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一時の別れ
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-美優-
遂に女の霊の問題もひとまず片付き、阿比留さんを見送った後3人でファミレスに来ていた。
「さぁ、2人共好きな物食べてね」
お母さんがにこやかにメニューを渡す。
「何にしようかな?確かここドリアが美味しかったよね?」
以前、家族で来た時に食べたミートドリアが絶品だった事は確かだ。
「健太君は何にするの?」
何気なく健太君の方を見ると何故か固まっていた。
「どうしたの?まだ体調悪い?」
心配になり聞いてみる。
「いや、全然大丈夫だよ。ただずっとお世話になりっぱなしで、申し訳ないと言うか、このままでいいんだろうかと思って」
健太君は伏し目がちに座ったまま動かないでいる。
「健太君。そんなに気にしなくてもいいのよ。私がそうしたいからしてるだけだから。それでも貴方がどうしても気になるなら、ウチの美優を大切にして。そして貴方が将来仕事に就く様になったら、そうね、ちょっといい焼き肉屋さんにでも連れて行って。これはある意味先行投資よ」
お母さんはにこやかに説き伏せ、私と健太君を納得させるには十分だった。
「ありがとうございます。約束します。ちゃんとお返しします」
健太君の瞳は少し潤んでいるように見えた。
「お母さん。私を大事にさせた上にちょっといい焼き肉屋まで連れて行かせるって倍返し以上じゃない?」
私はあえて明るく笑顔で問いかける。
「あら、いいじゃない。ちょっとした利子みたいなもんでしょ。それに先行投資ってそんなもんでしょ。ちゃんと利益を見越してしなきゃね」
したたかな笑顔を見せるお母さん。
お母さんのおかげで3人での食事は円満に進んで行く。
「それはそうと健太君。家が呪われてるんでしょ?これからどうするの?」
全員が食事も終わりお母さんが食後のコーヒーを口にしながら健太君に問いかける。
「いや、呪われてるって言うか、取り憑かれてる・・・似たようなもんですね。とりあえず母親にこの事を言って引越すかどうかちゃんと話し合おうかと思ってます」
「えっ?何処か遠くに引越すとかはないよね?」
私は思わず動揺してしまった。
最近ずっと一緒にいれたから尚更だった。
「それはないとは思うけど・・・どうなるかな?なんせウチ、複雑だからさ」
健太君は笑顔を見せるが、その笑顔には少しせつなさもはらんでいるように感じた。
「そっか」
さすがにそこにどう踏み込んでいいかもわからず、力なくそう返すしかなかった。
「だから今日は1度、家に帰ってこれからどうするか色々と向き合ってみようかと思ってます」
「えっ!?健太君今日帰るの?」
今日も普通に一緒にいれると思ってたから更に動揺してしまう。
「うん。今行動しないとなんか結局ずっとダラダラ後回しにしそうでさ」
「そっかぁ、まぁ仕方ないよね」
自分の彼氏が前向きに行こうとしてるのだからちゃんと応援したいのに、寂しさで落胆している自分が嫌になる。
「じゃあ健太君はこの後、家に帰るんだね。その後、どうなったかちゃんと私にも教えてね」
お母さんは明るく言って健太君も元気に返事を返す。
私だけが、もどかしさを抱えているようだった。
ファミレスでの食事を終えて私の家に帰ってきた。
「今日まで、ここ数日本当にありがとうございました。凄く助かりましたし、凄く楽しかったです。ひとまず今から家でこれからについて相談してきます」
家に着くなり健太君は急にかしこまって挨拶しだした。
その姿勢からまるで暫くの間会えなくなるような気さえしてしまい不安になる。
「健太君。そんな急にかしこまった挨拶するからウチの美優が不安になってるわよ。今生の別れじゃないんだから『じゃあちょっと行ってきます』ぐらいでいいのよ」
お母さんが私の表情からか態度からか、私の不安を察知してフォローを入れてくれる。
「あはは、そんなつもりじゃなかったんですが・・・じゃあちょっと行ってきますね。美優ちゃんまた連絡するからちょっと待ってて」
健太君は優しく微笑み話しかける。
「ふふ、大丈夫だよ。ちゃんと話し合って来てね。そしてちゃんと連絡してね」
私はちょっと強がり、そして笑顔で手を振る。
「じゃあ行ってきます」
そう言うと健太君は颯爽と走り去った。
「行っちゃったね。さぁ美優。いつまでも泣いてないで家に入るよ」
「誰がこれぐらいで泣くのよ!」
「あら、悲しそうな顔してたから思わず泣いてるのかと思ったら元気そうね」
お母さんはわざとらしく口に手を当て驚くような仕草をみせる。
私は溜め息をつきながら少し両手を広げて家に入って行く。
「今日からまた女2人の生活ね。ここ数日健太君がいたからちょっと不安にならない?」
「ふ~ん。お母さんもたまには不安に感じるんだ?確かに急に健太君帰っちゃったからね。今まで通りなんだけどね。なんでだろう?もうこの際お父さんに帰って来てもらう?」
「ははは、そう言えば昨日お父さんと電話で喋ってたんだけど『美優の彼氏が来てて一緒にご飯たべてた』って言ったら動揺してたよ」
お母さんは楽しそうに笑ってる。
「お父さんに言ったんだ?何か言ってた?」
「『み、美優に彼氏が出来たのか?ど、どんな子なんだ?』って聞いてきたから、美優に聞いたらって言っといたよ」
お母さんとは健太君の事話しやすいし笑って話せるけどお父さんとは正直話しづらい。
