わんこ系王太子に婚約破棄を匂わせたら監禁されたので躾けます

冴西

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番外編(※記載ないものはすべて本編後です)

第二王子の婚約者は勘違いしている(下)

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 ユリンは行くあてもなく、とぼとぼと廊下を歩いていた。
 勢いで飛び出したはいいものの、ここはレンの所有する屋敷である。いかに婚約者とはいえ入ってはいけない部屋もいくつかあるし、そもそもユリンの庶民メンタルでは許可されたとしても好きな部屋に転がり込むなど畏れ多くて出来はしない。
 飛び出すんじゃなかったな、という気持ちはあるが、さりとて戻ろうとも思えない。あの空間にいるのは気まずいにも程がある。

「はぁ……、愛されてないとは思っていたけど、まさかレン様が本当に好きなのがサラージュ様だなんて……」

 レンが――愛を知らないヒーローが、新たに出会う人間に奪われる覚悟はあった。
 これまで周囲にいなかった人の中に愛を見出されるならば、諦めがつく。
 それに彼は不誠実な人ではないから、婚約を解消されるにしても公衆の面前で手酷く捨てることはないだろう。正規の手続きで内々に済ませてくれるはずだ。そしてそうなればてもう二度と彼とその恋人に会うことなどなく過ごすことができる。
 一瞬の痛みに耐えれば、あとは時間がすべてを癒してくれるはずだった。

 でも、サラージュを好いているとなれば、話は変わる。
 彼女は彼にとって兄嫁。多少もめたとはいえ今もアレクシスと相思相愛であることは貴族ならば誰だって知っている。
 そしてレンは兄から花嫁を奪うようなことはしないことも。サラージュがレンの恋心を知ったところでなびくような人ではないことも。
 その高潔さに惚れこんでいるユリンにとっては、手に取るようにわかる未来だ。

「…………さすがに、つらいや」

 平穏を壊すような真実の愛に、彼は手を伸ばさない。ユリンとの婚約解消を視野に入れるつもりもないだろう。義務は果たす人だ。ならば、この先に待っているのはサラージュに永遠に焦がれるレンを間近で見せつけられ続ける、生き地獄だ。

 愛がないだけなら耐えられる。
 愛を失うのもまだ、耐えられる。
 ――だが、自分の愛も彼の愛も実らないまま、道具であることを見せつけられることには、耐えきれそうになかった。

 思わず、しゃがみ込む。
 たわんだドレスをぐしゃりと握りしめれば、じわじわと視界が涙で歪む。

 そんな背中に、声がかかった。

「――ユリン!」
「ひぇ!? れ、れんさ……来ないでください!」

 聞き慣れた声と、普段ならばけして立てないようなバタバタとした足音と共にやってきた婚約者にびくりと肩が跳ねる。
 ぐいっと乱雑に目元を拭って立ち上がり、声を張り上げれば背後でその足音が止まった。

「何故だ。俺は君の婚約者だぞ」
「それ、は――家が勝手に決めたことで」
「は?」

 地を這うようなド低音が返された。事実なのにどうしてそんな反応をするのだろう。
 突然ブリザードにでも襲われたみたいに冷えた空気に、咄嗟に後ろを振り無ことなく走り出す。

「ごめんなさいごめんなさい! ちょっと頭冷やしますー!!」
「――チッ」

 全速力でその場を離れたユリンの耳に、王子らしからぬ舌打ちが届くことはなかった。

 *

 ぜえぜえと肩で息をしながら、ユリンは立ち止まった。初速こそあれど、致命的なまでに持久力がないことを忘れてがむしゃらに走り抜けた結果のスタミナ切れである。
 幸い、滅多に人がよりつかない区域までは来れたらしいので、暫くは持つだろう。

