、お前の始末が先だ!!!」
「ガルルルルルーーー!!!」
部屋中に響く大きな声。
「ひぃぃぃぃぃ!」
突然トミーが起き上がり、ブラックスーツを掴み持ち上げた。
「ウギャギャギャギャギャー!!!」
ドカッ!!!
バシコに投げつけやがった!
おい!
王様もいるんだぞ!
吹っ飛ばされる、バシコとラムカナ王。
「いたたた………」
ラムカナ王に駆け寄る。
「王様!動けますか?」
「うぅ…ゆっくりなら、なんとか…」
「さっ!私の体に捕まって…」
パシッ パシッ
ん…?手が自由に…
「さっ!早く部屋の外へ…」
お、大野!
何でお前、ハサミなんか持ってんだよ!
「おい!ラムカナ王を捕まえろー!絶対に城から出すんじゃない!!!」
ヤバい!
ブラックスーツに掴みかかられた!
「うギャギャー!!!」
ドカッ!!!
トミーが、そのブラックスーツを持ち上げて、爺さんに投げつけた。
「トミー!何してんだよー!」
「トミー!トミー!わしがわからんのかー!」
ガシャーン!!!
「違う!わしに物を投げるなー!」
「ガルルル………ガルルル………」
ダメだ…
手当たり次第に暴れてやがる。
「ダメじゃ!早く逃げないと、わしらもやられてしまう!」
「ななこさん!早く外へ!」
そんなこと言ったって、トミーが…
ガシャーン!!!
ガシャーン!!!
「とにかくこの部屋から出るんじゃ!」
「誰か、この怪物を止めろー!!!」
逃げ回るバシコとブラックスーツたち。
ガシャーン!!!
急いでスタジオから飛び出す。
「爺さん、なんだよあれ…!?」
「話しには聞いていたが、まさか…」
「このままで、いいのかよ!まだトミーは中に…」
「いいもなにも、まさかあんなになるとは…」
「さっ!ぼくに付いてきて…」
えっ…?大野…?
「早く!!!」
「うぅ………」
「王さま、まだ体が痛みますか?」
「どうも足をやられてしまったようじゃ…私は大丈夫だから、さあ3人で、早く外へ…」
「さっ、ぼくの背中に乗って…」
ラムカナ王を背負う大野。
「よし!じゃあ、いっきまっすよぉぉ!!!」
走り出す大野。
ちょ…
慌てて、爺さんと一緒に後ろに付いていく。
タッ…タッ…タッ…タッ…
は、早ぇーよ…大野…
「はぁはぁ…王さま、出口は、どっちですか?」
「この先を右じゃ…」
お、大野…
「大野くん…はぁはぁ…だ、大丈夫なの…?」
「はぁはぁ…へっ? はぁはぁ…何が…ですか?」
「何って………」
こんな大野は初めてだ。
「はぁはぁ…ここを右ですよね…」
「そうじゃ。で…次の突き当たりを…」
「ヤバッ!」
大野の足が止まる。
遠くから、ブラックスーツたちが、迫ってくる。
「王さま、他のルートは…?」
「じゃあ、左に行って…」
「左ですね!」
タッ…タッ…タッ…タッ…
タッ…タッ…タッ…タッ…
あっ!
「こっちからも、ブラックスーツが…!」
「じゃあ、そこの階段を…」
階段を降りようとすると、下から多くの足音が…
「はぁはぁ…こっちもダメじゃぞ!」
顔の前で手を振る博士。
「王さま…はぁはぁ…他のルートは…」
「ふむ………残念じゃが、もうない………」
なんだよ…
ここまで走ってきたのに………
とにかくブラックスーツがいない方へ。
タッ…タッ…タッ…タッ…
「はぁはぁ…なかなか…うまく…いかないもんですね…せっかくナビ付きの車みたいで…はぁはぁ…楽しかったのに………」
「こうなったら、私がブラックスーツたちを説得して…」
「はぁはぁ…王さま、ダメですよ。説得出来るぐらいなら、最初から追っかけて来てませんって…たぶん全員…はぁはぁ…バシコの手下のブラックスーツ…」
そうか…
そうだよな。
「ん~…何かないのか?銃さえあれば、わしがなんとか出来るのに…」
「今はこれしか…」
爺さんにハサミを見せる大野。
いや…さすがにそれじゃあ………
「見つけたぞぉー!!!」
ヤバい!
ブラックスーツたちに見つかっちまった……
「早く逃げないと…げっ!こっちからも…」
あっちこっちから、ブラックスーツが集まって来る。
あっという間に、囲まれてしまった。
ここまでか……………
ドッドッドッドッ……………
なんだこの音…?
地響きのような………
ダッダッダッダッ……………
どんどん大きくなる。
ダンッダンッダンッダンッ……………
「王様ー!!!どこですかー!!!」
これは…
「王様ー!!!我らが助けに来ましたー!!!」
王国民だぁぁぁー!!!!!
「おーい!こっちじゃ!私はここにおるぞー!!!」
「王様ー!!!」
慌て出すブラックスーツたち。
「お前たち!直ちに武器を放棄せよ!今ならまだ罪は軽くなる!」
「おい…」
「どうする…」
「お前たちも王国民じゃろーが!王国民同士で戦ってどうする!ラムカナ王国の魂を捨てるなー!!!」
「……………」
「さあ、早く!」
次々に銃を床に置き始める。
「こっちだぁーーー!!!」
「おーーーい!!!」
「王様がいらっしゃったぞー!!!」
どんどん集まって来る王国民。
すぐに周りは、王国民でいっぱいに。
「王様…よくご無事で…」
泣きながら、王様に寄り添う王国民たち。
「おう、おう…ありがとう…本当にありがとう………」
「おうさま~!ぼくも、わるいやつをやっつけにきました!」
「こんな小さな子までも………よく来たな。とても嬉しいぞ!」
「わーい!おうさまが、ほめてくれたー!!!」
「爺さん、大丈夫か…?」
「ふぅ~…なんとか…な…」
ボロボロの爺さん。
疲れた笑いで親指を立てる。
「大野くん…」
「疲れましたね…」
げっ!ウインクしてきやがった…
こいつ… フフッ…
あ~……… 疲れた………
その場に大の字に倒れ込む。
終わったんだよな……………
ホントに終わったんだよな……………
感情が押し寄せる。
「うぅぅぅおっしゃあぁぁぁ!!!」
「さあ!城の外にでるぞー!!!」
ラムカナ王の拳が上がる。
「おぉーーー!!!」
ラームカナ!
ラームカナ!
ラームカナ!
ラームカナ!
掛け声と共に、拳を振り上げる王国民。
みんなの叫びが、どんどん大きくなる
そして、俺たちは、王国民と共に、もみくちゃになりながら城の外へ。
0
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