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8章
トミー・ザ・マッチョ
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「だから、そこは違うじゃろーが……」
「博士、合ってますって……」
……あのさ
もういいかな……
「お前は、本当に城の中を見て来たのか? 確かここは……」
「……いやいや、違うんですって…」
もう、うんざりしてた。
さっきから、ずっとこの調子…
まったく先に進みやしねぇ……
最初、トミーに描かせていたら、紙の大きさを考えず、途中で紙を何回も継ぎ足しまくり…
まだ半分も描いてないのに、見取り図は見事な巨大オブジェに……
こりゃダメだわ…って事で、博士が変わったんだけど、あまり城の中を知らないもんだから、結局トミーの指示で描く事に……
漫才みたいで、最初は楽しんでたんだけど、基本こいつら両方ボケな訳で…
ただ呆れるばかり……
「……あの~…」
「……だから、そこは違うんですって…」
「……お前はさっきから、違う違うって… わしをバカにしとるのか…?」
「だから……あの~…」
「……僕が描いてたら、博士が強引にペンを取ったんじゃないですか… 全然知らないくせに…」
「し、知らないじゃとぉ~? お前に任せてたら部屋中紙だらけになるから、しょうがなしに代わったんじゃろ~が…」
「しょうがなしに…?! 博士! いくら博士でも言い方ってもんが…」
「……ちょ、俺の話しを聞けって…」
「……もういいです! ペンを返して下さい!」
「何で無理やり取るんじゃ!」 このペンはわしのもの…」
「わしのもの?! そもそもこのペンは僕が持って来たんじゃないですか!」
「……………」
「この部屋にあるもんは、わしのもんじゃろーが!」
「わ、わしって… 2人のもんでしょーが!」
バンッ!!!
「お前らいい加減にしろ! 小学生のケンカかっ!!!」
呆れるのを通り越して、さすがに腹が立ってきた。
突然の大声にビックリする2人。
「さっきから黙って見てりゃ、グズグズしやがって…」
「……な、何で怒ってるんじゃ…?」
「……ぼ、僕がいけないんですかね…?」
「……いけないって言うか…」
はぁ~…
俺、何熱くなってんだろ……
考えてみりゃ、俺と大野の為に一生懸命やってくれてんだよな……
「……悪い悪い… 大きな声出してごめんな…」
俺の方がガキみたいだったよ……
う~……
気まずい雰囲気……
何とか空気を変えないと……
「あ、そうそう…、トミー、お前そろそろ、その暑そうな黒い服を脱いでもいいんじゃねーか?」
さっきから気になってたんだよな。
なんか、ブラックスーツがずっと横にいるような気がして……
「そうじゃのう。トミー、ちょっと着替えてこんか?」
「……それもそうですね。じゃあちょっと待ってて下さいね。あ、博士! 勝手に描いちゃダメですよ!」
「大丈夫… ちゃんと待っててやるから…」
「絶対、絶対ですよ!」
そう言うと、トミーは奥の部屋に着替えに行った。
「……あいつ、ホントに優等生なのかよ?」
「まあ、ちょっと抜けてる所はあるが、真面目さにかけては天下一品じゃ…」
抜けてるって…
爺さんも、似たようなもんだけどな。
「…ちょっと聞きたいんだけど、トミーの奴、なんであんなに力が強いんだ?」
「…強いって?」
「初めて会った時、トミーに羽交い締めにされたんだけど、あんな馬鹿力は初めてだよ…」
「ふっふっふ… じゃあ、トミーの体を見たらもっと驚くぞ…」
「……からだ?」
「あいつは顔は童顔じゃが、体はムキムキのボディービルダーじゃからな…」
「…ムキムキ???」
「あいつには哀しい過去があってな……」
何だよ…?
哀しい過去って……
「……昔、好きな人がおってな、告白しようかずっと悩んでたんじゃ… ほら、あいつ気が弱いじゃろ? ずっと1人でモジモジやってたみたいなんじゃ…」
確かに気が弱いって言うか、自分じゃ何も決められないタイプだよな。
「…で、勇気を振り絞って告白したみたいなんじゃが、見事に振られてしまったんじゃ…」
まあ、よくある青春のほろ苦い思い出だな。
「振られた原因が最悪でな…」
うんうん…
「『私、ヒョロヒョロした人は嫌い!』って言われたそうなんじゃ…」
ヒョロヒョロ…?
