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6章

どうすりゃいいんだ?

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……ったく!

何なんだ、あのじじいは!!!



夜の8時。
俺は、家へと走っていた。


もう、こんなに暗くなってんじゃねーかよ!

ヤバい! 絶対母ちゃんに怒られる……

「帰りに偶然、変な爺さんに出会っちまってさ……」…なんて、絶対信じてくれないだろうな……


……でも、何だったんだ?

ブランコの事やら、黒黒ブラザーズの事やら、絶対あれは夢なんかじゃねーぞ!

大体、爺さんも黒黒ブラザーズの事を言ってたしな……



走りながら、色々考えていたその時……



「げっ! また出てきた……!」



やっぱり現実だった……

目の前から来る大量の黒い服の軍団……

10~20人はいるぜ……


とっさに身を隠す。


なんだよ! これ!
コンビなんかじゃねーじゃんか!

なんであんなに大勢いるんだよ?



ザッザッザッザッ……



ヤバい!
だんだんこっちに来る!


必死に隠れる俺。


頼む! 気付かないでくれ!



「ふ~ぅ……」

なんとか無事に通り過ごしてくれた。



何か変な事になってやがる!

こりゃ早く家に戻らないと……!



悪い予感は的中。

家に戻るまで、何回、黒黒軍団に出会った事か……

お陰で心臓がバクバクだぜ。


なんとか家に到着。



ピンポーン…


あれ…?

「ただいまー!おーい!誰もいないのかよー!」

何で返事がないんだ…?



ピンポーン…
ピンポーン…



……………



おかしい……
部屋の電気は付いてるのに……


「母ちゃん、開けてくれよ! 俺だよ! 奈々子だよ!」

何で誰も返事をしてくれない…???


こっそり裏口に回って、台所を覗き込む。


あっ! 母ちゃんだ!

どこかに電話をしている。

だから出てこれなかったのか……

ちょっと安心。


「……こちら0079地区の認識番号HFA-783、捜索中の者らしき人物が現在こちらに……」


???!!!


「母ちゃん……何し…てんだ……?」

「キャーーー!!!」

母ちゃんの悲鳴……

「い、い、今、家の中に入って来て……」

なんでそんなに怯えてるんだ……

「……い、嫌ぁー!!! 来ないでぇーーー!!!」

「……か、母ちゃん…… 俺だよ、奈々子だよ……」

頼むから逃げないでくれ。

母ちゃん、いつものギャグだろ?
なあ! 頼むからギャグと言ってくれ!

そうでないと、この状況に押し潰されちまいそうだ……



「それ以上来たら刺すわよ!」

台所の包丁をこちらに向ける母ちゃん。



………!!!!




もう頭がおかしくなりそうだ。





「……か、母ちゃん! 何してんだよ!」

「そこを動くんじゃないわよ!」

じりじりと電話に近づく。

「一歩でも動いたら刺すからね!」



母ちゃん、母ちゃんったら……


どうしちまったんだよ……




母ちゃん……




ちきしょう……





ドカッ!!!



「ぐはっ!」

その場に倒れ込む母ちゃん………



母ちゃん…… 痛いだろ?
ごめん…… 許してくれ……
こうするしかないんだ……



泣きながら、家を飛び出した。



遠くから警報が近づいて来る。
逃げなくちゃ……



何で…… 何で……


ひたすら走った。
止まったら、すべてを受け止めなくちゃいけないような気がして……



優しい母ちゃん……
面白い母ちゃん……
強い母ちゃん……



何でこんな事に……
どうなっちゃってるんだ……?




どれぐらい走っただろう。
町の異常さに気が付いた。


いつもなら、賑やかな商店街の全てのシャッターが下りている。

いや、シャッターだけじゃない。
誰1人として、外にいない。

まるでゴーストタウンみたいだ。



ここは違う世界……



頭の中で、爺さんの言葉が繰り返される……


ホントに…
ホントに違うのかよ……


ヤバい!
また来やがった!


慌てて隠れる。


町中、黒い服の奴らだらけだ。



どうすりゃいいんだ……?


どうすりゃ……



あっ! 大野!!!


すっかり、大野の事を忘れてた!


急いで大野の家へと急ぐ。



ヤバい! ヤバいぞ!
大野……
胸の鼓動が高まる……



確か、この角を曲がったら
大野の家だ……




ヤバッ!
とっさに隠れる。

「……なんですかぁ~! やめてくださぁぁい!!!」

嫌な予感は当たっちまった……

「離せ~! 離せよぉ~! 離してくださぁぁい!!!」

凄い数の黒黒軍団に囲まれて、両腕をしっかりと捕まれている。


助けに行かなくちゃ……

「てめーら……! ……ん???」

飛び出そうとすると、背後から捕まえられた。



しまった!!!


「離せ! 離せよ!!!」

必死に腕を振り払おうとする。


「しっ! 静かにっ!!!」

んぐ……

口を塞がれちまった……


「私はあなたの味方です。安心して下さい。」

……なんだ? 誰なんだ?

もがきながら振り返ると、全身黒ずくめの兄ちゃん……

うげっ! やっぱり黒黒軍団じゃねーかよ!!!

「うぐぅー… うぐぅー…」

なんて力だ…
逃げられりゃしない……

「私はトミー。博士の指示であなたを守りに来ました。」

……博士???

よく見ると、同じ黒い服でも、あの黒黒軍団とはまったく違う。

「とにかく私と一緒に……」

「……ちょ、ちょっと待てよ! 何が何だか……」

「……いいですから、ここは私と一緒に……」

「おい! どこ行くんだよ!」

引っ張られる腕を振り払う。

今は大野を助ける方が先なんだよ!

大野!!!



そこには、もうすでに大野の姿は無かった。
どこかに連れて行かれたみたいだ。



体中の力が抜ける。

どこに行っちまいやがったんだよ……


「……早く! 早く行かないと、ブラックスーツたちに見つかってしまいます!!!」


……なんだよ… これ……

夢なら早く覚めてくれよ……


「さあ! 早く…!」

頭の中が真っ白になってしまった俺は、仕方なく兄ちゃんに付いて行った。
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