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バレスタの攻防④
しおりを挟む「しかしまぁ、砂漠のど真ん中でこれだけの銀世界とは。さすがに寒そうだ」
ケスターが両腕を擦りながら、わざとらしく震えてみせる。
「ふん。骨だけの貴様に寒さがわかるか」
「いやいや、確かに肉体はとうに失いましたが――景色から伝わる“記憶の感覚”というものがありましてね。人間だった頃の名残りですよ。そう考えると私は意外と感受性豊かな方でしょう?」
不気味に笑い合うアナベルとケスターを、ゲルト少佐は唖然と見つめていた。
フリーズブラストがアナベルの手前で霧散している?強力な結界か魔法障壁を事前に使われたか――?
ゲルト少佐は歯噛みしながら二人を観察する。
ケスターは未知数ながら、スティーブン隊を一瞬で屠った実力者。アナベルは切り札だったフリーズブラストすら凌いでなお健在。
冷静に分析すればするほど、勝機は限りなくゼロに近い。……いや、あったとしても一パーセント以下か――。
「……だが、どんな状況であろうと作戦を成功させるのが兵士の務め。来い……二人まとめて氷漬けにしてやろう」
ゲルト少佐は笑みを浮かべ、死地に立つ覚悟を決める。
「フフ……乾燥した砂漠でこれほどの水系魔法を操るとは。湿地帯なら、アナベルさんすら苦戦していたかもしれませんね」
ケスターの丁寧な口調は余裕すら感じさせる。確かに水系は環境に左右されやすい。湿潤な地であれば威力は増すが、この乾いた地では消耗が激しい。
「ふん。この地におびき出した時点で、お前の敗けは決まっていたって事だ」
アナベルは嗤い、再び構えを取った。
――その時。
遠くで火柱が上がり、三人の視線が同時に向けられた。
「……トラップマジックが発動したな。街からの増援か?獣人どもめ、しくじったか」
アナベルの目が細められる。
⸻
「まずい! 隣の車両が吹き飛ばされた!」
「クソッ! あっちにはウィザードが多く乗ってたはずだ! 救助は後続に任せろ! 俺たちは一刻も早くベースに合流するぞ!」
爆炎を目にしたジョシュアが叫び、カストロは座席を叩いて仲間に号令をかけた。
教会を制圧後、ベースと連絡を取ろうとしたが反応はなく、急ぎ部隊を率いて帰還中だったのだ。
「まだ罠が仕掛けられているかもしれません。俺が先導します、ついてきてください!」
「おい、待てジョシュア!」
制止も聞かずに飛び出すジョシュア。カストロは舌打ちしながら運転手に減速を指示する。すぐにジョシュアが先頭に躍り出た。
「頼むから、つまずいて轢かれるなんて間抜けな死に方はするなよ」
「しませんよ。もし轢いたら、轢いた方がトラウマでしょうし」
軽口を交わす二人に、運転手まで苦笑しながら相槌を打つ。緊張の中に束の間の笑いがこぼれた。
だが次の瞬間、ジョシュアが仕掛けられた魔法陣を踏み抜くと再び地雷魔法が発動し、火柱が轟音と共に立ち上がる。
ジョシュアは跳躍して回避し、その後ろを走る車両も余裕をもって回避していった。
やがてベースに辿り着いた部隊。そこでは銃声と悲鳴がこだまし、地獄絵図と化していた。
「クソッ……案の定だ。まずは生存者の確認を急げ!」
カストロの号令に部隊が散開し、戦場と化した拠点へ突入していく。
「ひとまず、俺たちはあっちに援護に回る!」
駆け出そうとしたとき、逆方向に巨大な火竜の影が立ち上がるのを確認した。
「……隊長、すみません。俺はあっちに向かいます」
ジョシュアは返答を待たずに走り出す。
「おい、待て……! チッ……マーカス、バスケス! お前たちはジョシュアの援護だ!」
「了解!」
二人が応じ、ジョシュアの後を追って駆け出して行った。
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