「当時のトミーは、勉強ばっかりしてたせいで、虚弱体質のガリ勉君タイプじゃったらしいんじゃ…」
あのトミーが…?
今のがっちりした体つきからは、想像できないな。
「失恋のショックでしばらく立ち直れなかったらしいんじゃが、ある日突然、あいつは気付いたんじゃ…」
何をだよ?
「僕は完全に振られた訳じゃない! 僕の体が悪いんだ! …ってね…」
うわぁ~! よくある女々しい男の言い訳じゃん。
兄貴たちもそうなんだけど、何で男って女の優しさを真に受けちゃうんだろうな。
最後の『嫌い』って言うのだけが本音で、あとは優しさで付けた言葉なのに……
「それからトミーは、体を猛烈に鍛え始めたんじゃ。彼女が振り向いてくれると信じて…」
真面目なトミーらしいな。
純朴って言うか、単純って言うか……
「……じゃがな、あいつ真面目なもんじゃから、どこまで鍛えたらいいのかわからなくなってしまってな…」
……!
「そんな時に、偶然、振られた彼女に再会したんじゃよ…」
……なんか嫌な予感。
「あいつ、チャンスと思ったんじゃろうな… 突然、彼女の前で服を脱いで、『僕、こんなに強くなったんですよ!』って…」
……最悪。
「彼女は泣き出すわ、警察に通報されるやらで、大変な事になってな……」
あぁ、トミー……
お前って奴は……
「……それ以来、あいつは陰で『筋肉バカ』と呼ばれるようになって…」
初めて見た。
これが、ホントの『筋肉バカ』だ。
「あ! この話しは絶対トミーの前でしちゃダメだぞ。特に『筋肉バカ』なんてあいつに言った時には、昔の事を思い出して、暴れて何をし出すかわからんし…」
……悲劇って言うか、喜劇って言うか…
トミーらしいけどな……
「でもな、わしがこうして捕まらないでおれたのも、あいつのお陰なんじゃよ… その力のお陰で何回ピンチを救われた事か…」
確かに、俺も助けられたしな。
「気は優しくて力持ち… あいつは、そんな奴なんじゃよ……」
「ふぅ~…… やっぱり白衣の方が良いですねぇ~…」
着替え終わったトミーが出てきた。
話しを聞いたせいか、ちょっとトミーが可愛く見えてきたぜ。
「博士、合ってますって……」
……あのさ
もういいかな……
「お前は、本当に城の中を見て来たのか? 確かここは……」
「……いやいや、違うんですって…」
もう、うんざりしてた。
さっきから、ずっとこの調子…
まったく先に進みやしねぇ……
最初、トミーに描かせていたら、紙の大きさを考えず、途中で紙を何回も継ぎ足しまくり…
まだ半分も描いてないのに、見取り図は見事な巨大オブジェに……
こりゃダメだわ…って事で、博士が変わったんだけど、あまり城の中を知らないもんだから、結局トミーの指示で描く事に……
漫才みたいで、最初は楽しんでたんだけど、基本こいつら両方ボケな訳で…
ただ呆れるばかり……
「……あの~…」
「……だから、そこは違うんですって…」
「……お前はさっきから、違う違うって… わしをバカにしとるのか…?」
「だから……あの~…」
「……僕が描いてたら、博士が強引にペンを取ったんじゃないですか… 全然知らないくせに…」
「し、知らないじゃとぉ~? お前に任せてたら部屋中紙だらけになるから、しょうがなしに代わったんじゃろ~が…」
「しょうがなしに…?! 博士! いくら博士でも言い方ってもんが…」
「……ちょ、俺の話しを聞けって…」
「……もういいです! ペンを返して下さい!」
「何で無理やり取るんじゃ!」 このペンはわしのもの…」
「わしのもの?! そもそもこのペンは僕が持って来たんじゃないですか!」
「……………」
「この部屋にあるもんは、わしのもんじゃろーが!」
「わ、わしって… 2人のもんでしょーが!」
バンッ!!!
