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赤い服の女⑥ 見える

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-朱美-
ボーリングを楽しんだ後4人でゲームセンターに行ったり、ベンチに腰掛けてお喋りしたりと一通り楽しんだ後ひとまず今日は解散となった。
 
「ねぇ美優どうだった?」
私から見てると美優も楽しんでいた様に見えていたがやはり気になる事もあった。
 
「うん、楽しかったよ。健太君も良い人だったし、・・・私大丈夫かな?」
美優が不安そうに聞いてくる。
 
「大丈夫ってどの辺が?何かやらかすような事あった?」
私はあえて美優に聞いてみた。
 
「あっ、いや別にどこがって事はないんだけど・・・健太君楽しかったかな?」
なんでこの子はこんなに綺麗な容姿なのにそんなに不安になってるんだろ?
 
「大丈夫だって。健太君も楽しそうにしてたし絶対美優の事気に入ってるよ」
そう言って美優の背中を思いっきり押す。
 
「痛いって」
美優もそう言いながら笑っている。
 
「でも美優も楽しそうでよかった。なんかたまに戸惑ってるみたいだったから何かあるのかなって思ったよ」
大役を終えてホッとして美優を見ると、
 
「朱美ごめん。この後、朱美の家か私の家で少しだけ話せない?」
 真剣な表情で美優は私に言ってきた。
 
「うん。いいよ。なんならこれからの美優と健太君について朝まで語り合う?」
少しふざけながら言ったが『なんか楽しい話題じゃないかも』と美優の表情から伝わって来た。
 
-美優-
朱美と合流して健太君達との集合場所に向かう。
『ああ、もうちょっと大人っぽい服が良かったかな?』
未だにそんな事で悩んでる
 
「ねぇ朱美。健太君どんな格好の人が好きなのかな?私変な格好してない?」
不安になり朱美に聞いて、自分を落ち着かせる。
 
「もう、大丈夫だって。美優はどう見たって綺麗だから普通にしてたら健太君の方から気に入ってくれるって」
朱美は呆れた様な笑顔をしている。
 
「大丈夫。自信持って。彼氏欲しいでしょ?」
そう言って朱美は励ましてくる。
 
「うん。まぁ、彼氏が欲しいって言うか、健太君と・・・ねぇ」
それ以上はまだ口に出来ない。
 
「ああ、はい、はい。彼氏が欲しいんしゃなくて、健太君と付き合いたいのね」
朱美は呆れた様子だった。
 
「もう、みなまで言わないでよ」
私が少し恥ずかしそうにしてると
 
「何純情ぶってんのよ?初めて男の人と付き合う訳じゃないんだし」
朱美が意地悪そうな笑顔で言ってくる。
 
「まぁそうだけどさ。それでもやっぱり緊張するじゃん」
実際、男の人と付き合った事が無い訳じゃなかったけど紹介って初めてだし自分からこれだけ気になったのも初めてだから私は緊張していた。
 
そして暫くすると向こうから2人組の男の人が足早に駆け寄ってくる。
 
『あっ間違いない。健太君だ』
そう思うと私の緊張は最高潮に達していた。
心臓が口から飛び出しそうとは、よく言ったものだ。
 
「お待たせ。ごめん、ちょっと待った?」
朱美の彼氏がそう言って駆け寄って来た。
 
私はとりあえず健太君に挨拶しようと健太君の方を見ると
  
「ひゃっ」
私は思わず声が上ずってしまった。
 
何故なら健太君の後にいる女の人と目が合ってしまったからだ。

正確には女のではないと思う。
そうこの世の者じゃない赤い服を着た女の霊が健太君に憑いていたのだ。
  
それからは出来るだけその女の霊は見ないようにしていたが
 
『ダメ。皆と楽しく過ごしたいのに女の霊がどうしても目に入る』

自分が気になる人に霊が憑いてるんだからどうしようもなかった。
 
そしてそのままその日は解散となったがどうしても女の霊の事が気になり思い切って朱美に打ち明ける事にした。
 
 
どちらの家で話すか悩んだが私の家の方が話しやすいので私の家に来てもらう事にした。
 
「お邪魔します。・・・わぁ、ちゃんと綺麗に片付いてるじゃん。朝からファッションショーしてたみたいだから服でも散乱してるのかと思ったら」
朱美は楽しそうに笑ってる。
 
「ちゃんと片付けてから行ったからね。まぁそのせいで遅れたから偉そうに言えないけど」
私は少しバツが悪そうにした。
 
「さてと、コンビニでお菓子も買ったし飲み物も用意した。で、話しって?」
朱美はお菓子とジュースを並べながら微笑んでいる。
 
「うん。じゃぁまずは私の昔の話からしなきゃいけないんだけど、」
 
「OK。夜はまだまだこれから。時間もお菓子もたっぷりあるしね」
朱美には全部話しても受け止めてくれそうな、そんな雰囲気を醸し出していた。
 
私は小さい時から霊が見えた。
 
まだ小さい時はそれが霊だとはわからず喋りかけたりもしていた。
周りから見たら何もない、誰もいない所で1人で喋っているヤバい子に見えていたかもしれない。
 
実際それが原因でいじめられたり、からかわれたりもした。
 
小学校高学年ぐらいになると、それが霊で、周りからは見えてなくて、喋りかけても私には何も出来ないから私は無視する事にした。
 
そういう物は、成長するにつれて見えなくなってくる。
 と何かに書いてあったが実際中学に入る頃にはもうだいぶ見えなくなってあまり気にはならなくなっていた。

それでも時折、見えたりはするが見ないようにしてれば日常生活には支障も無いので無視してれば大丈夫だった。
 
私は独自の見解として多分、念の強い霊が見えたりするんだろうなと思う。
だから悲惨な事故や事件があった現場は出来るだけ避けるようにしていた。
 
今までも霊に憑かれた人は何人か見てきた。
でもほとんどの場合、次に会ったら霊は消えている。
 
霊は勝手に憑いたり離れて行ったりすると聞いた事があるのでそういうものだろう、と思っていた。
 
だけど今日見たあの女の霊は今まで見えてたのとは違った。

私には良い霊、悪い霊はよくわからない。だけど直感を信じるならは絶対にヤバいヤツだ。
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