「こ、ここまでくれば……って、あれ?」

 息を整えるために手をついた壁が、壁でない。
 見た目こそ壁だが、手触りが若干違う。……そう、屋敷の各所にもうけられた緊急用の脱出扉に似ているのだ。

「ここに、こんなのあったっけ?」

 ぱちんと目を瞬かせ、出来心で押してみる。
 もしものために、と叩き込んだはずの脱出経路を思い返しても、こんな場所に入り口はなかったはずだ。たぶん扉っぽいだけでなにも起こりはしないだろう。

 そんな甘い思考は、がこんと鈍い音を立てて動いた扉を――その中身を見た瞬間に、吹き飛んだ。

「なに、これ」

 そこにあったは、部屋中にびっしりと貼られたサラージュの絵姿だった。
 画家に描かせたのであろう精密だがサラージュ自身が絶対に見せないだろう甘ったるい服装のものから、魔法具で撮ったのだろう戦場での写真まで幅広い。中には随分と幼い姿の写真もある。だが、すべてがかの麗人のピンショットであり、写真はどれも視線をこちらにむけていない。盗撮だ。

「す、ストーカー……?」

 前の世界のエンタメ作品でまあまああった、偏執的なストーカーが作り出す執着心の塊のような部屋を彷彿とさせるそれに後ずさる。
 とん、と後頭部が何かに当たった。

「ユリン」
「ひっ」

 婚約者の声が、ぞわりと耳元をくすぐった。

「レン、様……」

 ごくりと、唾を飲み込む。
 この屋敷の主は、後ろにいる彼だ。こんなところに誰にも知られず部屋を作ることができるのは、そしてその中身を高貴な身分であるサラージュの絵姿で満たすことができるのは――彼以外に、有り得ない。

「……捕まえた」

 冷たい体温が、肩口にユリンを拘束する。
 ホールドするような強い力は、逃がさないとでも言うようだ。

 当たり前だろう。世のヤンデレは――自分の想いが相手に発覚しないようにため込んでいるようなタイプはとくに、その目撃者を許したりなどしない。
 ユリンは、死を悟った。

「こ、殺さないで」
「は?」
「だってサラージュ様のコレクション部屋とか絶対に覗いたら殺される秘密の部屋じゃないですか青髭の部屋並みのアウト案件じゃないですか知ってる! わたし死にたくないです誰にも話さないから命だけは」「待て待て待て」

 勢いのままにわーんと叫んだ口をむぎゅっと覆われる。
 その手の力も、止める声も、思った以上に柔らかくて、恐怖でぎゅっと瞑っていた目を恐る恐る開く。

「――ああ、なんだ。こっちを見たのか」

 そこにいるのはやっぱり婚約者だったけれど。その顔は見たこともないくらい安堵に満ちた穏やかなもので、とてもユリンを殺しに来たとは思えない。目を白黒させていれば、「すまない、苦しかったな」と小さな謝罪と共に手が外された。正直すごく優しく包まれていたので、全く苦しくはなかったのだが。

「えっ……と?」

 状況を掴み損ねて首を傾げれば、げんなりした顔でレンが件のヤンデレ部屋を指し示した。

「これはセルジェ兄……ラージェの兄上が押し付けてきた呪具だ」
「呪具」
「あの人は悪戯好きの発明好きでな……サラージュ本人に見つかって爆笑される前に勝手に廃棄したら呪いが降りかかる仕様になっている」
「手の込んだ嫌がらせ過ぎません?」
「恐ろしいことにあの人は発明品で悪戯するのは一定の親愛度がある相手だけだ」
「愛が複雑骨折しておられるんですね……?」

 レン個人のモノでなくて安心したというべきか、発覚した新たなとんでもない登場人物に慄くべきか。
 複雑な沈黙に支配されそうになった二人の耳に、くすくすと優美な笑い声が届いた。

「あら、早く言ってくれればいつでも笑い転げてあげたのに」

 髪がいささか乱れているレンとも、いささかどころでなくボサボサ頭になっているだろうユリンとも違う、一筋の乱れすらない姿のままやってきたサラージュだ。その姿にレンが苦虫をかみつぶしたような顔になる。