「お前らいい加減にしろ! 小学生のケンカかっ!!!」
呆れるのを通り越して、さすがに腹が立ってきた。
突然の大声にビックリする2人。
「さっきから黙って見てりゃ、グズグズしやがって…」
「……な、何で怒ってるんじゃ…?」
「……ぼ、僕がいけないんですかね…?」
「……いけないって言うか…」
はぁ~…
俺、何熱くなってんだろ……
考えてみりゃ、俺と大野の為に一生懸命やってくれてんだよな……
「……悪い悪い… 大きな声出してごめんな…」
俺の方がガキみたいだったよ……
う~……
気まずい雰囲気……
何とか空気を変えないと……
「あ、そうそう…、トミー、お前そろそろ、その暑そうな黒い服を脱いでもいいんじゃねーか?」
さっきから気になってたんだよな。
なんか、ブラックスーツがずっと横にいるような気がして……
「そうじゃのう。トミー、ちょっと着替えてこんか?」
「……それもそうですね。じゃあちょっと待ってて下さいね。あ、博士! 勝手に描いちゃダメですよ!」
「大丈夫… ちゃんと待っててやるから…」
「絶対、絶対ですよ!」
そう言うと、トミーは奥の部屋に着替えに行った。
「……あいつ、ホントに優等生なのかよ?」
「まあ、ちょっと抜けてる所はあるが、真面目さにかけては天下一品じゃ…」
抜けてるって…
爺さんも、似たようなもんだけどな。
「…ちょっと聞きたいんだけど、トミーの奴、なんであんなに力が強いんだ?」
「…強いって?」
「初めて会った時、トミーに羽交い締めにされたんだけど、あんな馬鹿力は初めてだよ…」
「ふっふっふ… じゃあ、トミーの体を見たらもっと驚くぞ…」
「……からだ?」
「あいつは顔は童顔じゃが、体はムキムキのボディービルダーじゃからな…」
「…ムキムキ???」
「あいつには哀しい過去があってな……」
何だよ…?
哀しい過去って……
「……昔、好きな人がおってな、告白しようかずっと悩んでたんじゃ… ほら、あいつ気が弱いじゃろ? ずっと1人でモジモジやってたみたいなんじゃ…」
確かに気が弱いって言うか、自分じゃ何も決められないタイプだよな。
「…で、勇気を振り絞って告白したみたいなんじゃが、見事に振られてしまったんじゃ…」
まあ、よくある青春のほろ苦い思い出だな。
「振られた原因が最悪でな…」
うんうん…
「『私、ヒョロヒョロした人は嫌い!』って言われたそうなんじゃ…」
ヒョロヒョロ…?
「当時のトミーは、勉強ばっかりしてたせいで、虚弱体質のガリ勉君タイプじゃったらしいんじゃ…」
あのトミーが…?
今のがっちりした体つきからは、想像できないな。
「失恋のショックでしばらく立ち直れなかったらしいんじゃが、ある日突然、あいつは気付いたんじゃ…」
何をだよ?
「僕は完全に振られた訳じゃない! 僕の体が悪いんだ! …ってね…」
うわぁ~! よくある女々しい男の言い訳じゃん。
兄貴たちもそうなんだけど、何で男って女の優しさを真に受けちゃうんだろうな。
最後の『嫌い』って言うのだけが本音で、あとは優しさで付けた言葉なのに……
「それからトミーは、体を猛烈に鍛え始めたんじゃ。彼女が振り向いてくれると信じて…」
真面目なトミーらしいな。
純朴って言うか、単純って言うか……
「……じゃがな、あいつ真面目なもんじゃから、どこまで鍛えたらいいのかわからなくなってしまってな…」
……!
「そんな時に、偶然、振られた彼女に再会したんじゃよ…」
……なんか嫌な予感。
「あいつ、チャンスと思ったんじゃろうな… 突然、彼女の前で服を脱いで、『僕、こんなに強くなったんですよ!』って…」
……最悪。
「彼女は泣き出すわ、警察に通報されるやらで、大変な事になってな……」
あぁ、トミー……
お前って奴は……
「……それ以来、あいつは陰で『筋肉バカ』と呼ばれるようになって…」
初めて見た。
これが、ホントの『筋肉バカ』だ。
「あ! この話しは絶対トミーの前でしちゃダメだぞ。特に『筋肉バカ』なんてあいつに言った時には、昔の事を思い出して、暴れて何をし出すかわからんし…」
……悲劇って言うか、喜劇って言うか…
トミーらしいけどな……
「でもな、わしがこうして捕まらないでおれたのも、あいつのお陰なんじゃよ… その力のお陰で何回ピンチを救われた事か…」
確かに、俺も助けられたしな。
「気は優しくて力持ち… あいつは、そんな奴なんじゃよ……」
「ふぅ~…… やっぱり白衣の方が良いですねぇ~…」
着替え終わったトミーが出てきた。
話しを聞いたせいか、ちょっとトミーが可愛く見えてきたぜ。
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