めんどくさいなぁって思ってしまった。
遂に女の霊の問題もひとまず片付き、阿比留さんを見送った後3人でファミレスに来ていた。
「さぁ、2人共好きな物食べてね」
お母さんがにこやかにメニューを渡す。
「何にしようかな?確かここドリアが美味しかったよね?」
以前、家族で来た時に食べたミートドリアが絶品だった事は確かだ。
「健太君は何にするの?」
何気なく健太君の方を見ると何故か固まっていた。
「どうしたの?まだ体調悪い?」
心配になり聞いてみる。
「いや、全然大丈夫だよ。ただずっとお世話になりっぱなしで、申し訳ないと言うか、このままでいいんだろうかと思って」
健太君は伏し目がちに座ったまま動かないでいる。
「健太君。そんなに気にしなくてもいいのよ。私がそうしたいからしてるだけだから。それでも貴方がどうしても気になるなら、ウチの美優を大切にして。そして貴方が将来仕事に就く様になったら、そうね、ちょっといい焼き肉屋さんにでも連れて行って。これはある意味先行投資よ」
お母さんはにこやかに説き伏せ、私と健太君を納得させるには十分だった。
「ありがとうございます。約束します。ちゃんとお返しします」
健太君の瞳は少し潤んでいるように見えた。
「お母さん。私を大事にさせた上にちょっといい焼き肉屋まで連れて行かせるって倍返し以上じゃない?」
私はあえて明るく笑顔で問いかける。
「あら、いいじゃない。ちょっとした利子みたいなもんでしょ。それに先行投資ってそんなもんでしょ。ちゃんと利益を見越してしなきゃね」
したたかな笑顔を見せるお母さん。
お母さんのおかげで3人での食事は円満に進んで行く。
「それはそうと健太君。家が呪われてるんでしょ?これからどうするの?」
全員が食事も終わりお母さんが食後のコーヒーを口にしながら健太君に問いかける。
「いや、呪われてるって言うか、取り憑かれてる・・・似たようなもんですね。とりあえず母親にこの事を言って引越すかどうかちゃんと話し合おうかと思ってます」
「えっ?何処か遠くに引越すとかはないよね?」
私は思わず動揺してしまった。
最近ずっと一緒にいれたから尚更だった。
「それはないとは思うけど・・・どうなるかな?なんせウチ、複雑だからさ」
健太君は笑顔を見せるが、その笑顔には少しせつなさもはらんでいるように感じた。
「そっか」
さすがにそこにどう踏み込んでいいかもわからず、力なくそう返すしかなかった。
「だから今日は1度、家に帰ってこれからどうするか色々と向き合ってみようかと思ってます」
「えっ!?健太君今日帰るの?」
今日も普通に一緒にいれると思ってたから更に動揺してしまう。
「うん。今行動しないとなんか結局ずっとダラダラ後回しにしそうでさ」
「そっかぁ、まぁ仕方ないよね」
自分の彼氏が前向きに行こうとしてるのだからちゃんと応援したいのに、寂しさで落胆している自分が嫌になる。
「じゃあ健太君はこの後、家に帰るんだね。その後、どうなったかちゃんと私にも教えてね」
お母さんは明るく言って健太君も元気に返事を返す。
私だけが、もどかしさを抱えているようだった。
ファミレスでの食事を終えて私の家に帰ってきた。
「今日まで、ここ数日本当にありがとうございました。凄く助かりましたし、凄く楽しかったです。ひとまず今から家でこれからについて相談してきます」
家に着くなり健太君は急にかしこまって挨拶しだした。
その姿勢からまるで暫くの間会えなくなるような気さえしてしまい不安になる。
「健太君。そんな急にかしこまった挨拶するからウチの美優が不安になってるわよ。今生の別れじゃないんだから『じゃあちょっと行ってきます』ぐらいでいいのよ」
お母さんが私の表情からか態度からか、私の不安を察知してフォローを入れてくれる。
「あはは、そんなつもりじゃなかったんですが・・・じゃあちょっと行ってきますね。美優ちゃんまた連絡するからちょっと待ってて」
健太君は優しく微笑み話しかける。
「ふふ、大丈夫だよ。ちゃんと話し合って来てね。そしてちゃんと連絡してね」
私はちょっと強がり、そして笑顔で手を振る。
「じゃあ行ってきます」
そう言うと健太君は颯爽と走り去った。
「行っちゃったね。さぁ美優。いつまでも泣いてないで家に入るよ」
「誰がこれぐらいで泣くのよ!」
「あら、悲しそうな顔してたから思わず泣いてるのかと思ったら元気そうね」
お母さんはわざとらしく口に手を当て驚くような仕草をみせる。
私は溜め息をつきながら少し両手を広げて家に入って行く。
「今日からまた女2人の生活ね。ここ数日健太君がいたからちょっと不安にならない?」
「ふ~ん。お母さんもたまには不安に感じるんだ?確かに急に健太君帰っちゃったからね。今まで通りなんだけどね。なんでだろう?もうこの際お父さんに帰って来てもらう?」
「ははは、そう言えば昨日お父さんと電話で喋ってたんだけど『美優の彼氏が来てて一緒にご飯たべてた』って言ったら動揺してたよ」
お母さんは楽しそうに笑ってる。
「お父さんに言ったんだ?何か言ってた?」
「『み、美優に彼氏が出来たのか?ど、どんな子なんだ?』って聞いてきたから、美優に聞いたらって言っといたよ」
お母さんとは健太君の事話しやすいし笑って話せるけどお父さんとは正直話しづらい。
めんどくさいなぁって思ってしまった。
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