「――――おまえに借りを作ってたまるか」
「無駄なプライドね。というかうちの愚兄の犯行なんだから借りになんてしないわよ。向こう一年笑いの種にするけれど」
「それが借りだ。性格が悪いぞ幼馴染殿きょうだい
「あら、それは失礼。この程度で音を上げるほど軟弱になったのね、幼馴染さんきょうだい

 煽り合うふたりに、ユリンが目を瞬かせる。
 たしかに気安いけれど、好きな子に向ける態度ではないというか――きょうだい?

「……あれ? レン様、サラージュ様のことが好きなんじゃ……?」

 思わず漏れた声に、レンのアイスブルーの瞳が一層眼光を鋭くした。

「絶対ない」
「面白い勘違いされたわねえ。わたくしも貴方だけは絶対に嫌」
「完全拒絶!?」

 即座にお互いを切り捨てたふたりに、声がひっくり返る。
 つまりは、ユリンの勘違いだったということだろうか。――なら、サラージュへの敵わぬ恋で身を焦がす婚約者を見続ける生活は、送らなくていいのか。

 安堵と混乱に酔ってしまいそうなユリンの耳に、聞いたこともないような甘さを滴らせた婚約者の声が追い打ちと言わんばかりに吹き込まれる。

「俺が好きなのはきみだ。ユリン」
「――へぁ?」

 素っ頓狂な声が零れたというのに、レンは気にすることもない。

「家が勝手に決めたこと? 違うな。俺がきみを見初めたんだ。俺の、俺だけの可愛い人」
「そ、そんなこと父さんは一度も……」
「……俺が直接伝えると言ったのが裏目に出たか。すまない。改めて、何度でも言おう。愛しい人。俺のきみ」

 突然の告白に、氷のようだと思っていた目が途端に甘い香りを放つ菫の色に見えてくる。
 こんなに都合のいい事があっていいのだろうか。勘違いしてもいいのだろうか。
 片想いだと思っていたものが、この瞬間に両想いへと塗り替わるなんて奇跡を――信じても、いいのだろうか。

 目を回すユリンに、トドメとばかりに片膝をついたレンが、一世一代の微笑みを見せた。
 それはまるで、真の愛を知って氷が解けた物語の王子様のように。

「愛しています。どうか、俺の花嫁になってほしい」
「――はい、よろこんで!」

 その手をとった少女の顔にも――呪いが解けた姫君のように、愛らしい笑みが咲いていた。



 * * *

「めでたしめでたし、かしらね。それにしても……あーあ」

 無事ハッピーエンドを迎えたらしい彼らを見守っていたサラージュは次兄のしでかした悪戯部屋を振り返ると、深々とため息をついた。
 そこには無数の自分の絵姿――そして、隠れるようにしてひっそりと作られた隠し扉がひとつ。
 小さく押して、中を確かめる。
 閉じた。

「……うーん、兄も兄なら弟も弟」

 そこにあったのは、これまた絵姿がびっちりと貼られた部屋だった。
 ただし、描かれている人物は違う。そこに満ちているのは小柄で、ふわふわとした黒髪で、大きな目が愛らしい少女――ユリンの絵姿だ。
 部屋の持ち主は、言うまでもないだろう。

「教えてあげるべきかしら、それとも見守るべきかしら」

 ちらりと廊下で抱きしめ合う彼らを見やれば、冷たいアイスブルーが蛇の瞳孔でこちらをじっと見ていた。
 まるで、牽制するかのように。

「……はいはい。今は言わないでおくわよ」

 もしも本格的にレンがアレクシス2号としか言えない行動をとり始めたら助けよう。
 そう決意して、ひとまず自分の絵姿部屋だけでも笑い飛ばす解呪するべく、次兄手製と思われる特大の肖像画に向き合うのであった。
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